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是が非でも我が国の優位性確保、中国、韓国の敏感な反応

近所の市民向け放送で東京大空襲67年を知らされた10日土曜、そして東日本大震災から1年となる11日日曜である。第二次大戦後の復興、経済急成長を成し遂げた我が国、半導体業界も萌芽期から1980年代には世界をリードするに至った我が国である。大震災に見舞われて復興に向かう今、半導体業界も今までの蓄積を財産、プラットフォームに我が国ならではの新たな優位性を是が非でも確保、発揮していかなければ、という思いである。米国は勿論、近隣のアジア各国とのお互いの関係のあり方が改めて問われていると思う。

≪2012年出だしの半導体販売高≫    

米国SIAより、この1月の世界半導体販売高が次の通り発表されている。米国経済が戻し基調にあるということで先行きに伸びを見込む一方、インテル、AMDなど参画メンバー撤退が見られている業界統計については引き続きデータを出していくとしている。

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○1月のグローバル半導体販売高が前月比2.7%減、今後の伸びが見込める展開 …3月5日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2012年1月の世界半導体販売高が$23.1 billionで前月の$23.8 billionから2.7%減少と発表した。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「1月の前月比売上げ減少は、季節的なパターンに沿うものである。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「インフレ懸念および欧州債務危機の渦中にあるグローバル経済の弱まりが、本年の始めの販売高に引き続き影響を与えているが、2012年が進むにつれ回復および伸長に向けた力強い兆候が見られる。」

米国の経済概況が改善、タイの洪水への打開進展という需要を引っ張るプラス要因から、半導体販売高は改善が見込まれている。

最近のWSTS membership変化にも拘らず、SIAはしっかりとしたタイムリーなグローバル半導体売上げデータの提示を依然フルに約束し、設定スケジュールに則ってWSTSデータを引き続き発行していく。

※1月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/GSR%20Charts_Jan%2012.pdf
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2012年の年初販売高について早々落ち着かない状況含みではあるが、この発表を受けた業界反応として以下が見られている。

◇GSA concerned over WSTS, may seek sales data role (3月6日付け EE Times)
→業界団体、Global Semiconductor Alliance(GSA)(Dallas, Texas)が、Intel社およびAdvanced Micro Devices(AMD)社のWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS)プログラムからの脱退に懸念を表明、この種のデータを維持する上で自ら役割を果たせるかどうか考えている旨。WSTSはグローバル半導体販売高の約75%をカバーするメンバーが参画しているとのこと、しかしながら、Intelだけでグローバル半導体販売高の約1/6を占めており、今回の脱退はWSTSの代表性をかなり減じている旨。

◇January IC sales were down 2.7% from December, SIA reports (3月6日付け TechEye.net)
→IntelとAMDが共にWSTSプログラム脱退を確認、SIAはWSTSデータに依存しており、今や如何に精確か疑問がある旨。SIAのspokespersonは、両社の1月販売高をデータを報告していない他の半導体メーカーと同様にWSTSが見積もったとしており、これは以前に得ていたものに基づくmaking a vague stabと呼ぶ技法の旨。

◇January chip sales down 14% on annual basis (3月7日付け EE Times)
→1月の実際のグローバル半導体販売高についてWSTS見積もりは$21.54B、前月($25.35B)比15.0%減、前年同月($25.17B)比14.4%減。

アジアの旧正月があった1月であり、販売高の低下に大きく効いていると思われ、2月のはね返り如何に当面は注目であるが、米国での観点から2012年について以下の見方である。

◇U.S. elections to aid chip sales in 2012, says analyst (3月7日付け EE Times)
→IC Insights(Scottsdale, Ariz.)発。2012年のグローバル半導体市場は、今年行われる米国大統領選挙のお陰で追い風を受けるが、選挙後の2013年は伸びが低めとなる様相の旨。2012年はGDPが3.4%の伸びの世界経済で、グローバル半導体市場は7%の伸長と見る旨。

我が国のエレクトロニクスそして半導体業界はここにきて特に苦しい局面にあり、それこそ大きな盛り返しが是が非で求められるところであるが、呼応してとみに最近増えてきていると感じる中国の反応の1つである。

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○日本電器産業の再編 中国は傍観してはならない (2月29日付け 人民網日本語版)
→エルピーダが27日に会社更生法の適用を申請して倒産し、再編プロセスに入った。ルネサス、富士通、パナソニックの日本企業3社はこのほど、半導体のLSI業務で合併し、年内にスマートフォン、車載などの製品に応用される半導体の生産を開始する計画であることを明らかにした。このように、日本の電器製品製造業では一連の再編が起きており、ここからさまざまな意味が読みとれる。
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ここ数年は、円高、東日本大震災、世界経済の低迷、韓国、大陸部、台湾地区の電器製品製造業の勃興などにより、日本の電器・電子グループの競争面での優位性が徐々に失われ、過去最大の巨額赤字に見舞われ、市場シェアは韓国勢にどんどん奪われていった。2011年には韓国が初めて日本を抜いて半導体市場で世界2位となり、米国は世界のチップ市場で53%のシェアを抱え、両国と日本との距離は一層拡大していった。
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日本の電器製品製造業が直面する危機や再編・改革を前にして、中国は手をこまねいている場合ではない。日本の大型企業の再編は、ますます多くの在中国日本資本企業に波及する可能性がある。
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日本の大企業の再編改革には、日本企業が中間製品の製造を非常に重視してきたことが反映されている。今後の発展の中で、中核部品、半導体部品、原材料、精密機械などを含む高技術、高付加価値の中間製品の製造を重視することは、中国の産業グレードアップの重要な方向性の一つであることは確かだといえる。
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原材料、製造装置など幅広くカバーする我が国の業界構造に注目を促しているが、肝心の我が国の経済は次の状況であり、強みの発揮のし方、あり方を改めて考えなければならないところに立ち至っている。

◇1月の経常収支、4373億円の赤字、1985年以降で最大 (3月8日付け 朝日新聞デジタル)
→財務省が8日に発表した2012年1月の国際収支状況(速報)。海外とのモノ・サービスの取引や投資状況を示す経常収支は4373億円の赤字に、経常赤字はリーマン・ショック後の2009年1月以来で、赤字額は比較可能な1985年以降で最大の旨。外貨を稼ぐ力が弱まっている日本の現状が鮮明になった旨。

中国でもその点を心配する以下の論調である。

○日本が赤字国に、貿易立国に終止符か (3月8日付け 人民網日本語版)
→世界的な需要低迷、進行する円高、東日本大震災等の影響を受け、日本の「貿易立国」という発展方針は現在、かつてない危機に直面している。31年ぶりの貿易赤字計上は、日本が経常赤字国となる可能性が高まりつつあることを示している。

最先端技術の優位性を如何に図るかは、我が国の喫緊の課題であるが、中国でもそれは同じこと、以下の1つの動きである。

◇Report: China forges ahead to grab innovation ring (3月5日付け EE Times)
→Lux Research市場レポート"Profiting from Predictable Policy: Interpreting China's 12th Five Year Plan for Emerging Technology"発。中国は、研究開発費を大きく増やして、manufacturerからinnovatorに変身するようあらゆる力を尽くしている旨。最新のemerging技術向け出資は、159%増の$18Bになっている旨。

とくると、韓国も落ち着いてはいられない。最近のMobile World Congressでの中国勢の最先端の取り組みに警鐘を鳴らす韓国での受け取りである。

◇A New Threat to Korean Semiconductor Companies? (3月8日付け KOREA IT TIMES)
→中国の半導体設計技術が大きく進んで、韓国の競合を脅かしており、近い将来激しい競争が予想される旨。HuaweiおよびZTEなどは、何千もの優れた半導体設計者を雇用、中でもHuaweiは、先のMWC 2012にてquad coreアプリ・プロセッサ搭載スマートフォンを披露、驚くことにNvidiaやQualcommの製品を用いていない旨。このquad-core AP K3V2 CUPは、Huaweiとその子会社、Hi Siliconeが共同開発して3月に販売開始、またHi Siliconeは、世界初、LTE-FDD, TD-LTEおよび3GPP Release 9をサポートするmulti-modeベースバンド半導体を発表している旨。


≪市場実態PickUp≫

かくも厳しい市況ながら引っ張り上げているスマートフォン、タブレットという状況が続いており、注目のAppleの新しい「iPad」発表は、"iPad 3"ではなくそのまま"the new iPad"となっている。高品位を超える画質が特に高評価のようであるが、早速の反応、次の通りである。

【the new iPad】  

◇新型iPad、日米などで16日発売、画質向上 (3月8日付け 朝日新聞デジタル)
→米アップルが7日、「iPad」の新型機種を発表、昨年春に発売したiPad2より処理速度をアップ、画質やカメラなどの性能も向上させた旨。3月16日に、まずは米国や日本などで発売を始める旨。画面の大きさや厚さは、前作のiPad2とほぼ同じ、価格は同じ$499からと設定した旨。

◇New iPad may shave Apple's tablet margins (3月8日付け EE Times)
→UBM TechInsightsのbill of materials(BOM)コスト見積もり。昨日発表の新iPadは、16-Gbytesメモリ版で$310、当初のiPadの$270.86およびiPad 2の$276.27から上がっている旨。これら3つすべて同じ$629の販売価格、Appleは利益マージンを、始め2つの世代製品の56-57%から今回の新iPadでは51%に約5ポイント下げている旨。

◇Apple launches new iPad (3月8日付け DIGITIMES)
→Appleが第三世代iPadを投入、以下の特徴:
 Retinaディスプレイ
 quad-coreグラフィックス搭載の新しいA5X半導体
 先端opticsを備える5-mega画素カメラ
 AT&TおよびVerizonの4G LTE networksなど世界中の高速ネットワークスへのWi-Fi+4G connectivity
 終日10時間電池寿命

パソコンも負けてはいられないと、Windows 8の打ち上げが行われており、両者凌ぎ合いの様相を受け止めている。

【Windows 8】

◇Windows 8 consumer preview in pictures (3月5日付け EE Times)
→先週のMobile World Congress(MWC)でのMicrosoftイベントのキックオフにて、Windows and Windows Live、president、Steven Sinofsky氏が、今秋に予想される正式フル版打ち上げを前にWindows 8の"Consumer Preview" beta版をお披露目の旨。以下の項目:
 Metro UI(user interface)
 Bing and beta fish
 Instant app access and IE 10
 Apps and integration with Skydrive
 App store with free app previewing
 Videos, music, games and apps
 Touch
 Ultrabooks and hardware specs
 Only for "experienced PC users"

◇Microsoft previews Windows Embedded 8 (3月8日付け EE Times)
→Microsoftが、こんどのWindows Embedded Standard 8 operating system(OS)のcommunity技術previewを公表、Windows 8のembedded版であり、商用機器をセキュリティ&マネジメント・ネットワークスに継ぎ目なく加えられるよう設計されている旨。

エルピーダメモリの件の波紋が以下の通り見られている。

【エルピーダ・インパクト】

◇Elpida's bankruptcy to boost other DRAM suppliers (3月5日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。Elpida Memory社の会社更生法適用申請は、供給が減ってaverage selling prices(ASPs)および売上げが2012年後半に高まり、他のDRAMベンダーには有利に働く旨。

◇Digitimes Research: Elpida bankruptcy to have long-term negative impact on Taiwan DRAM industry (3月5日付け DIGITIMES Research)
→Elpida Memoryの件、台湾のDRAM半導体メーカーへの短期的なインパクトは、プラスマイナス混ざり合おうが、グローバルDRAM市場のsecond-tierサプライヤである台湾メーカーのどこも、Elpidaが破産申請から抜け出せなければ、結局は利するところはない旨。

AMDの製造部門が分離してできたGlobalfoundriesであるが、設計でやっていくAMDの独立色をはっきりさせる以下の動きである。

【AMDの色合い】

◇AMD relinquishes stake in Globalfoundries (3月4日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)社が日曜4日、Globalfoundries社(Milpitas, Calif.)での同社14% stakeを譲渡、AMDが28-nmノードで他のファウンドリー・プロバイダーが使えるようにする2社間の修正ファウンドリー供給合意の一環として、Globalfoundriesに$425M支払うことで合意の旨。Globalfoundriesは、AMDがある指定期間は28-nm accelerated processing units(APUs)をGlobalfoundriesで製造するようにするAMDに対する契約要請を放棄することに同意の旨。


≪グローバル雑学王−192≫

時代がぐっと近づいてヨーロッパの近現代、18世紀、19世紀あたりの居酒屋を、

『居酒屋の世界史』 (下田 淳/著:講談社現代新書 2120)
 …2011年 8月20日 発行

より改めて確認、あるいは新たな認識である。タイトルに"衰退期"とあるが、科学技術の発展で暮らしが豊かになっていって、飲み食い、娯楽、宿泊と、それまでの居酒屋の機能が分かれて独立、それぞれカフェ、レストラン、ミュージックホール、キャバレー、ホテルなど各国、影響し合いながらの進化・展開という理解である。


第三話【前半】 ヨーロッパ近現代 − 居酒屋の衰退期

・19世紀以降の近現代 …居酒屋の衰退期
 →「多機能性」がそれぞれ分離・独立 …「棲み分け」
・新しいタイプの飲食・宿泊施設
 →カフェ、レストラン、ホテル
・19世紀の新しいタイプの都市の居酒屋
 →ヴィクトリアンパブ、ミュージックホール、音楽カフェ、キャバレー
  →エンタテインメントが中心
  …工業化の影響、ライフスタイルの変化

○大衆カフェの登場
・コーヒーもコーヒーハウス(カフェ)もアラブ地域から伝来
・ヨーロッパにカフェ登場 …1647年のヴェネツィア
 →1700年頃までにヨーロッパの大都市に普及
  …客は上・中流階級
・18世紀後半になると、大衆カフェが設立
 →酒がメイン。コーヒー以外ではポンスという火酒(焼酎)をベースにしたリキュール。

○メニューから好みのものを注文
・レストラン …1765年、パリでブーランジェという人物がはじめたという定説
 →ブイヨン(スープ)が「元気を回復させる」restaurerという意味の旨
・1789〜1820年、パリのレストランは30軒から3000軒へと激増
・ドイツ、1870年代から近代的レストランが増加

○文明の象徴−−ホテル
・ホテル →中近世フランスでは宿屋の意味
 →イギリスのインに当たり、居酒屋であった
・19世紀、ホテルは上流階級の宿泊専用施設として独立

○テクノロジーに負ける居酒屋
・科学技術の発展 →居酒屋へ来なくとも酒が飲めるようになった
 →パスツールの開発した低温殺菌法(パスタライゼーション)
 →リンデの冷凍機の発明

○ヴィクトリアンパブ
・19世紀初頭のイギリスの居酒屋
 →パブと呼ばれる=パブリックハウス
・ヴィクトリア女王(在位1837〜1901年)の統治時代
 →パブの代表がヴィクトリアンパブ
 →酒場建築 …スイス風、ゴシック風、ギリシア風、イタリアルネサンス風
 →空間の分割 …下層階級用と上・中流階級用の区別
・パブの数は1870年代後半になると減少へ

○一週間に26万もの客−−ジンパレス
・19世紀前半、ジンパレスという形態の居酒屋が都市に登場
 →椅子もなく、カウンターで立ち飲み
 →下層階級、労働者の溜まり場

○ミュージックホールの全盛期
・イギリス、1843年の「劇場法」
 →演劇の公演の際は飲食禁止(もちろん酒も)
・「ミュージックホール」 →チャールズ・モートンという人物が生みの親
 →巨大な音楽パブ
 →19世紀末に全盛期を迎え、その後廃れた

○居酒屋天国フランス
・フランスの居酒屋 →19世紀に激増
 →1789年(革命期)  約10万店
  1830年        約28万店
  1914年        約50万店
・居酒屋天国フランス
 →人口1000人に対して ロンドン    1軒
                ニューヨーク  3軒
                パリ      11軒超

○労働者の出会いの場−−パリ
・居酒屋を通して →新しい仕事の紹介
            →ストライキの計画
・19世紀のフランスの都市の居酒屋
 →イギリスに比べてまだ従来の「多機能性」をある程度存続

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