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450-mm、ウェーハcapacityなど巡って相次ぐ戦略的駆け引き

Semicon West 2012(SAN FRANCISCO)開催に合わせて何かが起きる、変わるという受け取りがある。今回は、リソ装置最大手、ASMLが開発投資を募るequity-plus-researchプログラムの働きかけを行って、インテルが3260億円投資するという大きな動きが見られている。EUVリソおよび450-mmはじめ事態打開促進を目指して、トップメーカー同士の具体的な連携の発表である。
SamsungおよびTSMCにもASMLから声がかかっており、また、モバイル機器プロセッサを巡るウェーハcapacityも依然各社間の駆け引きが続いている。

≪ASMLおよびファウンドリーが主軸≫

インテルのASMLにおける15% stake買収という以下の発表から、今回の大きな動きが始まっている。

◇Intel buys stake in ASML to boost 450-mm, EUV R&D (7月9日付け EE Times)
→Intel社が月曜9日、extreme ultraviolet(EUV)リソおよび立ちはだかる450-mmウェーハへの移行に必要な技術の開発を早める$4.1B契約の一環として、大手リソtoolベンダー、ASML Holding NVにおける15% stake買収に合意の旨。  

◇Intel to Take Stake in ASML (7月9日付け The Wall Street Journal)

時を同じくして、フランダース政府がIMECに450-mmクリーンルーム建設への出資をコミットしている。

◇Flemish government promises IMEC cash for 450-mm fab (7月9日付け EE Times)
→フランダースのMinister of Innovation, Ingrid Lieten氏が、IMECリサーチ機関の試作ウェーハfab(Leuven, Belgium)での450-mm径ウェーハ処理に向けたクリーンルームfacilities建設への出資を約束の旨。

将来世代の450-mmと並行して、こちらは現実世代の28-nm capacityについて不足を補うやり方如何の記事に引き続き注目させられている。

◇Nvidia, AMD unlikely to switch from TSMC to Samsung for 28nm foundry (7月9日付け DIGITIMES)
→graphics cardメーカー発。Qualcommが28nm-ベースSnapdragon S4プロセッサのファウンドリー発注をTSMCの28-nm capacityがニーズを満たせないことからSamsung Electronicsに切り換えているといわれる一方、NvidiaとAMDはこれには従わないと見られる旨。

ASMLがインテルなどに提案したequity-plus-research資金調達の構図が、時間を置いて次の通りまとめられている。

◇ASML funding plan targets proposed 2018 EUV machine (7月10日付け EE Times)
→extreme ultra violet(EUV) R&Dおよび450-mm径ウェーハ技術への移行への対応でリソtoolベンダー、ASML Holding NV(Veldhoven, The Netherlands)が組み立てている革新的なequity-plus-research資金調達の構図は、2018年のEUV成果による装置出しに照準を置いている旨。すでに市場投入の遅れが言われている現世代のEUV機にはインパクトを与えない旨。

◇米インテル、ASMLに3260億円投資 (7月10日付け 日経 電子版)
→米インテルが9日、半導体製造装置大手、ASML(オランダ)に最大41億ドル(約3260億円)を投資すると発表、450-mm大口径化への対応を進めるとともに、EUV露光装置の開発を後押しする旨。ASMLのCEO、Eric Meurice氏は声明で「半導体の集積度を上げるための投資負担が重くなっている」と出資受け入れの理由を説明、「数週間以内に他の半導体メーカーの追加投資も発表したい」旨。

SamsungおよびTSMCへの働きかけなど、引き続く反響、反応、以下の通りである。

◇ASML in talks with Samsung, TSMC on equity stakes (7月10日付け EE Times)
→リソtoolベンダー、ASML Holding NV(Veldhoven, The Netherlands)が、同社equity-plus-researchプログラムのもと同社における10% stake買収に向けて、Samsung Electronics Co. Ltd.およびTSMCと交渉している旨。

◇TSMC and Samsung have 45 days to invest in ASML (7月11日付け Electronics Weekly (U.K.))

◇Why Did Intel Buy Into ASML? To Ensure Moore's Law-Blog: Intel's investment in ASML driven by Moore's Law (7月11日付け International Business Times)
→IntelのASML Holdingへのequity投資は、半導体チップ上のトランジスタ数が18ヶ月ごとに倍増するというMoore's Lawが引き続き見られるようにする必要性から推進されたものと思う旨。ASMLはextreme ultraviolet(EUV)リソ機生産に最も近づいており、将来世代の半導体生産に必要となる旨。

◇Intel buys stake in ASML (7月11日付け EE Times India)
→Intelが、450-mmウェーハ技術およびextreme ultra-violet(EUV)リソの開発を早めるRs.22,404.37 crore($4.1B)契約の一環として、リソspecialist、ASML Holding NVにおける15% stakeを買収する旨。

◇TSMC evaluating ASML investment proposal (7月11日付け DIGITIMES)
→TSMCが、最先端半導体製造技術の共同開発についてASML Holdingからの投資提案を受けていることを認め、現在検討している旨。

TSMCは、アップルとの間で20-nmプロセス促進を図るという以下の動きもとっている。

◇TSMC touting next-generation 20nm process in the US (7月12日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCの販売representativesと設計サービスチーム、並びに同社IC設計子会社、Global Unichipからの技術サポートスタッフグループが、2012年半ば以降米国に駐在、有望clients, 特にAppleに対して次世代20-nmプロセスの推進を目指している旨。

かたやUMCの方は、Qualcommからの出資を求める動きのようである。

◇UMC reportedly seeking investment from Qualcomm (7月13日付け DIGITIMES)
→業界筋発。UMCが、戦略的パートナーシップを構築する狙い、来る第三者割当に参画するようQualcommに求めている旨。

そのQualcommは、Globalfoundriesのドイツ工場からの28-nm半導体を受ける契約を行ったとのこと。ファウンドリーcapacityを巡って錯綜する事態を受け止めている。

◇Globalfoundries to fab 28nm chips for Qualcomm, says paper (7月13日付け DIGITIMES)
→Commercial Times(中国語)発。Qualcommが、GlobalfoundriesのDresden fabで28-nm半導体を製造する契約を行った旨。Globalfoundriesは、2012年第四四半期にQualcommへの該受注出荷を始める旨。Commercial Timesは以前、UMCがQualcommから28-nm Snapdragon S4半導体の受注を獲得、2012年最終四半期に量産予定と報じた旨。

リソ装置最大手が半導体最大手に働きかける450-mmおよびEUVリソ開発は、膠着気味の将来世代技術開発の事態打開の切り札になるか、今後に注目である。Moore則を死守するという一貫した半導体人間の根性、思いというものを感じさせられるところである。ウェーハcapacityの方は、次元および時間軸が異なるものの成果の量と分配を競い合う、これも半導体ビジネスの世界のエネルギー活性源ということと思う。


≪市場実態PickUp≫

このような大きな動きを誘発しているSemicon Westについて、ほんの一部ながら以下の注目内容である。呼応するかのように、450-mmウェーハ生産操業開始が2017年という見方になっている。

【Semicon West 2012】

◇First 450-mm fabs to ramp in 2017, says analyst (7月10日付け EE Times)
→SEMIのseniorアナリスト、Christian Dieseldorff氏。450-mmウェーハを用いる最初の半導体生産fabsは、2017年に操業を始める見通しの旨。その時点までにはIC生産fabs総数が、今年の464から441に減少すると見る旨。
・≪グラフ≫ ウェーハ寸法別IC量産fabs数:2002-2007-2012-2017年
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120709_semi_1.jpg
・≪円グラフ≫ 地域別ウェーハfabs数:2007-2017年
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120709_semi_2.jpg

半導体製造装置販売高は今年の落ち込みが予想されているが、振り返ると史上4番目の水準の位置づけになる。

◇Fab tool spending to decline 2.6% in 2012, SEMI says (7月10日付け EE Times)
→SEMI(San Jose, Calif.)が月曜9日リリース、mid-year予測アップデート。2012年の半導体製造装置販売高総計は$42.4B、2011年比2.6%減の見込み、これがその通りであれば、次に続く史上4番目の年となる旨。
 2000年 $47.7B
 2011年 $43.5B
 2007年 $42.8B
・≪表≫ 2012年SEMI mid-yearコンセンサス予測データ
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120709_semi_forecast_423.png

基調講演よりインテルからは、アーキテクチャーおよびscalingの進展からexascale computingが10年以内の視野に入ってきているが、パワーの点からトランジスタにさらに乗り越える障壁があるという見方が出されている。

◇The energy behind energy at SEMICON West (7月11日付け ELECTROIQ)
→Intel FellowでIntel Corporationのextreme-scale技術director、Shekhar Y. Borkar氏の開幕基調講演。ubiquitous computingのエネルギー需要およびスーパーコン向けに開発される技術が後で如何にスマートフォンに採用されるかに注目、今日のトランジスタのエネルギー需要はexaflopデータレートでは持ちこたえられない旨。続くCEA-Letiのプレゼンではこれに同意の旨。

◇Intel keynoter: Power consumption hurdles litter path to exascale computing (7月11日付け EE Times)
→Intel Fellow、Shekhar Borkar氏。parallelismおよび技術scalingのお陰でexascale computingはここ10年以内に現実のものに、しかし、根本的な電力消費の障壁を克服しなければフルpotentialには応えられない旨。

450-mmウェーハ移行について大きな動きが見られるなか、装置サプライヤには不安が尽きない状況が以下に示されている。

◇Chip Tool Makers Wary of Wafer Shift -Shift from 300mm wafers to 450mm substrates concerns gear makers (7月12日付け The Wall Street Journal/Digits blog)
→300-mmから450-mmウェーハ製造への移行が計画され、半導体製造装置サプライヤにとって悩みの種になっている旨。大口径基板に対応できるtoolsへの研究開発に負担を余儀なくされる旨。

三次元化への焚きつけを昨年後半に行って、以来貫通電極(TSV)、Siインターポーザはじめ関連技術用語の市民権がぐっと高まったと肌身に感じているXilinx社の活動であるが、今回も持論をさらに展開した以下の主旨の投げかけである。

◇Xilinx CTO: Focus on what matters to customers (7月12日付け EE Times)
→Xilinx社のsenior vice president and chief technology officer(CTO)、Ivo Bolsens氏。半導体チップ上のトランジスタ数が18ヶ月ごとに倍増というMoore's Lawの価値は、単にコスト削減にあるのではなく、半導体メーカーが顧客に向けて作り出せる付加価値がもっと重要となる旨。
もっと効率的なアーキテクチャー、3-D integrationおよびprogrammabilityなどを通して価値を加えることが半導体メーカーが進めるやり方であり、scaling技術の継続が肝要と主張しながらも、半導体メーカーが新技術でもたらせる価値の方がより重要である旨。

モバイル機器の陰に隠れた感じとなっているパソコンであるが、4〜6月期の世界出荷データが次の通り発表されている。経済状況を反映して停滞の側面が見られるのと、少し目がそれた間の中国・レノボ・グループの急伸ぶりに気づかされている。

【パソコン出荷】

◇パソコン世界出荷台数0.1%減、4〜6月 (7月12日付け 日経 電子版)
→パソコン市場の停滞が続いている旨。米IDCが11日に発表した4〜6月期の世界出荷台数は、前年同期比0.1%減の8673万1000台、5四半期ぶりの減少、米国を中心に景気減速や市場の成熟化の影響が続いていることに加え、需要を下支えしてきた中国などアジアの失速が響いた旨。
メーカー別シェア:
 米・HP         15.5%
 中国・レノボ・グループ 14.9%
 米・デル        11.4%

特にアップルとの世界各地での特許侵害係争が連日のように伝えられているが、製品企画の段階から特許専門の関係者を実戦配備するというサムスン電子での動きである。最先端技術を売りとするどのメーカーにもこの点の重要度がますます高まっている状況を感じている。

【特許係争対応】

◇特許訴訟の学習効果…サムスン「製品企画に弁理士参加」 (7月12日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子が特許および訴訟専門人材の弁理士と弁護士を多数採用しており、弁理士は新製品や新技術の企画段階から加わり、関連技術の海外特許現況、既存の特許を避けて開発する方法などを助言する旨。


≪グローバル雑学王−210≫

前回に続いて、太平洋戦争がこんどは南太平洋に落とす影を、

『日本はなぜ世界で認められないのか −「国際感覚」のズレを読み解く』
 (柴山 哲也/著:平凡社新書 636) …2012年 4月13日 初版第一刷

より、著者の1990年代始めの現地取材経験などによる事実、実態の解明を通して、国際的な見られ方につながる我が国の抱える根幹の問題というものを考えていく。一概には括れないものの、個々の事実、事態それぞれ知らなければならないと思うとともに、現在に通じる我が国内の根幹の潮流を考えている。


第二章 太平洋戦争は終わっていない −日米間に横たわる歴史のトラウマ

2 南洋に放置された戦跡とミッドウェー海戦秘録

◆今に蘇る「大本営発表」
・福島第一原発事故に関する政府の情報の隠蔽や事実を伝えることなく安全神話を垂れ流したマスコミ
 →戦時下の大本営の再来という世論の批判
・3年9ヶ月に及んだ太平洋戦争時に846回行われた大本営発表
 →ほぼ2日に1度の割合
・官制の嘘情報発表の権化のようにみなされる「大本営発表」
 →日本軍の敗北や損失を隠し、敵に損害を与えたことだけを誇張して戦況を偽って公表
・米軍機が日本の上空からばら撒いた460万枚に及ぶ宣伝ビラ
 →見た国民は米国の情報が正しいことを認識

◆放置された南太平洋の戦跡
・(著者が)1991年、南太平洋の戦争の跡をルポ
 →環太平洋時代の到来がいわれたころ
・大国の都合で、南太平洋の島国は蹂躪されてきた歴史
・訪れたどの島にも日本軍が残した戦跡がたくさん
 →海に沈んでいる日本の零戦
・トラック島周辺はダイビングのメッカ、日本軍艦の沈潜を巡るツアー
・南太平洋諸島には、日本語のできる年配者がかなり
 →どこか日本を懐かしんでいる風情も
・トラック島で見たのは、戦後処理も手つかずになっている現実

◆放射性物質の海上輸送問題
・この当時、日本が高濃度の原発廃棄物の捨て場として、ビキニ周辺を利用しようと画策していることが現地で浮上
・1985年、中曽根首相が南太平洋を訪問した際、計画の無期限停止を公表
 →日本への警戒心は依然続く
・さらに1992年末から日本が実施している放射性物質の海上輸送問題
・反日感情がこの地では希薄
 →日本への親近感と懐かしい思い出がこの地の人々の心に
 →ビキニ水爆実験を行った米国への反感が強い

◆「真珠のネックレス」
・飛行機の上から見たマーシャルのマジュロ島は絶景
 →空港に降り立つと、その印象は逆転
 →汚れている海と空気
・2エーカーのゴミ廃棄場を数100万ドルの見返りで開設、海を埋め立てて土地造成
 →日本が計画した核廃棄物の廃棄もこうしたゴミ廃棄物の延長線上に存在
・日本が脱原発に舵を切らない限り危険な核燃料の太平洋輸送もなくならないだろう
・こうした南太平洋の現実
 →太平洋戦争はまだ終わっていないことを痛感

◆家族たちの終わらない太平洋戦争
・(著者の)妻の実父は、満州から南方戦線に動員されて戦死
 →マーシャルの手前の島、クウェゼリン …戦後の米軍の南太平洋の軍事要衝
 →飛行機を降りることは許されない。立ち入り禁止の島
・残された家族たちの心の中の太平洋戦争はまだ続いている

◆ミッドウェー海戦敗北の秘密調査
・海軍士官だった(著者の)伯父、太平洋戦争戦時中の日記、手記らしきものが最近
 →余計な付随物が多すぎる海軍組織を合理化、簡素化しないと、米国との長期戦にはとても勝てない
・太平洋戦争とは、米国との戦であると同時に、陸海軍相互の権益とメンツをかけた内部の戦争でも
・伯父が指摘した軍組織の非合理性と無駄の横行
 →いまの日本の中央集権政治の非効率と二重写しに

◆戦時体制を今も引きずっている
・戦時体制の産物
 −戦後の日本の基幹産業となった自動車産業
  →国防のための自動車産業を育成するための「自動車製造事業法」に始まる。満州事変以降のこと
 −電力の発送電を独占的に担う9社体制
 −新聞社の記者クラブ
・規制緩和や構造改革の真意
 …戦時から続いてきた戦時体制のシステムを解体、民主的なシステムに改めるという意味
 →日本の官僚体制と支配システムが既得権益を手放すことができず、改革に対して怠慢

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