Semiconductor Portal

HOME » ブログ » インサイダーズ » 長見晃の海外トピックス

市場後退懸念が強まるなか、前半の半導体販売高、前年比3.7%増

米国SIAから月次の世界半導体販売高が発表され、本年前半の6ヶ月累計は、前年同期比3.7%増というデータとなっている。$300 billionに年間販売高がほとんど達して史上最高を記録した昨年は、前半の販売高累計が前年同期比50.5%増であったから、プラス、マイナス要因が世界的にいろいろ交錯する現時点でこの本年の3.7%増をどう見るか、本当に予測が難しくなっている。
我が国の大震災の影響による落ち込みから計画前倒しで戻しつつあるなか、市場景気後退懸念が強まってきている状況が方々にある。

≪プラス、マイナス、見方の交錯≫  
  
米SIA発表は次の通りであり、2011年は5.4%増という見方を維持し、新市場が世界需要を引っ張っていくという比較的positiveな立場をとっている。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○2011年前半のグローバル半導体販売高、前年比3.7%増 …8月1日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2011年6月の世界半導体販売高が$24.7 billionで、前月の$25 billionから1.5%減少、前年同月比では0.5%減少している、と発表した。第二四半期の販売高は、前四半期比2%の減少となっている。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「6月販売高が若干減っているにも拘らず、2011年前半6ヶ月の販売高は、記録破りの伸びが見られた昨年同期間に比べて3.7%増加している。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「半導体販売高全体としては、2011年5.4%伸長という予測の軌道に沿っている。」

法人用PC更新サイクル、スマートフォン需要および続いて起こるITインフラ投資における増加、並びに中国で拡大する市場が、6月販売高では消費者需要の鈍化で帳消しになっている。予想通り、今年始めの自然災害による被害から引き続き立ち直りつつある日本を除いて、すべての地域で年初からの累積販売高が前年比伸びを示している。加えて、半導体使用量がすべての末端製品分野にわたって、特に車載分野で引き続き増えている。

「米国政権が金曜に経済標準を増やして車にもっとグリーンでスマートな技術を入れるよう努めていくと発表、半導体業界は元気づくはずである。これらの標準は半導体業界にはさらに伸びる機会となり、施行は何年か先となるが、半導体技術が可能にするスマート技術およびイノベーションに向けた需要の高まりを示すものになる」とToohey氏は続けた。

※6月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/June%202011_GSR%20Tables.pdf
★★★↑↑↑↑↑

ただし、現下の取り巻く市場環境の方は、軟化、逆風、など後退局面を表わす比重が増してくる受け止め方である。

◇IDC cuts PC microprocessor forecast (8月2日付け EE Times)
→International Data Corp.(IDC)発。新興地域での経済逆風がconsumer PC需要に影響、2011年のPC MPU出荷の伸長予測を、10.3%から9.3%に下方修正の旨。第二四半期のPC MPU出荷は、前四半期比3%減、前年同期比1%以下の増。

特にファウンドリー大手、UMCの発表は、落ち込み具合をはっきり表わしている。

◇UMC predicts declines in revenues, fab use (8月3日付け EE Times)
→UMCの第二四半期販売高が前四半期比ほぼフラット、第三四半期は10-12%減を予測している旨。fab capacity稼働率の推移&予測、次の通り。
 2010年第二四半期  2011年第二四半期  2011年第三四半期
   100%          87-90%         75%以下

◇UMC sees 3Q11 revenue decline in low teens; keeps capex unchanged (8月3日付け DIGITIMES)
→UMCの第二四半期売上げ$980.5M、前四半期比0.1%増、前年同期比5.4%減。
第三四半期の売上げが、ウェーハ出荷が少なくなって、前四半期比10%台前半の落ち込みを見込む旨。

◇Wafer supplier MEMC cuts 2011 sales target (8月4日付け EE Times)
→Siウェーハサプライヤ、MEMC Electronic Materials社(St. Peters, Mo.)の第二四半期売上げ$745.6M、前四半期比1%増、前年同期比66%増。これには長期サプライヤ合意終結についてのSuntech Power Holdings Co. Ltd.からの支払い$149.4Mが入っている旨。
本年は、solar低迷および半導体業界需要軟化からpro forma販売高を、前回$3.4B〜$3.7Bから今回$3.3B〜$3.6Bと見ている旨。

◇Microchip Tech sees softer demand (8月4日付け EE Times)
→半導体ベンダー、Microchip Technology社(Chandler, Ariz.)の6月30日締め四半期販売高$374.5M、前四半期比1%減、前年同期比5%増。弱含みなグローバル経済状況に関連、需要の軟化を警告の旨。

こうしたなか、携帯電話市場に取り組む中国のファブレスからは伸び盛りの販売高が発表されている。

◇Spreadtrum growth spurt continues in Q2 (8月5日付け EE Times)
→中国のファブレス半導体メーカー大手、Spreadtrum Communications社(上海)の第二四半期販売高が、事前ガイドの$152M〜$158Mを上回る$160.2M、前四半期比16.9%増、前年同期比124.2%増。

全体のトーンとしては、やはり下方修正が相次ぐ現状である。

◇IC Insights lowers chip growth forecast (8月4日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)が、弱含みなグローバル経済を引き合い、2011年のグローバル半導体売上げ伸長を、前回予測10%増から、今回5%増に下方修正の旨。また2011年のICの伸びも10%から4%に下げている旨。

さて、世界経済を引っ張る米国において、債務上限法案が下院で可決され、債務不履行は回避されたが、また次のひと山という感じで以下の事態となっている。市場のプラス&マイナス、それぞれの推移に引き続き注目である。

◇株価急落、世界で軒並み 米欧から連鎖的にアジア市場へ (8月5日付け asahi.com)
→世界の株式市場で、株価が急落している旨。世界景気が後退に向かうとの懸念から、4日のニューヨーク市場では大企業で構成するダウ工業株平均が前日より512ドル急落、これを受けた5日の東京株式市場は、日経平均株価の下げ幅が一時400円に迫った旨。

◇米国債、初の格下げ、S&P、最上位のAAAから1段階 (8月6日付け asahi.com)
→米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が5日、米長期国債の格付けを最上位の「AAA(トリプルA)」から1段階引き下げて「AA+(ダブルAプラス)」に格下げした、と発表、大手格付け会社が米国債を格下げするのは初めての旨。


≪市場実態PickUp≫

半導体ベンダーのランキングから見ると、トップ20の今年前半販売高は、8%増と全体の4%増の倍の伸びとなっている。強弱の差がよりはっきりするとともに、メモリの価格低下が中身に表われる内容となっている。

【2011年前半半導体ベンダー・ランキングトップ20】

◇1H11/1H10 Top 20 Semiconductor Sales Increase by 8%! (8月2日付け IC Insights)
→2011年前半の半導体販売高トップ20データ、下記参照。
http://www.icinsights.com/files/images/bulletin20110802fig1.gif

◇Global top-20 chip suppliers 1H11 revenues up 8%, says IC Insights (8月3日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。2011年前半の半導体メーカー販売高トップ20合計が、前年同期比8%増、世界半導体市場全体の同期間4%増を上回った旨。首位Intelが第2位Samsung Electronicsとの差を拡げた旨。

携帯電話と一言で表すのがますます難しいが、あっという間の市場順位入れ替わりを感じるこの市場である。Apple社の優勢ぶり、巻き返しを図るRIMを示す以下の内容である。

【グローバルhandset市場】

◇Analyst: Apple had 57% of Q2 handset profits (8月1日付け EE Times)
→Canaccord Genuityのアナリスト、T. Michael Walkley氏。Apple社が、グローバルhandset市場の僅か5.4%のシェアであるにも拘らず、第二四半期のcellular handsetすべてのoperating profitsの57%をも占め、第一四半期の51%、2010年の41%から上がっている旨。第二四半期では、Apple社の約$4.66Bに対し、次のSamsung Electronics Co. Ltd.が$1.49Bの旨。

◇ブラックベリー、タッチ式の新作投入、全世界で今夏中に (8月4日付け asahi.com)
→カナダの携帯電話メーカー、リサーチ・イン・モーション(RIM)が3日、タッチ画面で操作するスマートフォン(多機能携帯電話)「ブラックベリー」を初めて投入すると発表、全世界で今夏中に発売する旨。米アップルや米グーグルに奪われたシェアの奪回を図る旨。

このような急転戦国模様により、Consumer Electronics市場の見方も否応なく対応せざるを得ないところである。

【Consumer Electronics市場の明暗模様】

◇Smartphones, tablets cloud dedicated CE devices (8月5日付け EE Times India)
→IHS iSuppli Home & Consumer Electronics Service発。2010年から2015年にかけて、smartphonesおよびmedia tabletsの出荷がそれぞれ28.5%および72.1%のCAGRsで増大するのと対照的に、portable navigation devices(PNDs), portable media players(PMPs)/MP3 playersおよびdigital still cameras(DSCs)の出荷は同じ期間で減少するか、あるいはフラットのままと見る旨。

IBMが、秤やタイム・レコーダー、会計機などを製造していた小さな会社からスタートして今年が100年になるとのこと。ライバル、顧客、品質展開、など小生なりの時間軸でも様々な接点、感慨が過ぎるところがある。

【IBM 100周年】

◇Google snaps up 1000 IBM patents (7月29日付け RCR Wireless News/Silicon Valley)
→特許portfolioを高めるよう、Googleが、メモリ半導体およびMPUs、ルータおよびサーバなどIBMが保有する特許1,000件を買った旨。

◇IBM CEO: How to live to be 100 (8月5日付け EE Times)
→IBMの100周年を記念するchief executive、Samuel J. Palmisano氏の演説。会社は、価値を供給、広範囲にコラボ、そして長い距離を生き抜くよう変化に乗じる必要がある旨。1900年の米国産業界の会社トップ25の僅か2社が、IBMが50才になった1961年に残り、そしてその年のFortune 500トップ25社のうち6社だけが今日ビジネス界に残っている旨。


≪グローバル雑学王−161≫

古代から中世の世界に進んで、ヴァイキングの「侵略の道」、十字軍の「遠征の道」、伝染病の「ペストロード」、モンゴル帝国の「世界征服の道」を、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野  紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

より、それぞれの歴史的意味を辿っていく。人々の気持ち、考え方へのそれぞれの道のインパクトが伝わってくる。


3章 中世に激震を走らせた「道」−−−混乱と新秩序をもたらした"歴史的事件"をルートから読む

1.「入り江の民」は、なぜ略奪に走ったか…
 ヴァイキングの「侵略の道」
・三国(東フランク王国、中部フランク王国、西フランク王国)への分割、この混乱を助長したのがヴァイキング
・各地の領主や農民は主従関係を結んで対抗
 →封建社会のはじまりに
□もとは商人だったヴァイキング
・ヴァイキングとは「(市で商う)入り江の民」という意
 →ノルマン人の自称
・ヴァイキングは海賊の名と同義語になっていく
 →西ヨーロッパの人々の脅威に 
・自分たちの国をつくるまでに
 →10世紀初頭のノルマンディー公国
 →地中海のシチリア両王国
 →ロシア地方のキエフ公国
□侵略の道は「封建社会への道」だった
・「封建制度」…土地を介して主従関係を結ぶ契約制度
・中世ヨーロッパの封建制度
 →幾層もの主従関係が成立:
  国王 ⇔ 中央貴族 ⇔ 地方領主 ⇔ 農民・農奴
・スカンディナビア半島のヴァイキング
 →実は西ヨーロッパ各地に多大な影響を与えたキーマン

2.エルサレム奪還を目指したが…
 十字軍が突き進んだ「遠征の道」
・ビザンツ帝国(東ローマ帝国)皇帝が西ヨーロッパ諸国に援軍を求め、十字軍の遠征が始まる
□聖地奪還を呼びかけた教皇の狙いとは
・1096年、第一回の十字軍遠征が開始
・イスラム教国家のセルジューク朝トルコがアナトリア半島に進出
 →聖地エルサレムの奪還がキリスト教徒の使命に
・キリスト教会は東方正教会とローマ・カトリック教会に二分の背景
 →ビザンツ帝国とローマ教皇の利害が一致、十字軍遠征の道
□"聖戦"の名のもとに行われた悪行の数々
・十字軍の遠征参加者には、それぞれの立場による思惑
 諸侯や騎士         →武勲と戦利品
 封建制度のもとの二男や三男 →領地獲得の夢
 領民            →自由を求める
 ならず者          →罪が許される
 商人            →ひと儲け
・私利私欲のための略奪や住民の殺戮が横行
□遠征が封建制度の終焉のきっかけとなった
・十字軍の遠征のおかげで発達したのが商業
 →新たな都市が誕生 …ヴェネツィヤ、ミラノ、ピサ、ジェノヴァ
・領民としての生活に、新たな生き方を考えさせた

3.ヨーロッパを襲った死の恐怖…
 恐るべき伝染病を運んだ「ペストロード」
・3000万人超の死者を出したペスト(黒死病)
□ヨーロッパ各地で猛威を振るった悪疾
・特に甚大な被害を出した14世紀のヨーロッパでの大流行
・ジェノヴァ国の植民地、カッファの町が起点
  ↓
 コンスタンティノープル
  ↓
 現在のエジプトやモロッコ、イタリア、スペイン、イギリス、バイエルン地方、ハンガリーなど、ヨーロッパ中へ
□教会の存在に疑問を投げかけた「病の道」
・権威を誇った教会やローマ教皇でさえ、ペストの前ではまったく頼りにならず
・人と神の関係について、教会を通すのか、マルティン・ルターのように聖書を通して学ぶのか、考えさせられる転換の道に

4.実は"平和の道"でもあった…
 モンゴル帝国の「世界征服の道」
・1206年、チンギス・ハンが建国したモンゴル帝国
□領土拡大はいかに進められたか
・チンギス・ハンが、中都(のちの大都で現在の北京)を陥落させ、西方への遠征を開始
・チンギスの後継者、三男のオゴタイ
 →甥のバトゥやフラグを派遣、さらなる領土拡大政策
・領土を分けて、ハン国(小王国)に
・チンギスの孫のフビライが大ハンの第五代
 →現在の北京に遷都、国名を中国風の元に
□モンゴル軍の強さの秘密とは
・騎馬民族である彼ら
 →替えの馬を数頭(五頭程度)用意
 →一日60kmは進んだ
 →家族も従軍 …士気の高揚
□モンゴルの平和「パクス・タタール」がもたらしたもの
・モンゴル帝国が辿った道
 →ユーラシア大陸の平和と活発な東西交流
・モンゴル帝国の一国支配
 →税金が軽減、経済が活発化
・アジアの中国文化、中東のイスラム文化、西洋文化
 →独自に発達していた三つの世界を一体化
□フビライに仕えたマルコ・ポーロ
・イタリアの商人、マルコ・ポーロ
 →元が建国された1271年にヴェネツィアを出発、1275年に大都(北京)に
 →17年間もフビライに仕える
・『東方見聞録』
 →東方への関心の高まり、次の大航海時代へのきっかけに

ご意見・ご感想