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実際に取り組んでこそのIP領域、新たな台頭、老舗の反撃

ものづくり、製造の回帰が米国で議論を呼んでいるが、実際に取り組んでこそ知的財産(IP)、ノウハウの蓄積・拡充に磨きがかかるものということと思う。市場が新興圏にシフトしている結果として、特にアジア勢の活発なIP領域での躍進が目立ってきている。また先進経済圏の老舗大手メーカーが、これまで蓄積した豊富なIP資産を武器に、昨今の市場シェアを席巻している顔ぶれを相手取って侵害を訴える、とこれまた繰り返す動きが高まっている。研究開発からビジネス化を即図る重みをまたぞろ感じている。

≪IP領域関係の昨今≫    

今年に入ってから特に活発と感じるIP関係の動きを追ってみる。1月早々の本欄で取り上げているが、2011年米国特許ランキングにおけるアジア勢の伸びがまずある。

◇Asia wins increasing share of U.S. patents (1月11日付け EE Times)
→Fairview Research(Madison, Conn.)の1部門、IFI Claims Patent Servicesがまとめた2011年米国特許トップ50ランキング。IBMが19年連続首位、しかしSamsungが迫っているなどアジア勢が米国勢に対し伸ばしている旨。トップ10の中に日本が6社入っており、トップ50には中国は入っていない旨。

ほとんど同時に、カメラの老舗、コダックから相次ぐ特許侵害提訴の動きが見られている。

◇米コダック、特許侵害でサムスン提訴 (1月19日付け 日経 電子版)
→米映像機器大手、イーストマン・コダックが18日、ディジタル画像技術に関する特許を侵害されたとして韓国サムスン電子をニューヨークの連邦地裁に提訴したと発表、経営危機に陥っているコダックは今年に入り、米アップル、台湾HTC、富士フィルムホールディングスを相次ぎ提訴、頼みの綱となっている特許関連収入の拡大が狙いとみられる旨。

"標準特許権"を巡る三星電子を相手取ったEUの動きが次の通りであり、マイクロソフト、インテルの今までの事例を思い起こしている。  

◇サムスン電子が反独占規定違反?EUが調査に着手 (2月1日付け 韓国・中央日報)
→欧州連合(EU)執行委員会が31日、サムスン電子を相手に反独占関連規定違反の有無に対する調査に着手した旨。AFP通信によると、EU執行委員会は、「サムスン電子が必須的な標準特許権を乱用して市場競争を阻害したかを評価するために調査するもの」と明らかにした旨。EUは国際標準になった必須的特許技術を「公正で、合理的で、非差別的(FRAND[Fair, Reasonable and Nondiscriminatory])」方式で誰にでも提供しなければならないという規定を運用している旨。

ここのところ一般報道でも取り上げられた"IPAD"事件であるが、訴えた側は次の事態となっており、厳しくしたたかな鬩ぎ合いを感じている。

◇米アップル提訴の中国企業が破産手続きへ、「iPad」商標権で和解も (3月5日付け 産経ニュース)
→米アップルのタブレット型多機能携帯端末「iPad」の中国での商標権を主張し、アップル側を相手取って裁判を起こした広東省のIT企業、「唯冠科技」が、破産手続きに入る見通しになったことが5日分かった旨。中国の破産法では、唯冠が破産手続きに入れば訴訟は中断され、裁判所が指定する破産管財人に対応が委ねられるため、アップル側と和解する可能性もある旨。

ここからは現時点直下の内容であるが、大学からの特許出願で韓国・KAISTの台頭ぶりである。ISSCC発表の件数でも同じ感じ方がある。

◇KAIST(韓国科学技術院)、国際特許出願件数で世界5位に (3月28日付け 韓国・中央日報)
→国連傘下の世界特許機構(WIPO)が27日に発表した昨年の国際出願特許協力条約(PCT)統計発。KAISTが、活発な先端技術開発と特許出願を基に世界の大学で国際特許出願件数上位5位に上がった旨。PCTには115カ国が加盟、自国の特許庁に特許出願書類を出せば加盟国全体に出した効果を持つ旨。
トップ5の大学: 米カリフォルニア州立大学  277件
          米MIT
          テキサス州立大学
          ジョーンズホプキンス大学
          KAIST            103件

スーパーコンの老舗の流れからは次の反撃である。歴史的な蓄積を活かしたこのような動きの加速を予感するところがある。

◇米IT企業、特許巡りアップル・サムスンなど6社提訴 (3月28日付け 日経 電子版)
→米スーパーコンの老舗、旧Silicon Graphics(SGI)の流れを汲むIT企業、Graphic Properties Holdings(GPH:New York州)が27日、米アップルやサムスン電子、ソニーなど電機メーカー6社を画像関連技術の特許侵害で提訴、IT業界では勝ち組と負け組が二極化するなか、経営不振の老舗が有力企業を訴える例が増えており、訴訟の行方が注目されそうな旨。6社の他は、韓国LG電子、台湾HTC、カナダのRIMの旨。

インドでもIPビジネスモデルの立ち上がりが見られている。

◇Indian design firms eye chip IP model (3月28日付け EE Times)
→メディア処理のIttiam Systems(BANGALORE, India)が先週、同社年間売上げ$20Mの35%以上がintellectual property(IP) licensingからきており、同社にとっては画期的な出来事、"インドの新世代ハイテクメーカーには勇気づく兆候"である旨。

ものづくり、そして市場が拡大しているところでの特許出願は欠かせない、という日本勢の動きである。

◇中国で特許出願拡大、ソニーなど、訴訟リスク軽減 (3月30日付け 日経 電子版)
→日本企業が中国での特許出願を拡大、ソニーの2011年の中国での出願件数は10%増の約2200件、富士通は15%増の460件に達する見通しの旨。日本企業は知財を守る体制を固め、訴訟リスクを引き下げる旨。


≪市場実態PickUp≫

Embedded Systems Conference(ESC) DESIGN West(3月27-29日:McEnry Convention Center, San Jose, Calif.)の場で取り交わされ、あるいはプレゼンされている問題意識のいくつかである。

【Embedded Systems Conference(ESC) DESIGN Westから】

まずは米国での製造はじめ競争力を如何に取り戻すかの議論。科学技術の革新の醸成が欠かせない、と我が国の現状に共通する意識と思う。

◇Flexible manufacturing, ecosystems seen as keys to U.S. innovation (3月27日付け EE Times)
→米国が製造のような戦略的分野でのグローバル競争力を取り戻すために、科学技術の革新が引き続き欠かせないことには広範な合意があるが、革新を育成する公式というものが、製品設計者、contract製造メーカーおよびdistributors、並びにstartupsおよび足場のあるプレーヤーにわたるエレクトロニクス業界分野の会社にとって依然捉えどころがない旨。今回の場のopeningで、これら分野各々の代表がこの革新の問題に取り組み、議論項目の中に、政府が革新育成で果たすべき役割は何か、がある旨。

半導体のMoore則ばかり言われるが、電池技術だって、と次のアピールである。

◇World on cusp of EV tipping point, says Tesla CTO (3月29日付け EE Times)
→Tesla Motors社のchief technology and co-founder、JB Straubel氏の水曜28日基調講演。電池技術の改善についてはMoore則相当がないという批判の指摘がしばしばあるが、電池技術は何十年にわたってゆっくりと改善されており、エネルギー密度が年平均7-8%の改善となっている旨。

たまたま今回のこの場に居合わせたということで、米SIAのChairman、Beyer氏のWSTSデータ問題についてのコメントである。

◇Beyer on WSTS: 'We will fix this' (3月30日付け EE Times)
→今回EE Times/EDN ACE Awards式典に出席、Executive of the Year awardを受賞した、Freescale SemiconductorのCEOで本年SIAのChairmanを務めるRich Beyer氏。Intel社のAMD社に続くWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS)からの撤退確認で、WSTSデータの信頼性および価値、引いてはWSTSを後援するSIAの信用性が問われている事態について、このWSTS/SIAジレンマを解決する旨。

以下、2011年のベンダーランキングのデータが続くが、まずは半導体のトップ25・確定データから。インテルのさらに差をつける首位快走が目立つ結果である。

【2011年半導体ランキング】

◇Chip rankings: Intel had highest share in over 10 years (3月26日付け EE Times)
→IHS iSuppliによる2011年半導体市場最終データ。Intel社が全体の15.6%シェアを占め、コア半導体の活発な販売およびInfineon AGのワイヤレス半導体事業部門買収がここ10年以上で最高のシェア獲得を支えた旨。Intelの市場シェアは、2010年の13.1%から2.5%ポイント上昇の旨。
・2011年世界半導体売上げランキング・トップ25サプライヤ
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120326_ihs_rankings_423.png

◇インテルの半導体世界シェア15.6%、過去11年で最高 (3月27日付け 日経 電子版)

次はファウンドリーについて。TSMCの快走が際立つが、Samsungのこの分野での躍進ぶり、今後に注目と思う。システムLSI、Apple対応ASICなど、ロジック対応のファウンドリーへの波及効果如何がポイントになってくる。

【2011年ファウンドリーランキング】

◇IC foundry market grows 5.1% in 2011, says Gartner (3月30日付け DIGITIMES)
→Gartner発。2011年の世界半導体ファウンドリー市場が、5.1%増の$29.8B、日本の大震災およびタイの洪水のインパクトを受けた昨年の半導体supply chainであるが、米ドルの急激な下落なしでは2011年のファウンドリーの伸びは0.7%止まりとなる旨。
・2010-11年ファウンドリー売上げ&市場シェア・トップ10 [単位:M$]
…左から、2011年順位;2010年順位;会社名;2010年販売高;2010年市場シェア;2011年販売高;2011年市場シェア;年伸長率



1
1
 TSMC
13,332
47.1%
14,533
48.8%
9.0%
2
2
 UMC
3,824
13.5%
3,604
12.1%
(5.8%)
3
3
 GlobalFoundries
3,520
12.4%
3,580
12.0%
1.7%
4
4
 SMIC
1,554
5.5%
1,319
4.4%
(15.1%)
5
6
 TowerJazz
509
1.8%
613
2.1%
20.4%
6
8
 IBM Microelectronics
500
1.8%
545
1.8%
9.0%
7
7
 Vanguard International
505
1.8%
516
1.7%
2.2%
8
5
 Dongbu HiTek
512
1.8%
483
1.6%
(5.7%)
9
10
 Samsung*
390
1.4%
470
1.6%
20.5%
10
19
 Powerchip Technology
149
0.5%
431
1.4%
189.3%
Top 10 for 2011
24,795
87.6%
26,094
87.7%
5.2%
Others
3,510
12.4%
3,660
12.3%
4.3%
Total Market
28,305
100.0%
29,754
100.0%
5.1%

(注)Samsung売上げにはAppleからのASICビジネスは含まない
[Source: Gartner, compiled by Digitimes, March 2012]

最後にMEMS。スマートフォンなどモバイル機器が引っ張って、今後の注目市場にのし上がってきている。

【2011年MEMSコンポーネントランキング】

◇ST closes in on TI atop MEMS top 30 ranking (3月26日付け EE Times)
→Yole Developpement(Lyon, France)発。2011年のmicroelectromechanical systems(MEMS)コンポーネントは、STMicroelectronicsとTexas Instrumentsが売上げを引っ張っている旨。
半導体との市場データ比較:
 2011年MEMS市場   17%増  $10.2B
 2011年半導体IC市場  0.4%増  $299.5B
・≪グラフ≫ 2011年MEMS売上げトップ30ランキング
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/YoleMEMStop30_2011.jpg


≪グローバル雑学王−195≫

欧米、イスラム圏からこんどはぐっと身近、中国そして韓国における居酒屋の展開・推移を、

『居酒屋の世界史』 (下田 淳/著:講談社現代新書 2120)  
 …2011年 8月20日 発行

より辿っていく。酒そして居酒屋ともにさすがに中国は古い歴史、現在の中国語では酒家がレストラン、居酒屋はそのまま居酒屋で日本からの逆輸入語とのこと。韓国では、酒は家で造るものということで、居酒屋の展開は20世紀以降と新しいが、最近では伝統酒も復活、居酒屋も日本よりは盛況のよう、とこれまでの小生の認識に結びついていく。


第五話 中国・韓国の居酒屋

・中国の居酒屋は漢の時代に登場、本格的に発展したのは宋の時代
 →二形態の飲食店 …居酒屋と茶館
・韓国では、居酒屋の本格的発展は20世紀以降

○彩陶文化の遺跡から出土した酒器
・紀元前4000年頃の黄河流域の彩陶文化の遺跡
 →多くの酒器が出土
・中国で確認できる最古の王朝 …殷王朝(紀元前1700〜紀元前1070年頃)
 →神権政治。酒はまず神に捧げるもの。
 →青銅製酒器 …酒造りが盛んだった証拠
・米酒が中国全土に普及 
 →秦(紀元前221〜紀元前210年)が中国を統一する紀元前3世紀頃
・中国で居酒屋が登場
 →前漢時代(紀元前202〜紀元後8年)の中頃、各都市に居酒屋や料理店が成立
・中国古代では、民衆が集まって酒盛りすることは禁止
 →居酒屋の客はまだ貴族や富裕な商人が中心か

○詩仙李白
・酒仙と呼ばれるほど酒を愛し歌をつくった唐代(618〜907年)の詩仙、李白(701〜762年)
・唐代には居酒屋が、少なくとも都市にかなり存在
 →都、長安では、居酒屋、食堂、西域の飲食店まで

○中国の葡萄酒と蒸留酒
・米を主原料とする黄酒(ホアンチュウ)が代表的醸造酒
 →日本では産地の地名から紹興酒
・葡萄酒は、いわゆるワインとは違ったよう
 →葡萄酒は蒸した米に葡萄汁を混ぜて醸造したとの記述
・蒸留酒は、アラビア起源で伝来したことは確か
 →中国の蒸留酒は白酒(バイチュウ)と呼ばれる。茅台酒(マオタイチュウ)も古いものではない。

○宋代の外食・居酒屋文化
・商業が一層盛んになった宋代(960〜1279年)
 →大都市には飲食店が激増、夜中も営業
・都の居酒屋を歌った詩
 →竹製の駕籠、宋代の「タクシー」、竹輿(ちくよ)
・清代、たとえば南京には600〜700軒の居酒屋
 →都、北京には無数に存在したとの推測

○寺院と茶館
・茶の原産地は中国・雲南省との旨。
・飲茶のはじまりは、漢方薬の神、「神農」が茶を発見したことにあるという伝説
・唐代に、民衆は、仏教寺院で茶を飲んだ
 →ヨーロッパでは教会が、イスラム圏ではモスクが、コミュニティセンターであったのとまったく同じ

○茶館という都市文化
・茶館の場の機能 …商談、取引、仕事場、縁談や職業斡旋、民事法廷(けんか仲裁)
 →賭博、アヘン、売春、人身売買も
・辛亥革命前夜には、情報センターに
 →居酒屋では茶館の二倍の料金が必要 →民衆にとっての茶館の重要性
・むしろ茶館が、ヨーロッパの居酒屋に匹敵する「多機能性」
 →ただ、祭りや冠婚葬祭時の宴会の場の機能はなし
 →茶館は農村にはできず。あくまで都市の文化。
・1949年の中華人民共和国の成立まで茶館の伝統的機能は続いたよう
・現代中国語:酒家→レストラン
         居酒屋→そのまま居酒屋。日本からの逆輸入語

○家醸酒は韓国文化
・韓国は元祖、中国以上に儒教の影響
・李氏朝鮮王朝(1392〜1910年)は貨幣経済の浸透に否定的
 →飲食店や居酒屋はほとんど発達せず
・高麗(918〜1392年)の時代、仏教寺院では茶の栽培、?の製造、そして醸造業を営む
・李氏朝鮮時代に仏教から儒教に国教が変更
 →酒は残った
・民衆の酒、「マッコルリ」(濁酒)
 →濾過すると清酒(チョンジュ)(薬酒)→上流階級用
・現在よく飲まれる焼酒(ソジュ)、つまり焼酎
 →元代に伝わり、昔は高級酒
・居酒屋が成立しなかった原因
 →「家醸酒(カヤンジュ)」に代表される自給自足の文化が長らく定着
 →酒造りは、家庭の主婦の重要な仕事

○宿屋兼居酒屋チュマク
・朝鮮半島で、居酒屋が本格的に成立するのは1900年前後
 →ソウルやピョンヤンなど少数の都市
・古くからあったといわれる居酒屋、チュマク(酒幕) …庶民が飲める
 →都市や街道沿いの宿屋
・チュマク以外に、三形態の居酒屋
 →モクロスルチブ(木櫨酒家)  …庶民が飲める
  ネウェチュチョン(内外酒店) …都、ソウルの貴族用
  セクチュカ(色酒家)     …都、ソウルの貴族用
・最近は、伝統酒も復活し、居酒屋も日本よりは盛況のよう

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