セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

半導体業界の引き締めおよび今後に向けた新たな始動局面

SEMICON Westが開催される時節ということか、直接あるいは間接に様々な半導体業界模様の記事が目に入ってくる。間接には、一つの新会社にまとめようとしてうまくいかなかった台湾のDRAM半導体業界の近況が一つである。
SEMICON Westからは、今後の半導体業界を見据えて若い世代に向けたメッセージが含まれる2件である。これら3件ともにそれぞれに問題意識、考え方、感じ方、いろいろ沸きあがるところがある。

≪引き締めと始動≫ 
  
台湾のDRAM業界については、2年前になるか、一つの新会社統合に向けた動きが活発化していたが、その後はどうなったのか。次の記事から、現状と依然尾を引くなかなか踏み込めないところを感じている。

〓〓〓〓〓〓〓↓
○苦闘する台湾のDRAM業界に必要なソリューション (7月11日付け Taiwan Economic News)

経済相、Y.S. Shih氏が、中国の投資家が台湾のDRAM業界に投資することを容認する考え方を受け入れる可能性を最近述べているが、United Microelectronics Corp.(UMC)のVice Chairman Emeritus、John Hsuan氏は該台湾業界は"経験および豊富な資金力のある"企業のリーダーシップのもとで統合すべきであると提案している。

台湾政府が台湾の半導体業界を中国の投資家に条件付きで開放した今年3月以降、台湾のDRAM業界に中国資本を認めるかどうかの問題についてShih氏は初めてスタンスを変化させている。

台湾の改定された規制によると、中国の投資家は台湾の半導体メーカーに最大10%のstakeが認められ、台湾-中国合弁における中国投資家のownershipは50%より下とされている。すべての投資計画はMOEAの検査が必要とされる。

Hsuan氏は、最初の試みは失敗であったが、台湾のDRAM業界はまた苦境に陥っており、メーカーは再びいっしょになる試みを行う可能性を指摘している。しかし、自分はDRAMメーカーではないので、この統合の動きを引っ張ることは避けると強調している。2009年にHsuan氏は、当時台湾の業界は莫大な赤字となり、台湾のDRAM業界をまとめて新会社を設立するプロジェクトをリードするよう経済相から委託された経緯がある。

Hsuan氏は、"DRAM製造経験が豊富で資金力がある"現地の会社が統合努力の先頭に立つべき、としている。挙がってくるのはNanya Technology社およびInotera Memories社であり、ともにFormosa Plastics Groupの子会社である。

該Group幹部は、台湾のDRAM業界を統合することは非常に難しく、完了させるには少なくともUS$3.4 billionを要する仕事と特に言及している。また、台湾の業界が市場メカニズムに立脚して、誰が残り、誰が消えるべきか決めることを提案している。

該Group幹部は、DRAM事業には非常に投資してきており、引き下がることはない、と強調している。NanyaおよびInoteraは、40-nmで競合、30-nmプロセスに入ってから、20-nmプロセス技術に取り組んでいる、と特に言及している。
〓〓〓〓〓〓〓↑

入り組んだ事情が垣間見えるところがあるが、一手で背負うのは大変、そうかといって中国資本を入れるのはどうなるのか、というところと思う。台湾のDRAM業界図を改めて理解する必要を感じている。

SEMICON West 2011から今後に向けたメッセージが見られる2件が目についた。まずは、今年でSEMI president and CEOを退任するStanley T. Myers氏である。時間軸を一気に凝縮したコメントとなっている。

〓〓〓〓〓〓〓↓
○Historic semiconductor industry, SEMI moments from Stanley Myers (7月14日付け ElectroIQ)

Stanley T. Myers氏が、今年後半にSEMI president and CEOを退任する。
SEMICON West 2011にて、半導体fabの"歴史的"進展およびSEMIの発展でどんな瞬間が際立つかを語っている。また、半導体業界に入ってくる若いエンジニアに向けたアドバイスも含まれる。

初期の頃、シリコンエンジニアは最終的に直径1インチの結晶上でfloatsが行えて、これがゼロ転位結晶の開発につながり、順次半導体業界のscale-upを促して、200-mmから300-mmウェーハに至っている。ブレイクスルーの構築が次から次へと、こうして半導体業界は進展している、とMyers氏は特に言及する。

半導体製造業界の今後を見やって、3D ICおよびthrough silicon vias(TSV)がMoore則の継続を推進する魅惑的な技術である、とMyers氏は付け加える。

SEMIでは、半導体および関連市場に重要となるグローバルなaction itemsについてすべてのメンバーにもたらす対応が最も重要と考えるとのこと。地域特有の重要事項に注力するために地域のpresidentsおよびboardsを作ったときが歴史的な瞬間、と同氏は言う。

若いエンジニアに向けたアドバイスについて、「事を起こそうとして失敗しそうになる。しっかり失敗、早く失敗、そしてどんどん進め!」この思考態度で何事もやっていけると言っている。
〓〓〓〓〓〓〓↑

もう1件は、バックエンドNo.1のASE社からの興味深い表現が多い基調講演である。

〓〓〓〓〓〓〓↓
○Semicon keynoter urges new biz models (7月13日付け EE Times)

半導体業界は生まれて53年となり、世界GDPの0.6%を占める、さらにこの比率は上がってくる、とテストおよび実装プロバイダー、ASE社のchief operating officer(COO)、Tien Wu氏が2011 Semicon Westでの基調講演で語りかける。

Wu氏は、成功する会社の2つの型を、"opening door"会社および"closing door"会社と表した。前者は、多くの技術を押してイノベーションを推進、いくつかは当たるやり方。後者は、技術を絞って推進、規模、効率、参入障壁など構築して成功するやり方。

従来、これら2つのビジネスモデルでは儲けられるが、中間では儲からない。

しかしWu氏は新しい"smart hybrid zone"があり、"極端なコストなしで転換および統合により"新市場を創出できるとしている。

Wu氏は、ここ数十年にわたる半導体業界のdriversを詳しく話した。1970年代の宇宙航空、1980年代のメインフレームコンピュータ、1990年代のPCs、そして2000年代の携帯電話。今日そして近い将来、smart computingおよび"ambient intelligence"が半導体業界を引っ張る、とWu氏は言う。

Wu氏は半導体業界と同じ53才、自分より年上、年下に分けてのclosingメッセージ。
年上に対しては、「続けよう。あなたの知恵と経験が依然必要である。」

年下に対しては、「夢をもち続けよう。あなたにはmiddle kingdomsおよびhybrid zonesは何か、探る責任がある。」
〓〓〓〓〓〓〓↑

それぞれに転換点、岐路を考えさせられ、難解な部分が増してくるが、半世紀を越える半導体業界の今後に向けた取り組み、アプローチに引き続き注目である。


≪市場実態PickUp≫

ReRAM(resistive RAM)のブレイクスルーを図る内容の2件である。

【ReRAM】

◇Samsung reports trillion-cycle ReRAM (7月13日付け EE Times)
→Samsung Advanced Institute of TechnologyとSejong University(Seoul, Korea)理学部の研究。read-write enduranceが1兆サイクル以上のノンボラresistive RAMについて報告(Nature Materialsによる発行論文)、該passive switchingメモリは、非対称Ta2O5-x/TaO2-x bilayer構造を用いて作り、switching時間10-nsの旨。

◇IMEC claims ReRAM filament breakthrough (7月13日付け EE Times)
→IMEC(Leuven, Belgium)が、resistive RAM(ReRAM)デバイスにおけるfilamentsの物理的性質の理解でブレイクスルーを得た旨。ReRAMでは、通常は絶縁している誘電体が、十分な高電圧を印加することによりfilamentすなわち導電パスを通して導電性をもつようになる旨。

ファウンドリー業界も、Globalfoundries社参入で混戦、激戦模様に。TSMCが圧倒、UMCとともに台湾勢で席巻してきている業界模様がどうインパクトを受けるか。上記の台湾DRAM業界ともども波乱含みの様相に映ってくる。

【ファウンドリー業界模様】

◇IC foundry sector facing uncertain times: analysts (7月12日付け Taipei Times)
→Fitch Ratings発。TSMCおよびUMCなどAsia-Pacific専業ICファウンドリー分野が、来年後半から増大するリスクに直面する見込み、integrated device manufacturing(IDM)ファウンドリーからの積極的な設備投資&競合が、専業ファウンドリーにマイナスfinancialインパクトとなる旨。競合の高まりについては、Abu Dhabi出資のGlobalFoundries社が向こう数年で力強いプレーヤーになっていくと思われ、一方、Samsung Electronics Co, Intel社およびPowerchip Technology社など新しいプレーヤーが、売上げを多角化、capacity稼働率を上げるよう該分野に参入、あるいは計画している旨。

◇Globalfoundries: New York fab ready for kit (7月12日付け EE Times)
→Abu Dhabi sovereign wealth fundがmajority所有するファウンドリー、Globalfoundries社のNew Yorkに新しく建設したクリーンルームおよびDresdenの拡張クリーンルームともに、最初の製造設備を搬入据え付けの旨。

AppleとSamsungの間の特許を巡る争いが、Appleプロセッサのファウンドリー製造にも波及、今までのSamsungから切り替えてTSMC、Intelの名が挙がる事態になっている。関連する動き、時間軸順に次の通り。

【Apple対Samsung】

◇Analysis: Apple-Samsung battle may spur supplier shakeup (7月11日付け Reuters)
→両社、スマートフォンおよびタブレット特許を巡る辛らつな戦いの身構え、両社の供給関係悪化は、東芝、Micron, Hynix Semiconductor, IntelおよびTSMCにとってビジネスが増える可能性の旨。Nokiaの10年以上の席巻に終止符、Samsungが世界トップのスマートフォン・ベンダーになりそうということで、スマートフォンおよびタブレット事業を保護するAppleの動きである旨。

◇Samsung Foundry tapes out 20-nm ARM chip (7月12日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.(Seoul, Korea)のファウンドリー半導体製造事業が、high-K metal-gate(HKMG)技術、20-nmプロセス製造を目論んだARMプロセッサtest-chipをtape outの旨。該設計完遂のため、Samsungは、IP licensor、ARM Holdings plc(Cambridge, England)およびEDAメーカー、Cadence Design Systems社およびSynopsys社と協働の旨。

◇Samsung, TSMC and the A6: not OR but AND? (7月15日付け EE Times)
→AppleがiPad用に自ら設計したARMベースプロセッサの製造メーカーとして、AppleはSamsungを除こうとしているという話がずいぶんあり、TSMCがその代替として名指しされており、ファウンドリーに入ろうという動きが最近あるIntelも名が挙がっている旨。

◇TSMC test runs Apple processor, says report (7月15日付け EE Times)
→名前を公表していない先からの情報、Reuters発。TSMCが、AppleのARMベースA6プロセッサを試作ベースで作り始めている旨。

世界の半導体サプライヤでの在庫日数が高まりを見せており、中国経済伸び率の鈍化と合わせて今後に注目である。

【半導体在庫日数】

◇Chip inventory continues to build, says IHS (7月11日付け EE Times)
→IHS発。メモリを除いた世界中の半導体サプライヤでの半導体在庫水準が、7四半期連続で上昇しており、その全体stockpile水準が、第一四半期80.3日から第二四半期は1.5%増、81.5日に高まる見通しの旨。
・≪グラフ≫グローバル半導体サプライヤが保有する四半期平均在庫の推移
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/20110711pcIHSinventory415.jpg

【中国経済伸び率の鈍化】

◇中国9.5%成長、4〜6月も減速、輸出・消費振るわず (7月13日付け 日経 電子版)
→中国国家統計局が13日、4〜6月期の国内総生産(GDP)が物価変動の影響を除いた実質で前年同期比9.5%増えたと発表、成長率は1〜3月期の9.7%よりやや減速、2009年4〜6月期(8.2%)以来、2年ぶりの水準に低下した旨。自動車販売が伸び悩むなど消費が振るわなかったうえ、米欧経済の停滞で輸出の勢いが衰えたのが主因の旨。中国のマクロ政策はインフレ圧力を抑えながら景気の軟着陸を探る難しい局面に入った旨。
今年上期(1〜6月)の実質成長率は9.6%、一方、前の四半期から公表を始めた前期比の成長率も4〜6月期は2.2%、1〜3月期の2.1%とほぼ同じの旨。


≪グローバル雑学王−158≫

イエス・キリスト処刑の「悲しみの道」、ペルシアの「王の道」、そして東 西交流の「シルクロード」とその基礎をつくった張騫の「旅路」について、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野  紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

より経緯、ハイライトを辿っていく。世界史の大きな出来事の断片が、今にして頭にある理解、思いから具体的に一回り、二回り膨らんでいくような感覚を、それぞれのアイテムについて受けている。


1章 世界史の幕開けを促した太古の「道」−−−人類はこうして拡散し文明社会を営みはじめた

4.人類のその後に多大な影響を与える…
 イエスが曳かれた「悲しみの道」(ヴィア・ドロロサ[VIA DOLOROSA])
□「隣人愛」を説いたキリスト教の誕生
・イエス・キリスト
 →イスラエル・ガリラヤ地方の寒村、ナザレで誕生
 →30才頃から宣教活動、「隣人を愛せよ」
 →敵さえも愛する徹底的な隣人愛
□みずから教えを体現したイエス
・イエスの教えを快く思わない人々、ユダヤ教の聖職者たち
 →十字架刑に処せられる
 →ピラトの官邸から刑場、ゴルゴダの丘(現在の聖墳墓教会)までの「悲しみの道(ヴィア・ドロロサ)」
・イエスの悲しみの道はキリスト教の象徴、教えを全世界へ広めるきっかけに

5.王の威光はまさに"道"で示された…
 アケメネス朝ペルシアの「王の道」
・シュメール人によって生み出されたメソポタミア文明
□中東を統一した大帝国
・アケメネス朝ペルシアは、紀元前550年独立、人口4000万人の大帝国
・200年にわたって広大な領土を維持
□「王の道」に象徴される統治システムとは
・強固な中央集権体制を確立
 →立役者が「王の道」と呼ばれる道路
 →約2400km
・「王の目」「王の耳」と呼ばれる監察官を随時派遣
□最速の伝達手段だった「騎馬急便」
・早馬を利用した騎馬急便
 →徒歩では111日かかるが、1週間ほどで走破できた
 →ギリシア人評:「飛ぶ鶴よりも速い」「ペルシアの使者が世界で一番速い」

6.東西交流の発展を担って…
 文物が往き交った「シルクロード」
・中国からヨーロッパに至る「シルクロード」
 →ユーラシア大陸の一体化に大いに貢献
□シルクロードは三つあった
・「オアシスの道」…中央アジアの砂漠地帯を通る
 「草原の道」  …オアシスの道よりも北の草原地帯を通る
 「海の道」
 →文化や宗教も広く伝わることに
□もっとも有名な「オアシスの道」
・主な都市 →長安、敦煌、亀茲(きじ:クチャ)、サマルカンド
・十数人から数百人の集団(キャラバン)
 →莫大な富を生むシルクロードの交易
・東端は日本という説も
□北方のルート「草原の道」
・モンゴルやスキタイといった騎馬民族が利用
・独特の動物文様、スキタイ文様 
 →ギリシア工芸品の影響を色濃く受けている
□大量かつスピーディに運べた「海の道」
・季節風を利用、船がスムーズに航行
 →大量の荷物をスピーディに運べる船での運搬が多用
 →大航海時代よりも前に、ユーラシア大陸諸国の一体化

7.シルクロードの基礎をつくった…
 密使・張騫の波乱万丈の「旅路」
・紀元前2世紀に活躍した中国(前漢)の政治家、張騫。13年にも及ぶ波乱万丈の旅路。
□シルクロード誕生のきっかけ
・シルクロードを一大幹線ルートとしたのは、前漢の武帝
 →西域地域を掌握しようと乗り出す
 →大月氏国との匈奴討伐の同盟
□西域への進出を決めさせた張騫の旅
・紀元前139年、張騫は大月氏国への密使として派遣
 …現在のウズベキスタンに位置する大月氏国
 →西域の最新情報を入手、張騫は長い旅路から帰国
 →漢は西域進出を遂行、次々と各地を支配下に
 ⇒シルクロードのオアシスの道が確立

月別アーカイブ