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こんどはグーグルからのタブレット、ますます慌ただしいアップデート

タブレットそしてスマートフォンを巡るプレーヤー間の競合の事態の動きが一層目まぐるしさを増してきている。マイクロソフトに続いて今度は、グーグルが自社ブランドのタブレットを投入、アップルiPadの半額以下の価格設定としている。市場の顧客満足が如何に反応するか、間断のない仁義なき戦いの様相に映ってくる。28-nm生産capacity不足へのクアルコムの対応が引き続き注目となる一方、アップルとサムスンの間の特許、デザイン係争は、サムスンの一部機種の米国内販売差し止めという事態を迎えている。

≪またまた相次ぐ動き≫

日進月歩という表現では到底追い着かないここのところのスマホ、タブレットについての世界の市場の動きではある。今回のグーグルについても、マイクロソフトと同様、観測記事から始まっている。

◇米グーグル、自社ブランドのタブレットを投入か−通信社報道、市場で観測広がる (6月27日付け 日経 電子版)
→米ダウ・ジョーンズ通信、26日発。インターネット検索最大手、米グーグルが、自社ブランドのタブレットを投入するとの観測が広がっている旨。
基本ソフト「アンドロイド」などの最新版を発表する見通しの27日の開発者会議で、アップルへの対抗策として発表する可能性がある旨。名称が「Googlet」や「Gpad」になるとの観測が早くも、台湾・華碩電脳(Asus)に製造委託、販売価格$200前後との見方がある旨。

さてそのタブレット、「Nexus 7」が次の通り打ち上げられ、価格と紙の本の重さが第一印象に伝わってくる。

◇Google launches 7-inch, $199 Android tablet (6月27日付け EE Times)
→予想通り、Googleが水曜27日、Google I/O developerイベント(SAN FRANCISCO)にて、7-インチmediaタブレット、Nexus 7を打ち上げ、台湾のAsustek Computer社による製造、7月中旬に$199から売り出す旨。
Nexus 7の特徴、次の通り:
 Nvidia Tegra 3チップセット …quad-core CPU
                …12-core GPU
 1280 x 800 HDディスプレイ
 front facingカメラ
 Wi-Fi, BluetoothおよびNear Field Communicationsサポート
 330gの重さ …紙の本並み
・≪Nexus 7外観写真≫ 
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Nexus_7_200.jpg

世界の反応も大方それが主軸となっており、以下の通りである。

◇Google Introduces Nexus 7: Nvidia Tegra 3 Tablet for $199.-Google Launches High-Performance, Low-Cost 7" Tablet (6月27日付け XBitLabs.com)

◇アイパッドの半額以下…グーグルのタブレット (6月28日付け 読売)
→インターネット検索サービス最大手、米グーグルが27日、自社ブランド初のタブレット型多機能端末「ネクサス7(セブン)」を米国、カナダ、英国、豪州の4か国で発売すると発表、急拡大するタブレット市場で、6割超の市場占有率のアップルに対抗する旨。画像処理性能などを高めたグーグルの基本OS「アンドロイド」の最新版を搭載、画面は7インチ型とアップルの「iPad」より小さく、重さは340グラムに抑えた旨。ハイビジョンの動画を連続8時間視聴可、価格は199ドル(約1万5800円)からで、アイパッドの半額以下の旨。7月半ばから出荷、日本での発売は未定の旨。

◇Google Nexus 7 tab (6月29日付け EE Times India)
→憶測が行き交うなか、GoogleがGoogle I/O developerイベントにて、'Nexus 7'を投入、最新世代のAndroid operating system(OS) 4.1, コード名"Jelly Bean"搭載の該7-インチタブレットは、台湾のAsustek ComputerがGoogle向けに製造している旨。

相次ぐ大きな打ち上げで競争意識に拍車がかかってくるということか、プロセッサ最大手、クアルコムからは増産に向けた新たな一手の匂いが醸し出されている。ファウンドリー業界との連携構成に動きが出てくる可能性を孕んでいる。

◇Report: Qualcomm wafer fab not ruled out (6月28日付け EE Times)
→Bloomberg発。世界最大のファブレス半導体メーカー、Qualcomm社(San Dieo)のCEO、Paul Jacobs氏が、同社の半導体供給を確保するために、ウェーハfabを所有したり多額のcashを投入することを除外していない旨。同社は、ファウンドリーパートナー、TSMCからの28-nm Snapdragonプロセッサの不足に困っており、この供給不足が第二および第三四半期の収益を制約するとしている旨。

アップルとサムスンの係争も、次の通りサムスンの一部機種について米国内での販売差し止め仮処分が、タブレット、そしてスマホと相次いで決定があり、世界の市場を巻き込む展開の序章となる空気を感じさせている。

◇サムスン製タブレット、米国内で販売差し止め仮処分−米連邦地裁 (6月28日付け 日経 電子版)
→米California州San Jose市の連邦地裁が26日、韓国サムスン電子に対し、同社製タブレット「ギャラクシータブ10.1」の米国内での販売を差し止める仮処分を下した旨。同端末が自社の特許やデザインを模倣したと主張する米アップルの請求を認めた形の旨。今回の仮処分は即時適用されるが、対象機種が限られるほか、販売店の在庫分の販売は続けられる旨。サムスンは対抗措置をとって、販売を続ける構えの旨。

◇ギャラクシータブ販売禁止仮処分、三星が抗告 (6月30日付け 韓国・東亜日報)
→三星電子が米裁判所のギャラクシータブ10.1の販売禁止仮処分決定に反発、裁判所に再審を要請の旨。

◇サムスン製スマホ販売差し止め、米地裁が仮処分−アップルの請求認める (6月30日付け 日経 電子版)
→米カリフォルニア州サンノゼ市の連邦地裁が29日、韓国サムスン電子に対し、同社製のスマートフォン「ギャラクシー・ネクサス」の米国内での販売を差し止める仮処分を決めた旨。自社製品の模倣と主張していた米アップルの請求を認めた旨。米連邦地裁は26日にも、同じくアンドロイドを搭載したサムスンのタブレット「ギャラクシータブ10.1」の米国内での販売を差し止める仮処分を決めている旨。


≪市場実態PickUp≫

マイクロンがエルピーダメモリを買収するという記事が次の通りリリースされて、時差の関係で日にちが前後するが早速の反応記事を呼んでいる。いつもながら確定情報をしっかり見定める必要がある。

【マイクロンのエルピーダ買収】

◇エルピーダ、米マイクロン傘下に、買収で合意−債権7割カット (6月29日付け 日経 電子版)
→米マイクロン・テクノロジーがエルピーダメモリを買収することで合意、約4200億円のエルピーダ向け債権のうち、約7割をカットする旨。マイクロンによる買収額は約2000億円になる見通し、エルピーダは更正計画の詳細を詰め、8月21日までに東京地裁に提出する旨。マイクロンは、スマートフォン向けに需要が拡大しているモバイル用DRAM増産のため、広島工場などに約1000億円を投資する計画、買収額と併せた支援総額は3000億円を見込む旨。

◇Micron to Acquire Elpida for 200 Billion Yen, Nikkei Reports (6月28日付け Bloomberg Businessweek)

我が国consumerエレクトロニクス最大手間の開発合意、そして続く3件は先端三次元実装技術に関係する内容の連携の取り組みである。

【様々な連携】

◇ソニーとパナソニック、有機ELパネル共同開発で合意 (6月25日付け 日経 電子版)
→ソニーとパナソニックが25日、テレビや大型ディスプレイ向け有機ELパネルとモジュールを共同で開発する契約を結んだと発表、両社がそれぞれ得意とする技術を持ち寄り、開発期間を短縮、コストを削減する旨。高性能で安価な製品を開発、有機ELで先行する韓国勢を追撃する構えの旨。2013年末までに量産技術の確立を目指す旨。

◇Dow Corning teams with SUSS on TSV bonding process (6月25日付け ELECTROIQ)
→材料サプライヤ、Dow Corningが、半導体プロセス処理toolサプライヤ、SUSS MicroTecと、high-volume先端半導体実装におけるthrough-silicon vias(TSV)用temporary bondingプロセス(材料および装置)についてコラボの旨。

◇Dow Corning and Suss cooperate on making 3-D TSV chips (6月26日付け EE Times)
→接着およびリリース両方の層から成るDow Corning(Midland, MI)のSi-ベース材料は、bi-layer spin coatingおよびbondingプロセスの簡単な処理に最適化され、SUSS MicroTec AG(Garching, Germany)の装置と一緒になった全体ソリューションは、標準の製造方法を用いる簡単なbondingの利点が得られ、via middleおよびinterposer TSV処理に向けた温度および化学的要求と両立するとともに、先端実装応用に必要となる室温de-bonding高速化が得られる。

◇ARM, HP and SK Hynix Join Hybrid Memory Cube Consortium.-Another Three Technology Leaders to Work on HMC Memory Tech (XBitLabs.com)
→stacked-memory技術を開発する業界グループ、Hybrid Memory Cube Consortiumに新たにARM Holdings, Hewlett-PackardおよびSK Hynixが加入、Altera, IBM, Micron Technology, Microsoft, Samsung ElectronicsおよびXilinxとともに取り組む旨。

米国での模造半導体の流入防止を図る動きが次の通りである。今まで徹底的な調査を行うのに制約があったのを取り除くよう求めている法制化である。

【模造半導体対策法案】

◇SIA Supports Legislation to Stop Counterfeit Chips from Entering U.S. (6月22日付け SIA Press Release)
→Semiconductor Industry Association(SIA)のpresident and CEO、Brian Toohey氏が、今週下院議員、Howard “Buck” McKeon (R-Calif.), Michael McCaul (R-Texas)およびWilliam Keating (D-Mass.)各氏により出された、国家安全、市民および重要インフラにリスクを及ぼす模造半導体の米国への流入を阻止する法案、H.R. 6012を支持するステートメントをリリースの旨。

◇Legislation seeks to relax restrictions on tracking fake chips (6月27日付け EE Times)
→該法案は、半導体メーカーの疑わしい模造半導体商標写真へのアクセスを制限する米国Customs and Border Protection(CBP)の政策を取り消すよう求めている旨。

中国市場に対峙する様々なスタンスを以下から感じている。中国に入り込んで市場密着、規模拡大を図る動きがある一方、欧米メーカーが組んで中国とは一線を画した新たなハイテク製造jobsを作り出していこうという動きと理解している。

【対中国スタンス】

◇Why TI does MCU designs in Shanghai (6月26日付け EE Times)
→Texas Instrumentsの上海にある最も新しいMCUデザインセンターにて、最初の現地設計に成るデバイスのtape outが最近上手くいった旨。中国でのMCU設計の考え方について。

◇U.S., European manufacturers join forces to compete with China (6月27日付け EE Times)
→この3月に発表されたスイスのelectronics manufacturing services(EMS)会社、Escatecと小さな有望contractメーカー、Surface Mount Technology社(APPLETON, Wis.)の連携。これ自体はエレクトロニクス業界で毎月発表される多くの取引の1つにすぎないが、別の角度から見ると、このEscatec-SMT契約は、ハイテク製造jobsを伴った競争力が緊密に繋がる米国と欧州経済を再生する上で重要事項となっている時点でのエレクトロニクス生産のグローバルな性質を強調している旨。

◇Marvell aims to be China chip leader (6月28日付け EE Times)
→ファブレス半導体メーカー、Marvell Technology(Santa Clara, Calif.)は、中国に移ってはいないが、"中国最大の半導体メーカー"になるという目標、すでに中国で1,900人を採用、その数は高まっており、目標のいくつかは射程内に入っている旨。


≪グローバル雑学王−208≫

原発事故の対応を巡る報道記事が連日あって、大きな論議を呼んでいるが、

『日本はなぜ世界で認められないのか −「国際感覚」のズレを読み解く』
 (柴山 哲也/著:平凡社新書 636) …2012年 4月13日 初版第一刷

より、海外メディアからのこの問題の見方に触れてみることにする。今後何十年ずっと向き合わなければならない問題であり、我が国内に留まらずグローバルな感覚を併せ持つことの重みを感じている。


第一章 海外メディアが映した"二度目の被曝"

◆国境を越えた原発事故
・東日本大震災とこれに連動した東京電力福島第一原発事故に直面、放射能を垂れ流す事態
 →「自力で収束できないなら、国際社会が代わっても事故を収束させるべき」(フランスの元大統領補佐官、ジャック・アタリ氏)
 →「原発事故は国境を越える。地球規模の行動が必要」(国連の潘基文[バンギムン]事務総長)
・フランスは日本以上の原発大国
 →フランス原発の安全性も疑問視され、国内に脱原発世論が高まるという焦り
・イタリア、ドイツと、ヨーロッパの脱原発の流れは福島事故以来、急速に広まる。
 →必ず排出される核廃棄物の捨て場がないことが、脱原発へ動かざるを得なかった事情
・外国人が日本を見る見方に中に、日本人は再び被曝したという二重性
 →日本人に対する同情の念
 →日本人の我慢強さや統制のとれた高い道徳心をしきりに称賛

◆フランス人が見た原爆投下と日本
・世界の国々で、フランスほど被爆国、日本への精神的な関心が高い国はない
 →米国に次いで世界二位の原発大国
・フランスのレジスタンスの時代を生き抜いたド・ゴール政権下の文部大臣、作家のアンドレ・マルロー氏
 →来日、学生たちに向かって演説「君たちが世界の未来を担う。アメリカ文明だけに目を向けるな」

◆安全神話を打ち消した海外メディア
・福島第一原発事故後、安全神話の過度な膨張に歯止めをかけた海外メディアの報道
・外国人記者たちは、カメラをかついですぐに被災地へ
 →欧米ジャーナリストの流儀
 →日本政府や東電発表に頼ることはなく、自国の政府などから独自に収集した事故のデータ
・日本の原子力行政の暗部に対しても海外メディアは遠慮なくメス

◆ツイッターが告げた危機
・震災直後からツイッターは情報の坩堝のように
 →3・11の深夜には福島第一原発炉がメルトダウンする危機を指摘する情報
・自己責任で情報を発信し受け取る。そんな個人主義がツイッターの良いところ
・近代の黎明期の新聞のようにツイッターは使われ、自由な言論と言葉が渦巻く広場に
・2011年9月19日、東京・新宿の明治公園に6万人、原発反対の国民集会
 →呼びかけは主としてツイッターやフェイスブック

◆安全神話形成とマスコミの責任
・1954年、ビキニ環礁の米国水爆実験、被曝したマグロ船、第五福竜丸
 →日本社会には反米感情
・1970年代、日本が高度成長、経済大国になるにつれ原発への批判意見は減少
・1970年代後半、原発に最も批判的だった朝日新聞でも推進派の勢力が増す
・マスコミと同様、大学でも東電マネーが流入、研究費を潤沢にもつ原発推進派が権力を握る
・原発は環境にも負荷がかからないクリーン・エネルギー、無尽蔵に作り出せる安全な電力
 →日本国民の多くが信じ込む
・今回の福島第一原発事故は、原発の安全神話を一掃
・ツイッター、フェイスブック、ユーチューブといった新しい市民メディアが海外メディア情報を貪欲に吸収
 →日本人の知的な底力

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