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伸び基調が見える3月の世界半導体販売高、一方、目まぐるしい動き

米SIAから発表された3月の世界半導体販売高は、前年同月比では7.9%減と及ばないものの前月比では1.5%増と小幅ながらも全市場地域がプラスとなっている。半導体各社の業績発表も、マイナスサイクルの底は打ったとする見方がいくつかまとまって出ており、今後への期待感が表われている。一方、エルピーダ支援の方向性が見えてきているとともに、Nokiaが長年維持した携帯電話首位の座をSamsungに譲っており、従来の日欧の大手には特に目まぐるしい動きとなっている現時点である。

≪3月の世界半導体販売高および今後に関連する動き≫

米SIAからの今回の発表は次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○半導体販売高、第一四半期末ですべての地域に伸び、強まる見通し…5月1日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2012年3月の世界半導体販売高が$23.3 billionで、前月の$23.0 billionから1.5%増加、そして2011年3月の$25.3 billionからは7.9%の減少と発表した。2012年第一四半期の販売高は$69.9 billionで、前四半期からは2.2%の減少、前年、2011年の第一四半期の$75.9 billionに対しては7.9%の減少となる。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「3月は前月比の伸びがすべての地域にわたって、特に欧州および日本で見られて、元気づけられている。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「季節的な穏やかな伸びが第二四半期に引き続き、2012年が進むにつれ弾みがつくものと見ている。しかしながら、グローバルな経済伸長予測が改善している一方、マクロ経済的および地政学的な不安定さが残っている。」

3月の欧州の販売高は3.8%伸び、日本は1.2%増加している。マクロ経済状態が改善し、広範囲の応用にわたって半導体使用量が増えているのに加えて、2011年のタイ洪水に関連するsupply chain回復が、引き続き見通しの改善を引っ張っている。

※3月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/March%202012_Charts_Graph.pdf
★★★↑↑↑↑↑

市場地域別のデータは以下の通り、前月比ではすべてがプラスで今後への期待をもたせている。

 【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Mar 2011
Feb 2012
Mar 2012
前年同月比
前月比
Americas
4.73
4.41
4.46
-5.7
1.0
Europe
3.34
2.72
2.83
-15.4
3.8
Japan
3.61
3.38
3.42
-5.2
1.2
Asia Pacific
13.63
12.44
12.60
-7.6
1.3
$25.31 B
$22.95 B
$23.31 B
-7.9 %
1.5 %

各調査会社の本年の伸長予測が出揃って、一桁の真ん中前後のプラスというところである。

◇Global semiconductor market forecast 2012: Gartner; 4%, iSuppli; 4.3%, IDC; 6-7% (4月30日付け EE Herald)
→出揃った本年の半導体市場伸長予測。

今後の伸びを見込む半導体各社からの業績発表が、いくつかまとまって以下の通りである。

◇Financial reports point to better Q2 for semis (5月1日付け EE Times)
→ここ数日にわたり、NXP Semiconductors NV, Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. Ltd.(TSMC)およびMaxim Integrated Products社など半導体メーカー、並びにKLA-Tencor社, Veeco Instruments社およびTeradyne社などのサプライヤがすべて、次四半期は業績が改善すると見ている旨。

◇ON Semi, Atmel say worst of downturn over (5月2日付け EE Times)
→ON Semiconductor社(Phoenix)の第一四半期販売高$744.4M、前四半期比3%減、前年同期比14%減。
Atmel社(San Jose, Calif.)の第一四半期販売高$357.8M、前四半期比7%減、前年同期比22%減。
両社、半導体業界downサイクルの底は過ぎたとの見方の旨。

TSMCの28-nm供給対応の不足をこのところ取り上げているが、むしろ需要サイドの急増を読めていなかったとする以下の見方が出されている。先端モバイル機器の立ち上がりと数量が急過ぎて、事前の合わせと伴なうcapacity対応の必要性が前面に出てきている。半導体市場対応の今後に投じられた大きな一石という受け止めである。

◇TSMC eyeing advanced process chip orders from Apple (5月2日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCが、20-nm生産を前倒しする計画、今後のAppleの機器に向けたCPU受注を積極的に獲得しようとしていると見る旨。Qualcomm, Nvidia, Broadcom, TIおよびAMDからの受注について、TSMCは現在、28-nm半導体需要の70%以下しか供給できておらず、20-nm技術への投資を早めることが、Appleなどポテンシャル顧客との前もってのコラボを行って需要を満たす十分なcapacityを確保することになるという期待の旨。

◇28nm represents fundamental shift in foundry industry (5月3日付け DIGITIMES)
→TSMCの28-nmプロセス展開について供給難と歩留まり問題に最近焦点が当たっているが、実際に鍵になるのは供給関連ではなく、先端プロセスを求める需要サイドに起きている根本的な変化であることが明らかになってきている旨。


≪市場実態PickUp≫

エルピーダメモリの支援について、以下の連日の動きを経て米マイクロン・テクノロジーに決まりそうな現時点となっている。DRAM一本でいく最後の砦に市場の時間軸の問題があったことは否めず、上記のTSMCの対応にあるように最先端の市場需要に合わせた開発・生産対応と製品展開が今後一層問われていくのはいずこも同じということと受け止めている。

【エルピーダ関係アップデート】

◇エルピーダ・広島工場、中国勢が買収案、DRAMに的 (5月1日付け 日経 電子版)
→会社更生手続き中のエルピーダメモリの支援企業を決める第2次入札が5月初旬に開かれる旨。米韓日の半導体大手が応札に動く中、割って入ったのが中国ファンド。買収後、中国半導体大手へ中核の広島工場(広島県東広島市)を買い取らせる案を検討している旨。今まで手薄だったスマートフォンなどに使うDRAM生産を自前で手がけたい中国政府の思惑もある模様、エルピーダの行方は世界の半導体業界の勢力図を塗り替えそうな旨。

◇Elpida bondholders threaten to thwart auction: filing (5月2日付け Reuters)
→Elpida Memory社の社債券所有者のあるグループが、報道されている売却価格1500億円($1.9B)に管財人が合意するのであれば、同社assetsの該競売に反対すると攻勢をかけている旨。

◇Micron likely winner in bid for Japan's Elpida-NHK (5月4日付け Reuters)
→NHK、金曜4日発。Micron Technologyが、Elpida Memory社についての入札を獲得する情勢の旨。金曜に締めた入札最終ラウンドで、Micronは、約2000億円($2.5B)を提示、Elpidaの広島工場および従業員の維持を約した旨。MicronとElpidaは、今月にも契約を最終確定、8月までに再建計画を裁判所に提出する運びの旨。

◇エルピーダを2千億円で買収へ…米マイクロン (5月5日付け YOMIURI ONLINE)
→会社更生法下で再建を目指している半導体メモリ(DRAM)世界3位のエルピーダメモリを、4位の米マイクロン・テクノロジーが2000億円超を投じて買収する方向となった旨。今年2月の破綻前から包括提携を目指していた日米連合がようやく実現、DRAM市場の占有率で2位に浮上、サムスン電子など韓国勢に対抗する旨。関係者によると、4日の2次入札でライバルの韓国のSKハイニックスは応札を断念、米中のファンド連合も条件面で劣ったため、エルピーダの管財人は週明けの7日以降に優先交渉権をマイクロンに与え、詰めの協議に入る旨。

◇エルピーダ、米マイクロンが買収へ、3000億円支援 (5月6日付け 日経 電子版)
→会社更生手続き中のエルピーダメモリが5日、米半導体大手、マイクロン・テクノロジーを支援企業にする方針を固めた旨。マイクロンによるエルピーダの買収額は2000億円超、設備投資の肩代わり分を含めた支援総額は3000億円弱になる見通しの旨。

Nokiaの14年に及ぶ携帯電話市場の首位の座が、Samsungに明け渡されている。内訳、中身をよく確認する必要があるが、いずれにせよ主役交代を印象づける記事内容となっている。

【Nokiaの首位の座転落】

◇Samsung leads Nokia in cellphone revenue ranking (4月30日付け EE Times)
→IC Insights発。Samsungの2011年携帯電話販売高が、47%増の$48.2B、売上げでは第1位になる一方、Nokiaは出荷数量では第1位を守ったが、売上げの方は14%減の$33.3Bの旨。
・≪表≫ 携帯電話売上げトップ10−2009〜2011年 …出荷数量順位
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20120430pcICinsightsCellPhoneTable.jpg
・≪グラフ≫ 携帯電話出荷数量推移&予測−2003〜2012年
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20120430pcICinsightsCellPhoneFigure.jpg

◇Samsung ends Nokia's 14-year reign (4月30日付け EE Times India)
→Strategy Analytics発。Nokiaの10年余りに及ぶ携帯電話市場の首位の座にSamsung Electronicsがついに終止符、14年のtop spot謳歌を経て、Nokiaが1990年代以降初めてhandset数量No.1の座をSamsungに譲った旨。
またSamsungは、世界のスマートフォン販売でもトップ、Appleを上回って2012年第一四半期31%もの市場シェアを獲得の旨。
・2012年第一四半期handset出荷データ
http://www.eetindia.co.in/STATIC/ARTICLE_IMAGES/201204/EEIOL_2012APR30_MFG_EMS_NT_02.jpg

◇スマホ世界シェア、サムスンが首位奪還−1〜3月、アップルと合わせ5割超 (5月2日付け 日経 電子版)
→IDC発。1〜3月期の世界のスマートフォン出荷台数が、前年同期比43%増の1億4490万台、サムスン電子とアップルが好調、両社のシェア合計が四半期ベースで初めて5割を超えた旨。
従来型製品を含む携帯全体の出荷台数は前年同期比2%減の3億9840万台、スマホが追い風となったサムスンのシェアが23.5%、初めて首位に躍り出た旨。

Royal Philips傘下から分離して時間が経つNXP Semiconductorsであるが、かつての色合いを大きく変えて中国市場密着のコメントが出されている。

【Philipsからの変貌】

◇NXP today: 'Practically a Chinese company' (4月30日付け EE Times)
→NXP SemiconductorsのCEO、Rick Clemmer氏。NXPは他のどの国よりも中国で儲かっており、そのうえ中国では8,000人の人々を採用している旨。
「自分たちが依然オランダの会社である理由はただ一つ、オランダでは減税措置を享受できるからだ。」

実態市場にしっかり付いて合わせていかざるを得ないという論調が続いてしまうが、トドメとして我が国、我々にそれこそ求められる意識改革と感じる以下の内容である。先鞭はつけているものの収穫期には活躍できていない姿がここにもという表われ方と思う。

【我が国の大きな課題】 

◇特許あるのに事業化苦戦、日本企業、燃料電池や情報技術 (5月1日付け 朝日新聞デジタル)
→特許は押さえているのに、実際の海外ビジネスでは苦戦――。特許庁が、日本や米国などに出願された特許のうち、エネルギーや情報技術といった今後成長が見込まれる分野を調べたところ、こんな実態が浮かび上がった旨。 日本や米国、欧州(20カ国)、中国、韓国の特許当局へ1980年から2010年に出された特許のうち、市場が拡大するとみられる燃料電池や炭素材料、携帯電話など9分野を選んで調べたところ、そのうち8分野で日本企業の出願件数はトップで、高い技術力があることが裏付けられた旨。


≪グローバル雑学王−200≫

このところ数年ご無沙汰になっている海外であるが、一挙にアップデートで きる衝動に駆られて、200回目の節目を迎えるこのコーナーの今回からは、

『80時間世界一周 ・・・格安航空乗りまくり悶絶ルポ』 (近兼 拓史/著:扶桑社新書 112)  
 …2012年 3月 1日 初版第一刷発行

を読み通していくこととする。1962年生まれと小生より一回り半近く若い世代の著者ならではの以下の世界一周の旅程&条件ではある。いろいろ予期せぬ出来事に見舞われて早く日本に帰りたいという気持ちに襲われるものの、しばらく時間が経つと無性にまた行きたくなる、そんな海外の旅は変わることないものと思う。

<START> 日本・茨城 →中国・上海 
             →ロシア・モスクワ 
             →ドイツ・デュッセルドルフ
             →スイス・チューリッヒ
             →アメリカ・ニューヨーク 
             →ロサンゼルス   →日本・羽田<GOAL!>
80時間、予算10万円台で世界一周


《はじめに》

・(著者は)突拍子もない企画を考えて世界中を飛び回って体験、記事や番組にするのが仕事
・本書は、「80時間世界一周」という超速旅行を実行したドタバタルポ
・今なら世界一周旅行の方が、北海道一周旅行より安いかも
 →世界不況に価格のグローバル化と理由はいろいろ
 →本当にヘンテコな時代に
・本来の価値以下のプライスタグを下げられたお値打ち品を見逃さずに手に入れ、存分に楽しむに限る
・激安で超速の旅、つかの間の世界一周旅行気分を!

第1章 チケット手配はジグソーパズル! ≪前半≫

◆子供の頃に夢見た未来はまだ来ない
・1970年代に幼少期を過ごしたボク(著者)
 →アポロ11号が本当に月に着陸
 →あれから40年以上、月旅行はどんどん非現実な話に

◆『兼高かおる世界の旅』から『八十日間世界一周』へ
・子供の頃、日曜日の朝、TBS系の長寿番組『兼高かおる世界の旅』を毎週
 →メインテーマ曲が「80日間世界一周」
・今から140年前、フランスの小説家、ジュール・ヴェルヌが、大冒険小説『八十日間世界一周』を発表
 →蒸気機関車での旅
 →「いつか人間は80時間で世界一周できるようになるはず」と予言

◆テロと不景気と超円高のトリプルパンチがLCCを生んだ
・数年前までと料金が劇的に変わっている現在の海外旅行
・2008年中、わずか半年間で世界各国24社もの航空会社がバタバタと倒産するという悲惨な記録
・LCC(Low Cost Carrier)と呼ばれる格安航空会社が、雨後のタケノコのようにポコポコと各国で誕生
・2010年7月より春秋航空が上海〜茨城間、座席限定ながら片道4000円
・子供の頃やり残していた夢、「今こそ80時間での世界一周!」

◆そもそも旅客機が飛ぶのに、どれほど費用がかかるのか?
・現在、国際線の主流機は、満席にしやすい中型機のボーイング737へ
 →さらに燃費が2割も良いエアバスへと機種変更される流れ
・経済性は技術力に勝る武器
 →航空業界で起こっているまさにその通りのこと
・現在、人類を超音速の世界から遠ざけているのは、お金の壁
 →科学の壁以上に高く険しい強敵
・人間の移動時間短縮、昔から強烈な費用との戦いでも

◆世界一周旅行にかかる費用と時間の相場はどのくらい?
・世界の正規大手航空会社は、スターアライアンス、ワンワールド、スカイチームのいずれかに所属
 →各チーム内の提携各社の便を乗り継ぐ「RTW」(世界一周チケット)
 →正規料金、チケット最安価格が31万3600円、最小旅行日数が10日以上という取り決め
 →ざっと60万円が旅の標準料金か?
・旅行会社のチラシやネットの激安航空券のページ
 …航空会社の"イールドマネジメント"という計算方式によるもの
 →上手く組み合わせて、激安で世界一周ができないものか?

◆LCCのチケット入手方法は?
 →各国のLCCのホームページ、ネットで検索可
・A社のチケットが激安の日でも、次に乗り継ぐB社のチケットが高ければ、トータルで割高に
 →まるでジグソーパズルの様相
・いろいろ計算
 →瞬間最大の激安価格で乗り継げば、世界一周を最安10万円前後で旅できる

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