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Jobs氏退任が加わって乱戦模様が高まるPC & handset業界

盛夏そして秋口に入る時節をじっくり振り返っていろいろ目を通す気分でいたら、GoogleのMotorola Mobility買収およびHPのPC事業分離模索という業界を大きく揺るがす動きがあって、早速その余波が世界各地に表われる事態になっている。そこにAppleの総帥、Steve Jobs氏退任の一報が入ってきて、さらに大きなインパクトを世界に与えている。パソコン30年の節目に気がついたら、携帯電話ともども半導体の二大市場があっという間に乱戦模様を高めている。

≪急激に押し寄せる時代の波≫  
  
GoogleおよびHPの動きを受けて、新たな時代の始まりと見る論調がある。

◇Mobile--and I hope--clean tech era is here (8月21日付け EE Times)
→歴史家が技術におけるモバイル時代の始まりを記す特定の週を必要とするなら、先週(8月15日の週)が良い候補である旨。しかしまた、我々のここのところの歴史のどこかでクリーン技術時代の誕生の力強い兆候を見い出すことを望みたい旨。世界最大手のPCメーカー、HPが、該事業を続けるかどうか定かでないと発表、および最も注目のハイテクメーカー、Googleが、同社最大の買収を行った先週である旨。

中国市場においてもAppleの急伸長が見られ、IBMのPCを継ぐLenovoを直近四半期で上回る勢いとなっている。

◇アップルの大中華区売上高、第2四半期にレノボを超える (8月22日付け 人民網日本語版)
→中国経済網がブルームバーグの記事を引用、「直近の業績報告によると、アップルの今年第2四半期の大中華区(大陸部、香港、アモイ、台湾を含む)の売上高が、初めてレノボを上回った」と報じた旨。多くの外資企業が中国業務を拡大する背景下、レノボ(聯想)の中国最大手のIT企業としての地位が揺らぎつつある旨。アップルの今年第2四半期の大中華区の総売上高は38億ドルに達し、昨年同期の6倍、この売上高には、iPhone、iPad、パソコンが含まれる旨。

GoogleおよびHPの余波が真っ先に具体的に見られるのが台湾および韓国であり、非常に敏感な以下の反応である。

◇Taiwan panel makers face challenges over HP's PC spin-off plan (8月22日付け DIGITIMES)
→Hewlett-Packard(HP)のPC事業分離計画の跡を追って、HPのLCDパネルサプライヤおよびcontractメーカーがHPとの連携に対する変化に身を引き締めている旨。

◇HP PC spin-off plan may cause fierce PC price competition in 4Q11 (8月23日付け DIGITIMES)
→Hewlett-Packard(HP)のPC事業を分離する計画は、すでにPC業界に非常に大きいインパクトを引き起こしており、HPではすでに従業員数削減およびリソース絞込みに取りかかり始めている旨。PCプレーヤー筋では、HPが第四四半期に在庫を積極的に掃いていって、熾烈な価格競合が生み出されると見ている旨。

◇DRAM makers concerned about Samsung's potential takeover of HP PC unit (8月23日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Hewlett-Packard(HP)が最終的に同社PC事業部門をSamsung Electronicsに売却して片付けることになれば、DRAM半導体サプライヤ、特に台湾の競合力の弱いプレーヤーにはマイナスのインパクトになる旨。
HPは現在世界最大のPCブランドであり、台湾のNanya Technologyなど複数のサプライヤからDRAM半導体の供給を受けている旨。

厳しい業績発表となっている台湾のAcerからは、タブレットから従来PCへの回帰を予見するメッセージが出されている。

◇Tablet PC fever is already cooling down, says Acer chairman (8月25日付け DIGITIMES)
→Acerのchairman、JT Wang氏がtablet PCのnotebook業界に対するインパクトについてコメント、tablet PCの熱狂、熱気はすでに冷めはじめており、消費者はまたIntelのUltrabooksおよびMicrosoftのWindows 8が引き付け役でnotebooksに向いてきている旨。

韓国では、政府主導で自前のAndroidを作ろうという動きが表面化している。

◇韓国政府、三星・LGと手を組んで韓国版アンドロイド製作へ (8月23日付け 韓国・中央日報)
→韓国政府が韓国版アンドロイド共同開発に向けて三星電子とLG電子と手を組む旨。スマートフォンの基本ソフト(OS)として使われているアンドロイドがグーグルによるモトローラ買収で大きな変化が予想される中、韓国内の端末企業は開放型OS開発を模索し始めた旨。

となると、黙って見てられない台湾の反応である。

◇Taiwan should not overlook Korea moving to develop open-source smartphones (8月24日付け DIGITIMES)
→台湾のhandset業界筋発。台湾政府およびhandsetメーカーは、携帯電話用の新しいopen-source operating systems(OS)を開発する韓国政府の意図を、そのプロジェクトが実現するのは2015年以降であるにしても、見過ごしてはならない旨。

このような業界の緊張状態のなか、Jobs氏退任の報が駆け巡ってきている。

◇Steve Jobs Resigns as CEO of Apple-Tim Cook Named CEO and Jobs Elected Chairman of the Board (8月24日付け Apple Press Info)

◇Steve Jobs resigns as Apple CEO (8月24日付け EE Times)

◇ジョブズ氏、アップルCEOを退任 (8月24日付け asahi.com)
→米アップルが24日、スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)が退任した、と発表、取締役会はティム・クック最高執行責任者(COO)を後任のCEOに指名、ジョブズ氏は取締役会会長に就く旨。

ここでも早速、台湾業界からの反応であるが、鎮静化を図るような内容とともに今後の乱戦模様を予見する率直な受け止めとなっている。

◇Impact of Jobs resignation minimal, say Apple suppliers (8月26日付け DIGITIMES)
→Foxconn ElectronicsおよびQuanta ComputerなどApple向け主要サプライヤ筋は、Steve Jobs氏のCEO辞任は受注にほとんどインパクトがないとしている旨。Jobs氏を継ぐTim Cook氏が、すでに製造関連を担当してきている旨。しかしながら、Jobs氏離脱は、Appleのブランド認知、創造性および革新性に影響を与え、他のconsumerブランドが伸してくる機会ともなる旨。HTCやSamsungなどアジアのブランドが、今後Appleと競合度を増す可能性の旨。


≪市場実態PickUp≫

一気に激動の度を増した半導体およびエレクトロニクス業界であるが、各社業績の方は、先行き鈍化の様相が引き続いている。PCおよびhandset業界のグローバル市場での動きの推移を、続けてよく見定める必要がある。

【業績発表から】

◇Applied posts strong Q3, but sees Q4 decline(8月24日付け EE Times)
→Applied Materials社(Santa Clara, Calif.)の7月31日締め第三四半期販売高$2.79B、前四半期比2%減、前年同期比11%増。しかしながら今四半期については、前四半期比15-30%減の販売高を見込む旨。

◇Acer reports losses for 2Q11 (8月25日付け DIGITIMES)
→Acerの第二四半期連結売上げ(速報)$3.5B、前年同期比32%減。

パソコン出荷においても、第二四半期は中国が初めて米国を台数で抜く結果となっている。時間の問題といえばそうであろうが、末端市場の実態に合わせたマーケティング、製品開発が一層求められるという、時代の波に合わせた原点回帰の必要性の様相をここでも感じている。

【第二四半期PC出荷】

◇China was largest PC market in Q2, says IDC (8月24日付け EE Times)
→International Data Corp.(IDC)発。第二四半期の中国のPC出荷が、米国のそれを上回り、中国が世界最大のPC市場となっている旨。
・中国、米国、その他の市場シェアデータ:2011〜2012年
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110823_idc_2Q_pcs_china.png

◇パソコン出荷台数、中国が世界一、4〜6月期、米国抜く (8月24日付け asahi.com)
→IDCが23日、今年4〜6月期の中国でのPC出荷台数が、米国を上回って世界首位になったと発表、四半期ベースで初めての旨。中国の出荷台数は1850万台で総額119億ドル(約9200億円)、米国は1770万台で117億ドル(約9000億円)、世界市場に占める割合は中国が22%、米国は21%になる旨。

IntelとMPUで競合するAMDが、しばらく空白となっていたトップ人事を決定している。製造をGlobalfoundriesに分離してからも時間が経つが、新たな業界激動のなかの新体制スタートとなる。

【AMDトップ人事】

◇Former IBM, Lenovo exec takes the helm at AMD (8月25日付け EE Times)
→AMD社の役員会が、長らくIBM在籍、最近ではPCベンダー、Lenovo Group Ltd.でpresident and chief operating officer(COO)を務めたRory Read氏(49才)をpresident and CEOに指名、7ヶ月の後継探しの旨。

小生が1980年代から1990年代始めにかけて関わったJedec標準化活動に、新たな世代、DDR4お目見えということで、手前勝手ありながらも取り上げている。

【DDR4スペック】

◇Jedec readies DDR4 memory spec (8月22日付け EE Times)
→Jedec Solid State Technology Association(Arlington, Va.)発。Double Data Rate 4(DDR4)メモリ半導体標準は、3つのデータ幅offerings、差動signaling、データmaskingおよび新しい終端方式を含み、2012年半ばに発行予定、これまでの世代技術に比べてパワーが削減され、性能が大きく進展する旨。


≪グローバル雑学王−164≫

大航海時代の続けて後半であるが、ヨーロッパ、アメリカ大陸、アフリカ大陸を結ぶ「三角貿易の道」、栄華を絶頂にあったスペインを衰退させた「航海の道」、ザビエルが殉じた日本への「布教の道」について、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野  紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

よりそれぞれのインパクトを辿っていく。遥か海を渡って繰り広げられる貿易、航海、布教の活動の陰にある悲喜こもごもの歴史、事実に注目である。


4章 大航海時代を創出した「道」−−−東方への進出は世界地図をいかに塗り替えたか

4.得をしたのはヨーロッパだけ…
 アフリカと植民地を苦しめた「三角貿易の道」
・アメリカ大陸に進出したヨーロッパ諸国
 →ヨーロッパ、アメリカ大陸、アフリカ大陸を結ぶ三角貿易
 →アフリカの発展を妨げる
□悪名高い三角貿易のしくみとは
・植民地でのプランテーション栽培が活発に
 →経営は拡大される一方
・過酷な労働および伝染病
 →多くの住民が死亡、労働力不足が深刻化
 →屈強なアフリカの黒人男性に注目
 →奴隷貿易
・ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸を結んで交易
 →「三角貿易」
□現代に続く南北の格差
・奴隷貿易はヨーロッパ諸国に莫大な富
 →やがてイギリスの産業革命を引き起こす
・反面、アフリカには大打撃
 →今日にも続く格差

5.「太陽の沈まぬ国」を追い落とした…
 "女王の海賊"ドレークの「航海の道」
・母国イギリスを後ろ盾に、半ば公然と海賊行為を繰り返したドレーク(Francis Drake)
□スペイン船から略奪を繰り返す
・ドレークは、密かにエリザベス一世からスペイン船を拿捕する許可
 →小作農出身ながら、騎士の称号
□利益を貪るだけの海賊ではなかった
・スペインの植民地を直接襲撃、大損害を与えてもいる
・1587年、南スペインのカディス港(Cadiz:スペインのアンダルシア州・カディス県の県都。スペイン西部の港湾都市として重要な役割)を襲撃
 →本国にまで手を伸ばす
・自国を脅かす強国スペイン攻略を実現するための道のり
□無敵艦隊が敗れ、没落の道へ
・1588年、スペインはイギリス本国占領を目指す
 →アルマダ戦争の勃発
・狭いドーバー海峡では、身軽なイギリス軍船が圧倒的に有利
 →カレー港でのイギリス軍の奇襲
 →新興国イギリスへの遠征の失敗は、強国スペインの力に陰りが出てきたことを露呈
・決して豊かでなかった「太陽の沈まぬ国」の国民
 →スペインは衰退するべくして衰退

6.キリスト教はこうして日本へ…
 ザビエルが殉じた「布教の道」
・イエズス会の伝道師として、スペイン人、フランシスコ・ザビエル(Francisco de Xavier)の「布教の道」
 →1549年、日本にはじめてキリスト教が伝来
□アジアの東端にまで布教にきた理由
・キリスト教がアジアへ伝わる道が拓けていった大航海時代
 →カトリック教会の、プロテスタント教会に対する巻き返し運動
・ザビエルは、アジア地域への布教を10年間
 →日本では、まず鹿児島に上陸、長崎の平戸へ、その後、長州(山口)や豊後(大分)の保護
・日本への布教の道 →ザビエルの死後も絶えることはなかった
□天正遣欧使節に秘められた意味とは
・最も日本人に期待をかけた宣教師の一人、ヴァリニャーノ(Alessandro Valignano)
 →日本人の少年たちによるローマ教皇への使節団 …天正遣欧使節
 →13才ほどの4人
 →1590年、少年使節は長崎に帰国、8年経って世の中は一変
 →豊臣秀吉による激しいキリシタン弾圧

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