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最先端技術と市場性、その両立を求める模索

次世代lithographyと450-mmウェーハ、これら最先端技術に向かう足取りを巡って、投資回収が見込める市場が開けるのかどうか、最先端技術と市場性の両立を求める模索が続いている。最先端性能と見合うコストの実現に欠かせないというプレゼンスが技術として必要であるし、市場が使えて魅力ある本物と認めてのニーズからスタートする量的対応がビジネスたるには欠かせない。この両立を如何にという議論が何年も延々続いているが、世界景況減速の中、次世代を拓くソリューションの出現が一層求められている。

≪問われるブレイクスルー≫   
 
SEMICON Taiwan 2011(9月7-9日:Taipei World Trade Center[TWTC])にて、TSMCから次世代lithographyおよび450-mmウェーハへの取り組みと、装置業界の足取りを不安視するジレンマの声が発せられている。

◇TSMC ready to flip the switch on EUV (9月6日付け EE Times)
→TSMCが、2週間うちに同社初のextreme ultraviolet(EUV)機を動かす旨。
次世代半導体製造用の3つの競合するlithographyマシンを評価するという同社の目標における次のステップを刻むことになる旨。「我々は、3つをすべてやってみるという自ら危険な目にあう唯一の会社である。」(TSMCのnano-patterning部門、vice president、Burn Lin氏)

◇TSMC says equipment vendors late for 14 nm (9月7日付け EE Times)
→TSMCのR&D、senior vice president、Shang-Yi Chiang氏。2015年に生産を見込む14-nm半導体を如何に作るか、重要な決定をする時間が尽きてきており、capital equipmentベンダーが遅れをとっている旨。TSMCはコスト効率良く14-nm半導体を作るのに次世代リソおよび450-mmウェーハへの移行が必要と考えているが、ともに我々のスケジュールに合わないのではないか、日々不安が募っている旨。
・≪プレゼン資料≫ 450mmウェーハは、技術およびlandコストを削減
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/450mm%20wafer%20costs%20x%20420.jpg
・≪プレゼン資料≫ リソコスト、immersionでは14-nmで急増
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/111%20Lith%20costs%20x%20420.jpg

SEMICON Taiwanを主催するSEMIの見方も次のように表わされている。

◇450mm and EUV linked with uncertainty, says SEMI (9月9日付け DIGITIMES)
→SEMI発。さらに大口径の半導体ウェーハ製造への移行が、引き続き該業界の最も熱い話題の1つであるが、EUV展開に伴なう不安定さが。450-mm計画の課題を激しいものにしており、計画および出資のさらなる透明性を求める必要性を強めている旨。

景気減速が云々されるなか、目の前も長期的にも不透明感が覆って、半導体fabのあり方について議論が高まっていく様相を感じている。英国では以下の問いかけが見られる。

◇Why the British got out of fabs (9月5日付け EE Times)
→次の問いかけへの答え方について。「どうして英国はfabsから抜け出て、ARM式の設計/IP止まりにならざるを得なかったか?」「英国の伝統的なライバル、フランスではfabsがどうして依然と生きているか?(栄えてはいないにしても)」

昨年の急激な盛り返しを受けて、半導体capital expenditureが今年は記録更新かと言われているが、ここにきての鈍化基調と伸びる市場への特化ということで、製造装置市場の現下の見方が以下のようになっている。

◇SEMI sees fabs capital increasing for now (9月6日付け EE Times)
→SEMI発。2011年のcapital expenditureが$41.1Bに増加、最高を記録するが、capacity立ち上がりは鈍化すると予想される旨。以下の見方:

2011年2012年
設備投資拠点(新規および継続)
223 facilities
190 facilities
うちLED特化
77プロジェクト
72プロジェクト

◇SEMI: Fab tool bookings, billings down in Q2 (9月7日付け EE Times)
→SEMI発。第二四半期の世界半導体製造装置のbookingsおよびbillingsが、次の通り前四半期比低下の旨。

前四半期比前年同期比
第二四半期のbookings
$10.76B
3%減
8%減

第二四半期のbillings
$11.92B
1%減
31%増

・第二四半期のbillings、地域別データ:
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/110906_SEMI_q2_b2b.png

最先端技術に見合う新市場開拓への模索が欠かせない状況が続くことになるが、三次元半導体stackingで材料開発に主眼を置いてブレイクスルーを図ろうというアプローチが発表されている。これは1例として、最先端の新技術を市場化するブレイクスルーを図る幾多の試みに引き続き注目していくことと思う。

◇IBM, 3M to collaborate on 3-D chip stacking (9月7日付け EE Times)
→予想通り、IBM社(Armonk, N.Y.)と3M社(St. Paul, Minn.)が、100個までもの別々の半導体チップを密な"silicon towers"でstackするよう用いることができる接着剤の開発で協働する旨。このようなstackingで、プロセッサをメモリやネットワーキングとともにシリコン"brick"の中に密接に収めることができ、今日の最高速MPUよりも1,000倍高速に動作する半導体を作り出す可能性の旨。
しかしながら、該研究の進捗は表されておらず、まだ初期段階の様相、商用製品開発のスケジュールも示されていない旨。


≪市場実態PickUp≫

中国に新しいクルマをもっていったら、数週間後に1/3のコストの同等のクルマができていたという逸話が頭に残っているが、こんどは携帯電話について次のコストダウンの実力発揮である。

【コストダウン力】

◇China Unicom and China Mobile launch own-brand 3.5G smartphones competing with iPhones (9月5日付け DIGITIMES)
→業界筋発。China UnicomおよびChina Mobileが、MediaTek製chipsetソリューションを用いて自社ブランドの3.5G handsetsを打ち上げ、CNY1,000(US$156)以下の価格設定、iPhone価格の1/4相当の旨。

本当に長年にわたる論議を呼んで、ここでも何回か取り上げている米国の特許改革であるが、やっと上院可決、大統領署名の運びに至っている。

【米国の特許改革法案】

◇U.S. patent reform bill to become law (9月8日付け EE Times)
→10年もの異論含みの議論を経て、Barack Obama大統領が特許改革法案の法制化に署名しようとしている旨。米国上院が木曜、89-9で可決、下院では今年始め304-117で承認している旨。最終法案は、米国をfirst-to-inventからfirst-to-file標準に移すことになる旨。

今年の販売高伸長率について20%と意気軒昂に打ち上げていたTSMCからも、ついにそれには届きそうにないというコメントが出されている。同社の8月は瞬間的な盛り上がりが見られたようであるが、全体としては鈍化基調の以下各社業績となっている。

【各社業績】

◇TSMC 2011 sales growth target not achievable(9月5日付け DIGITIMES)
→台湾現地のChinese Television System(CTS)発。ある技術フォーラム(台北)参加の折、TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏。同社の2011年販売高20%増の目標は、予想より弱含みなグローバル経済伸長に沿って末端市場が低迷、届かないと見る旨。しかしながら同社の売上げの伸びは、2011年の業界平均は上回るとしている旨。

◇TI cuts Q3 sales target on lower demand (9月8日付け EE Times)
→Texas Instruments社が木曜8日、広範な製品、市場および顧客に及んで需要が下がっているとして、第三四半期販売高見込みを、前回$3.4B〜$3.7Bから今回$3.23B〜$3.37Bに下方修正の旨。

◇UMC August revenues slip (9月8日付け DIGITIMES)
→UMCの8月売上げ$281M(NT$8.2B)、前月比6.9%減、前年同月比24.7%減。
1-8月累計ではNT$73.28B、前年同期比6.3%減。

◇TSMC says rush orders lifted August sales (9月9日付け EE Times)
→TSMC(Hsinchu, Taiwan)の8月net販売高約$1.30B、前月比6.2%増、前年同期比0.7%増。
1-8月累計では約$9.90B(NT$288.96B)、前年同期比6.3%増。
第三四半期の受注が、前回見込み約$3.49Bから約$3.58Bに上がりそうであるが、第四四半期にももちこたえる様相ではない旨。

視点の置き方で順位が変わってくる「世界競争力報告」であるが、このほど世界経済フォーラムから発表された2011年版について、我が国はじめ以下の受け止めである。

【世界競争力報告】

◇日本の競争力9位に後退、政府債務は最下位142位 (9月7日付け 日経 電子版)
→世界経済フォーラムが7日発表した「2011年版世界競争力報告」で、日本の総合順位は前年より3つ下がって9位に、順位が低下するのは2008年以来3年ぶりの旨。民間部門は引き続き高く評価されたものの、公的部門の低い評価が足を引っ張った旨。

◇WEF report: U.S. economy on comparative downturn (9月7日付け EE Times)
→World Economic Forum(WEF)のGlobal Competitiveness Report 2011-2012発。米国が3年続けて経済競争力の低下の評価、全体ランキングで1つ下げて今回5位の旨。

◇韓国の国家競争力24位、4年連続で下落 (9月8日付け 韓国・中央日報)


≪グローバル雑学王−166≫

近代の大変革を成し遂げた「道」の後半として、欧米を救い移民をも運んだ「じゃがいも伝播の道」、鎖国の日本から行き着いた大黒屋光太夫の「ロシア漂流の道」および大国・清を衰退させた「アヘンの道」を、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野  紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

より、それぞれの推移、ドラマを辿ってみる。歴史の運命、列強の圧力、そして鎖国下の我が国における海外情報の重みなど考えている。


5章 近代の大変革を決定づけた「道」−−−産業革命と市民革命を達成させた道程とは

4.南米からヨーロッパ、そしてアメリカへ…
 移民をも運んだ「じゃがいも伝播の道」
・南米からヨーロッパに伝播した「じゃがいも」
 →1840年代、壊滅的な不作に
 →アイルランド人が大量にアメリカに移住を余儀なく
□ヨーロッパの民を救ったじゃがいも
・じゃがいもの起源は南米のペルー …紀元前3000年前から栽培
 →南米に入植したスペイン人やポルトガル人によって、ヨーロッパへ
・ドイツやプロイセン、アイルランドなど気候の厳しい土地では、住民の命をつなぐ重要な食料に
□アイルランドを襲ったじゃがいも飢饉
・1845〜1849年、胴枯れ病という未曾有の災厄
 →アイルランドでは100万人以上の餓死者
□生き延びるためにアメリカへ
・生き延びる道は、アメリカ大陸への移住しか
 →アイルランドの人口: 1846年 約800万人
               1901年 約450万人
・南アメリカ原産のじゃがいも
 →アイルランド人を北アメリカの地へと導いた

5.鎖国ニッポンを驚かせた…
 大黒屋光太夫の「ロシア漂流の道」
・鎖国下の日本、伊勢の船頭、大黒屋光太夫の長い漂流の道
 →日本に貴重な海外の情報
□漂流、そしてシベリア横断の旅へ
・1782年、白子(現 三重県鈴鹿市)を出港、嵐にあって遭難
 →アリューシャン列島のアムチトカ島へ
・光太夫はイルクーツクへ、そこでは驚くことに多くの日本人
 →遭難してロシアへ流れ着き、ロシア政府の援助で暮らす人々
・光太夫は帰国の許しを得るために、サンクト・ペテルブルクのエカテリーナ二世のもとへ
□10年後、ついに帰国を果たすが…
・1792年、光太夫ら三人の日本人
 →ついに祖国、日本の地を踏む
 →鎖国下の日本、光太夫はほぼ軟禁状態
 →連日蘭学者が訪れて、話をまとめたのが『北槎異聞』(篠本簾 筆録)

6.英、印との三角貿易が端緒になった…
 大国・清を衰退させた「アヘンの道」
・財政難を解消する切り札として、清の広大な市場に目をつけたイギリス
 →英領インドで採れるアヘンの輸出
□清への圧力を強めるイギリス
・インドで容易に栽培できるアヘンのもとのケシ
 →アヘンを清で売って、対価として、茶やシルク、陶磁器を仕入れる三角貿易
 →イギリスの貿易収支はたちまち黒字に
 →大変な迷惑の清朝: アヘンに依存する患者が激増
              富(銀)がイギリスの手に
・1840年、アヘン戦争
 →イギリスの武力の前に屈した清朝、1842年、南京条約を締結
 →香港の割譲など
□清朝を内から揺るがした太平天国の乱
・貧しい人々の心をつかんだ洪秀全の秘密結社、上帝会
 →1850年に起きた太平天国の乱
□列強に"食いもの"にされ、滅亡へ
・1856年、イギリスが清に戦争を仕掛ける
 →英船籍で中国人所有の帆船、アロー号事件
 →二つの不平等条約: 天津条約、北京条約
・アヘンの道は、清朝滅亡への道

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