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マイクロソフトのタブレットに市場の響き、ブルータス お前もか!

前回の本欄に続く市場制覇を目指した打ち上げの1つのトドメの雰囲気を感じてしまうが、気を揉ませたマイクロソフトからのタブレットの発表が行われて、上記の通り議場で刺殺された共和制ローマ末期の独裁官、ガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の最期の言葉がタイトルに使われた記事も見られるほどである。スマートフォン、タブレットはじめモバイル機器のアップルを軸とする急拡大は、ついにマイクロソフトまで同社初めてとなるコンピュータハード製作に駆り立てているという感じ方である。

≪一連の発表≫

マイクロソフトが自前初めてのタブレットコンピュータを発表するらしいという予告が、次の通りの表わされ方となっている。

◇Microsoft iIs expected to introduce a tablet (6月16日付け EE Times)
→来る月曜、Microsoftが、同社Windows OS新バージョン搭載、自らの設計に成るタブレットコンピュータを投入する予定、自らコンピュータを作り出すのは同社37年の歴史上初めての旨。

◇マイクロソフト、あす謎の会見、浮上するか「最終兵器」(6月18日付け 日経 電子版)
→米マイクロソフトが14日、週明けの18日午後(日本時間早朝)に記者会見を開くとマスコミ各社に一斉メール発送、厳しいかん口令が敷かれ、内容は会見場所(ロスのどこか)を含め、一切、明かされていない旨。

さて、その発表が予想通り、その名の通り、表面(サーフェス)化してきて、以下の通りである。

◇マイクロソフト、自社でタブレット端末、アップルを追撃−日本での発売、名言避ける (6月19日付け 日経 電子版)
→米マイクロソフトが18日、Los Angelesで、自社ブランドのタブレット「サーフェス」を発表、次世代OS「Windows 8」を搭載、カバーの裏面にタッチキーボードを配し、ユーザの使い勝手を高めた旨。年内に発売、「iPad」で先行するアップルに対抗する旨。長年のパートナー企業と直接競合する分野で製品を投入するのは初めての旨。「サーフェスはPCであり、タブレットでもある」(Hollywoodで開かれた発表会にてCEO、Steve Ballmer氏)

シーザーの最期の言葉が、次のようにタイトルに引用されている。

◇Et tu, Ballmer, or M'soft's stab at tablets (6月19日付け EE Times)
→マイクロソフトが発表したタブレット端末「Surface」について。外観写真、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/MS%20surface%20x%20420.jpg

さて、このタブレットは次の2タイプがあり、タブレットでもあり、PCでもあるという上記のBallmer氏コメントを裏付けている。

◇Microsoft picks both ARM and Intel for tablet (6月19日付け EE Times)
→Microsoftが、アスペクト比16:9の10.6-インチタブレット、Surfaceを披露、次の2オプション:
 Windows RT版  →ARMチップセットおよびWindows RT
              厚さ9.3-mm、重量676 g
              kickstand内蔵
              初のvapor-deposited magnesiumケースのPC
              32-および64-Gbyte
              AppleのiPadに真っ向競合
 Intel-ベース版 →Intelの22-nm Ivy BridgeプロセッサおよびWindows 8
            厚さ13.5-mm、重量903 g
            64-および128-Gbytes

このタブレット発表にすぐ続く形で、スマートフォンOS「Windows Phone 8」が、次の通り打ち上げられている。Qualcommからは即座にこのOSにマッチ、対応するquad-coreプロセッサの確認発表があり、まさに間断ないモバイル機器分野の更新、進展の動きというものを慌ただしく受け止めている。

◇米マイクロソフト、スマホOS刷新、PC用と機能共有−年内に投入 (6月21日付け 日経 電子版)
→サンフランシスコ市内で開いた開発者向けイベントにて、米マイクロソフトが20日、スマートフォン向けのOSを刷新、「ウィンドウズフォン8」を年内に投入すると発表、PCやタブレットを動かす次世代OS「ウィンドウズ8」と基本機能を共有し、スマホ市場で先行するアップルやグーグルに対抗する旨。

◇Snapdragon S4 chips will run Windows Phone 8 smartphones-Qualcomm's quad-core processors already power smartphones such as HTC's One X and Samsung's Galaxy S III (6月22日付け Techworld (U.K.)/IDG News Service)
→Qualcomm発。同社のquad-core Snapdragon S4プロセッサが、Windows Phone 8スマートフォンに使われる旨。Microsoftは今週、Windows Phone 8 OSを発表、改善されたfeaturesの1つとしてmulticoreサポートを強調している旨。


≪市場実態PickUp≫

スーパーコンは1位でなければ、2位ではダメ、と話題の決め文句になったのもだいぶ時間が経った感じがするが、我が国「京」の世界一もIBM機に交替するタイミングを次の通り迎えている。そのIBM機の名前が「セコイア」、読み方を日本語にかえてたまたまなんとなく抜きつ抜かれつ、世知辛さを感じるところもあるが、この鬩ぎ合いこそエレクトロニクス業界のエネルギー、パワーの源泉であり、止まることがあってはならない。

【スパコン性能No.1】

◇IBM re-takes lead in Top 500 computers (6月18日付け EE Times)
→世界トップ500スーパーコン・リスト最新版にて、IBMが、150万個以上のカスタムPowerコアを収めた16.32 petaflopsシステム、Sequoiaで、首位を取り戻した旨。該システムは、他の3つのトップ10入りシステムと同じIBM BlueGene/Qアーキテクチャーに基づく旨。

◇スパコン京、2位に転落、米IBM「セコイア」が最速に (6月18日付け 日経 電子版)
→理化学研究所と富士通が共同開発中のスーパーコン「京」が、18日に欧米の大学などが発表したスパコンの性能ランキングで世界最速の座から陥落、2位になった旨。1位は米IBMの「セコイア(Sequoia)」、次の計算速度の比較の旨。
 セコイア →1京6324兆回/秒
 京    →1京 510兆回/秒

米マイクロンの四半期業績発表が、次の通り行われている。NANDフラッシュの安値で黒字に至らない一方、インテルとのNANDフラッシュ合弁では経営持ち分を上げる動きがとられている。

【マイクロン】

◇Micron Posts 4th Straight Loss as Memory-Chip Prices Fall-Micron remains unprofitable on depressed pricing for NAND flash (6月21日付け Bloomberg Businessweek)
→Micron Technology社(Boise, Idaho)の5月31日締め第三四半期販売高$2.17B、前年同期比1.5%増。DRAMs価格は上がったもののNANDフラッシュは低下、ともに数量は上がって販売高増、しかしながら4四半期連続の赤字の旨。

◇Micron still interested in Elpida despite more losses (6月21日付け EE Times)

◇Micron recasts Intel JV, includes emerging memory (6月21日付け EE Times)
→Micron Technology社(Boise, Idaho)が、IM Flash Singapore LLPにおけるIntelの18% interestおよびMicronのVirginiaウェーハfabにあるIM Flash Technologies LLCのassetsを買収する旨。
同時に、IntelとMicronの間の合弁、IM Flash Technologiesの事業範囲にある新規メモリを含めるよう拡大、Intelは今後のNANDフラッシュメモリ購入に対して$300Mを前払いする旨。

Google、NVIDIAなどワイヤレス通信技術関係の大規模な特許買収が、特に昨年から目立つ感じを受けているが、こんどはインテルが、下記の通りこれまた結構大規模な動きである。ワイヤレスを巡って足場固めを急ぐ、大手プレーヤー間の組んず解れつの様相が、激しさを増している。

【ワイヤレス特許】

◇Intel to pay $375M for 1,700 InterDigital patents (6月18日付け EE Times)
→Intel社が、intellectual property(IP)開発のInterDigital Communications社(King of Prussia, Pennsylvania)からワイヤレス通信分野の重要技術に関する"特許および特許応用"約1,700件の買収に合意、該市場席巻を巡る乱闘が今また激しくなっている旨。3G, LTEおよび802.11技術関連portfolioに対して$375Mを支払う旨。

中国の半導体業界の現状に直接触れて、今後のあり様を問いかける論説記事が以下の論点で見られている。

【中国の半導体業界】

◇Is China's fabless model sustainable? (6月19日付け EE Times)
→中国のIC業界についての論説。Intel, QualcommあるいはBroadcomに匹敵するようなグローバル市場に冠たる自前の超大手に依然欠ける現状について。

◇How long for China to sort out fabless strategy? (6月21日付け EE Times)
→中国に450超あるといわれるファブレス半導体メーカー、この事業で何年生き残れるのか、もっと重要なのはグローバル市場で伸びて力を発揮するのに何をやらなければならないか、という問いかけ記事。


≪グローバル雑学王−207≫

いろいろな切り口で我が国エレクトロニクス業界の"ガラパゴス化"が言われて久しい。ネット辞書によると、ガラパゴス諸島における独自の進化をとげた生体のように、技術やサービスなどが日本市場で独自の方向性へ進化し、世界標準から掛け離れてしまう現象、とある。すなわち、世界の最先端レベルの技術力を保有しながら、日本以外では全く普及していない日本の携帯電話やパソコン、カーナビの特異性が指摘される問題意識ではあるが、日本人だけが知らない「ニッポン」に注目して論じている新書、

『日本はなぜ世界で認められないのか −「国際感覚」のズレを読み解く』
 (柴山 哲也/著:平凡社新書 636) …2012年 4月13日 初版第一刷

をこれから読み進めていく。著者の柴山氏は次の通りであり、小生とほとんど同じ年次世代と理解している。
1970年、朝日新聞社に入社、『朝日ジャーナル』編集など、退社後、ハワイ大学客員研究員、京都女子大教授など歴任タイトルに続くサブフレーズが次のように表わされており、ジャーナリズムの世界に身を置いた経験の目を随所に感じるところがある。
−原発事故の対応、放置された戦争責任、捕鯨問題、北朝鮮拉致……。
世界とこんなにズレている「ジャパニーズ・スタンダード」。
上記の"ガラパゴス化"と結びつくかどうかは論議を呼ぶ可能性があると思うが、世界からの我々、我が国の見られ方、理解のされ方を本書を通して今一度考えてみる。
  

序章 「坂の上の雲」を超えて……

◆第三の開国
・第一の開国 …龍馬が活躍した幕末
 第二の開国 …GHQ指令による日本改造
 第三の開国 …閉鎖的といわれる日本システムのグローバル化へ向けて大改造を迫る外圧
・1970年代、1980年代の日本、年成長率8%前後 
 →今の中国と同レベルの高度経済成長を達成
・日本は1985年にGNPで米国を追い越して世界一の経済大国に
 →1980年代後半のバブル経済は戦後日本の絶頂期
・平和憲法の下、軍事や外交を米国に委ね、官民一体になってもっぱら経済活動に専念したのが日本
・冷戦システム崩壊後、米国では情報ハイウェイ構想が現実化、スーパーコンが大学や民間企業に開放
 →パソコンを生み出し、インターネット網が誕生
・日本は、経済の古いシステムに固執、グローバル化する世界の趨勢に乗り遅れた
・海外に駐在日本人だけが租界を作って、他の外国人や現地人と交わらないことが多々
 →欧米先進諸国は植民地時代からの経験、親密に現地に食い込んでいた
 →現在、中国がアフリカ諸国を味方に、積極的な国際外交を展開

◆龍馬への郷愁から脱する必要が
・1990年代、私(著者)はハワイのシンクタンク・東西センター(EWC)に
 →当時の日本は米国に安全保障を頼っていたが、米国は日本の経済力に頼るという、まさに日米同盟は緊密な相補関係に
・昨今の世界企業ランクと大学ランクの低迷ぶり
 →日本の「失われた二十年」の内実がはっきり
・日本にはびこった"二位でもよい精神"、どんどん内向きに
 →向上心や好奇心、外の世界への関心を失わせた
・自前で現代の歴史を作り出す知性と行動力が日本人には求められている
・本書は、著者が新聞記者として遭遇した数々の出来事、世界各地を取材し書き留めたノートから
 →知られざる日本の現代史の断面
・日本の失敗の原因
 →外の世界に目を閉ざして自己中心に振る舞う日本人の姿
 →日本人の国際感覚の欠如こそ、今日の日本の行き詰まりの最大の原因

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