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半導体を核に、心待ち、夢中にさせる熱気、感動の創出

新「iPad」販売開始、世界の国々で待ち構える人々の列が目に入ってきて、個人消費者、そして新興経済圏に向けた商品企画の重みがまたぞろ頭の中を巡っている。何もかも見えてしまうようなフルハイビジョンを上回る解像度のディスプレイが評判を呼んでいるが、半導体そしてデバイス技術の粋を組み合わせて熱気、感動を生み出しているという理解である。新「iPad」とともに銀座店の光景が出てきたユニクロも然り、消費者の経済学に適合する魅力的なソリューション、アプリに向けた先端技術の追求が求められている。

≪半導体技術が生み出す魅力≫    

新「iPad」は世界各国で記録的な予約を抱えており、アップルのオンラインストアでは出荷は2〜3週間待ちという状況とのこと。アップルストア銀座での発売4日前から並ぶ人の列にも肯ける話である。初日の販売台数は日米など10カ国で100万台を超える見込みとのこと、どこまで続く熱気かが気になってくるが、発売の号砲と時を揃えるかのように新「iPad」の分解解析が発表されている。発売とどちらが早いのかと思うタイミングの以下の記事である。

◇Evidence of Apple chip design change in iPad teardown-Apple has made some pretty significant changes to the new iPad's chip compared to the iPad 2. (3月15日付け CNET/Nanotech - The Circuits Blog)
→teardown解析から、Appleは、new iPadでは主要半導体の設計を変えており、そのpixel-dense画面には当然のこと必要に、大きな変更として次の2点:
# Separate DRAM:
AppleのA5X半導体パッケージは、Chipworksの解析で見られるように、iPad 2のA5のようにシステムメモリ(別名SDRAM)を"stack"していない。
そうではなく、Anandtechによると、DRAMは"discrete"域にあり、new iPadはiPad 2の倍の1GBのメモリをもっている旨。
# Heat spreader:
Anandtechの指摘、新A5X半導体はmetal heatspreaderで覆ってあり、放熱性が良くなっているとの憶測、性能改善を裏付けている旨。

魅力の第一に高解像度画面が出てきて、DRAMのディスクリート実装そしてヒートスプレッダーが、その原動力という見方に映ってくる。無理に詰め込まず温度環境を楽にという回帰の考え方を想像している。

中核のプロセッサはじめ各部位に及ぶ詳細な解析が、以下の記事に見られている。quad-coreが入る今回のプロセッサ、A5Xとなっている。

◇Teardown slideshow: Inside the third-generation iPad (3月16日付け EE Times)
→UBM TechInsightsが行ったteardown解析。Apple社のiPad mediaタブレット第三世代の目玉はAppleのA5プロセッサの修正版、A5X、quad-coreが入ってfloorplanが大きくなっている旨。
・≪写真≫ 新Apple A5Xプロセッサのfloorplan
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/ipad3teardown/A5X_diff.jpg
・≪写真≫ 標準A5プロセッサのfloorplan
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/ipad3teardown/A5_diff.jpg
 18ページに及ぶ分解解析写真。

半導体部品はどこ製か、これも早速に以下の通りとなっている。

◇iPad teardown reveals IC design winners (3月16日付け EE Times)
→consumer electronics repair company、iFixit社(San Luis Obispo, Calif.)が、Apple製最新iPadタブレットコンピュータを分解、IC design winsなど全体の詳細:
 LTE通信:Qualcomm
 RF:Triquint(quad-band PA), AvagoおよびSkyworks
 WiFi:Broadcomのcombo半導体
 A5X:Apple設計
 retinaディスプレイ(2048x1536):Samsung LCD
 NANDフラッシュ:東芝
 LPDDR2 DRAMs:エルピーダメモリ
 audio codec:Fairchild, Cirrus Logic
 touch screen driver IC:Texas Instruments

どこまで、いつまで消費者が満足するか、持続するよう次の手が求められるところが出てくると思うが、以下の評価が見られている。

◇Does Apple's new iPad display technology go far enough? (3月16日付け ELECTROIQ)
→new iPadディスプレイについて、IHS iSuppli, NPD DisplaySearchおよびIMS Researchの調査。new Apple iPad、第三世代は、2048 × 1536, 264 ppiのretinaディスプレイを使用、前世代の画素の4倍のきめ細かさ、しかしながら身振り認識となると先端とは言えないところがある旨。

半導体技術が生み出す魅力、そして熱気、感動を巡る競争という現状の局面を受け止めている。


≪市場実態PickUp≫

上記の魅力の創出は、半導体最先端技術があってこそ、その大きな一角を担う微細化について、IBMが主導するコンソーシアムの技術進展が発表されている。Common Platform Technology Forum(3月14日:Santa Clara, Calif.)から以下の注目内容である。

【Common Platform Technology Forum】

◇Samsung, IBM and GlobalFoundries look to the future: A report from the Common Platform Technology Forum (3月15日付け ELECTROIQ)
→GlobalFoundries, IBMおよびSamsung Electronicsの代表が、R&D協力プログラムで3社が行ってきている進展を報告、Samsungのファウンドリー事業、vice president、Ana Hunter氏は、20-nmプロセスから14-nm featuresへの移行でパートナー3社は約$10B、fab建設に向けて$7Bを費やしていると見積もりの旨。

◇IBM Staying on SOI Technology for 14nm FinFETs (3月15日付け Semiconductor Manufacturing & Design)
→IBMのSemiconductor Research & Development Center、vice president、Gary Patton氏。SOI技術での成功に立脚、IBMは、14-nmノードでsilicon-on-insulator(SOI)ウェーハベースのfinFETsに移行する旨。

米国と中国から新たな産学連携が打ち上げられている。シリコンバレーでアナログ先端に取り組むTexas Instrumentsである。

【産学連携】

◇Texas Instruments, SMIC sprout new IC research labs in US and China (3月14日付け ELECTROIQ)
→Texas Instrumentsが、アナログおよびmixed-signal回路について
California拠点のリサーチlabをオープン、研究の一部は現地の大学を活用する旨。
SMIC(上海)が、中国でのICリサーチプログラムについて
Brite Semiconductor(上海)およびZhejiang University(浙江大学)と連携する旨。
ともに地元のダイナミックな半導体産業力を開発する狙いの旨。

タブレットでのNANDフラッシュ市場、アップルのiPadが2015年までは席巻するという以下の見方である。

【タブレット用NAND】

◇Apple's iPad to dominate NAND use in tablets through 2015 (3月13日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。Apple社のiPadが、media tablets用NANDフラッシュメモリの約80%を占め、少なくとも2015年まではtabletsのNANDに対する世界需要を引き続き席巻すると見る旨。
・≪グラフ≫ iPad対Non iPadのフラッシュメモリ消費:2010〜2015年
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120313_ihs_ipad2_423.jpg

米国経済の持ち直し基調が効いているのか、2012年のグローバル半導体販売高予測について上方修正が見られている。

【2012年半導体売上げ予測】

◇Gartner ups 2012 chip forecast to 4% growth (3月13日付け EE Times)
→Gartner社発。2012年のグローバル半導体売上げについて、昨年12月時点の2.2%増から、今回4%増の$316Bに上方修正の旨。

半導体製造装置業界の2011年販売高ベンダーランキングで、オランダのASMLが長年のNo.1、Applied Materialsを抜くというデータが発表されている。
ASMLは、幅広い製品ラインアップではなく、リソ装置専業という色合いであり、積み重ねの成果を受け止めるところがある。

【2011年半導体装置ランキング】

◇ASML Becomes Leading Semi Equipment Vendor (3月9日付け Semiconductor Manufacturing and Design)
→VLSI Research社(Santa Clara, Calif.)発。ASMLが、2011年半導体製造装置のトップベンダーに、現状のラインについてより微細線幅に移行するためにlithographyアップグレードを行うメモリベンダーおよびファウンドリーが支えている旨。Applied Materialsは1992年以来初めて2位の座に落ちる旨。オランダの会社、ASMLは、scannersおよびlithographic DFMツールを唯一の売上げ源とする基本的にsingle-product会社故に、なおさら驚きである旨。

◇VLSI: ASML was No. 1 in tool sales in 2011 (3月13日付け EE Times)
→VLSI Research(Santa Clara, Calif.)による2011年半導体装置販売高トップ15、下記参照。Applied Materials社が20年ぶり、首位の座をASML(Veldhoven, the Netherlands)に次の通り明け渡した旨。
Applied Materials  $7.88B   56%増
ASML         $7.44B   25%増
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120313_vlsi_rankings.jpg


≪グローバル雑学王−193≫

前回に続く近現代の居酒屋を取り巻く経緯、推移を、

『居酒屋の世界史』 (下田 淳/著:講談社現代新書 2120)  
 …2011年 8月20日 発行

より追っていく。欧米の映画に出てくる昔の庶民街の風景の実態、規模を知らされている。それにしても禁酒運動が何処でも広がりを見せたものの、いずれも衰退の道を辿ったとの下り。はやりお酒は楽しく、止められないもの、ここでも妙に納得の体である。


第三話【後半】 ヨーロッパ近現代 − 居酒屋の衰退期

○「聖月曜日」の習慣−−労働者の息抜きの場
・土曜日に職人や労働者は1週間分の賃金 …週払いという給金システム
 →19世紀になって登場
・唯一の息抜きの場所が居酒屋
 →土曜日に賃金、その夜、そして日曜日も飲む、月曜日二日酔いでずる休み
 →「聖月曜日」は、フランスと同様、イギリスやドイツでも

○音楽カフェ
・イギリスのミュージックホールのフランス版 
 →「音楽カフェ」(カフェ・コンセール)
・劇場は19世紀後半には、より純粋にアーティストの活動舞台に

○最初の近代的キャバレー「黒猫」
・1881年、パリのモンマルトルに最初の近代的キャバレー「黒猫」
 →前衛的あるいは新進の芸術のお披露目場
 →3階建ての大型新店舗で上演された影絵芝居は目玉商品に

○政治的風刺の場
・ドイツ、1901年、ベルリンにキャバレー「彩色劇場」が成立
 →ドイツ語ではカバレット
・芸術とならんで政治的風刺の場に
 →喪失、復活を経て、1935年、最後のキャバレーがナチ政権によって封鎖

○ナチスと居酒屋
・1928年、ベルリンの飲食店は1万6000軒
・ミュンヘンの「ホーフブロイハウス」が居酒屋で有名
 →もともとバイエルン王家の醸造所
・ベルリンに1928年、「ハウス・ファーターラント」が開店
 →当時、世界最大のエンタテインメント施設
 →第二次世界大戦で爆撃、1953年に破壊される
・工業化と軌を一にする居酒屋の全盛期
 →ドイツの工業化は1871年の統一後本格化
 →フランスは英独の中間

○サルーン−−アメリカの居酒屋
・19世紀末、アメリカに約30万軒の居酒屋、サロン(サルーン)の呼び名
 →北部の工業都市に集中
・「多機能性」が衰退、「棲み分け」へ
 →工業化の進展とともに禁酒法の施行(1920〜1933年)がひとつのきっかけ

○禁酒運動前史
・もともとキリスト教は飲酒に「甘い」側面
 →修道院で酒をつくり、ミサでは聖職者がワインを飲む
・18世紀末から19世紀前半にかけて大量生産可能な蒸留器が開発
 →欧米の労働者にアルコール依存症という問題
 →禁酒運動のきっかけに

○なぜアメリカで禁酒法が成立したか
・強い蒸留酒がアメリカの下層民に多く飲まれたのが大きな理由か
 →トウモロコシからのウイスキー、バーボン
  アイルランドやスコットランド系の移民はウイスキー

○ギャング団の密造・販売を誘発
・19世紀の運動を経て、1919年1月、禁酒法「ボルステッド法」が各州で批准成立
 →ギャング団の密造・販売などを誘発
 →禁酒法は1933年撤廃

○ヨーロッパでも禁酒運動は失敗
・イギリスでは禁酒法が成立せず
 →伝統的醸造酒をもっていた国では禁酒運動に抑制
・フランス、飲酒の抑制に努力したがうまくいかず
 →ワインは健康的という強い認識
・ドイツ、「絶対禁酒」運動はほとんど支持されず、その後禁酒運動自体も衰退
・蒸留酒を飲むロシアや北欧
 →禁酒法が一時的に制定されるも、すぐに廃止

○鉄道旅行・フットボール・映画
・禁酒運動の思わぬ成果
 →鉄道を使った旅行
 →フットボールの試合
・禁酒運動は人びとを居酒屋から遠のかせるある程度の役割

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