米国の最先端半導体技術を引っ張る意気込みと改めて知る規模
米国Obama大統領が、年頭の一般教書演説を行い、先端のものづくり、基礎研究を引っ張って輸出を倍増するという目標を掲げる中で、輸出No.1の半導体の重みを強調しているということで、米SIAからこの時期恒例ではあるが、改めて歓迎・称賛のメッセージを発している。時を同じくして、米インテル社のアリゾナ砂漠に位置し14-nm線幅の半導体が製造される最先端工場の建設の模様が紹介され、大統領も訪問するとのことであるが、取り組みの意気込みとその規模の壮大さを知らされている。
≪米国の引っ張る取り組み≫
一般教書演説を受けた米SIA(Semiconductor Industry Association)のメッセージは、次の通りプレスリリースされている。
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○国家のトップ輸出産業として、1月24日に出された大統領の革新、技術および先端製造への重点化を称賛する…1月24日付けSIAプレスリリース
半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)は、今夕議会に対する年頭一般教書でObama大統領が説明したアメリカの経済革新を推進、伸ばしていく約束を称賛する。SIAは特に、国家の短期的および長期的目標に向かうバランスのとれたアプローチとして、大統領が科学技術教育、基礎研究投資、高度熟練者immigration改革、税制改革および公正な貿易に重点化、注目することで自信を取り戻している。
「もう一度、Obama大統領は、アメリカで生まれ育った発明の才、先端製造、基礎研究出資の輝かしい例および大統領の輸出を倍増するという目標の要として、“computer chip”、半導体を強調している。我々の業界は、我が国家の経済的力強さにおいて重要な役割を果たしていることを誇りに思う。しかしながら我が重要な業界を維持、成長させる上で政策手段が必要とされている。」とSemiconductor Industry Associationのpresident、Brian Toohey氏は言う。
Semiconductor Industry Associationは、議会と政権に対し、経済回復を強めて今後のアメリカの繁栄を確固とするよう、研究および教育への長期連邦出資の約束、並びに米国税制、法制および労働力政策の改革を協働して行うよう奨励する。議会と政権は、以下の行動を起こさなければならない。
・自然科学の基礎研究への戦略的投資およびScience, Technology, Engineering and Math(STEM)教育の改善
・先端製造についての規制が共通の目標への到達を確実にすること
・半導体R&Dおよび製造投資を米国に引きつける競争力のある環境を確実にするよう、R&D税額控除強化の恒久的延長および法人税政策改革
・米国輸出管理の改革およびlicensingプロセスの合理化
・輸出集中の業界について外国の競合に対して不利にならないように互角のplaying fieldを確実にすること
・高度の教育を受けたworkersをアメリカの労働力に向けて維持するようビザ政策の改革
「半導体業界は経済革新を前進させており、今日の米国で最も重要な先端製造&技術産業の1つである。この業界は引き続きアメリカが将来到達を望む経済成長および進展における礎石である。」とToohey氏は続ける。「我々は我が国の今後において重大な岐路にあり、この業界では効率的で柔軟な規制および熟練度の高いimmigration改革が、議会と政権が繁栄する経済革新を確実にするためにいっしょになって働くべき肝要な政策となる。」
さらにSIAとそのメンバー会社は、模造品に関する通商執行の重点強化を支持しており、この増え続ける問題について政権といっしょに取り組むことを期待している。これには模造半導体を業界と協力して国境で阻止すること、および海外でのintellectual property(IP)施行活動を支持することの二重のアプローチが含まれる。
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同日付けの記事として、アップルのiPhoneなどを製造する仕事がアジアに行ってしまって米国に戻ってこないという問題意識が取り上げられており、1年前にSteve Jobs氏がObama大統領に戻らないと明言しているという下りがある。理由として以下の解釈である。
◇Time to play hard ball on tech manufacturing(1月24日付け EE Times)
→New York Timesの記事“How the U.S. Lost Out on iPhone Jobs”発。アジアに移った製造jobsが戻ってこない理由として、米国の製造ベースは進化できず、アジアのエレクトロニクスsupply chainが優っており、アメリカのworkersは12時間シフトで会社の寮で過ごしたくない旨。
米国は最先端を引っ張っていかなければという動機になる内容であるが、その象徴と言えるインテル社の最先端半導体工場について次の通り相次ぐ紹介記事である。
○米インテル、アリゾナ砂漠に最先端半導体工場(1月23日付け 日経電子版)
→・来年完成予定、回路線幅14-nm
・スマートフォン市場への進出狙う
・安い労働力より知的財産重視
・原子レベルで作業する工場
・「正確にコピー」で製造能力を迅速に拡大
◇Intel's Arizona plant to make tiniest chips-Intel to make 14nm chips at its new fab in Arizona (1月25日付け Computer Business Review)
→Intelが、ArizonaのFab 42の建設&装置設備に$5B投資、該ウェーハfab拠点が来年完成すると、14-nm線幅の半導体が製造される旨。
この工場建設の状況が写真で次の通り紹介されているが、世界最大の移動クレーン、Big Bennyは、全長約225m、最大3200トンの重量を持ち上げられるとのこと、壮観である。
○A First Look at Intel's 14nm Fab 42 Manufacturing Facility (1月25日付け tom's hardware)
→≪写真≫ 工場建設の様子
⇒http://media.bestofmicro.com/fab,W-Q-323882-13.jpg
⇒http://media.bestofmicro.com/fab,W-S-323884-13.jpg
⇒http://media.bestofmicro.com/fab,W-R-323883-13.jpg
全面的に歓迎といかないのは何処も同じということか、大統領の該工場訪問に関連して以下の記事が見られる。
◇Obama visit to Intel facility irks workers told to stay home (1月25日付け EE Times)
→Obama大統領のIntel社Chandler, Ariz.製造拠点訪問は、同社には非常に大きな恩恵かもしれないが、セキュリティの理由から大統領訪問の日は無給で在宅を求められている1,500人以上の従業員にはいささか高揚には至らない旨。
≪市場実態PickUp≫
インテル、Samsungとともに、今や最先端技術を引っ張る一角を占めるTSMCであるが、競合の応酬が飛び交うなか、以下の反撃コメントが見られている。早速に根拠となるデータを求める反応を引き起こしている。
【TSMCの反撃】
◇TSMC returns fire over 28-nm process issues (1月26日付け EE Times)
→TSMCの28-nm CMOS製造プロセスに歩留まり問題があるとするアナリストの見方にTSMCが反撃、TSMC Europeのpresident、Maria Marced氏が、当人はじめTSMC executivesが前から言ってきている28-nmノードについての欠陥密度削減が40/45-nmプロセス技術のときより先行して予定通り進んでいると、繰り返している旨。
◇ARM on TSMC's 28nm beats Atom on Intel's finfet 22nm process, says TSMC-TSMC likes the way 28nm ARM chips work (1月26日付け Electronics Weekly (U.K.))
→TSMC Europeのpresident、Maria Marced氏。TSMCの28-nmプロセスで作ったARM-ベース半導体は、Intelの22-nm finfetプロセスで作ったAtomプロセッサより性能が優れ、それには技術だけではなくアーキテクチャーもある旨。
今度こそ$300 Billionの大台を優に超えると予測された昨年、2011年の世界半導体販売高であるが、後半以降の世界経済の低迷基調の強まりからその予測の雲行きが怪しくなってきている様相がある。
【$300 Billionの壁】
◇Analyst sees chip sales rebound in December (1月23日付け EE Times)
→Carnegie Group(Oslo, Norway)のアナリスト、Bruce Diesen氏。12月のグローバル半導体販売高・3ヶ月平均が、World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)から$24.1Bの発表になりそうな旨。11月の3ヶ月平均、$25.13Bからは減少するが、低下幅は通常パターンよりは小さく、年末に合わせて市場が戻す見方が出てくる旨。12月の実際の販売高は前年同月比5.5%減の約$25.1B、2011年のグローバル半導体販売高は約$300B、2010年比フラットの見込みの旨。
先端を引っ張るインテルに対して、volume zoneのエレクトロニクス機器市場を引っ張るアップルの勢いが以下の通り凄まじいものがある。
【アップルの勢い】
◇Apple was top chip buyer in 2011, Gartner says (1月24日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)発。Apple社が、2011年の半導体ベンダーのトップ顧客に、iPhones, iPadsおよびMacBook Airの成功継続が引っ張って、$17.3B相当の半導体を購入、設計total available market(TAM)ベース購入半導体の5.7%を占める旨。Appleは、2010年の第3位からHewlett-Packard Co.およびSamsung Electronics Co. Ltd.を抜いて第1位に上がっている旨。
・2011年会社別半導体設計total available market(TAM)トップ10
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120124_gartner_apple_TAM_423.png
◇アップル最高益1兆円、2011年10〜12月期決算 (1月25日付け 朝日新聞デジタル)
→米アップルが24日発表した2011年10〜12月期決算は、売上高が前年同期比73%増の$46.333B(約3兆6千億円)、純利益が約2.2倍の$13.064B(約1兆150億円)。創業者スティーブ・ジョブズ氏が死去した後の決算だけに業績に注目が集まったが、ともに同四半期としては過去最高だった旨。
◇Apple snatches Smartphone lead from Samsung in Q4 (1月27日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。2011年第四四半期のスマートフォン出荷、Appleが37M台、前四半期(17M台)比117%増でSamsungから首位奪還、一方、2011年間ではSamsungが世界最大のスマートフォンブランドになった旨。
・2011年第四四半期および2011年間スマートフォン出荷データ
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/sylvie/ihs.JPG
アップル向けプロセッサを製造するSamsungが、現状の市況を反映して、メモリからロジックに重点をシフトする事態となっている。以下の数値が如実に物語る動きである。
【Samsungの重点シフト】
◇Logical Step: Samsung Shifts Its Focus for Chips-Samsung shifts strategic focus to logic chips (1月26日付け The Wall Street Journal)
→Samsung Electronicsが、commodity DRAMsより儲かる可能性があるロジック半導体の開発に戦略的リソース重点化、SamsungのスマートフォンおよびiPad、iPhoneに入るプロセッサ製造で次の業況の旨。
ロジック半導体事業 2011年:約70%増 約$10B
メモリ半導体 2011年:10%減 約$23B
≪グローバル雑学王−186≫
日本人の勤勉さ、勤労精神、そして必ずしも良い点ばかりではない日本人のアイデンティティをネタに、
『100万人が笑った! 「世界のジョーク集」傑作選』 (早坂 隆/著:中公新書ラクレ 400)
…2011年11月10日 発行
より、ジョークを味わっていく。日本人の集団主義、最近ではガラパゴス現象という表現もあるが、日本人でまとまって日本の中での展開にこもりがちというのは、わび、さび、繊細さに磨きがかかるのはよいものの、世界に打って出ることが迫られると、いつも大きく立ちはだかる課題、障壁になるという思いを繰り返している。
第3章 日本人を笑え! 【その1−3】
◎世界の教育大国
・日本は江戸時代から、教育に力を入れてきた歴史
→維新後、速やかに近代化に成功
⇒昔から日本は世界で随一の教育水準を誇る国
■望み 【勤勉・勤労】
日本人とフランス人が逮捕され、懲役20年という刑が下された。ひどく落胆した様子の二人に、刑務官が言った。
「特別に10年ごとに一つだけ何でも望みを叶えてやろう。それでは、最初の10年のために欲しいものはなんだ?」
日本人は1000冊の本を頼んだ。
フランス人は1000本のワインを頼んだ。
それから10年が経ち、再び刑務官がやって来た。刑務官は次の10年のために何が欲しいのかを尋ねた。
日本人はまた1000冊の本を頼んだ。
フランス人は栓抜きを頼んだ。
◎努力を惜しまない人々
・世界の喜劇王、チャールズ・チャップリン
→日本を「世界一、努力を惜しまない国」と評する
・ほかに、ペリー提督、マハティール首相
■ジャパニーズ・ビジネスマン 【勤勉・勤労】
アメリカに駐在することになった日本のビジネスマンがいた。彼の新たな仕事先は全米でも有数の勢いを誇る新興企業で、社員を猛烈に働かせることでも有名だった。彼の新しい上司はこう言った。
「明日から週6日、1日に12時間ずつ働いてもらいたい。それでいいかな?」
それを聞いた日本人は、驚いて答えた。
「ちょっと待ってください。私ははるばる日本から来たんですよ。それなのにそんなパートタイムの仕事を任せるなんてあんまりです」
◎長い就労時間
・家族と共にとる夕食を犠牲にしてまで仕事をするという生活
→欧米人からするとなかなか理解し難い
・ルーマニアでは仕事が午前と午後にシフト化
→どちらかに働けばよいシステム
■早く飛び込め! 【アイデンティティ】
ある豪華客船が航海の最中に沈みだした。船長は乗客たちに速やかに船から脱出して海に飛び込むように、指示しなければならなかった。船長は、それぞれの外国人乗客にこう言った。
アメリカ人には
「飛び込めばあなたは英雄ですよ」
イギリス人には
「飛び込めばあなたは紳士です」
ドイツ人には
「飛び込むのがこの船の規則となっています」
イタリア人には
「飛び込むと女性にもてますよ」
フランス人には
「飛び込まないでください」
日本人には
「みんな飛び込んでますよ」
◎集団主義
・日本人がしばしば見せる、周囲の人々に自らの振る舞いを過剰に合わせる行動パターン
・「ムラ(村)」という閉鎖的な共同体の中での独特の集団意識
■遅刻の対処法 【アイデンティティ】
国際的な学会の場で遅刻してしまったために、発表の持ち時間が半分になってしまった場合、各国の人々はどうするだろうか?
アメリカ人…内容を薄めて時間内に収める。
イギリス人…普段通りのペースで喋り、途中で止める。
フランス人…普段通りのペースで喋り、次の発言者の時間に食い込んでも止めない。
ドイツ人 …普段の2倍のペースで喋る。
イタリア人…普段の雑談をカットすれば、時間内に収まる。
日本人 …遅刻はありえない。
◎正確なダイヤ
・ルーマニアでは鉄道が1時間、2時間遅れることなど、日常茶飯事
・ハンブルクで2時間以上列車が遅れた例
・旧東ドイツの地域を走る列車は、今でも当然のようにダイヤが乱れるとのこと
◎異なる文明圏の国
・ルーマニアでは、日本のことを「ツァーラ・ソアレルイ(太陽の国)」
→神秘性を感じさせる響き
◎自分たちは世界からどう見られているのか
・ヒトやモノのグローバリズムが急激に進展していく大きなうねりの中
→これまで以上に強く抱くようになった問いかけ:
「自分たちは世界からどう見られているのか」