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減速感が強まるなか、問われる後半需要期の市場反応

世界経済の減速感が方々で発信されるなか、米SIAより7月のグローバル半導体販売高が発表されている。前月並み横這いということで、年初からの累計が1-6月で前年同期比3.7%増であったのが、1-7月では同3.2%増となって、本年は史上最高の昨年の$300B近い販売高を越えるかどうか、という状況である。後半のHoliday Seasonに向けた需要期を迎えての減速感の強まりであり、ここはそれに打ち勝って市場需要を喚起する商品・サービスそしてマーケティングの魅力の凌ぎ合いということと思う。

≪減速感のなかの競争≫  
 
米SIAからの発表は、大震災からの復旧途上の日本、世界的な経済停滞基調という事態のなかで、かく表わすしかないという感じの簡潔な発表内容となっている。

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○2011年7月のグローバル半導体販売高は安定維持−年初からの累計、昨年比3.2%増 …9月2日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2011年7月の世界半導体販売高が$24.9 billionで、実質的に前月並み、年初からの累計、すなわち1-7月総計では前年比3.2%増となっている。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「グローバルな経済不安定性のなか我々の業界はここ何ヶ月伸び率が鈍化してきているが、holiday seasonを通して本年後半の販売高の伸びを引っ張る季節需要に期待している。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。

グローバルな経済停滞が引き続き半導体市場の到るところで伸びの速度に影響を与えるであろうが、日本での予想を上回る回復努力で該業界は元気づけられている。

※7月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/July%202011_Chart_Graph.pdf
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前月比で販売高が伸びたのは日本だけということで、この発表に基づく以下の記事見出しとなっている。

◇Japan up, RoW down in flat July chip sales (9月2日付け EE Times)

世界経済のここにきての減速基調について、目につく範囲でも次の通りである。

◇ブラジルが0.5%利下げ、2009年7月以来、景気減速感強まり (9月1日付け 日経 電子版)
→ブラジル中央銀行が8月31日まで開いた通貨政策委員会で、政策金利である基準金利を0.5%引き下げて、年12.00%にすると発表、9月1日から適用、利下げは2009年7月以来の旨。
ブラジル中銀は2011年1月から5会合連続の利上げ、ただ最後に0.25%の引き上げを決めた7月の会合以後、世界経済の不透明感が強まったことや、国内で製造業の停滞など景気減速感が強まっていることを踏まえ、利下げを決めた旨。

◇米経済成長見通し、大幅下方修正…予算教書改定 (9月2日付け YOMIURI ONLINE)
→米ホワイトハウス・行政管理予算局(OMB:Office of Management and Budget)が1日、2月の予算教書を改定した年央財政見通しを公表、2011年の実質国内総生産(GDP)の伸び率は、2月時点に前年比2.7%としていた見通しを1.7%に、2012年は同じく3.6%を2.6%に、大きく引き下げた旨。失業率は2012年も9.0%に高止まりすると見込んでおり、米経済の回復遅れが一層鮮明となった旨。

半導体市場の見方にもこのような気分が影響ということと思うが、下落あるいは下方修正の内容が相次いでいる。

◇Analyst predicts DRAM price plunge in 2H11 (8月29日付け EE Times)
→IHS発。2011年後半のDRAM価格が急激に下落する見込みの旨。主導製品、2-Gbit DDR3 DRAMのaverage selling price(ASP):
 第二四半期  第三四半期  第四四半期
  $2.10     $1.60     $1.25
  5%減     24%減     22%減
・≪グラフ≫2011年2-Gbit DDR3 DRAMのASP 四半期推移予測
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/2011-08-29pcIHSdramPrice.jpg

◇Analyst sees upside in 2H11 chip market (8月31日付け EE Times)
→Semiconductor Intelligence LLC発。2011年後半のエレクトロニクス業界経済にプラスの兆候がいくつかとしながらも、2011年のグローバル半導体市場伸長率は前回予測9%から今回4%に下げている旨。
・2011年第三四半期の半導体市場指標 [Source: Semiconductor Intelligence]
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/2011-08-31pcSemiIntelBillJewell.jpg

◇Semico cuts IC forecast, sees decline for year (9月2日付け EE Times)
→Semico Research社(Phoenix)が、2011年半導体市場予測を、前回の6%増から今回2%減にマイナス振れの下方修正する旨。

落ち込みに対して反発する動きをどうしても期待するところであるが、台湾市場では旺盛なタブレット需要、そしてPC復権を図る魅力的な商品開発を伺わせる発信が増えていると感じるのもそのような気分の反映ではないかと受け止めている。

◇IC design houses receiving more large-volume orders from tablet PC sector (8月31日付け DIGITIMES)
→業界筋発。かなりのtablet PCベンダーが2011年後半に新モデル打ち上げを計画、台湾のタッチコントローラおよびアナログICメーカーの何社かが最近large-volume発注を受けている旨。

◇TSMC to Benefit From AMD's APU Shipment Boom (8月31日付け China Economic News Service (Taiwan)/ Taiwan Economic News)
→AMDのaccelerated processing unit(APU)(Fusionプロセッサ)、CおよびEファミリーの主要contractサプライヤ、TSMCが、最新のcomputing機器向けに開発されているその2つのAMD半導体シリーズのupdated版を製造する契約を獲得の模様の旨。


≪市場実態PickUp≫

AMDの製造部門をベースとするGlobalFoundries社のGlobal Technology Conferenceより、最新の取り組み状況が以下の通りである。9月中旬に台湾・新竹および上海で巡回開催していく運びとなっている。  

【GlobalFoundriesの取り組み】

◇GlobalFoundries charts road to 14 nm (8月30日付け EE Times)
→GlobalFoundriesの最新ロードマップの要点:
・32-nmウェーハ数K枚/週、出荷中
・2012年、複数の28-nm offerings
・2012年末、planar 20-nmプロセスによる最初の顧客向けtape outs
・最近、Amkor Technologyと3-D ICs連携、たぶん28および20-nm
・EUVシステム、2012年後半据え付け、20-nmプロセスtape outおよび14-nm導入適用

大型の液晶テレビの価格低下には、どうして数年前にあんなに高く買ってしまったかと思わず悔やんでしまうほどであるが、LCD業界の以下の相次ぐ動きには付加価値に対する市場反応の厳しさというものを考えさせられる。

【LCD業界の激動】

◇東芝・日立・ソニー、中小型液晶事業の統合発表 (8月31日付け 日経 電子版)
→東芝、日立製作所、ソニーの3社と官民ファンドの産業革新機構が31日、中小型液晶パネル事業の統合新会社を設立することで基本合意したと発表、2011年秋をメドに正式契約を締結、2012年春に事業統合を完了する旨。統合新会社が実施する第三者割当増資に革新機構が応じる旨。

◇三星・LGがLCDライン縮小、日本は大手3社のLCD部門合併 (9月1日付け 韓国・中央日報)
→三星電子がLCD事業部の組織改編を実施、迅速な意志決定のために大チーム制を導入、機能別の専門性を強化したと31日明らかにした旨。また、事業不振が続くテレビ用パネルなど一部LCD製品に対しては減産を検討中の旨。LGディスプレイも来年、京畿道坡州(キョンギド・パジュ)に新規ラインを作らないことにした旨。来年の総投資規模は3兆ウォン程度、今年初めに設備投資として予定した5兆ウォンから40%ほど減るとの見通しを示した旨。

◇42型液晶テレビの屈辱、iPadと価格逆転 (9月1日付け 韓国・朝鮮日報)
→42インチの液晶テレビ(平均$599)が9.7インチのiPad(モデルにより$499‐$829)より安いという逆転現象が起きている旨。生産原価の原則が崩れたことを意味するとともに、IT産業の重心が単純なハードウエアからソフトウエアを融合したスマート機器へとシフトしていることを象徴的に物語っている旨。

パソコン需要の軟化からインテルが22-nm設備への格上げの一時休止を検討しているという観測が出てきて、以下の通り大きな波紋を広げている。この気分払拭には最先端技術の実力のほどをフルに活かせる魅力に溢れた新商品&サービス待ちということと思う。

【インテルの設備投資の波紋】

◇Intel may cut capex, says analyst (8月30日付け EE Times)
→Barclays Capitalのアナリスト、C.J. Muse氏。Intel社(Santa Clara, Calif.)が、PC需要の弱まりに直面、2011年および2012年の設備投資を低下させるかもしれない旨。関係筋によると、Intelは22-nm roadmapからFab 24(Leixlip, Ireland)を除いており、Fab 24向けに予定の22-nm設備をIsraelおよびArizonaの他のfabsに割り当て直すのかどうか、はっきりしない旨。

◇Intel Won't Move Fab 24 To 22 NM; No Change In Cap Ex (8月30日付け Forbes)
→DellおよびHewlett-PackardともにPC販売高弱含みの最近の兆しから、市場は半導体および半導体製造装置の需要鈍化のいかなる情況証拠にも即座に極度の反応を示している旨。

◇Is PC softness dragging down Intel's 22nm plans? (8月31日付け ElectroIQ)

◇Intel investment reduction plans may affect PC and semiconductor players (9月1日付け DIGITIMES)
→Intelが、PC弱含みに直面、Fab 24の22-nmプロセスへの格上げ計画の一時休止を検討、コスト削減のため次世代Ivy Bridgeプラットフォームの打上げを1四半期遅らせることを決定の旨。これらの計画が、同社PCパートナー並びに半導体装置プレーヤーに短期的にインパクトを与える可能性の旨。

半導体市場セグメントで最も伸びるという見方がある車載用アナログであるが、電気自動車での市場規模そして比率が次の通り表わされている。

【電気自動車アナログIC需要】

◇Electric vehicles to boost analog IC demand (8月30日付け EE Times)
→Strategy Analytics社(Boston)発。electric vehicles(EVs)およびhybrid electric vehicles(HEVs)で用いられる半導体の市場は、2011年から2018年の間に4倍となり、$2Bに達すると見る旨。EVsおよびHEVsでの半導体の92%がアナログICsである旨。


≪グローバル雑学王−165≫

大航海時代から近代に入り、産業革命と市民革命の二大変革を成し遂げた「道」を辿っていく。前半として、イギリスが世界に先駆けて開通した「鉄道ルート」、ワシントンが率いた「アメリカ独立の道」、およびナポレオンを凋落させた「ロシア遠征の道」を、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野  紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

より、経過、顛末に改めて触れてみる。

5章 近代の大変革を決定づけた「道」−−−産業革命と市民革命を達成させた道程とは

1.イギリス発の産業革命の象徴…
 世界に先駆けて開通した「鉄道ルート」
・三角貿易は、ヨーロッパ諸国に莫大な富
 →イギリスには、18世紀に起こった産業革命の資金力
 →蒸気機関の発明とその応用による鉄道ルートが柱に
□蒸気機関の発明・改良が成した革命
・ワット(James Watt)の蒸気機関
 →工場の立地に変化 …内陸部、あるいは都市の近くでも稼働可能
 →Birmingham、Manchester、Glasgowなど工業都市誕生
  →元農民が工場を支える労働力に
□大量運搬を可能にした鉄道網
・スティーブンソン(George Stephenson)が改良した蒸気機関車
 →1830年、LiverpoolとManchesterの両市を結ぶ鉄道が開通
 →Manchesterで生産された綿製品は、大量に、迅速に世界へと輸出
・「鉄道ルート」は、産業革命の象徴
 →イギリスが世界の帝国として君臨する原動力に

2.自由を求め、植民地支配から脱す…
 ワシントンが率いた「アメリカ独立の道」
・北米への植民地政策を強化するイギリス
 →植民地側は、総司令官ジョージ・ワシントンを中心にイギリスと戦い、1783年、ついに独立
□北米大陸への入植が始まる
・北アメリカへ入植したイギリス
 →1620年、メイフラワー号でやってきた清教徒たち
□本国イギリスの要求に耐えかね、独立運動へ
・イギリスは、7年に及ぶフランスとの戦争に費やされた費用が莫大、財政は逼迫
 →北アメリカの植民地へ渡った移民への課税を強化
  →印紙条例
  →タウンゼンド諸法 …ガラス・鉛・茶などの輸入税
・植民地側の憤り →「ボストン茶会事件」
・度重なるイギリス本国の要求に、やがて独立への道を選択へ
□フランスの支援を得て独立を果たす
・1775年、イギリス正規軍がボストン出動 …武力行使
・1776年7月4日、トマス・ジェファーソンが起草した独立宣言を採択
・1778年、植民地側とフランスとの同盟が締結
 →次第にイギリスが孤立する形に
・1783年、「パリ条約」が締結
 →名実ともにイギリスからの独立

3.英雄となった男のターニング・ポイント…
 ナポレオンを凋落させた「ロシア遠征の道」
・財政問題に端を発してフランス革命が勃発
 →ナポレオン・ボナパルトが、国内の反乱を鎮圧し、皇帝の座に
・1812年のロシア遠征 →ナポレオンの支配力は急速に低下
□ナポレオン登場前夜のフランス
・1789年のフランス革命
 →ルイ16世の時代、財政は破綻寸前
 →パリの民衆がバスティーユ牢獄を襲撃
 →この革命により人権宣言を採択
□革命後の混乱を利用して皇帝に
・天才的な軍略家、ナポレオン
 →1799年、クーデターを起こし、統領政府第一統領に
 →1802年、終身大統領
 →1804年、皇帝の位
□極寒のロシアに攻め入った理由とは
・次の標的、イギリスとの貿易を禁じる大陸封鎖令
 →密かにイギリスとの貿易を続けたロシア
 →1812年、ロシア遠征
 →極寒の地に駐留、占領からわずか2ヶ月で撤退へ
・ロシア遠征の道
 →全盛期のナポレオンを運命の下り坂へと方向転換させる道

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