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最先端および市場制覇を目指す打ち上げ、それを巡る応酬

半導体・エレクトロニクス業界の永続する活性化に欠かせない上記のタイトルの動きが、またまた喧しくなってきている。AppleのOSリニューアルが発表されたのに続いて、MicrosoftからはAppleに対抗してタブレットを打ち上げる動きが控えているようである。MPUの宿命のライバル、IntelとAMDの対抗するスタンスが、Heterogeneous System Architecture(HSA)結成を巡って今また垣間見えている。また、モバイル機器市場の拡大を左右する28-nm生産capacityをはじめTSMCの機敏な動きに、さらに拍車がかかっている。

≪最大手を取り巻く慌ただしい動き≫

Apple社の「世界開発者会議(WWDC[Worldwide Developer Conference])(6月12日:San Francisco)において、以下の打ち上げが行われている。

◇アップル、高精細マックブック発表、携帯OSも刷新 (6月12日付け 日経 電子版)
→アップルが開いた「世界開発者会議(WWDC)」(サンフランシスコ)にて、ノート型「マックブック」とパソコン向け基本OS、携帯端末向けOSの刷新をそれぞれ発表の旨。
・マックブック …最上位モデルには高精細「Retinaディスプレイ」
・パソコンOS …「OS X(テン)」
・携帯OS …最新「iOS6」を今秋に投入
・音声ガイド「Siri」…機能拡充、日米欧の自動車メーカーと連携、車への応用

早速にいろいろな評価が飛び交っているが、次のこきおろしトーンも見られている。

◇A recap of the 2012 WWDC: Once again, Apple does a forced obsolescence dirty deed (6月12日付け ELECTRONICS DESIGN NETWORK)
→いつものようにプレゼン前の予言の約半分がまったく間違っており、期待を裏切られたと酷評。

本欄をまとめようとしていたら、以下のMicrosoftの動きが飛び込んできている。

◇マイクロソフト、タブレット参入か、アップルに対抗−米メディア報道 (6月16日付け 日経 電子版)
→マイクロソフトが、タブレット型多機能端末のハードウェア開発に乗り出す可能性があると、New York Timesなどが15日報じた旨。18日にLos Angelesで開くイベントで詳細を発表する予定の旨。マイクロソフトは、今秋投入するパソコン・タブレット端末向け次世代OS「Windows 8」と組み合わせ、端末を提供するとみられる旨。

グラフィックスが端緒のHeterogeneous System Architecture(HSA)を巡る仲間内の団体結成が発表されたところに、以下のように永遠に続くIntelとAMDの対抗が再燃している雰囲気である。

◇AMD, ARM, Imagination, TI, MediaTek form HSA group (6月12日付け EE Times)
→AMD社およびcollaborators数社が、AMD Fusion Developer Summit(Bellevue, Washington)にて、Heterogeneous System Architecture(HSA) Foundationの結成を発表の旨。

◇Chip giants unite to form HSA Foundation (6月13日付け EE Times India)
→AMD, ARM, Imagination, Texas InstrumentsおよびMediaTekが、非営利コンソーシアム、Heterogeneous System Architecture(HSA) Foundationの結成を発表、heterogeneous computingへのオープン&標準ベースのアプローチを定めて推進していく旨。

◇Intel not joining graphics chip alliance-Intel stays out of group developing AMD chip architecture (6月13日付け CNET/Business Tech blog)
→Intelが、Heterogeneous System Architecture(HSA) Foundationの設立には参加しない意向、OpenCL initiativeのサポートを優先する旨。HSAは、元々AMDが作り出したグラフィックス半導体アーキテクチャーであり、該foundationはソフトウェア開発者がCPUおよびGPUのco-processors利用を容易にすることを目指している旨。

◇A Challenge to Intel's Dominance in Chips (6月14日付け Bloomberg Businessweek)

TSMCの動きが、現状の半導体・エレクトロニクス業界の様々な障壁、問題への対応インパクトを内包している、と感じざるを得ない。すなわち450-mm fab、Renesas Electronics生産連携、そしてこのところずっと注目のモバイル機器用プロセッサの28-nm供給である。28-nmについては年末には解消される見方が打ち出されている。

◇Report: Taiwan approves TSMC's 450-mm fab plan (6月11日付け EE Times)
→Reuters発。台湾政府が、TSMCからの2014年始めに台湾中部に450-mmウェーハfabを建設する提案を承認、Council for Economic Planning and Developmentが認めた該計画は、総投資$8B〜$10Bの見積もりであるが、2019年に約NT$200B(約$6.7B)相当のウェーハを生産している予定の旨。

◇TSMC sees tech challenge in 450mm wafer race (6月12日付け Reuters)
→TSMCのchairman、Morris Chang氏。450-mmウェーハ製造は技術的困難に向こう5年にわたって向き合うことになると見る旨。一方、TSMCは2017年までRenesas Electronics向けの相当量の半導体生産を見込んでいる旨。

◇Taiwan government to buy land for TSMC 18-inch plant, says paper (6月12日付け DIGITIMES)

◇Qualcomm CEO: 28nm chip supply to straighten out by year's end (6月13日付け PCPro.co.uk (U.K.)/Reuters)
→Qualcommのchairman and CEO、Paul Jacobs氏。同社は28-nm featuresで製造するSnapdragonプロセッサの数量を増やすようTSMCと協働しており、TSMCでのcapacityの制約から今年供給不足となっているが、年末近くにはこの不足は解消される見込みの旨。

◇TSMC reiterates supply of 28nm chips to come close to demand in 4Q12 (6月13日付け DIGITIMES)

TSMCの28-nm供給については、ファウンドリーモデルのそもそもを問いかける論調が今また以下の通り表わされている。

◇Could looming chip supply issues derail the mobile market?-Does the foundry model create IC supply issues? (6月14日付け VentureBeat)
→業界分析記事。TSMCの28-nm featuresを擁する半導体生産のcapacity不足が、Nvidia, Qualcommなどファブレス半導体メーカーに供給問題を起こしている一方、自前のウェーハfab工場に非常に大きな投資を行っているIntelおよびSamsung Electronicsは、モバイル用半導体の書き入れ時に成功を収めている旨。半導体業界におけるSiファウンドリーモデルの実行可能性が続くかどうか問いかけている旨。


≪市場実態PickUp≫

最先端、市場制覇の喧しい動きの一方で、業績が悪化しているNokiaおよびRenesas Electronicsの事業再構築が進められている。

【再構築に向けて】

◇Nokia to cut 10,000 jobs, divest assets (6月14日付け EE Times)
→Nokia社が木曜14日、同社携帯電話部門ヘッドなど3人のsenior executivesを入れ替える旨。また、利益性を回復、Apple社およびSamsung Electronics Co. Ltd.などに対する競合立ち位置を改善するべく、10,000人までの従業員削減を行う計画の旨。

◇Struggling Nokia announces 10,000 job cuts (6月15日付け EE Times India)
→苦境にあるhandsetメーカー、Nokiaが、グローバルに10,000 jobsを削減、同社製造facilitiesのいくつかを閉鎖する計画を発表、job削減は2013年末までに完了予定の旨。

◇ルネサス支援で1000億円融資、NECなど3社と4行 (6月15日付け 日経 電子版)
→業績が悪化しているルネサスエレクトロニクスに対し、主要株主のNECと日立製作所、三菱電機の3社が金融支援する方向で最終調整に入った旨。
三菱東京UFJ銀行など4行と合わせ、総額1000億円を融資する旨。難航していた資金支援の枠組みが固まったことで、最大1万4000人の従業員削減と工場半減を柱とする再建策が動き出す旨。

レアアースを巡る中国との軋轢が問題になっていたが、代替技術の開発、実施が以下の通り、驚くほどのスピード感で進められている。まさに解決できない問題はないとの信念、パワーが蘇る雰囲気を感じさせている。

【脱レアアース】

◇レアアース輸入が急減、使用削減技術進む、中国産7割減 (6月14日付け 日経 電子版)
→レアアース(希土類)の輸入が急減、1〜4月の中国からの輸入量は前年同期比約7割減少、日本企業が在庫を確保しているのに加え、「脱レアアース」に向けた技術開発が進み、使用量が減退しているための旨。該開発技術は一段と普及する見通し、価格の高騰を回避できる可能性が出てきた旨。

◇Research project to avoid rare-earth metals for electric motors (6月15日付け EE Times)
→Cobham Technical Servicesが率い、Jaguar Land-Roverおよび技術consultancy、Ricardo UKがパートナーである3年リサーチプロジェクト、“Rapid Design and Development of a Switched Reluctance Traction Motor”は、高価な磁気材料の使用を除く次世代電気自動車モーターの設計に取り組む狙いの旨。

中国の急拡大するタブレット市場に台湾のデザインハウスがなかなか入れていないという次の状況である。中国市場独特の自己完結の人情というものを感じるところがある。

【自前のSoC】

◇China market: Local chipmakers dominate tablet PC chip segment (6月14日付け DIGITIMES)
→今年20-30M台の出荷が見込まれる中国の活況のタブレットPCs市場、これに向けたSoCソリューション市場が、Rockchip TechnologyおよびAllwinner Technologyなど中国のIC design housesが現在席巻している旨。台湾勢は大きく入れておらず、VIA Technologiesはタブレット用CPUソリューションを提示しているものの、PCアーキテクチャーに寄り過ぎの嫌いの旨。

AMDがセキュリティについてARMの技術供与をついに受けるという以下の動きであるが、両社は上記のHeterogeneous System Architecture(HSA)のメンバー同士という間柄ともなっている。

【AMDのARM技術導入】

◇AMD licences ARM technology (6月14日付け EE Times India)
→Intelのライバル、AMDおよびARMが、ついにlicensing契約調印、AMDが今後のAPUs(accelerated processing units)にARMのセキュリティ技術(ARM TrustZoneRテクノロジ…高性能コンピューティング・プラットフォーム上の多数のアプリケーション[安全な支払い、デジタル著作権管理(DRM)、Webベースのサービスなど]に対する、システム全体のセキュリティのアプローチ)を盛り込んでいく旨。


≪グローバル雑学王−206≫

チューリッヒからニューヨークに飛び、ロサンゼルス乗り継ぎで羽田に戻り、それで終わるのではなく、クルマで出発した茨城空港に向かうという完全な世界一周の旅、締めて計91時間20分18秒とのこと。ニューヨークの街中、ロサンゼルス空港の生々しい近況も入っていて、

『80時間世界一周 ・・・格安航空乗りまくり悶絶ルポ』 (近兼 拓史/著:扶桑社新書 112)  
 …2012年 3月 1日 初版第一刷発行

より、本当に簡潔なアップデートを楽しませていただいたという読後感である。本書は今回で読み納めであるが、こんどは世界一周とはいかなくても自分でできる範囲のアップデートを行いたい気分が強まっている。


第6章 トラブル・イン・USA!

◆アメリカン航空係員にテロリストの疑いをかけられた!
・ニューヨーク行きのエアベルリン航空便は、アメリカン航空との共同運行便
 →チェックインはアメリカン航空のカウンター
 →カウンター内の客室乗務員を兼ねた係員、これまで利用した航空会社の客室乗務員のお母さん?と思えるような年齢
・現在日本人がアメリカへ観光で入国する場合
 →ビザは必要ないが、実質的に入国料と悪名の高いESTA(電子渡航認証システム)の認証が必要
  …14ドル(約1150円)の手数料支払いが必要
・この大事な番号入りレシートを、昨夜チューリッヒ駅前職務質問の荷物検査時になくしてしまったらしい
 →セキュリティの大男が2人現れた
 →大国アメリカ、テロではなくテロの影に怯えている……。そう感じた一幕。

◆快適なはずの機内で体に異変が!
・チューリッヒからニューヨークまでは11時間のフライト
 →あまりに長時間のフライトの連続に、低気圧で体から悲鳴
・現地時間午後1時10分、ニューヨークJFK空港に到着

◆アメリカおなじみのチップ強要への違和感
・入国のパスポートコントロールの大混雑、まさかの1時間30分ものタイムロス
 →年々強化され時間を食うだけの出入国手続審査
・世界を回ってみて強く感じる、アメリカ人のサービスに対するチップ強要の異様さ
 →過剰なテロ対策とチップ社会は、アメリカだけの悪しき文化

◆タイムズスクエアに見る世界企業勢力図
・お目当てのブロードウェーの中心地、タイムズスクエアに到着、午後4時5分
 →看板の多くが、中国、韓国系企業のもの
・一番の見応え、オープンしたばかり、若い女性で大賑わいのフォーエバー21
 →スタジオとストリートカメラの映像が連動する不思議な映像
 →多くの人々がスマホのカメラで記念撮影
・定番のおみやげショップ「グランドスラム」でニューヨークみやげを物色
・エンタテインメントとスポーツは、アメリカ人の生活から切り離せない
 →幾度となく世界一の栄冠を勝ち取ってくれるヤンキースは街のプライドそのもの

◆日本のアップルストアも24時間営業にして!
・iCloudの発表で連日大賑わいのセントラルパーク前、アップルストア
 →次のイノベーションを感じに足を運ぶことは、いつも期待でワクワク
 →どうしていつも天才は先に逝き、のちに真価が評価されるのか
・このニューヨークのアップルストアは、24時間営業
 →生活の一部、携帯やスマホの営業店が24時間営業だと、どれほど助かるか

◆突然の豪雨と渋滞で大ピンチ!
・アップルストアを出たら、外は信じられないような豪雨
 →手を上げているだけでは、正規のタクシーは絶対につかまらない
・イエローキャブとは別に、シティコミューターとして黒塗りのハイヤーが多数運行
 →タクシーより多少割高、先に値段を決めて乗り込むのでボッタクリに遭う心配がない
 →結局100ドルで行けた
 →しかし、フライト時間を考えると絶望的な時間に

◆デルタ航空カウンターで裏技発動!
・離陸43分前の午後8時17分、デルタ航空のカウンターに到着
 →アメリカ式の危機を乗り切る方法を思い出す!
 →時としてクレーム客に対し優遇措置を取ることあり
 →結果は吉!その場で即搭乗券を発券、セキュリティチェックの最前列に案内へ。
・良くも悪くも刺激がいっぱいの街、ニューヨーク!

◆LAでの乗り継ぎという最後の難関をクリアできるか!?
・今回の旅の最大の難関
 →ロサンゼルス行きの便から、東京羽田行き便への乗り継ぎ時間
 →航空旅客法上ギリギリの便間乗り継ぎ時間40分
・泥のように眠っていたニューヨークからロサンゼルスの6時間ほど
 →スムースな着陸で無事ロサンゼルス国際空港に到着
 →中ロの旅客機とは完全に次元が違う
・ロサンゼルス国際空港は現在大改装中。あちこちに仮設のゲートや工事現場。
 →なんとか無事列の最後に並び飛行機に乗り込めた

◆80時間世界一周、見事達成!
・これでどうにか予定通り日本に帰れる!
・数時間ごとに国境を越える度、新たな文化が絵本のページをめくるように
・何度も訪れたことがある国なのに、国同士を比較することで長所短所ともに新たな発見
・ほぼ定刻通りに搭乗便は羽田空港へ到着
 →スタートから87時間26分45秒!…今回の世界一周にかかった時間
・4日に満たない時間、わずか13万円で人生観を変える世界一周の旅は可能

◆そして、再び茨城空港へ
・茨城空港を発ったのに羽田空港に着いたことが妙に惜しく、一旦都内の事務所に戻り、クルマを出して茨城空港へ向かうことに
・ここまでの時間は91時間20分18秒
・その後、お台場の大江戸温泉物語へ、5日ぶりの湯船


≪あとがき≫
・壮大なようなチッポケなような、よくわからない小さな小さな大冒険
 →今後の旅のきっかけや、旅のお役に立てることがあれば幸い
・世界は広くオモシロい
 →驚きがあり、満ち溢れる常識をひっくり返されるような大発見

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