米国だけ伸びた2月半導体販売高、際立つ優勝劣敗の市場模様
米SIAから2月の世界半導体販売高が発表され、前月比1.3%減、前年同月比7.3%減となっている。プラスの伸びを示しているのは、前月比の米国地域だけであり、回復基調の米国経済に期待をかけて本年も伸びを見込んでいる米SIAのコメントである。IC Insightsから昨年、2011年の半導体ベンダーランキング・トップ25(ファウンドリーを入れた形)がリリースされているが、ここでも前年比伸長率の数字の上では、大きな変動の明暗が分かれる形になっており、ますますグローバル市場密着が必要な情勢を受け止めている。
≪2月の世界半導体販売高≫
米SIAからの発表、次の通りである。
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○2月のグローバル半導体販売高は$22.9 Billion-Americas地域が前月比1.1%の伸び …4月3日付けSIAプレスリリース
半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2012年2月の世界半導体販売高が$22.9 billionで前月の$23.2 billionから1.3%減少と発表した。2月の半導体販売高は前年同月比7.3%減少している一方、Americas地域は前月比1.1%増加している。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。
「米国が3ヶ月連続で雇用が増しており、米国経済回復の弾みを示しているのは元気づけられる。しかしながら、欧州およびアジアで経済低迷が続く状況があり、グローバルな展開模様はしっかり見定める必要がある。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「全体として、米国のマクロ経済要因の改善とAmericas地域での半導体販売高の前月比の伸びが合わさって、2012年の伸びには楽観的な見方を請け合うところがある。」
マクロ経済の回復が続くなか、今年の半導体販売高は一つには末端市場に需要を引っ張る力があって改善が見込まれる。mobility, sensingおよびエネルギー効率において機能性を改善した製品が市場投入されてきており、半導体販売高は長期的な伸びの道筋に引き続き沿っていくことが見込まれる。
※2月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒http://www.sia-online.org/clientuploads/Feb2012_chartsgraph.pdf
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地域別のデータは、次のようになっており、プラスの動きは前月比のAmericas地域だけという状況である。
市場地域 | Feb 2011 | Jan 2012 | Feb 2012 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 4.61 | 4.31 | 4.36 | -5.4 | 1.1 |
Europe | 3.25 | 2.77 | 2.71 | -16.4 | -1.9 |
Japan | 3.60 | 3.44 | 3.38 | -6.1 | -1.8 |
Asia Pacific | 13.22 | 12.66 | 12.43 | -6.0 | -1.8 |
計 | $24.68 B | $23.18 B | $22.88 B | -7.3 % | -1.3 % |
米SIA発表を受けた各紙・誌のタイトルである。
◇Chip sales slipped 1.3% in February, says SIA(4月3日付け EE Times)
◇Global IC sales declined in February to $22.9B (4月3日付け Fox Business/Dow Jones Newswires)
米SIA発表にあるように、今後のグローバル市場の展開に目が離せない状況ということに尽きると思うが、IC Insightsによる2011年世界半導体市場トップ25ランキングデータを見ると、グローバルな市場や連携の波への乗り加減が販売高そして伸び率を非常に大きく左右している結果がすでに映し出されている。
◇Top 25 semiconductor company rankings reveal big winners, big losers (4月5日付け ELECTROIQ)
→IC InsightsのStrategic Reviews Database発。2011年の世界半導体市場(ICsおよびOSDs[Optoelectronics, sensors, and discretes])は2%の伸び、下記トップ25ランキングデータが示すように数社で大きな変動が見られる旨。ON Semiconductorは、三洋電・半導体事業の買収が一つにあって、初めてのトップ25入り、Qualcommは、スマートフォン出荷数量が昨年73%増えて半導体販売高38%増となっている旨。
◇On Semi, Qualcomm, Infineon shine in chip rankings (4月6日付け EE Times)
→IC Insightsがまとめた2011年半導体販売高・ベンダーランキング。
・≪表≫ トップ25ベンダーの伸び率順位
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/20120406pcICinsightsRankings416.jpg
25社のうち、伸び率トップ5が上から順に
ON Semi(米) Qualcomm(米) Intel(米) Nvidia(米) TSMC(台)
となっている一方、逆の方は下から順に
Elpida(日) Panasonic(日) Hynix(韓) Renesas(日) Infineon(欧州)
で、プラス・マイナスの値も大きく分かれる形になっている。米国がリード、アジアおよび欧州の低迷、という米SIAのコメントにある状況がここでも表われている。
≪市場実態PickUp≫
支援企業を求めているエルピーダメモリを巡る状況が、目まぐるしさを増す感がある。
【エルピーダ支援入札】
◇エルピーダ:支援企業から東芝外れる、候補は海外3社に (4月5日付け 毎日jp)
→経営破綻した半導体メモリー「DRAM」メーカー、エルピーダメモリの再建を支援するスポンサー企業候補から東芝が外れたことが4日、分かった旨。スポンサーは海外3社に絞られている模様で、エルピーダは外資による支援を受け入れて再建を急ぐ方向の旨。
◇米中投資ファンド、エルピーダに共同応札−東芝、マイクロン陣営と三つどもえに (4月6日付け 日経 電子版)
→会社更生手続き中のエルピーダメモリを支援する企業を決める第2次入札で、米国のTPGキャピタルと中国の企業再生ファンド、ホニーキャピタルの2社が共同応札することが6日分かった旨。エルピーダのスポンサーは、米マイクロン・テクノロジー、韓国SKハイニックス−東芝連合それに米中ファンド連合の3陣営による争奪戦となる公算が大きい旨。
◇Reports: China's Hony and TPG team to bid for Elpida (4月6日付け EE Times)
→中国の投資会社、Hony Capitalが、米国のprivate equity firm、TPGと連携、Elpida Memory応札に参画する旨。
Qualcomm対抗を狙った通信用半導体の日韓合弁の動きが、中止の事態となっている。パワーの結集による成果の考え方の問題が大きく立ちはだかっている様相を感じている。
【日韓合弁中止】
◇ドコモ、日韓のスマホ半導体合弁中止、技術流出懸念 (4月2日付け 日経 電子版)
→NTTドコモが2日、富士通や韓国・サムスン電子など国内外のメーカー5社と共同で計画していたスマートフォン向け通信用半導体を開発する新会社設立を断念すると発表の旨。スマホ向けの通信用半導体は米Qualcommなどが高いシェアを握り、スマホの機能開発を主導している現状、ドコモなどの新会社設立には対抗軸をつくり、スマホの技術力強化や低コスト化に繋げる狙いがあったが、断念により中核部材の外部依存が続くことになる旨。
◇Samsung, NTT DoCoMo Chip Group Abandon Planned LTE Chip Joint Venture-The firms had agreed to launch the venture by March of this year but could not agree on a final deal (4月2日付け CIO.com/IDG News Service)
話変わって、人および市場を騙す決して許されない模造品であるが、2011年の状況がレポートされている。ここまでと知ると、実害の程度そして現実の対策とその効果の推移が気になってくる。
【模造半導体】
◇IHS: Counterfeit parts represent $169B annual risk (4月4日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。模造品として報告されている5つの最も広がりを見せている半導体品種カテゴリーについて、グローバルエレクトロニクスsupply chainに対する年間リスクの可能性が$169Bに上る旨。
・2011年で最も模造されている半導体トップ5
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120404_ihs_counterfeit_423.png
◇Counterfeiting chips is a multibillion-dollar business, IHS says (4月4日付け The Wall Street Journal/Dow Jones Newswires)
→アナログ半導体、メモリデバイス、MPUs、programmableロジックデバイスおよびTrsが、世界で最も共通して模造されているICs、アナログICsは1/4に及んでおり、$47.7B市場で約$12Bとなっている旨。
3社競合の局面を長らく受け止めていたリソ装置業界であるが、ここにきてASMLの急伸ぶりが目立つ結果となっている。最先端の壁に立ち向かい、選択肢が分かれる中の凌ぎ合いの様相をこれも長らく感じるところがある。
【リソ装置業界】
◇Analyst: ASML holds all the cards in litho (4月1日付け EE Times)
→Information Network(New Tripoli, Pa.)発。lithographyツールベンダー、ASML Holding NV(オランダ)の2011年出荷台数のシェアが、競合のNikon社とCanon社を合わせたよりも高くなり、数年前は3社競り合っていたのが席巻する状況に至っている旨。10年間の3社市場シェア変化:
2001年 | 2011年 | |
ASML | 22% | 57% |
Nikon | 42% | 28% |
Canon | 35% | 15% |
・≪グラフ≫ 1992年〜2011年lithographyツール出荷台数市場シェア推移
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120401_info_net_litho_423.png
≪グローバル雑学王−196≫
残るは我が国、日本ということで、太古の昔からのお酒、そして居酒屋に纏わる推移・エピソードを、
『居酒屋の世界史』 (下田 淳/著:講談社現代新書 2120)
…2011年 8月20日 発行
より整理・確認するなか、随所に新たな知見である。古代からそれぞれの時代の人々、庶民の生活ぶり、息吹が生々しく伝わってくる感じ方である。
第六話 日本の居酒屋
・庶民の居酒屋が成立するのは15世紀頃、本格的に発展したのは江戸時代
・18世紀後半から農村にも居酒屋が成立
・コミュニティセンター、あるいは祭りや冠婚葬祭の宴会
→日本では神社・仏閣
○酒神・須佐之男
・『古事記』(712年)には多くの酒の話や歌が登場
→8世紀初頭までには酒醸造技術が日本に定着
・『古事記』に登場、須佐之男命(すさのおのみこと)の物語
→濃い酒を飲んで酔った八俣の大蛇を成敗したという話
→須佐之男命は酒神にも
・酒醸造法が独自に日本ではじまったのか、大陸から伝わったのかは不明
○平安京にできた市
・貨幣経済と都市の発達を居酒屋の成立と結ぶなら
→日本では8世紀の奈良時代
・奈良時代に、寺が醸造をはじめたのが居酒屋のはじまりのよう
・室町時代には京都に342軒もの醸造屋
・794年に成立した平安京には、東西2ヶ所の公設の市
→闇市で酒が売られ、そこで飲む居酒屋らしきものがあった可能性
・初期の京都の人口の大部分は貴族階級とその従者か
→飲酒、宴会は自宅でが基本、白拍子と呼ばれた遊女や芸人も
○没収された酒壷−−−鎌倉時代
・鎌倉も京都同様、貨幣経済が始動し、居酒屋が本格的に成立した可能性は大
・14世紀前半、鎌倉時代末期、庶民の町屋(庶民の住居群)が急増
・地方では、街道の要衝に屋号をもった問屋
→商人の宿も兼ね、酒を供した可能性は高い
○貨幣・商品経済の展開−−−室町時代
・酒が爆発的に売れた室町時代
→1371年、幕府は京都の醸造屋に課税
…醸造屋は富豪、幕府の主要財源に
・この時代、居酒屋は、完全に醸造屋から分離
・群雄割拠の戦国時代 →貨幣・商品経済の成立に貢献
→各領内の都市(町)に居酒屋も成立したと推察
○フロイスの日欧酒文化比較
・1562年、日本に来たイエズス会の宣教師、ルイス・フロイスが物した『日欧文化比較』(1585年:原文ポルトガル語)
→酒を飲んで前後不覚、日本ではそれを誇りに語る
→日本では大いに尊敬されている市民が、居酒屋で売る酒を売ったり、自分の手で計ったり
→ヨーロッパでは居酒屋が下賤な商売という認識
○江戸の繁栄
・江戸で、飲食店や居酒屋がもっとも発展
→全国の街道が整備され、宿屋は居酒屋でも
→そこの女給は飯盛り女といい、酌婦であり売春婦
○エンタテイメント中心の茶屋
・茶屋という形態の居酒屋が江戸中期に発達 …茶と酒を出す店の意
→むしろ酒がメイン
→料理茶屋、芝居茶屋、相撲茶屋などさまざまな形態が発達
・十返舎一九(1765〜1831年)の時代、18世紀後半から19世紀にかけて、「居酒屋」という名前が定着
○「居酒屋商売お認めくださいますよう」
・江戸時代になっても、祝祭日以外の酒は当局に禁止
・居酒屋商売は、幕末期には藩や幕府の統制を受けつつも認められていた
・遅れた農村の居酒屋の成立
→江戸幕府が農村への貨幣・商品経済の浸透を恐れたことが一因
○明治以降の居酒屋
・西洋文化とともに洋酒 →代表がビールとビヤホール
→1899年、銀座に「恵比寿ビヤホール」が設立
・日本には、ヨーロッパのもつ居酒屋の「多機能性」はついにあらわれず