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新たな製品展開カテゴリーのキーワード、フュージョン

製品、ものづくりの新規開発、改善、改良で自然に沸いてくる発想に、いっしょ、ひとつにしてみたら、という考え方が挙げられる。AMD社のCPUとGPUを合成させた新しい製品、フュージョン(fusion)のイベントについての記事を見て、メモリに次いでプロセッサでも「融合」(fusion)が展開されてきているという受け止めである。市場に受け入れられるまでにじっくり取り組む必要があるし、次の新技術に置き換えられる運命が待ち構えることは、小生も実際に経験、体感したことのある道筋である。

≪フュージョン展開≫ 
  
インターネットの百科事典で、「フュージョン」を検索してみると1例として様々な表わされ方である。

◎フュージョン(fusion)
 −物理学における核融合
 −音楽のジャンルにおいて、ジャズより発展した一つの演奏スタイル
  − フュージョン (音楽)
 −通信・電話会社のフュージョン・コミュニケーションズ(FUSION COMMUNICATIONS Co.)の略称
 −大手半導体メーカーAMDが販売しているグラフィック統合APU製品のブランド - AMD Fusion
 −ソフトウェア会社のフュージョンパートナー(Fusion Partners, Co.)の略称
 −本田技研工業が販売するスクーターの車種名 - ホンダ・フュージョン
 −フォード・モーターが販売する自動車の車種名
 −ドラゴンボールで登場する、人間同士が融合することができる技。
 −イギリスのゲームデザイナー、ピーター・モリニューがブルフロッグ在籍時に制作したゲームのタイトル。

それぞれ融け合って生まれてきているということは共通しているのであろうか?AMD社のFusion半導体も、上記の通り掲載されているが、元を辿ると以下のように表わされている。

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・AMD Fusion

Fusion (フュージョン)とは AMDが2006年から開発を行っているAPU(CPUと GPUを合成させた新しい製品)の開発コード名である。AMDによるATIの買収により浮上した。
ATI Technologiesは、かつて存在したカナダの半導体設計会社である。
2006年にAMDに買収され、以後は同社のグラフィックコントローラのブランド名として提供が行われている。

現在 GPUコンピューティングはNVIDIAのCUDA などで応用が進んでいる。
旧来のGPUはグラフィック処理に関する事項のみに特化していたが、その機能を汎用処理として活用しコプロセッサ的な役割をさせようとしている。 競合するAMDもGPUを汎用プロセッサとしてCPUの演算機能として取り込む計画である。 将来的にヘテロジニアスマルチコアという非対称な多数コアテクノロジを導入することを前提とし、CPUとGPUの融合を進めるために開発が行われている。
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小生もメモリ関係で、画像機能内蔵、キャッシュ内蔵などのDRAM製品展開に深い関わり、馴染みがあるが、1980年代から1990年代前半にかけてのことである。2000年代に入って、サムスン電子からフュージョンメモリの打ち上げが行われている。

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2002年2月8日付け:
3年後の2005年からは半導体産業に大革命が起きる――。こんな半導体成長理論が話題を呼んでいる。サムスン電子のメモリ半導体担当の黄昌奎社長が5日、米国サンフランシスコで開かれた国際半導体学会総会(ISSCC)で発表したもので、不況から脱したばかりの半導体業界を大いに勇気づけている。だが、最近のIT不況を経験しただけに、「過剰期待は禁物だ」という慎重論もある。 
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そして第3の変化は、メモリと非メモリが合体して「フュージョン半導体」が登場するというものだ。黄社長は「いまはサーバ用高容量メモリ、携帯電話用の超節電メモリ、ネットワーク用の超高速メモリなど、それぞれの用途に適したメモリ製品が別々に開発されているが、今後はDRAM、SRAM、フラッシュメモリなど各種メモリ半導体と非メモリ半導体の機能まで一つのチップに統合するフュージョン半導体が主流をなすだろう」と展望した。
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サムスン電子の現時点のホームページより、フュージョンメモリ製品は次のように製品群の一つとして引き継がれている。

*Fusion Memory
 MCP
 OneNAND(TM)
 OneDRAM(TM)
 MoviNAND(TM)
 Flash Software

さて、今回のAMD社のイベント、Fusion Developer Summit(6月13-16日:Bellevue, WA)から、注目する動きを抜き出してみると次の通りである。市場の一層の受け入れ展開を図るよう、多くのメンバーの参画、参加が呼びかけられているが、繰り返すアプローチの歴史、経緯というものを感じている。

◇AMD rolls A series x86, graphics CPUs (6月14日付け EE Times)
→バッテリー寿命およびグラフィックス性能で宿命のライバル、Intel社を飛び越えようと、Advanced Micro Devices(AMD)が、主流デスクトップおよびノートブック向けにx86およびグラフィックスコアを一緒にしたA seriesプロセッサを展開の旨。

◇AMD makes Fusion CPU, GPU agnostic (6月15日付け EE Times)
→AMD Corporate Fellow、Phil Rogers氏の基調講演の中で、x86およびグラフィックスプロセッサを合体する同社のflagshipプロセッサプロジェクト、Fusionは、CPU and GPU agnosticである旨。Fusionの始めの方の例は、AMD社内で開発したx86プロセッサおよびGPUコアの旨。しかしながらAMDは、heterogeneous computingを可能にするよう複数のハードウェアおよびソフトウェアメーカーの参画を得て、より高水準のabstractionに向かい一層の飛躍が行えるとしている旨。

◇Why AMD is opening up Fusion: CPU, GPU cores are the new gates (6月16日付け EE Times)
→AMD Fellow、Phil Rogers氏。Fusion System Architecture(FSA)はオープン、AMDは他のハードウェアメーカーによる該スペック実行を望む旨。しかしながら同氏は、AMDプロセッサの今後に向けてもつ意味には触れず、AMDがFusion半導体の中にARMコアを含めるかどうかは全く言わなかった旨。まだ遠い可能性ということで、AMDは来る次の発表に備えている模様の旨。


≪市場実態PickUp≫

恒例のVLSIシンポは京都での開催であるが、節電が喫緊の課題である我が国ということで注目される以下の内容である。

【2011 Symposia on VLSI Technology and Circuits(6月13-17日:京都)】

◇NEC, university make CAM-on-MRAM progress-NEC and Tohoku University are presenting a couple of papers on the use of magnetic RAM non-volatility with content addressable memories(CAMs) at the Symposia on VLSI Circuits and Technologies. (6月12日付け Electronics Design, Strategy, News)

◇家電の待機電力をゼロに、東北大・NECが半導体技術−5年後の実用化目指す (6月13日付け 日経 電子版)
→東北大とNECが、パソコンやテレビなどの待機電力をゼロにできる半導体技術を開発、家庭で消費する全電力の6%とされる待機電力の一部を節電する技術として、5年後の実用化を目指す旨。家電の制御回路に組み込む不揮発性メモリの一種を開発、該新技術は電子を小さな磁石として扱い、磁石の向きを操作してデータを読み書き、電流を完全に切ってもデータは保持される旨。

以下の特許係争の決着であるが、技術が結集、市場の注目を浴びるApple社が標的となっていく昨今の雲行きを感じるところがある。

【AppleとNokiaの特許係争決着】

◇Nokia, Apple settle all litigation-Apple will make a one-time payment to Nokia, plus on-going payments to the Finland-based company for the term of the agreement. (6月14日付け Electronics Design, Strategy, News)
→AppleとNokiaが本日、特許係争に終止符、AppleがNokiaの技術ライセンス供与を受ける合意に調印の旨。

様々なアプリ分野に向けてMEMS技術の注目度の高まりを感じている。システム小型化、微細化の現実的なソリューションとして、表舞台に踊り出てくる風情がある。

【MEMS技術への注目】

◇MEMS for biomedical can do far more than simply "sense" (6月14日付け EE Times)
→TechConnect World Conference & Expo(Boston)の場にて、Draper Laboratory(Cambridge, Mass)のBiomedical Engineering Center、Distinguished Member of the Technical Staff and Director、Dr. Jeffrey T. Borensteinとの会話による記事。MEMSデバイスというと、車のairbag triggers、圧力センサ、加速度計あるいはジャイロスコープなどセンサが主体のイメージであるが、MEMS技術には他にも多くの魅力的なアプリがある旨。

◇Moore's Law, the bifurcation of the semiconductor industry and 3-D integration (6月16日付け EE Times)
→MonolithIC 3D社のCTOでその前にはApplied Materials社でCTOはじめ17年務めたDr. Israel Beinglass氏記事。
半導体業界には明らかな分岐の動き、何年も正当な注目を受けず休眠していたいくつかの技術が再生、それらはアナログ、MEMSおよびパワーエレクトロニクスである旨。3-D integrationにより、旧製造ラインを活かして高性能が得られる旨。

◇Emerging trends in automotive MEMS (6月17日付け EE Times India)
→Yole Developpementの加速センサ市場アナリスト、Laurent Robin氏。車載用は依然MEMSの大変大きな市場、主要アプリの1つは依然airbagセンサであり、1台に3-3.2個搭載と見なす旨。2010年のMEMS市場は約$8.7Bの規模、うち車載用MEMSが17%の約$1.48B、2011年は8%の伸びを見る旨。

東日本大震災の影響により、我が国の本年の経済見通しが下方修正を余儀なくさせられている。復興、回復の度合いが我が国に留まらず世界経済に大きく響く状況が、以下にも表われている。

【我が国の経済見通し】

◇2011年度ほぼゼロ成長に、政府見通し下方修正へ (6月15日付け asahi.com)
→内閣府が15日、東日本大震災の影響を踏まえた国内総生産(GDP)成長率について、物価の影響を除いた実質で2011年度は前年度比0%近辺、2012年度は2%台との見通しをまとめた旨。民間調査機関の予測をもとにした概算で、昨年末の政府経済見通し(2011年度は1.5%)から大幅な下方修正は避けられないとの認識を示した旨。

◇2011年の米成長率を下方修正、IMF世界経済見通し (6月18日付け asahi.com)
→国際通貨基金(IMF)が17日発表した世界経済見通し(WEO)の6月改訂版、4月時点との比較で次の通り。

6月改訂版
4月時点
世界2011年
4.3%
4.4%
米国2011年
2.5%
2.8%
日本2011年
-0.7%
1.4%
日本2012年
2.9%
2.1%
ユーロ圏2011年
2.0%
1.6%

≪グローバル雑学王−154≫

著者の欧州のお酒を巡る旅の締め括りは、イギリスのスコッチ・ウィスキーである。

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
 …1957年 1月17日 第 1刷 発行
  2010年11月19日 第30刷 発行

より、今読んで知ること、改めて納得すること、などいろいろな感じ方である。スコッチを巡るエピソードはいろいろ味わうとして、冒頭にある"一つの新しい機械を日本へ売ると、まもなく同じものが百も戻ってくる"という下りは、1950年当時は日本はそういう見られ方もあるかと現時点の世界と対比させるところがある。


16 スコッチ(イギリス)

□見学をはばむもの
・阻む背景2点
 →一つの新しい機械を日本へ売ると、まもなく同じものが百も戻ってくる、というのがイギリス人の嫌がらせ
 →イギリスのウィスキー会社の主なもの、ほとんど全部同一の親会社(D.C.L:ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)の傘下
・スコットランドのエジンバラでは、主に大学や名物のビールや酢の工場など訪問することに

□英人の商魂
・スコッチ・ウィスキー 
 →19世紀の中頃までは、粕取りかどぶろく級の位置
・山間に生える大麦から、黄金よりも価値ある外貨獲得の王座を造り出したイギリス人の商魂のたくましさ

□スコッチとアイリッシュ
・元来、イギリスには二種類のウィスキー
 →スコットランド …WHISKY
  アイルランド  …WHISKEY
・スコッチの製法
 →その土地の大麦を水に漬けて芽を出させたものを、乾燥した麦芽(モルト)に水を加えて糖化し、これを醗酵させる
・アイリッシュの製法
 →違いは、糖化液を造る時に、麦芽のほかに蒸した大麦や燕麦やとうもろこしなどの、発芽しない穀類そのままを加えて糖化する点だけ

□ハイランド
・スコッチにも種類
 →北部の山地だの島などでできるハイランド
  南部の平地でできるローランド
 →麦芽を乾燥するための焚きものの差

□大敵あらわる
・1826年〜1830年、画期的な一大変革を招来する製造法
 →現今のアルコール工業に使われている連続蒸留機、いわゆるパテントスチルと、これからできるいわゆるニュートラル・スピリット
 →ウィスキーの販売上の優位
・パテントスチルをブレンドしないウィスキーは重過ぎ、一般人の嗜好に適さず
 →焼酎とよく似た傾向
・イギリスの心ある人は、この傾向にスコッチ・ウィスキーの将来を極めて憂慮

□ブレンドという魔術
・ウィスキーの製造技術でいちばん大切
 →蒸留
  熟成とブレンディング …熟成にはシェリーの空き樽
・すべてのウィスキーは老巧なブレンダーの魔術を経て、生まれ変わって出てくる
 →レッテル上のヴァッティングとかオールド・ヴァットとかいう言葉は、ブレンディングのこと
 →ある程度の若いものも混ぜないと、ウィスキーに活気が出ない
・ブレンダー、結局はするどい鼻と舌との芸術

□大切なマリッジ
・ブレンディング、混ぜたものをよくマリー(結婚)させなければ
 →少なくとも6ヶ月ぐらいは、そのまま熟成

□減りゆく黄金の水
・イギリスのウィスキー業者の最大の悩み
 →スコッチの古いストックが近年著しく減ったこと

□D.C.L.
・パテントスチルの出現の結果、イギリスのウィスキー業者の主なものが合同、D.C.L.を組織
 →スコッチの5大メーカーを傘下に
  ジョンヘイグ
  ジュワー
  ウォーカー(ジョニーウォーカー)
  ブキャナン(レーヤオールド)
  ホワイトホースのマッキー

★ホテルの窓からは公園を隔ててエジンバラの古城が聳えて、良い眺め

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