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先端技術および新たな連携の競演からくる業界の構造変化

インテルとマイクロソフト、このパソコン業界の両巨人が、大きな業界の構造変化をもたらす新たな連携を発表している。タイミングを同じくして共に米国西海岸での開発者会議の場での発表であり、パソコン一点張りからタブレット、スマートフォンへ移行もあり得る共存に向けて新たな幕開けを感じさせている。インテルはtri-gate FinFETトランジスタ22-nmプロセスによるプロセッサファミリーを今回披露しており、半導体の世界がこのような連携および先端技術によりどう活性化していくか、期待と注目である。

≪新技術&製品および新たな連携の発表≫   
 
インテルの開発者会議(IDF[Intel Developer Forum] US:9月13-15日:San Francisco, Moscone Center)では、先に発表されたtri-gate 3-Dトランジスタ技術による22-nmデバイスが事前に注目を浴び、その通りに初の22-nmプロセッサファミリー、Ivy Bridgeが披露されている。

◇Intel to talk tri-gate, Ultrabooks at IDF (9月12日付け EE Times)
→Intel社の年次開発者イベント、IDFが火曜13日幕開け、tri-gate 3-Dトランジスタ技術による次期22-nmデバイスのさらに詳細、およびスリムで低電力のlaptopsカテゴリーのIntel初期段階コンセプト、Ultrabooksのさらなる内容が注目を浴びる見込みの旨。ほかのhighlightsとして、次の通り。
・Intelのpresident and CEO、Paul Otellini氏基調講演 
・Cloud computing
・CISO(Chief Information Security Officer) panel
・Intel Fellows: Live and Uncensored!
・Hot Topic Q&A: Ultrabook Mobile PC Track
・Healthcare IT track
・Intel Labs track 

◇Intel describes 22nm Ivy Bridge CPUs (9月13日付け EE Times)
→Intelが、同社初の22-nmプロセッサファミリー、Ivy Bridgeを初お披露目の旨。該半導体は、on-boardグラフィックス全体性能を大きく改善、power managementおよびsecurityの一歩前進を図っている旨。ライバルのAMDおよびNvidiaからは、Intelのチップセットおよびプロセッサで用いられているグラフィックスコアの性能が相対的に低いと長らく批判されている旨。tri-gate FinFETトランジスタ22-nmプロセスにより、32-nm Sandy Bridge半導体と比べて2倍の性能、半分のパワーの旨。

この新技術に留まらず、グーグルとの連携が発表され、スマートフォンに向けた新たな基軸の展開である。

◇米インテル、グーグルと協力、スマホ出遅れ挽回へ (9月14日付け 日経 電子版)
→米インテルが13日、スマートフォン向けMPUの開発で米グーグルと協力すると発表、インテルのMPUを搭載した端末でグーグルの基本ソフト「アンドロイド」を利用できるようにする旨。今回の場でインテルのポール・オッテリーニCEOが発表、両社が共同で、インテルのMPU「アトム」とアンドロイドを組み合わせて使えるようにする旨。

一方、マイクロソフトの方は、次期リリースの「ウィンドウズ8(開発名)」を発表、なによりタッチ方式となって、大幅にタブレット傾斜の色合いを深めたものになっているようである。半導体についても、ARMアーキテクチャーを取り入れるという新たな連携となっている。

◇Microsoft shows off 're-imagined' Windows (9月13日付け EE Times)
→Microsoft Build conference(ANAHEIM, Calif.)にて、Microsoft社のWindows and Windows Live Division、president、Steven Sinofsky氏基調講演。ARMアーキテクチャーベースのプロセッサ、タッチスクリーンおよび"metro style"インタフェースのサポートが売りの次期リリースWindows OSについて、最も詳細な前触れをプレゼンの旨。

◇ウィンドウズ8はタッチ方式、タブレット意識し大幅刷新 (9月14日付け asahi.com)
→PC向けの基本ソフト(OS)で圧倒的なシェアを持つ米マイクロソフト(MS)が13日、次世代OSを指で触って操作するタッチパネル方式に刷新すると発表、タブレット端末にも搭載しやすくして、タブレット市場への本格参入を目指す旨。PCの主流が「タブレット型」に移るきっかけになる可能性もある旨。 MSが発表した次世代OSは「ウィンドウズ8(開発名)」で、最新OS「ウィンドウズ7」の後継となり、米カリフォルニア州での開発者会議で概要を明らかにした旨。「8」の搭載機は来年後半、日米などで発売される見通しの旨。

この両社の今回の動きをまとめて、次のように表わされている。

◇インテル、MS…スマホ市場めぐり新たな連携 (9月15日付け YOMIURI ONLINE)
→米インテルが13日、高機能携帯電話(スマートフォン)向け半導体の販売拡大をめざし、米グーグルとの提携を強化すると発表、米マイクロソフト(MS)も同日、次世代基本ソフト(OS)「ウィンドウズ8(開発名)」を搭載したタブレット型端末の試作機を公開、パソコン用の半導体とOSで市場を席巻したインテルとMSが、新たなパートナーと連携、新端末で先行する米アップルを追撃する旨。
インテルの低消費電力高性能半導体−グーグルのOS「アンドロイド」
MSのウィンドウズ8 −英ARMの半導体

関連する動きとして、以下が見られる。

◇Nvidia launches Win 8 developer program (9月13日付け EE Times)
→Nvidia社(Santa Clara, Calif.)が火曜13日、Microsoft社のWindows 8 OSの展開をサポートする開発者プログラムを発表、NvidiaのTegraなどARM-ベースSoCs並びにx86製品offeringsをサポートする初めてとなる旨。

スマートフォン向け半導体は日韓連合で主導権を、ということで次の動きも出てきている。

◇ドコモ・富士通、サムスンとスマホ向け半導体開発 (9月13日付け 日経 電子版)
→NTTドコモ、富士通など日本の通信関連企業がサムスン電子と、次世代携帯電話技術を使ったスマートフォン向け中核半導体を共同開発、2012年にも合弁会社を設立する方向で最終調整に入った旨。開発するのは米社が高いシェアを占める通信制御用の半導体(2010年で米Qualcomm社がシェア36.8%)、日韓連合で半導体開発の主導権を確保、世界市場の開拓を狙う旨。

まさにグローバルに業界の大きな構造変化の幕開けとなっているが、市場予測の英Future Horizons主催、International Electronics Forum(IEF)(来る10月5-7日:Seville, Spain)では、このような情勢のもと新たな枠組みを議論したいとしている。

◇Future Horizons forum focuses on 'new rules'(9月15日付け EE Times)
→International Electronics Forum(IEF)(10月5-7日:Seville, Spain)について。急速に形作られて、グローバルエレクトロニクスの情勢を急激に変えてきている"new rules for old"の肉付けを行う議論を試みる(主催するFuture Horizonsのfounder and principalアナリスト、Malcolm Penn氏)旨。

その根底となる認識が次のように表わされている。

…グローバリゼーションとインターネットが相互に干渉し合って、グローバル経済に大きな振れを、そしてエレクトロニクスビジネスの場所ややり方に大きな動きを生み出している。それは、Apple, Google, HP, Microsoft, MotorolaおよびNokiaなどにおける構造変化としても現れてきている。同時に、ほとんどのエレクトロニクス製品およびシステムの基幹となる半導体の製造が、差し迫ったあるいはそんなにでもないかもしれないが、EUVリソ、450-mm径ウェーハでの新規デバイス構造および材料の導入があってますます難題となってきている。…


≪市場実態PickUp≫

現下の半導体市場に戻ると、マクロ経済からくる低迷気分が強まって、Gartner社はついに本年の世界半導体販売高が僅かながらマイナスに転じるという次の修正を行っている。

【半導体市場予測】

◇Chip sales slowing rapidly, says Gartner (9月15日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Connecticut)発。世界半導体市場が2011年を通して鈍化してきており、2011年売上げが2010年から0.1%減の$299Bと今回見る旨。第二四半期時点の前回予測、5.1%増からは大きな変わりよう、下方修正の旨。
2012年は予測不可能なところがあり、マクロ経済悪化により半導体予測を8.6%増から今回4.6%増に下方修正、米国の景気二番底次第ではさらに下方修正を要すると注意書きの旨。

大幅な改定法制化に向かっている米国特許法について、以下の概要である。

【米国特許改革】

◇Navigating the shifts in U.S. patent law (9月14日付け EE Times)
→America Invents Act(House Bill H.R. 1249)がこの9月8日、米国上院を通過、Obama大統領が即座に署名する見込み、1950年代以降で最も激しい米国特許法の改定である旨。3つの主要な変更について:
 −First to file
 −Prior Commercial Use
 −Virtual markings

なかなか進展が見えてこないという感じ方があるインドでのウェーハfab構築であるが、以下の現状が示されている。

【インドのウェーハfab】

◇Report: 11 firms pitch Indian wafer fabs (9月14日付け EE Times)
→Business Standard発。インド政府が、インドにおけるウェーハfabs構築について、11社からアプローチ対応を受けている旨。インド国内メーカーが2-3社、ほかは海外勢の旨。

今は関税がかかるブラジルでのiPadということであるが、こんどは現地で生産して年末に市場お目見えとのことである。それにしてもこの春にブラジル政府に働きかけた台湾のEMS、Foxconnという理解であるが、運びの早さに驚かされるところがある。

【ブラジルでのiPad生産】

◇Brazilian iPad production due in December (9月16日付け EE Times)
→ブラジルのwebsite、UOL発。ブラジルで製造されたApple iPadタブレットコンピュータが、12月に市場に出回る旨。Foxconnのこの4月からの素早い動きの旨。

秋を迎えるこの時節、学会や展示会、新製品発表と、鈍化基調を吹き飛ばしてほしい願いにも近いものが今年は特に沸いてくるが、各イベントの目玉の紹介が行われている。

【学会・展示会】

◇SEMICON Europa preview (9月13日付け ElectroIQ)
→SEMICON Europa 2011(10月11-13日:Dresden, Germany)について。半導体および半導体実装、MEMS、printed/organicおよびplasticエレクトロニクス、パワーエレクトロニクスなど先端microelectronics製造に向けた新技術&製品が対象の旨。

◇Preview: Conference looks beyond 32-nm to 3-D (9月14日付け EE Times)
→28回目となる2011 Advanced Metallization Conference(AMC)(10月4-6日:San Diego)は、32-nmの先でのCu/ULK(ultra-low-K dielectric)および3-D TSV技術に関わる課題に重点、metal gate/high K、メモリ用材料および途上技術のセッションにも力を入れている旨。

◇IEDM 2011 presentations preview (9月14日付け ElectroIQ)
→今年のIEEE International Electron Devices Meeting(IEDM)(12月5-7日:Hilton Washington Hotel、Washington, D.C.)より。新しい2つのtechnical subcommittees:interaction between circuit and deviceナノデバイス技術


≪グローバル雑学王−167≫

近代、現代のそれぞれの国に大きな転換をもたらした、作り出した「道」を辿る前半として、まずは我が国の鎖国の眠りを覚まさせたペリー「日本来航の道」と日露戦争でのバルチック艦隊の「進航路」、そしてガンジーが歩んだ「インド独立の道」を、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野  紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

より、きっかけ、推移、具体的な道筋を追っていく。人々の驚き、意外な事実、忍耐を貫く強靭な意志をそれぞれに感じている。


6章 近・現代の転換点を生み出した「道」−−−植民地主義の崩壊とアジアの台頭を担った道筋

1.黒船に破られた太平の眠り…
 ペリー艦隊の「日本来航の道」
・日本にも忍び寄る列強の影
 →1853年、ペリー総督率いる黒船の来航
□開国を迫り、不平等条約を強要したペリー
・1852年10月、アメリカの東インド艦隊司令官、Matthew Calbraith Perryは米Virginia州Norfolk港を出港
 →大西洋を東へ: アフリカ西海岸を南下→喜望峰→セイロン(Ceylon)島
  →Singapore→香港、上海
・1853年、四隻の黒船の艦隊、浦賀沖へ
・1854年2月、日米和親条約を締結 …下田・箱館(函館)の開港など
 →日本の鎖国の終焉
□咸臨丸の米国渡航の意味とは
・1858年、日米修好通商条約
 →使節団の護衛という名目、San Franciscoへと航海した咸臨丸
 →日本の海軍の発展に大きく貢献

2.日露戦争の趨勢を決めた…
 バルチック艦隊の「進航路」
・日本は、アジアを植民地化する列強の流れに加わる
 →1904年、ロシアと衝突、予想を覆して勝利
□大国ロシアを敵にまわした理由
・大国ロシアの南下を警戒した日本
 →一番には、次は日本も植民地化されるという恐れ
・1902年、イギリスと日英同盟を締結
・1904年、旅順港を先制攻撃、日露戦争に突入
□なぜ日本は艦隊を迎え撃てたのか
・ロシアは、ヨーロッパに配備のバルチック艦隊(Baltic Fleet)を旅順に回航させることを決定
 →喜望峰を回り、東南アジアを通ってウラジオストク港を目指す羽目に
 →日本軍の最新鋭の通信機器が奏功、対馬沖でバルチック艦隊を待ち受け撃破

3.非暴力・不服従で独立を唱える…
 ガンジーが歩んだ「インド独立の道」
・第二次世界大戦後の1947年、インドが独立
 →マハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)が「非暴力・不服従」を貫いて行進した道
□イギリスがインドを植民地支配できたわけ
・17世紀前半、イギリスが植民地におけるポルトガルとの戦争に勝利
・19世紀前半、イギリスのインド征服はネパールまで及ぶ
・イギリスの支配スタイルは時代によって変化
 →はじめは、インドから綿布を仕入れ
 →産業革命以後は、加工した綿製品をふたたびインドに売りつけ
□セポイの乱を起こすも支配は強まる
・1857年、セポイ(sepoy)の乱
 →セポイ…イギリス軍に雇われたインド人の傭兵
 →安い給料、日頃の不満をエンフィールド銃をきっかけに爆発させて起こった事件
 →実際は、大々的な反英闘争
・「チャパティーの道」が大きな役割
 →チャパティー…平べったいパン、インド人の主食
 →イギリスへの反乱の道
・結局は、強力なイギリス軍が鎮圧
 →インド植民地化が達成
□独立運動の象徴となったガンジーの「塩の行進」
・1930年3月12日、ガンジーは、アムダーバードからダンディーの海岸まで「塩の行進」…約380km
 →「塩」がイギリス支配の象徴
  →高額な税がかかった塩をイギリスから買わなければならない
・塩の行進から17年後の1947年、インドが独立

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