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新興市場に向けた拠点・連携シフト、特にブラジルでの動き

今に始まったことではないが、新興市場で拠点を新設、拡充したり、タテヨコ連携の構成、枠組みを新たに構築する動きが一層活発化している様相を感じている。中国、インドに続いて、ブラジルでの動きが、数年前から目に止まってきていたが、ここにきて主要プレーヤーあるいはその間の具体的な動きが続いており、日々注目している。伸びる可能性を秘めた新興市場への飽くなきアプローチが、こんどはWカップ、オリンピックを控えるブラジルに向けられている。

≪ブラジル市場 最近の経緯≫ 
  
小生がブラジル市場を一層注目するようになった今春の記事2点である。まずは、EMS世界第1位のFoxconnが、こんどはブラジルで新たに取り組むスタンスを発表している。

◇Foxconn could spend $12B on Brazilian move (4月13日付け EE Times)
→世界最大のエレクトロニクス製品contractメーカー、Foxconn Technology Groupが、ブラジルでのoperationsを設立、向こう5-6年にわたって$12Bまで投資する可能性の旨。

次には、同国への注目の高まりを示している以下の記事である。

◇Brazil's growing global profile - and the electronics opportunity (5月17日付け EE Times)
→Embedded Systems Conference(ESC) Brazil 2011(5月24-25日:Sao Paulo)が来週開催されるブラジル、疑いなく注目度が高くなる"BRIC"の国。米国、中国そしてインドなど多くの国々の政府が、ハイレベル派遣団および相互訪問を同国と最近行ってきている旨。

小生は、南半球には無縁でブラジルには行ったことがないが、現地で活躍している方とのメール連絡のつながりがあり、最近のブラジル市場に関わる中国、台湾メディア関係の記事をいただいており、概要次の通りである。

上記のFoxconnについて:

◇電子機器の受託生産で世界最大手の台湾のフォックスコン(FOXCONN=鴻海精密)が、120億米ドルを投じてブラジルに新たな生産拠点を建設する計画の旨。工場新設をきっかけに、フォックスコンやアップル(Apple)関連業者のブラジル進出が加速するとしている旨。
ブラジルでは、電子製品のアッセンブリーの大半は、アマゾンに位置するマナウスで行っているが、マナウスの提供する税制面での優遇策により、コストはメーカー側が受け入れ可能な範囲内に抑えられる旨。
ブラジル政府とフォックスコンの交渉はすでに3カ月に及んでおり、建設予定地の選定や資金調達、税収、ネットインフラ、物流など多方面について話を詰めている旨。

LCD後工程モジュール:

◇台湾パネル大手のAUO(友達)と液晶テレビ(LCD TV)メーカーのTPV(冠捷)が、ブラジル北部のマナウスに、共同でLCD後工程モジュール工場を設立すると発表、同工場を拠点にパネルのアッセンブリー及び販売を行う旨。
AUOにとっては、初の南米新興市場への進出となる旨。
AUOは、「BRICsに属するブラジルは、内需市場の成長に伴い、購買力に力強さが出てきている。また、2014年にはサッカーのワールドカップが、2016年には夏季オリンピックがブラジルで開催されることにより、現地のLCD TV市場の成長を牽引することが期待される」としている旨。
AUOとTPVの戦略提携はこれで2度目、今年3月には共同出資でポーランドに後工程モジュール工場及びTV設計・受託生産工場を設立している旨。

PC業界:

◇台湾の2大PCメーカー、エイサー(Acer=宏碁)とASUSTeK(アスース=華碩)が、ブラジル市場の潜在力を高く評価、取り組みを強化する旨。エイサーは先ごろ、ブラジルの子会社に5000万米ドルの増資を決定、一方のASUSTeKは、沈振来・最高経営責任者(CEO)が2011年第3四半期、ブラジルに2週間前後滞在し、自ら陣頭指揮を採る予定としている旨。

優遇税制:

◇工商時報発。ブラジル政府が、これまで売価に含めてきた税率9.25%の社会安全税について、タブレットPCを対象から除外することを決定、さらに、工業税を15%から3%まで大幅に引き下げるほか、州ごとに定めている輸入や物流サービスに対する税率も引き下げる方針の旨。
同紙の伝えた市場関係者によると、減免税の適用により、生産メーカーは3割近くのコストダウンが可能に、また、ブラジルのタブレットPCは売価が36%下がる見込みの旨。

以上、スポーツの一大イベントを控えて、高揚する市場と積極的な政府の姿勢を感じるところである。Foxconnはさらに液晶パネル工場を日台連携のもと建設するというアナウンスが現下に飛び込んできている。

◇鴻海、ブラジルに液晶パネル工場、日台連携を視野−受託製造、中国生産モデル修正 (6月30日付け 日経 電子版)
→電子機器の受託製造サービス(EMS)世界首位の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が30日、液晶パネル工場をブラジルに建設すると明らかにした旨。東アジア以外では初めてで、電子機器生産の世界地図が塗り替わる旨。日本の製造装置・材料メーカーもブラジルを視野に入れた対応が必要となりそうな旨。

それでは南米、そしてブラジルのPCおよび携帯電話市場の概要は如何ということで、これも現地からお送りいただいたデータの一部から次の理解である。

■南アメリカのPC市場 (Source: IDC)
 2000年   2009年
 7.7M台   26.8M台
        1)ブラジル   41.8%
        2)メキシコ   20.6%
        3)アルゼンチン  8.0%

■2010年ブラジルPC販売トップ10ベンダー (Source: ITData)

1) Positivo Informatica
14.9%
2) HP
10.2%
3) Dell
9.7%
4) Acer
5.0%
5) CCE
5.0%
6) STI
3.9%
7) Lenovo
3.7%
8) Itautec
3.3%
9) Megaware
2.4%
10) Spacetech
1.5%

■2010年ブラジル携帯電話販売トップ10ベンダー

1) Nokia
16,220K台
32.2%
2) Samsung
15,500K
30.8%
3) LG
10,800K
21.4%
4) Motorola
1,850K
3.7%
5) Sony Ericsson
1,550K
3.1%
6) ZTE
1,550K
3.1%
7) RIM
770K
1.5%

グローバルに伸びる市場に向かう嗅覚を最大限発揮していかざるを得ない現状ということと思うが、関連する拠点・連携シフトの動きとして我が国、そしてお隣、韓国で以下の動きである。

◇中小型液晶事業、日立も東芝・ソニーの統合交渉に合流へ (6月30日付け asahi.com)
→日立製作所が、東芝とソニーが進める中小型液晶パネル事業の統合交渉に合流することが30日分かった旨。早ければ7月にも合意し、年内に新会社を発足させる方針、新会社には官民共同設立の産業革新機構が、7割にあたる数千億円を出資する方向で検討している旨。統合が実現すると、3社を合わせた中小型液晶パネルの世界シェアは2割を超えて首位となる見通し、競合する韓国や台湾勢に対抗する狙いの旨。

◇Samsung May Place Laptop Contracts With Taiwanese Makers (6月30日付け Taiwan Economic News)
→Samsung Electronics Co., Ltd.が、同社のきつい社内生産能力では今年の積極的な出荷目標を満たせないという報道の渦中、laptop契約を台湾のメーカーと取り交わす様相の旨。

時の流れ、市場の趨勢ということか、最近開催されたフランスLetiのAnnual Research Reviewsイベントのclosing remarksで、ST Microelectronicsのhonorary chairman、Pasquale Pistorio氏は次のように述べているとのことである。

「1960および1970年代は、3つの大きな経済圏、すなわち米国、欧州および日本があった。他の国々はすべて二次的プレーヤーであった。1980年代に、中国とインドが表われ始めて、そこでのビジネスが以降加速してきている。Berlinの壁が崩壊後、東欧、南米および南アフリカがグローバル経済での重みをもち始めた。結果として、主要マクロ経済システムのGDPは減少してきている。加えて、中国、インドおよびアジアは、米国および欧州を合わせたより多くのエンジニアを輩出、R&Dに劇的に投資している。
中国は、コストリーダーではなく、世界の革新リーダーになりたいとしている。アジアが向こう20年の戦いの場となる。我々は存在感、エンジニア、マーケティングなどを擁してそこにいなければならない。」

世界、グローバルに通用する最先端技術の優位性、またもや我が国が戦いの場で存在感を発揮するための条件として見えてくるところがある。


≪市場実態PickUp≫

大震災の影響と思うが、SICAS半導体生産統計の発表が遅れているとのことである。被害の大きさ、重みを感じるとともに、早い復旧を願うのみである。

【SICAS製造capacity統計の遅れ】

◇Global wafer fab statistics still missing (7月1日付け EE Times)
→semiconductor international capacity statistics(SICAS)のwebsiteが、2011年第一四半期のグローバル半導体製造capacity統計を更新・掲載してなく、2010年第四四半期で据え置かれている旨。遅れの理由の一つとして、東日本大震災で被害を被った日本メーカーでの製造capacity損失および稼働率を如何に記録するかに不安定さがある可能性の旨。

定義が難しいところを感じるが、モバイル機器を財布代わりに使う新興市場ポテンシャルの見方である。

【モバイルマネー】

◇Mobile money users in India to reach 10 crore by 2015 (6月28日付け EE Times India)
→Tavess Research発。モバイル機器により財布のように購入および振替が行えるmobile moneyが、中東、アジアおよびアフリカの新興市場で、2015年までにそのユーザが10億人に達し、インドはうち1億人以上の加入者を占めると見る旨。

キーボードを叩く動作はそれこそ日常的に欠かせず、日々の暮らしのなかで最も時間比率が高いのではと思うくらいであるが、その圧力を電気に変えて電源替わりにならないもんか、という研究アプローチである。

【指先圧力エネルギー】

◇Researchers look at typing as power source (6月29日付け EE Times)
→オーストラリアRMIT(Royal Melbourne Institute of Technology)の研究。typing操作を電子機器の再充電に使えるかどうかに注目、scale upできれば充電器をemergency use onlyにもっていける可能性の旨。
piezoelectric薄膜から発生する電圧および電流を初めて精確に測定している旨。

◇Versatile energy harvesting with piezoelectric thin films (6月27日付け EE Times)
→self-powering携帯エレクトロニクス開発に向かう重要な1ステップ、RMIT(Royal Melbourne Institute of Technology) Universityが初めて、機械的圧力を電気に変えるpiezoelectric薄膜の能力特性を評価、この結果は材料科学ジャーナル、Advanced Functional Materialsに掲載の旨。

米国Obama大統領の教育関係諮問ヘッドを務めるXeroxのCEO、Ursula Burns女史が、アメリカの教育システムが壊れていると嘆いている。伸びる市場に向かう闊達性を如何に浸透させるか、先進圏いずこも求められる大きな課題ということと思う。

【いずこも教育問題】

◇Xerox CEO: K-12 education system "broken" (6月30日付け EE Times)
→Xeroxのchairman and chief executive、Ursula Burns氏(2009年11月にObama大統領がscience, technology engineering and math[STEM]教育についてのWhite Houseプログラムのヘッドに任命)、Churchill Club(PALO ALTO, Calif.)での講演。アメリカのK-12教育システムは全く壊れて嘆かわしいほどに適正を欠いており、最も聡明で若い面々が工学技術よりもWall Streetでのキャリア実績を選ぶようになっている旨。


≪グローバル雑学王−156≫

発酵、醸造の世界的権威、坂口 謹一郎氏の1950年から1951年にかけての欧州、米国を巡るお酒を味わう旅に、

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
  …1957年 1月17日 第 1刷 発行
   2010年11月19日 第30刷 発行

により同行させていただいてきたが、今回で締めとなる。最後は、欧米以外のソ連(当時)、中国、朝鮮(当時)、そして日本を一挙概観している。いろいろお世話になるお酒であり、振り返ってみて非常に読み応えにある本書の内容と感じるとともに、今後ともに最高のお酒とのお付き合いを望むものである。以下に散見される?は変換できない漢字であり、ここではご容赦を願いたく。


18 カビは醸もす(ソ連と中国)

・『世界の酒』ゆえ、せめて欧米以外の国々の酒にも触れていかないと

□ソ連の酒
・満州国の時代、ハルビンに秋林(チューリン)という会社
 →ウォツカ(Vodka)を主として製造
 →ロシア本国では小麦、ライ麦、大麦などで。そこではとうもろこしやカオリャンも使用。
 →ウォツカの一種、ズブロヴカ(Zubrovka)、ナリヴカ(Nalivka:ウォツカに香をつけた酒)

□利酒家オパーリン
・昨秋来日のソ連の生化学者、オパーリン氏
 →なかなか酒のことに詳しい
 →案内のお礼にソ連から持参のウォツカとブランデー
・このブランデーはスペインやイタリアのものに似た感じ
 →ソ連邦の葡萄は、クリミヤやコーカサスに近い方面が本場
 →スペインやイタリアのものと系統が同じ品種

□パンの酒とカビの酒
・ソ連の国民飲料
 →ウォツカのほかにクワスというビールに似たもの
 →小麦、大麦、ライ麦、燕麦などの原料のほかにパン屑を加えて醗酵させる製法とのこと
・西洋の酒はいずれも麦芽を使わなければできない
 ⇔日本や中国のような東洋の酒は全然使わず、その代わりに麹というカビを生やした穀類を使う
  →穀類の澱粉を糖分に変ずる
 ⇒糖分をアルコールにするのは洋の東西を問わず酵母の役目
・中国の麹
 →そのカビも日本の麹菌とはまったく別の種類の「くものすかび」の類

□中国の酒
・日本酒に相当する中国の酒
 →北に黄酒(ホアンチュウ)
  南に紹興酒(シアオシンチュウ)
  →いずれも米に?子や酒薬を加えて醗酵させる
  →日本酒と違ってかめに入れて密封して貯蔵
・蒸留した中国の酒
 →東北の高粱酒(カオリヤンチュウ)
  山西の汾酒(フエンチュウ)
  四川の大?酒(ターチュチュウ)
  雲貴の茅台酒(マオタイシュ)
・蒙古や満州の北の方には乳の酒
 →クーミスという馬の乳の酒は、アルコール1-2%で健康にもよい
 →牛の乳酒のことを、中国では牛?酒(ニューナイチュウ)または?酒(ナイチュウ)
・台湾で特有な酒
 →米酒(ピーチュウ)…米に白?(ペイカ)という支那麹を加えて醗酵させたものを蒸留してつくる焼酎
 →紅酒(アンチュウ)…紅麹(アンカ)という赤カビの麹を米酒に浸して造った再製酒

□砂糖の酒
・台湾にはそのほかに、糖蜜酒 …砂糖製造のときに出る廃糖蜜を醗酵させ蒸留
 →ラム類似だが、アルコール分はラムより低い

□朝鮮の酒
・朝鮮の名物は濁酒
 →蒸した米に?子と水を加えて醗酵 …中国の酒の系統
 →違うのは、搾らずに、残った米粒などもいっしょにそのまま磨りつぶして濁ったままを飲む

□失われたる酒どぶろく
・日本でも2月、3月の酒の造りの頃に方々の酒屋で「にごり酒」を売り出してくれたらどんなにか楽しみ
 →大昔、男も女もいっしょに飲んだ頃の淡い郷愁の名残では

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