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市場の変化に対応する<現実>と将来に誘う技術の<夢>の真っ只中

企業法人向けPCに重点化し、利益率の低い個人消費者向けPC事業は分離していくと発表したばかりのHewlett-Packard(HP)でトップの交代が発表され、かつてのIBMを想起させる動きで早速市場の反響を呼んでいる。新たなモバイル機器活況のなか、現下の潮流変化に今後どう対応していくかに注目である。一方、半導体・エレクトロニクス関係の展示会、学会の季節を控えて、将来に向かう新技術へのアプローチの概要が見えてきている。市場の現実と技術の夢の狭間で両睨みのスタンスにならざるを得ないところがある。

≪市場の現実と将来技術の夢≫   
 
現在の市場で注目キーワードというと、タブレット、スマートフォンというモバイル機器とクラウドコンピューティングになるかという受け止めであるが、後者については次の見方がある。

◇Cloud computing offers big opportunities in Enterprise IT for wireless service providers (9月17日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。cloud computingブームがワイヤレスサービスプロバイダーに大きなopportunitiesを生じており、consumerおよび企業投資が見込まれる市場について向こう5年で約5倍、2015年に$100B以上の儲けが可能と見る旨。

一方、本来のグローバルPC市場については、鈍化傾向が言われるなか、第二四半期は盛り返しているというデータが見られる。

◇IHS: PC market returned to growth in Q2 (9月19日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。本年最初の3ヶ月、第一四半期は前四半期比および前年比で減少を経て、第二四半期のグローバルPC市場は全体で85.6M台の出荷、前四半期比3.7%増、前年同期比6%増の旨。Lenovo Group Ltd.(北京)が第二四半期に、1ランク上がって世界第3位のPCブランドに、トップ5メーカーの中では最も力強い伸び率を示している旨。
・第二四半期PC出荷市場シェア・トップ5ランキング
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110919_ihs_pc_rankings.png

非常に見定めが難しいところであるが、敏感に反応せざるを得ない半導体市場では、TSMCの以下の修正が行われている。

◇Report: TSMC to slash 2012 capex (9月21日付け EE Times)
→Taiwan Economic News発。TSMC(Hsinchu, Taiwan)が、2012年capital spendingを2011年に対して19%削減、$6Bにしようとしている旨。本年2011年は、2010年の$5.9Bから25%増の$7.4Bを計画している旨。この結果としてTSMCの製造capacityは、次の通り着実に拡大していくと見られる旨。
 2010年    2011年    2012年
 約11.3M枚  約13.5M枚  16M〜17M枚

Hewlett-Packard(HP)におけるトップ交代の動きと反応の推移が、受け止めた時間順に次の通りである。

◇HP's board reportedly considers new CEO (9月22日付け EE Times)

◇HP keeps strategy, names Whitman CEO (9月22日付け EE Times)
→Hewlett-Packard(HP)が、新しい同社chief executiveにMeg Whitman氏を指名、前CEO、Leo Apotheker氏の下で行われた戦略的決定を再び確認するが、それらの実行は新リーダーに託し求める旨。

◇ヒューレット・パッカードCEO辞任、業績低迷で更迭か (9月23日付け asahi.com)
→米コンピューター大手ヒューレット・パッカード(HP)が22日、レオ・アポテカー最高経営責任者(CEO)が辞任し、米ネットオークション最大手イーベイ元CEOのメグ・ホイットマン氏を後任に指名したと発表の旨。

この動きをどう見るか、同社の現状の立場の難しさとともに、事業分離は止めになるのではないか、という入り混じったジレンマの反応となっているようである。

◇HP: How to polish a Silicon Valley gem (9月22日付け EE Times)
→モバイル製品およびクラウドサービスにますます市場が分かれていく中、HPは中間の気まずいところにいる旨。

◇HP likely to cancel plans to spin off PC unit (9月23日付け DIGITIMES)
→notebookメーカー筋発。Hewlett-Packard(HP)が、報道されているようにCEO、Leo Apotheker氏が交代となれば、同社PC事業部門を分離するという以前の発表が反故になる可能性の旨。HPは、2011年に37-38M台のnotebooksを出荷予定の旨。

売れて儲かっての評価が先立つ現実の市場ではあるが、飽きっぽい市場をどう満足させるか、やはり新技術の台頭がなければ続くものではないということで、タイミング良く来る12月のInternational Electron Device Meeting(IEDM)から好材料の発信が以下の通り相次いでいる。

◇IEDM: IBM to report 2-GHz graphene IC (9月18日付け EE Times)
→IBMの研究者が、来るInternational Electron Device Meeting(IEDM)(12月5-7日:Washington DC)にて、CMOSコンパチ製造プロセス技術での2-GHz周波数doubler(2逓倍)高周波回路の製造について報告予定の旨。
・断面SEM写真
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/pcIEDMgrapheneIBMcross-section412.jpg
・8-インチgraphene FETウェーハ、単一dieなど4写真
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/pcIEDMgrapheneIBMsequence412.jpg

Grapheneについては次の見方が出されている。

◇Graphene won't beat silicon circuits until 2024-Silicon will keep crown until 7nm dead end (9月19日付け TechEye.net)
→Georgia Institute of TechnologyのJames D. Meindl氏。CMOS半導体製造は7-nm、2024年あたりが壁となり、grapheneが主役になると見る旨。

Intelが製品ベースで発表したばかりのFinFETsであるが、Samsungのアプローチは次の通りとなっている。 

◇IEDM: Samsung to present 20nm process (9月21日付け EE Times)
→来るInternational Electron Device Meeting(IEDM)(12月5-7日:Washington DC)にて、Samsung Electronics Co. Ltd.が、次期20-nmロジックプロセスを披露する予定、該プロセス技術はプレナー、標準のbulk CMOSを用いて作られ、FinFETsはなく、トランジスタ周りの材料がエッチ除去されてトランジスタがfin-like構造に残される旨。

もう一つ、多彩なphase-change memory(PCM)の進展に注目である。

◇IEDM: cognitive science makes use of PCM technology (9月22日付け EE Times)
→来るInternational Electron Device Meeting(IEDM)(12月5-7日:Washington DC)にて、認識機能をまねるよう設計、生物学的に鼓舞されるエレクトロニクスシステムをphase-change memory(PCM)が如何に可能にするか、2、3の研究論文報告がある旨。

◇IEDM: PCM research moves to 20-nm (9月23日付け EE Times)
→International Electron Device Meeting(IEDM)(12月5-7日:Washington DC)のプログラム全容がオンライン公開、SamsungおよびMacronixとIBMの間の今後のアライアンスなど、phase-change memory(PCM)に入る研究の流れが続いている旨。

IEDMの伝統となっているemerging技術セッションであるが、今年のテーマはenergy harvestingとのこと。以下の例が見られている。    

◇Novel solar cells to be detailed at IEDM (9月19日付け EE Times)
→台湾のNational Nano Device Laboratoriesの研究者が、来るInternational Electron Device Meeting(IEDM)(12月5-7日:Washington DC)にて、CMOSプロセス処理とコンパチで環境に敏感なsolar cell製造プロセスの詳細を述べる旨。論文番号36.5の"Bifacial CIGS (11% Efficiency)/Si Solar Cells By Cd-Free And Sodium-Free Green Process Integrated With CIGS TFTs"で、thin-film transistors(TFTs)と統合して2面solar cellを作るのに用いるプロセスである旨。  


≪市場実態PickUp≫

世界経済の混沌も相まって、半導体市場の読みがますます難しくなるのは致し方ないことではあるが、最新予測も次の通り年内はせいぜい今のペース止まりという見方が優勢である。

【半導体市場予測】

◇Forecast sees hard year, fewer chip makers (9月19日付け EE Times)
→IC Insights(Scottsdale, Ariz.)秋季予測。グローバル経済およびモバイルシステム移行の不安定さが漂うなか、半導体販売高は本年5%止まりの伸びでどうにかこうにかやっていくという状況と見る旨。しかし来年は二桁の伸びに向かい、長期的には業界の統合により穏やかな拡大が維持される旨。以下の認識:
 −Mobile shifts in systems sales
 −DRAMs drag down chip prices
 −Fewer, bigger chip makers ahead

◇Gartner: Chip inventory levels 'worrisome' (9月20日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)発。現在の状態および消費者&ビジネス出費が当初予想より弱含みの見込みとすると、半導体在庫日数(days of inventory[DOI])が第三四半期に"気にかかる水準"で高原状態と予測、半導体業界は2011年後半に在庫調整を始めると見る旨。

◇IHS again cuts chip market forecast (9月21日付け EE Times)
→IHS iSuppliが、高まる経済の悲痛および消費者の悲観的見方のインパクトを挙げて、2011年半導体市場伸長予測をここ2ヶ月で2度目の下方修正の旨。2011年半導体市場について、6月時点では7.2%増としていたが、先月、4.6%増に修正、そして今回、2.9%増、$313.3Bの売上げ規模と見る旨。
・≪グラフ≫半導体市場伸長率の見方
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110921_ihs_chips_423.png

Samsungから、最上級の表現が並ぶメモリfab稼働スタートが発表されている。

【Samsungの世界最大、業界初fab】

◇Samsung fires up world's biggest memory fab (9月22日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.が水曜21日、同社Nano City Complex(韓国
・京畿道[Gyeonggi province])の新しいLine-16 NANDフラッシュメモリ半導体fabで生産開始の旨。また別のfabで半導体業界初、20-nm class(20-〜29-nmのプロセスノードという定義)生産技術に基づくDDR3(double data rate 3) DRAMの量産を始めている旨。

◇Samsung new memory fab goes on line (9月23日付け DIGITIMES)
→敷地面積198,000m2の業界最大メモリ製造拠点、Line-16の稼働開始について。

中国に続いてこんどはインド、時間の問題ではあるが、購買力平価の見方ではインドのGDPが日本を今年は抜くという見方がインド現地で発表されている。

【インドのGDP】

◇インドGDP、購買力平価で日本抜き3位へ、現地紙報道 (9月20日付け 日経 電子版)
→インド経済紙最大手、エコノミック・タイムズが20日付け一面トップで、2011年のインドのGDP(国内総生産)が購買力平価(PPP)ベースで、日本を抜いて世界3位になる見通しと報じた旨。同紙によると、2010年のインドのGDPはPPPベースで4兆600億ドル、米国、中国、日本(4兆3100億ドル)に次ぐ4位の旨。「3月の津波や地震以来、日本経済は縮小しているとされ、他方、インドは7〜8%成長する」と理由に触れた旨。


≪グローバル雑学王−168≫

近代、現代の大きな転換をもたらした道から、中国統一の原動力となった「長征の道」、ヒトラーの「ヨーロッパ侵攻の道」、チェ・ゲバラの「モーターサイクル・ロード」そして人類の起源を求めて筏で漕ぎだした「ヘイエルダールの航路」を、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野 紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

より、それぞれの情熱のドラマを辿っていく。世界史を駆け足で巡った感のある上記の書の通読も今回で打ち止めである。


6章 近・現代の転換点を生み出した「道」−−−植民地主義の崩壊とアジアの台頭を担った道筋

4.そもそもは共産党の敗走ルートだった…
 中国統一の原動力となった「長征の道」
・1912年、中華民国が誕生
 →国民党の蒋介石と共産党の毛沢東が登場、激しく対立
□孫文を擁する中華民国の成立
・革命家、孫文の三民主義、「民族・民権・民主」
 →清朝打倒の運動
・1912年、孫文が臨時大総統、国号を中華民国に
□軍閥打倒のため、蒋介石は共産党と結ぶが・・・
・溥儀が退位、清朝は滅亡
 →袁世凱が孫文に代わって臨時大総統に就任
・孫文は中国国民党を結成、一方、陳独秀がソビエト連邦の指導のもと、共産党を結成
・1928年、孫文を継いで勢いを増した蒋介石が北京に入城、全国を統一
□内戦の形勢を逆転させた「長征」
・毛沢東の長征の道
 →本拠地、瑞金から約1万2500km
・1931年に起きていた満州事変が事態を変える
 →国民党と共産党の形勢逆転
・1945年、日本が無条件降伏して終戦
 →国民党と共産党がふたたび対立、内戦へ
 →蒋介石は台湾に敗走、中華民国を建国:共産党は北京に入城、中華人民共和国を建国

5.世界中を戦禍に巻き込んだ…
 ヒトラーの「ヨーロッパ侵攻の道」
・第一次世界大戦に敗れたドイツ
 →ナチスを率いるヒトラー(Adolf Hitler)、国民の圧倒的な支持
□国民の不満を巧みに取り込んだヒトラー
・賠償金の支払いで財政が逼迫したドイツ
 →ドイツ純血・民族主義を掲げたヒトラー
  →ドイツ国民に誇りと希望
  →1933年、首相の座に
□独ソ不可侵条約を結び、ポーランド侵攻へ
・ヒトラーの「ヨーロッパ侵攻の道」が開始
 …1935年、ドイツは再軍備
 →1938年、ヒトラーはウィーンに入城、ドイツに併合
 →次は、チェコスロバキア、ポーランドへ侵攻
 →1940年、デンマーク、ノルウェー、オランダ、ベルギーに侵攻。6月にはフランス降伏へ。
・1945年4月30日、ヒトラーの死で終幕

6.真の革命家と呼ばれた男…
 チェ・ゲバラの「モーターサイクル・ロード」
・19世紀に相次いで独立した南米諸国
 →激しい格差や差別は依然続く
□革命家チェ・ゲバラの生涯
・チェ・ゲバラ(Ernesto Rafael Guevara de la Serna)の「モーターサイクル・ロード」人生
 →1928年、名家、ゲバラ家に生まれ、ブエノス・アイレス大から医学博士に
 →フィデル・カストロと意気投合、キューバ革命に身を投じる
 →処刑された39年の人生
□南米各地でゲバラが見た悲惨な現実
・モーターサイクル・ロードの旅
 →医者にはならずにその身を革命に捧げ続けた

7.人類の起源を探る果敢な挑戦…
 筏で漕ぎだした「ヘイエルダールの航路」
・人類学者のトール・ヘイエルダール(Thor Heyerdahl)
 →みずから筏をつくり南米大陸から西に向けて出航
□人類学者ヘイエルダールの「疑問」
・ノルウェーの人類学者、トール・ヘイエルダール
 →「同じ民族、同じ文化圏のポリネシア人はいったいどこから来たのか」という疑問
□筏に乗って南米からポリネシアへ
・1947年、南米大陸からポリネシアへの道をみずから体験
・古代インカの筏とまったく同じようにつくられたヘイエルダールの筏
 →インカ帝国の太陽神に因んで"コン・チキ号"
□ポリネシア人はアジアから来た
・DNA鑑定や考古学的出土品の存在
 →現在では、ポリネシアの人々は、アジア本土からやってきたというのが定説に
・ヘイエルダールの航海の意味
 →ポリネシアの人々が、南米大陸を行き来していたことを証明

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