マクロ経済懸念、本年後半の慎重な見方増す半導体業界
今年も後半に入って足元の販売高とともに今後の見通しが各社から発表されてきているが、欧州をはじめマクロ経済、そして新興経済圏の伸びの鈍化基調による消費の先行きに対する不安、懸念が大きく影を落とす様相を感じている。一方、かつての携帯電話で見られたようなそれに向けて作る半導体の量の感覚が格段に違うという風情が、現在はスマートフォンやタブレットで見られており、新興経済圏が特に引っ張る消費インパクトが市場の構造変化および戦略再構築を促していることも各社に揃ったトーンと感じている。
≪相次ぐ今後への気がかり≫
やはり半導体最大手、インテルの発表が、この本年後半に対する懸念に気づかされる起点になっているが、前年からの伸長率を下方修正する次の内容である。
◇Intel cuts 2012 growth target (7月17日付け EE Times)
→Intel社(Santa Clara, Calif.)が火曜17日、今年後半のマクロ経済の不安定さおよび消費者spending見通し減少から、2012年販売高の伸長目標を下方修正、現時点は前年比3-5%増、$55.6B〜$58.7Bと見ている旨。前回は高い方の一桁の伸びとしていた旨。
◇Intel posts higher sales, lower profits as PC sales stall (7月17日付け The Wall Street Journal)
→足元の状況&見込み、次の通り。
第二四半期売上げ 第三四半期売上げ
$13.5B $13.8B〜$14.8B
前年同期比3.6%増
◇Intel's Q2 2012 results are solid, Q3 guidance lowered (7月18日付け ELECTROIQ)
インテルにequity-plus-researchプログラムを働きかけて出資を獲得する方向となったASMLについては前回の本欄で触れたばかりであるが、今年後半の販売高は鈍化を見込んでおり、飛躍を求めるプログラムの必要性および背景の事情を感じさせている。
◇ASML books better-than-expected Q2 orders, predicts slower sales 7月18日付け Bloomberg Businessweek)
→先端リソ装置サプライヤ、ASML Holdingの今年後半のnet販売高見込みが、$2.7B〜$2.9B、平均見積もり評価約$3Bを下回る旨。同社はまた、臨時株主総会を9月7日に開催、Intelとの$4.1B持分&技術契約について議論する旨。
Xilinxからは、現下の第三四半期について売上げが停滞する見込み状況が内訳含め出されている。
◇Xilinx forecasts chip sales down about 6% (7月18日付け EE Times)
→Xilinxの9月締め今四半期販売高が4-8%低下する見込み、混じり合った要因があり、いくつかの製品に寿命、大手顧客のいくつかに在庫残り、産業用およびwired通信など弱含みの分野の旨。この僅かな停滞にも拘らず、同社としては広範な低迷の兆候は見ていない旨。
TSMCは、28-nm capacity不足の渦中にありながらも第二四半期は売上げの最高を記録、作れればもっと売れるという現状の市場構造を端的に感じさせている。それでも今後についてはマクロ経済懸念からぐっと抑え込む基調の見通し発表となっている。
◇TSMC expects 6-8% sales rise in 3Q12, but dips ahead (7月19日付け DIGITIMES)
→TSMCの2012年第二四半期連結売上げは$4.3Bの新記録、前四半期比21.4%増。第三四半期にはさらに伸びを見込むが、第二四半期に比べると控え目の旨。TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏は、2012年最終四半期および2013年第一四半期は前四半期比落ち込むかもと警告、世界経済について3ヶ月前より楽観論を引き下げ、米国経済データおよび打開する政策不足の懸念も示している旨。
パソコン鈍化の煽りを大きく受けているAMDの以下の発表内容である。市場構造の変化に対する戦略再構築が最も求められるPC業界の現状を受け止めざるを得ない。
◇AMD: PC CPU sales may slump to single digits(7月19日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)の四半期売上げ$1.41B、前四半期比11%減、前年同期比10%減。来る四半期も前四半期比約1%の下落を予想、PCプロセッサの年間売上げが長期的に低い一桁という“a new baseline”に鈍化する可能性の旨。
Freescaleからも新たな戦略構築に早急に取り組むスタンスが以下の通りである。
◇Freescale CEO targets Q3 for new strategic plan (7月19日付け EE Times)
→Freescale Semiconductor社(Austin, Texas)の第二四半期販売高$1.03B、前四半期比8%増、前年同期比16%減。第三四半期は$955M〜$1Bに低下する見込み、consensusアナリスト予想の約$1.05Bに届かない旨。同社President and CEO、Gregg Lowe氏は、第三四半期末までに製品グループおよびコア市場の分析を完了、最善のopportunitiesにリソースをシフトする新しい戦略を実行する旨。
このような各社発表のなか、調査機関、IDCから本年の半導体市場伸長率の下方修正が次の通り表わされている。
◇IDC cuts 2012 chip market growth forecast (7月19日付け EE Times)
→International Data Corp.(IDC)(Framingham, Mass.)が、2012年半導体市場伸長予測を下方修正、欧州危機の継続、グローバルGDP伸長低下および新興市場の鈍化などマクロ経済不安を引き合いの旨。現時点の2012年販売高は、4.6%増の$315Bとの見方、4月時点では6-7%の伸びを予測していた旨。
◇IDC: Semiconductor Market Growth Muted by Global Economic Concerns-Semiconductor revenue will increase 6.2% next year (7月19日付け eWeek)
TSMCのトップ、Morris Chang氏からはさらに慎重な見方が、続くタイミングで打ち出されている。
◇TSMC's Chang cuts forecast, sees stall coming (7月20日付け EE Times)
→TSMCの第二四半期earnings conferenceにて、同社chairman and CEO、Morris Chang氏。半導体市場が鈍化してきており、2012年のグローバル半導体市場伸長予測を下方修正、1-2%と見ている旨。
≪市場実態PickUp≫
今後への慎重な気分を述べてきたが、本年の半導体設備投資・各社ランキングデータが次の通り発表されている。全体では昨年を下回る見通しになっているとともに、増やしているのは6社止まりという現状である。
【2012年半導体設備投資ランキング】
◇Only six major semiconductor suppliers to spend more on capex in 2012, says IC Insights (7月18日付け DIGITIMES)
→IC Insightsの主要半導体capital spendersランキング最新データ。2012年のcapex予算が2011年をかなり上回りそうなのは、主要35半導体サプライヤ中以下の6社に留まる旨。
・2012年主要capital spenders(USM$)
Company | 2011 | 2012(e) | Change | Y/Y |
Intel | 10,764 | 12,500 | 1,736 | 16% |
Samsung | 11,755 | 13,100 | 1,345 | 11% |
TSMC | 7,333 | 8,250 | 917 | 13% |
Hynix | 3,165 | 3,680 | 515 | 16% |
UMC | 1,585 | 2,000 | 415 | 26% |
Rohm | 385 | 685 | 300 | 78% |
上記6社Total | 34,987 | 40,215 | 5,228 | 15% |
6社以外その他 | 30,568 | 23,055 | (7,513) | (25%) |
WW Total | 65,555 | 63,270 | (2,285) | (3%) |
[Source: IC Insights, compiled by Digitimes, July 2012]
スマートフォン、タブレットの急伸ぶりにパソコンが押されている現状を感じざるを得ないが、タブレット対ノートPCで見た先行きが次の通り表わされている。
【タブレット対ノート】
◇Tablets to outsell notebooks in 2016, says analyst (7月16日付け EE Times)
→NPD DisplaySearch発。タブレットcomputers出荷台数が2016年にはノートブックcomputersを上回るという以下の見方:
2012年 | 2017年 | CAGR | |
ノートブック | 208M台 | 393M台 | |
タブレット | 121M台 | 416M台 | 28% |
モバイルPC全体 | 347M台 | 809M台超 |
ノートブックの比率が、2012年の60%から2017年には49%に低下すると見る旨。
本当か?いつの話か?と根拠を打診せざるを得ないところがあるが、欧州の公的レポートでも取り沙汰されている内容、以下の通りである。
【噂話真偽如何?】
◇Talk of a chip plant deal:Analyst predicts future acquisition of IBM unit by GlobalFoundries (7月13日付け Times Union (Albany, N.Y.))
→450-mmウェーハfabの建設&装備の高価な費用は、IBMのMicroelectronics部門をGlobalFoundriesへの売却につながる可能性、GlobalFoundriesとIBMの緊密な間柄は、Abu Dhabiが支援する該SiファウンドリーがEast Fishkill, N.Y.のIBMウェーハfabを他のIBM半導体operationsとともに継承する自然な候補に映る、とFuture HorizonsのCEO、Malcolm Penn氏。
◇IBM to sell its chip business? (7月17日付け EE Times India)
→Future Horizons Ltd.およびDecision SAが、欧州における450-mmウェーハ処理の今後についてEuropean Commission(EC)に向けてまとめたレポートの結論。GlobalFoundriesがIBMの半導体部門を買収、Hynix/Micronが残るその他メモリメーカーを買い上げることが仮定される旨。
最先端技術、知的財産の事業戦略上の重み、係争の激化をこのところ一段と強く感じるところであるが、韓国での厳しさ、切迫度を感じる以下の動きである。
【先端技術獲得の前線】
◇OLED技術流出、サムスン・LGの11人起訴 (7月17日付け 韓国・朝鮮日報)
→サムスンディスプレー(旧サムスンモバイルディスプレー)とLGディスプレーによる有機発光ダイオード(OLED)技術の流出事件で、水原地検は16日までに関係者11人を在宅起訴、法人としてのLGディスプレーと下請け企業Y社を略式起訴した旨。
◇歩みを速めるサムスン、1年間に5社を買収(7月18日付け 韓国・中央日報)
→世界の買収合併(M&A)市場でサムスン電子の歩みが速くなっている旨。サムスン電子は17日、「英国の半導体設計会社CSRのモバイル部門を買収する」と発表、買収金額は$310M、CSRはWi-Fi(無線LAN)、ブルートゥース、GPSのような機能を使うのに必要な連結チップの核心製造技術を保有している旨。 サムスン電子が外国企業を買収するのは今年に入ってからすでに3度目、すべてスマート機器事業強化と関連、5月に買収した米国のエムスポットはクラウド関連技術を保有している旨。
≪グローバル雑学王−211≫
いろいろ距離感があって彼方の感じ方がどうしても強いアフリカ大陸であるが、下記著者の1980年代の北アフリカから西アフリカへを旅した体験の記憶に触れて近づいてみる。
『日本はなぜ世界で認められないのか −「国際感覚」のズレを読み解く』
(柴山 哲也/著:平凡社新書 636) …2012年 4月13日 初版第一刷
より、2回に分けて示すが、連日シリアの内戦、国連の対応が報道される現在に対し、昨年は北アフリカのイスラム国、チュニジアで起こった民衆蜂起による革命から「アラブの春」の連鎖の事態が引き起こされたのはまだ記憶に新しいところである。同国を代表する花の名から呼ばれる「ジャスミン革命」から以下入っていく。
第三章 遠くて近いアフリカ ≪前半≫
◆「アラブの春」のメッセージ
・2010年から2011年にかけてジャスミン革命で始まった「アラブの春」
→日本に与えた衝撃とメッセージの意味
→石油の宝庫であり、中近東のイスラム圏諸国の動向は日本の生命線を握る
・独裁政権打倒と民主主義を叫ぶ民衆運動
→ツイッターやフェイスブック、新しいコミュニケーション・ツールを駆使した民衆革命のうねり
→イスラム圏全域に拡大
・欧米と同等に、この地域の文化や歴史を知る必要
→イスラム原理主義と地域部族の長老支配がまぜこぜになっている政治構造
・石油と太陽の光があるほかは何もないサハラ砂漠の土地
→民衆の中に、先端のコミュニケーション・ツールが深く侵入
→革命の灯を点火
→思いがけなくもニューヨークのウォール街に飛び火
→米国の格差是正のアピール
→ヨーロッパ先進国にも飛び火、日本でも
⇒グローバルな情報化社会
◆バブル景気に沸く東京を離れて
・(著者は、)1980年、高度成長経済に沸き立つ東京を離れて、北アフリカから西アフリカへの旅
→文明の恩恵が及ばない辺境の地
→多くの国は軍事独裁政権で内紛が絶えず、飢餓難民がうようよ
・スピーカーからコーランを読む大音量の声
・よほどのことがない限り、夜は外出しない
・日本の新聞社はアフリカ取材が最も手薄
→パリやロンドンからアフリカ取材へ飛ぶ
→日本人は欧米の目線からアフリカを見ているだけ
・アフリカ人はもともと部族単位の暮らし、大陸全体で約800の部族
→固有の部族語、それぞれに違う文法や言語の構成
→部族が違えば外国人
・宿願の独立を果たした後に、強固な軍事独裁国家ができた
→アフリカの悲劇の始まり
・脱亜入欧で明治維新を成し遂げた日本は有色人種のお手本の優等生の国
→日本は、アフリカでは、唯一尊敬されてきた有色人種の国
◆マグレブの夕陽の国
・北アフリカの都市、アルジェ …フランスから2時間
→坂の町。白壁のカサ・ブランカ(白い家)が坂道に点在。
・マグレブの夕陽 …夕陽が沈む国、という意味
→サハラ砂漠へ垂直に落ちていく巨大で真っ赤な太陽
◆地中海は血の色に染まった
・1962年、アルジェリアはフランス植民地支配から独立
→FLN(アルジェリア民族解放戦線)
→FLNの闘士たちがアジトにしたカスバ
…貧民窟、暗黒街、色街の代名詞のように
・幅1mもないほど狭いカスバの路地
→アルジェリア戦争はこの時代のフランスの若者の心に影
◆ホウレンソウに雑草が混じる貧しい食事
・ほとんど料理らしいメニューがなかったアルジェのホテルの食堂
・卵やパンや飲料水などの生活必需品がなかなか手に入らない
◆生産なき自主管理社会主義
・アルジェリアの自主管理社会主義
→生産が乏しく、モノがない社会主義
→自国の石油を外国に売って政府を維持しているだけ
・日本がこういう国から石油を買っていることを思い知った