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グローバルに感動、共感を呼ぶ製品・技術・サービス力の発揮

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「カリスマの残像」、手は「芸術家」・言葉は「機関銃」、などなどSteve Jobs氏を巡る記事や番組が引きも切らず、発売された「iPhone 4S」も事前評価以上の人気を呼んで米アップルの株価が終値の最高値を更新している。
パソコン業界も挽回を図るよう、超薄型・超軽量に使い勝手の工夫を施して「ウルトラブック」が各社から発表されようとしており、業界全体に改めて活が入った様相である。グローバルに通用して、感動、共感を呼ぶ製品・技術・サービス力の発揮が、今また問われている受け止め方である。

≪Steve Jobs氏余韻のなかの動き≫   

現代のインターネットの力を思い知らされるが、経済格差などへの不満から世界各地で抗議デモが広がっている。これに対して米国では、世界のリーダーの立場を築く根底となった"発明と製造"の原点を再現して、新たなサイクルの回復にもっていこうという訴えかけが行われている。

◇Where are the jobs? (10月10日付け EE Times)
→米New YorkのWall Streetで始まり広がっている抗議デモについて論説記事。Massachusetts Institute of Technology(MIT)学長、Susan Hockfield氏のNew York Times評論を引き合い:"今日、我々の最も重要な責務は、米国をここまでにした発明と製造の高潔なサイクルを再開すること。製造こそ米国の回復を焚きつける原動力である。"

米国の半導体業界を代表するSIAからは、韓国はじめ各国との貿易自由化がこのほど一層進展したことを歓迎して、以下のステートメントを発表している。自らのアイデア、構想をもって世界中に人々の熱狂的な支持を呼び起こしたSteve Jobs氏であるが、まさにこれをお手本の一つに続く製品・技術・サービス力をもってグローバルにアピールするとともに、米国での雇用創出を結果的に高めていく期待のアプローチと理解している。

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○アメリカのNo.1輸出業界はFree Trade Agreements(FTAs)可決を称賛−コロンビア、パナマおよび韓国との貿易協定は、アメリカのハイテク労働者のjobsを創出、輸出を増大促進 …10月13日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、コロンビア、パナマおよび韓国とのfree trade agreements(FTAs)通過可決について、議会および政権内閣を称賛した。該合意は、成長する輸出市場へのアクセスを増やして、半導体などハイテク製品の輸出を結局は高められる貿易agendaを促進する助けとなる。さらに該合意は、国境の障壁を取り除き、サービス貿易、intellectual property(IP)およびインターネットを扱う詳細なsectionsが含まれ、そして国内法および国際標準の完全施行に基づく労働&環境sectionsがある。

「半導体はアメリカのトップ輸出産業であり、半導体の3/4がアメリカで設計&製造され、我々の販売高の82%が国外である。成長する市場へのアクセスは、我々の業界の成功に重大、重要である。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident、Brian Toohey氏は言う。「これらFTAsの可決が新たに米国貿易政策を強化する重点化の始まりになることを我々は期待しており、これらの合意を通してさらなるアメリカのjobsおよび経済成長を起こす働きに対して我々は議会および政権内閣の両方を称賛する。」

該合意の可決は、Trans-Pacific Partnership(TPP)のさらに踏み込んだ交渉およびInformation Technology Agreement(ITA)の拡大に向けて道を開くものである。これら両方、関税撤廃の準備、intellectual property(IP)保護および国際標準がすばやく進化する半導体技術に確実にペースを合わせるのに重要となる。

この10月6日に、SIAとHigh-Tech Trade Coalitionは、FTAsについての行動を促進するよう下院議員に書簡を送っている。
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我が国も米国と同様の問題を抱えており、FTAおよびTPPを巡って賛否両論のつばぜり合いが行われている。我が国ならではの世界をうならせる製品・技術・サービス力を発信していかなければ、Steve Jobs氏のようなインパクトを引き起こすのは困難と思うし、そのような種を大事に育成していくことという国を挙げたスタンスにかかってくると考える。


≪市場実態PickUp≫

ギリシャに端を発し現在は欧州危機に拡大したEUの金融危機という情勢の中、半導体業界においても先行きの厳しい見通しがはっきりと表われてきている。

【厳しい見通し】

◇Infineon sees falling 4Q11 after tepid quarter (10月14日付け EE Times)
→Infineon Technologies AG(Munich, Germany)が、2012年度第一四半期(2011年10-12月)売上げが前四半期比一桁の真ん中から高めの減少になると見込む旨。9月30日締め第四四半期の売上げは約$1.425B、前四半期比実質フラットの旨。

◇TSMC's Chang gives bleak outlook for 2012 (10月14日付け EE Times)
→TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏が、世界経済そしてそれに密接につながる半導体業界について陰鬱な見通しのコメント、水曜12日のある表彰セレモニーにて「来年を通してswallowは見えてこない」(Taiwan Economic News発)旨。

DRAMの微細化によるコスト削減はどこまで続くのか。先頭を走る韓国勢の低コスト化に対して台湾勢が受けているプレッシャーである。

【DRAMコスト】

◇Taiwan DRAM makers feel cost pressure from Samsung and Hynix 30nm production (10月12日付け DIGITIMES)
→2GビットDDR3 DRAMのスポット市場価格が$1以下に低下、台湾のDRAMメーカーは不安視していないが、Samsung ElectronicsおよびHynix Semiconductorが30-nm技術ベース量産開始で謳歌している低コスト 化による競合を心配している旨。業界筋によると、2GビットDDR3 DRAMのコストが$0.65に下がる動きである旨。

我が国が奪還したばかりのスーパーコン世界最高速度。二番ではダメと溜飲が下がったのも束の間、こんどはまたまた米国勢が巻き返す動きである。

【スーパーコン世界一塗り替え?】

◇AMD, Nvidia to power 10-petaflop Titan (10月11日付け EE Times)
→米国エネルギー省のOak Ridge National Laboratories発。Cray社が、最高速度10〜20 petaflopsのスーパーコン、Titanシステムの構築に、AMD社製OpteronプロセッサおよびNvidia社製Teslaグラフィックスプロセッサを使用、現状のスーパーコン速度世界記録を粉砕することになる旨。

IMECのpressイベントが開催され、EUV、450-mmに積極的に取り組んでいる状況が伝えられている。欧州の金融危機の渦中ではあるが、IMECのグローバルにまとめる堅実な取り組みを従来に引き続き感じている。

【IMECのpressツアー】

◇ASML, IMEC renew development pact (10月10日付け EE Times)
→リソ装置開発大手、ASML Holding NV(Veldhoven, The Netherlands)とIMEC(LEUVEN, Belgium)が、2011年から2015年にわたるコラボ合意に調印、両者は長年、光およびextreme ultra-violet(EUV)の両方で数世代のリソ装置について緊密に協働、IMECは最初のalpha EUVリソ装置の1つを300-mm試作fabに導入している旨。

◇IMEC plans 450-mm wafer fab module for 2015(10月11日付け EE Times)
→IMECのpresident and CEO、Luc van den Hove氏が、press gatheringにて(LEUVEN, Belgium)示した予定表発。2012年に450-mmウェーハツールおよび計測testingが始まり、2013年から2016年の間に450-mmプロセス開発に移り、2016年ごろに先端生産が始まっていく旨。

教育向けが先立つインドらしいアプローチによるタブレットの登場である。
政府の肝いりで35米ドルで学生に提供するとのことである。

【インド政府によるタブレット】

◇India claims Rs.1,569.51 tablet computer (10月10日付け EE Times India)
→インド政府が、学生向けtabletコンピュータを打ち上げ、Rs.1,569.51($35)の助成価格、これまで知られていない英国のワイヤレスWebアクセス製品を開発するメーカー、Datawind Ltd.(英国)製の旨。同じものが一般に流通価格Rs.2,690.58($60)で販売される旨。


≪グローバル雑学王−171≫

我々が行動する世界の範囲を大きく変えたといえば自動車と飛行機。当たり前のように乗って、あるいは利用しているが、まずは20世紀の初頭を飾る偉業と言われる飛行機について、

『世界を変えた発明と特許』 (石井  正 著:ちくま新書)  
 …2011年 4月10日 第一刷 発行

より、ライト兄弟の飛行機の発明に挑戦する経緯を辿っていく。飛行機の離陸、着陸の際に、窓越しに目にする主翼に付いた補助翼の動きであるが、最大の技術課題のソリューションと以下で知らされている。特許の係争、特許権が内包する問題はじめ特許に孕む現実のドラマは、現在も変わらない内容と受け止めている。


第3章 ライト兄弟 vs. カーティス −−−飛行機に基本特許はあるのか

□ライト兄弟とカーティスの出会い
・グレン・カーティス(Glenn Hammond Curtiss)(1878〜1930年)と飛行船研究で有名なトーマス・スコット・ボールドウィン(Thomas Scott Baldwin)
 →ライト兄弟(兄ウィルバー・ライト[Wilbur Wright:1867〜1912年]、弟オーヴィル・ライト[Orville Wright:1871〜1948年])と、1903年Kitty Hawk, North Carolinaでの初飛行成功から3年後くらいの出会い
 →ライト兄弟がカーティスとボールドウィンに、珍しくかなり踏み込んだ技術の話

□飛行中の横滑りをどのように回復させるか
・この話の中、飛行中に機体が横に傾いたときの、回復のための技術についても
 →兄弟が解決にもっとも苦労した課題
・わずか2年後の1908年、あの若者、カーティスが飛行機を製作、1550mを1分42秒で飛行
 →特許権侵害ではないか
・カーティスの飛行機の主翼に小さな補助翼、エルロン(aileron)
 →ライト兄弟は警告状を発送
 →ライト兄弟とカーティスとの間の特許権侵害訴訟の開始

□飛行機の発明に挑戦する兄弟
・ライト兄弟による飛行実験とその成功、航空機の発明は、20世紀の初頭を飾る偉業
 →最も重視…ドイツのオットー・リリエンタール(Otto Lilienthal:1848〜1896年)によるグライダー実験の結果
 →リリエンタールは飛行実験中に墜落死
・ライト兄弟は飛行機の発明の前に、あらゆる技術知識を吸収
 →1901〜1902年、グライダーを大型化、人間の乗ることのできる飛行機の製作そして飛行実験へ
 →常に悩まされた回復制御の問題

□鷹の飛ぶ姿から発見した解決策
・飛行中に機体が横に傾いたときに、主翼をひねるという発明
 →自然の中の鷹の飛行を観察した結果
 →ライト兄弟が得た飛行機の特許のうち、最強のもの
・この特許出願から8ヶ月後、1903年12月17日、エンジンによる力で飛行に成功
 →飛行機の時代の偉大なスタート

□航空機の基本特許
・ライト兄弟による航空機の基本特許
 →請求範囲における「異なる仰角を生じさせるための上下に可動な翼端部」が重要な要素
・カーティスの発明を見て、ライト兄弟は彼らの発明のクレームを修正していった
 →ひどく分かり難いクレームに

□電話の発明者ベルがカーティスを支援
・電話の発明者、アレクサンダー・グラハム・ベル(Alexander Graham Bell)
 →電話機特許によって得た資金で、飛行実験協会を結成
 →カーティスは、ベルの眼鏡にかなった人物

□独自のアイデアを生み出した天才カーティス
・最大の技術的課題…飛行中に機体が斜めとなり横滑りを始めたときの、回復の方法
・主翼をひねるという方法に代わる技術的方法がないか
 →1908年、天才カーティスが、主翼のひねりの代わりにエルロンというアイデア
  →主翼の後方縁に沿って上下する小翼(エルロン)
   …左右の主翼に設け、横方向の飛行の安定、離陸と着陸の際の揚力の確保

□泥沼化した特許権侵害訴訟
・ライト兄弟は1909年に特許権侵害の訴え
 →エルロンが、兄弟の発明に共通するアイデアであるかどうか?
・控訴審では再審、1914年にこの再審の結論
 →判断は変わり、カーティスのエルロンはライト兄弟の特許を侵害するもの
・ライト兄弟はこの結論を得て、1機あたり1000ドルのロイヤリティで製造ライセンス付与
 →いかにも厳しい条件 …当時の飛行機の価格はせいぜい3000ドルから5000ドル程度

□すべての航空機特許を集めてプールするという解決策
・1917年4月、米国は第一次世界大戦に参戦することを決定
 →ライト兄弟特許を米国航空機メーカーが使用できるかが国家課題に
・全米航空諮問委員会は、クロス・ライセンシング協定の案を提示
 →米国が参戦決定する際の重要な条件の一つに
・クロス・ライセンシング協定のメンバーは、航空機に関するライト兄弟とカーティスの基本特許権を使用可、お互いが保有している飛行機に関する特許権は自由に相互に使用可
・これらクロス・ライセンシング協定は、第二次大戦後も存続
 →1975年にようやく終わりに

□自動車の基本特許問題の場合
・自動車にも飛行機と同様、基本特許問題が発生
 →19世紀末のジョージ・セルデン(George B. Selden)(1846〜1932年)による自動車特許
・あきらめなかったセルデンの強さ
 →拒否通知が来るたびに、出願明細書の内容を修正
・出願から16年、1895年に米国特許庁がセルデンの発明を特許と認める
 →自動車王のフォードは、1895年には32才の働き盛り、自動車生産に全力

□遅れて特許になると、深刻な問題を引き起こす
・TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)
 →特許の保護期間は、出願日から計算して20年の期間が経過する前に終了してはならない
・ところが当時の米国、特許期間は特許になってから起算
 →セルデンの特許出願が1879年、訴訟で決着のついたのが1910年
  …30年を超す争い
・日本においても同じような深刻な問題が発生
 →半導体集積回路のキルビー特許
・その後、多くの国では特許権の期間は出願から始まるのであって、特許権になってからの期間ではないと制度改正

□パイオニア発明をどのように保護するか
・パイオニア発明の特許権は難しい問題を引き起こすことも
 →基本発明の場合、特許権になるのが遅れる傾向
 →貴重な革新的発明を生み出した者に、適正な保護を与えることができないという別の問題
・現代では、基本特許権を中心にして関連する特許権を集めて、まとめてライセンシングする仕組み=パテント・プール
・もう一つ、特許制度の中に強制実施許諾制度を設けるやり方
 →米国では、原子力などの場合には、直接、国がその特許権に関わっていく

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