Semiconductor Portal

HOME » ブログ » インサイダーズ » 長見晃の海外トピックス

世界各国の半導体業界、グローバルな生き残りにかける動き

グローバルな市場牽引力の発揮に向けて新技術・新製品の重みに前回は注目したが、現実は生き残りにかけて事業運営を如何に回していくか、必死の動きが世界各国・地域で並行、相次いでいる。成熟した先進経済圏は財政基盤が揺らいで新市場や雇用の創出がままならない一方、伸長著しい新興経済圏は格差拡大、民族・宗教、領土・領海など様々な内政および外交問題を抱えながらの切り盛りである。今までに何度か繰り返されている"グローバルな協調と競争"のまたひと山を感じている。

≪厳しい現実とそれぞれの選択≫  
  
世界を主導する米国の半導体業界であるが、債務上限引き上げに追われる待ったなしの経済状況の中、米国SIAからはグローバルに共通の土俵で競争できるよう法人税の引き下げを求める以下の発表が行われている。国内雇用を確保して先端技術開発で世界を引っ張っていく上で欠かせない方策という主張である。我が国にもそのまま当てはまってくる内容であるが、新技術・新製品を積み重ねて新興経済圏との間でやり取りが回ってこそという避けられない状況があり、バランスの舵取りの重みを感じている。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○革新的な経済が仕事の創出および経済の伸長の継続に鍵となる−PMC-Sierra CEO & SIA Board Member、Greg Lang氏が長期的なグローバル競争力を牽引する法人税制改革に焦点 …7月27日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、米国上院Finance Committeeの聴聞会で法人税制改革についての考え方を示した。PMC-Sierra社のPresident and CEOでSIA Board of DirectorsメンバーであるGregory S. Lang氏が、"CEO Perspectives on How the Tax Code Affects Hiring, Businesses and Economic Growth"についての聴聞会で該Committeeの前で証言した。

「米国半導体業界は、グローバルで輸出が高く$1.1 trillionハイテク業界を支えており、革新的な経済の柱石である。米国連邦税法は、アメリカに向けて継続する経済成長を与えられる我々のような業界を元気づけるべきである。」とPMC-Sierraのpresident and CEOでSIA Board MemberのGregory Lang氏は言う。「ハイテクおよび仕事創出における米国のleadershipを維持するために、我が国はもっとグローバルに競争力のある税制構造をもたなければならない。」

より広範な伸長および革新に向けて運ぶ一環として、米国の仕事創出を高め経済を伸ばす最も実効的な方法の1つは法人税制改革に取り組むことである。根本的な改革が必要であり、次の3つの鍵となる要素に焦点を当てなければならない。
 −グローバルに競争力のある税率
 −地盤を守るアプローチへの動き
 −米国での研究開発(R&D)を奨励する恒久的な優遇策

「現状の米国連邦税法は、半導体業界の競争力に遠くまで影響が及んでいる。我々の業界はグローバルな競争相手からの熾烈な競争に直面しており、彼らは、低い税率、自らを守る税体系のもとで活動し、自分たちのビジネスを伸ばすために寛大な優遇策を受けている。一方、米国に本社を置く半導体メーカーは、現状の米国連邦税法のもと不利な活動となっている。法人税制改革は、アメリカの革新の将来および速さを維持するうえで重要な前進ステップであり、上院Finance Committeeが改革に焦点を当てていることが励みになるものである。」とLang氏は続ける。

PMC-Sierraは、ディジタルcontentをつなぎ、動かし、蓄積するネットワークを変換する半導体の革新を主導している。技術leadershipの実績に立って、PMC-Sierraは、ストレージ、光およびモバイル・ネットワークスにわたる革新を引っ張っている。
★★★↑↑↑↑↑

我が国では、次の動きから三洋電機の名前が業界から姿を消す状況となっている。半導体は米国と、今回の白物家電は中国と、まさにグローバルな展開推移である。あるOBの声で「何でこんなことに」とあるが、またも繰り返される熾烈な現実である。

◇パナソニック、三洋の白物家電事業売却へ、中国大手に (7月28日付け asahi.com)
→パナソニックが、子会社の三洋電機の洗濯機と冷蔵庫事業を、中国の家電大手ハイアール(海爾集団)に売却することが28日分かった旨。三洋電機とハイアールが近く基本合意し発表する。パナソニックにとって、懸案だった三洋との重複事業の整理が大きく進むことになる旨。売却額は100億円程度、約2千人の従業員も大半がハイアールに移る見込みの旨。

他の国とて決して穏やかではなく、協調や支援なしでは動かず、それぞれの選択に進まざるを得ない状況が次々と目に入ってくる感じ方である。

◇Report: Embedded systems development in India (7月26日付け EE Times India)
→Embedded Systems Conference India 2011(Bangalore)にて、Allgo Embedded Systems(Bangalore)のCEO、K. Srinivasan氏。インドには製造に向いたecosystemがなく、Allgoは、インド国内教育市場向けタブレットコンピュータを設計したが、中国の製造メーカーを使わざるを得なかった旨。

◇ProMOS to swap debt for equity, say reports (7月26日付け EE Times)
→Taiwan Economic News発。苦境のDRAMメーカー、ProMOS Technologies社が、約$2Bの負債の半分をequityと交換する、30以上のcreditor銀行との取引に原則として合意の旨。2002年のHynix Semiconductor社救済例に似ている旨。

◇Israel offers Intel $290 million for expansion (7月27日付け EE Times)
→イスラエル現地紙発。イスラエル政府が、Intelに対し同国での製造operations拡大に約$290Mまでの助成を提示している旨。


≪市場実態PickUp≫

携帯からタブレット、スマートフォンへ、市場の入れ替わりが急速に進み、具体的な動き、データとなって表われている。Nokia、ST-Ericssonなども再構築が急となっている。

【市場の入れ替わり】

◇RIM adjusts to new reality by slashing 2,000 jobs (7月26日付け Reuters)
→BlackBerryを作っているカナダのResearch In Motionが、かっては同社が席巻していたモバイル市場でAppleおよびGoogleに追いつこうと苦しい戦い、同社従業員の約11%、2,000 jobを削減する計画の旨。

◇Small-sized display shipments down except for tablets (7月28日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。5月の中小型ディスプレイパネル出荷が、2ヶ月連続で減少、かって携帯電話などconsumer機器が普及していた領域をタブレットが替わって受け継いでいる状況をもう一つ示している旨。

買収・統合の動きが連日のように起きているが、次の動きはここ何ヶ月か紙面を賑わせている応酬である。

【買収阻止】

◇Zarlink adopts 'poison pill' (7月25日付け EE Times)
→Microsemi社による敵対的買収の試みに反対する努力の様相、カナダの半導体ベンダー、Zarlink Semiconductor社の役員会が、同社のoutstanding株式20%以上の投票権を誰もが得られないようにする企業買収の防衛策(limited duration shareholder rights plan)を採る旨。

TSMCの業績予想に下方修正が行われており、今後の雲行きに注目していかざるを得ないところがある。

【TSMC業績予測下方修正】

◇TSMC forecasts falling sales in Q3 (7月28日付け EE Times)
→TSMC(Hsinchu, Taiwan)の第三四半期売上げが約$3.53B〜約$3.60B、第二四半期の約$3.83Bから6-8%減となる見込みの旨。

◇TSMC slowing down capacity expansion; revises 2011 capex (7月28日付け DIGITIMES)
→7月28日のinvestors conferenceにて、TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏。TSMCの2011年capex予算について、年初見通した$7.8Bから$7.4Bに下方修正、また本年のファウンドリー市場の伸長予測についても、以前の15%から7%に落とす旨。

今後の有望市場とされる医療機器分野であるが、規制に関する問題が一筋縄ではいかない米国での論争状態である。

【米国の医療機器規制論議】

◇Report on FDA draws fire before release (7月28日付け EE Times)
→米国Food and Drug Administration(FDA)から委託され、Institute of Medicineが明日リリースする医療機器規制の今後についての報告書が、すでに批判を招いている旨。

◇FDA defends 510(k) as debate begins (7月29日付け EE Times)
→米国のregulatorsが素早くも、医療機器認可で最も広く用いられているプロセスをほごにすべきというレポートの結論を拒絶している旨。

◇Report: FDA should scrap 510(k) process (7月29日付け EE Times)
→医療機器の大半が用いている現在の規制プロセスをやめることを求めるInstitute of Medicine(IoM)からの期待を集めた報告書について、業界団体が非難している旨。


≪グローバル雑学王−160≫

古代世界の歴史を象る「道」を続けて、「聖遷(ヒジュラ)の道」「大運河の道」「遣隋使・遣唐使の道」について、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野  紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

よりそれぞれの道筋の現実を把握していく。盛衰、苦難に満ち溢れた人間ドラマが、それぞれの流れ、推移の中に映し出されてくる。


2章 古代世界を形づくった「道」−−−国家、民族、文化の交差は現代にまで影響を与えた

5.イスラムの歴史の起点となった…
 預言者ムハンマドの「聖遷(ヒジュラ)の道」
・西ヨーロッパ世界が形成された頃、中東では、社会に大きな影響を与える出来事
 →イスラム教の成立
□アッラーの神の啓示を受ける
・6世紀後半から7世紀にかけてのアラビア半島
 →紅海からシリアへと至る新たな交易ルートの途中にあたるメディナ
 →メディナが後にイスラム教の拡大に大きく貢献
・ムハンマドは、570年頃に、メッカに生まれる
 →40才頃から洞窟で瞑想、神の啓示を受ける
 →610年、イスラム教を創始 
□イスラムの歴史の起点となった「ヒジュラ」
・ムハンマドは、一族から追い出され、信徒70人あまりを連れて新興都市メディナへの移住を決意
・メッカからメディナへ至る道
 →信仰をともにする新しい仲間との人間関係を築くために通った道
 ⇒「ヒジュラ(聖遷)」
・力をつけたムハンマドは、1万人の軍勢とともにメッカに迫り、無血占領
□イスラム教の拡大とウマイヤ朝の建国
・ムハンマドは、その2年後に死去
 →彼の代理人たる「カリフ」
・初代カリフ …アブー・バクル
 二代カリフ …ウマル
 →彼らの時代に、ムハンマドが語った神の言葉を記録した「コーラン」がつくられる
 →六信…「唯一の神アッラー」「天使」「啓典」「預言者」「来世」「天命」
 →五行…「信仰告白」「礼拝」「喜捨」「断食」「巡礼」
  三代カリフ …ウスマーン
  四代カリフ …アリー
 →アリーに対抗、後継者争いを制したムアーウィアが、イスラム初の王朝、ウマイヤ朝を興す

6.隋王朝滅亡の端緒となった大事業…
 暴君・煬帝が築いた「大運河の道」
・隋と呼ばれた中国を支配した暴君、煬帝
 →隋はわずか37年で滅亡。その一因が大運河の建設。
□現代でも活用されている大運河
・隋王朝は581年に中国を統一
・二代皇帝、煬帝が、水路網の完備に着手
 →全長およそ2500km、幅およそ60m
・運河沿岸に豪華な離宮を40ヶ所あまりも
・608年、現在の北京と洛陽を結ぶ運河、「永済渠」
 610年、長江南の現在の鎮江から東南方面に向かう「江南河」
 →現代でも活用されているものも
□滅亡を決定的にした高句麗遠征の失敗
・612年、100万を超す大軍を率いて高句麗遠征へ
 →撤退を余儀なく、敗走
 →遠征の失敗が、隋王朝滅亡を決定的に
 →618年、隋王朝は滅亡
・大運河の道は、煬帝に栄光と挫折の二面

7.大陸の知識はこうして日本へ…
 命がけだった「遣隋使・遣唐使の道」
・日本は遣隋使・遣唐使を中国に派遣
 →大陸の先進知識の取り入れ試みる
□日本の国造りに寄与した遣隋使・遣唐使
・遣隋使としては3回(4回説、5回説も)
 遣唐使は約20回(実際に渡航したのは16回)
・鑑真のような高僧や知識人が多数来日
□中国へ至る三つの航海コースとは
・当初は「北路」が主流
 →朝鮮半島へ渡り、陸路で長安へ向かうルート
・「南島路」は、鹿児島から南西諸島を進み、東シナ海を渡るルート
・「南路」は、五島列島から東シナ海を渡るルート
□遣唐使が送られなくなったわけ
・遣唐使は、894年に終焉
 →文化はすべて吸収、菅原道真が遣唐使に任命された頃は、すでに有名無実化
 →繁栄を誇った唐は次第に弱体化、内乱も頻発

ご意見・ご感想