アップル、タッチスクリーンが織り成す時代の変わり目
東日本大震災はじめ自然界の脅威に見舞われて対応する意識変革が求められているなか、半導体・デバイス業界もパソコンおよび携帯電話の市場2枚看板にスマートフォン、タブレットなど多様化、融合化による模様替わりが急速に進んでいるこのところである。プレーヤーとしてはアップル社、デバイスとしてはタッチスクリーンが、その大きなドライバーとなっている。急拡大する新興経済圏に向けての先進経済圏の今後のあり方が改めて問われるグローバル経済の大きな潮流の節目を感じている。
≪大きな潮流の節目≫
アップル社、そしてタッチスクリーンと、この2つのキーワードが大きくクローズアップされてくる現下の流れである。まずは、タッチスクリーン関連市場についての見方である。
◇Touch mania swipes across markets (6月7日付け EE Times)
→touchscreen市場について以下のデータ:
*touchscreen tablets出荷が、2011年60M台、2016年までに260M台を上回る見込み …DisplaySearch(Santa Clara, Calif.)
*touchscreens携帯電話が400M台以上に …IHS iSuppli社(El Segundo, Calif.)
*本年の市場全体が$10Bを上回る可能性
・データ例:2009年touchscreen技術別売上げシェア
⇒http://i.techweb.com/eetimes/news/11/06/1603chart_pg18.gif
アップル社からは新たな動きの発表が行われている。先日、グーグルの「クラウドコンピューティング」の利用を前提としたOS、「クロームOS」を搭載したパソコンが披露されているが、それと競合する新サービス、「iCloud」の発表である。
◇アップル「iCloud」発表、音楽・写真を無料保存 (6月7日付け 日経 電子版)
→米アップルが6日、購入した音楽や写真などを、複数の機器を使って楽しんだり、保存したりできる新型の無料サービス「iCloud」を発表、インターネット経由でソフトを利用するクラウド型のサービス、類似のサービスを発表しているアマゾン・ドット・コムやグーグルなどとの競合が激しくなりそうな旨。
小生も1980年代に何度かお邪魔しているシリコンバレーのアップル社本社であるが、新本社建設をSteve Jobs氏がCupertino市議会でプレゼン発表している。Hewlett-Packard社の跡地に円形の宇宙基地のような構成、構造ということで、時代の変わり目を象徴する感じ方がある。
◇Two sides of Apple's circular headquarters (6月8日付け EE Times)
→AppleのSteve Jobs氏がCupertino, Calif.市議会にて、2015年完工予定の新しいApple headquartersのプレゼン、外観下記参照。
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/apple-spaceship-campus%20x%20200%20w%20caption.jpg
◇Two sides of Apple's circular headquarters-The circle of the new Apple building symbolizes a kind of wholeness, a corporate soul. (6月8日付け Electronics Design, Strategy, News)
時を同じくして、昨年、2010年の半導体購入元トップ10が発表され、アップル社がHewlett-Packard社を一気に抜いてトップに躍り出ている。多様化、融合化の新たな潮流が引っ張った市場経緯が鮮明に表われる内容となっている。
◇Apple largest OEM semiconductor buyer in 2010-Thanks in large part to high demand for its iPad and iPhone devices, Apple consumed more semiconductors in 2010 than any other OEM. (6月8日付け Electronics Design, Strategy, News)
→IHS iSuppli、今朝発。Apple社が、OEMs(original equipment manufacturers)のなかで2010年最大の半導体購入元になっている旨。
・2010年および2011年の半導体buyersトップ10 (売上げ:MUS$)
Rank | 2009 | 2010 | 2011 | |
1 | Apple | $9.7 | $17.5 | $22.4 |
2 | Hewlett-Packard | $10.3 | $15.2 | $14.8 |
3 | Samsung Electronics | $10.3 | $13.9 | $14.3 |
4 | Dell | $7.7 | $11.0 | $11.1 |
5 | Nokia | $7.7 | $8.3 | $8.1 |
6 | Sony | $6.2 | $8.1 | $8.3 |
7 | Cisco Systems | $5.3 | $7.4 | $7.5 |
8 | Panasonic | $5.2 | $7.3 | $7.0 |
9 | LG Electronics | $4.4 | $4.9 | $4.8 |
10 | Toshiba | $3.2 | $4.6 | $4.5 |
[Source: IHS iSuppli, June 2011]
タブレット人気が加速する流れで、DRAM需要が喚起される可能性を見る以下の内容である。
◇Amazon tablet could boost DRAM demand (6月9日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。メディアtabletsブームが、特に広く噂されている書籍販売のAmazon.com社の参入発表があれば、向こう数年DRAMの需要の拡大につながる見込みの旨。iPad売上げ活況および競合製品の到来のお蔭で、2011年のメディアtablets用DRAM需要は2010年比9倍に増大すると見る旨。
・グローバルtablet DRAM需要予測(Millions of Gビット)
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/110609_ihs_2.jpg
なかなか安穏としていられない現状の市場時間軸ということか、タッチスクリーンについてさらなる進化、つばぜり合いが行われている様相である。
◇Touchscreens being integrated inside LCDs (6月10日付け EE Times)
→標準ディスプレイの上に重ねて置かれている現状のtouchscreens、SamsungとNokiaは、それぞれのスマートフォン、Galaxy SおよびN8でOLEDディスプレイの中にすでに統合している旨。OLEDは従来のLCDsに比べてノイズが少なくそれが可能となる旨。そこで、以下のtouchscreenコントローラメーカーが、touchscreensをLCDs上に標準装備できるようノイズ問題の打開に当たっている旨。
STMicrosystems NV(Geneva),
Cypress Semiconductor社(San Jose, Calif.)
Atmel社(San Jose)
Synaptics社(Santa Clara, Calif.)
この急速で大きな潮流の節目に直面して、台湾の大手プレーヤーの受け止め方、感じ方である。
◇Wintel era is over, says Asustek chairman (6月10日付け Digitimes)
→Asustekのchairman、Jonney Shih氏。いわゆるWintel時代には終わり、以前そうであったようにCPUあるいはOSベンダーがPC, tablet PCあるいはhandset市場を席巻できない旨。Wintel連合の崩壊により、システムベンダーにはIT市場でふたたび伸びゆく真新しいopportunityが得られている旨。同社は現在AppleおよびSonyなどのベンダーから学習しており、notebook, tablet PCおよびhandset市場の間の境界がすでにぼやけてきている新しいIT時代のなかでの市場地位獲得を目指している旨。
≪市場実態PickUp≫
大震災が勃発、上記のように市場の潮目も大きく変わるということで、読みにくさが増す半導体市場の予測であるが、恒例のWSTS発表は次の通りとなっている。
【2011年世界半導体市場予測】
◇WSTS raises 2011 chip market forecast (6月8日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationが、2011年グローバル半導体市場伸長予測を、昨年11月の4.5%増から今回5.4%増($314.4B)に上方修正の旨。
・2010〜2013年グローバル半導体市場推移&予測
地域別およびデバイスカテゴリー別
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/2011-06-08WSTSforecastSpring423.jpg
SEMIからは半導体設備投資関係の予測が発表され、2012年以降の業界capacityのあり方如何が投げかけられている。
【半導体equipment spending予測】
◇Record fab tool spending projected in 2011 (6月7日付け EE Times)
→SEMI(San Jose, Calif.)のSEMI World Fab Database発。2011年の新規および中古半導体capital equipment spendingが、31%増の新記録、$44Bに達すると見る旨。しかしながら新fabsへの投資は、3%減の$4.9B、2012年にはさらに12%落ちる見通し、2012年以降の業界capacity計画について予想される影響のお膳立てとなる旨。また、450-mmウェーハ試作ライン装置への初期投資は来年出てくると見る旨。
・2007-2012年equipment spending推移&予測
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110607_SEMI_1.png
・建設投資
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110607_SEMI_2.png
融合化、多様化の急進展で本当に表わし方が難しいPC市場という受け止め方が先に立つ以下の内容である。
【2011年PC出荷予測】
◇IDC slashes 2011 PC growth forecast (6月6日付け EE Times)
→International Data Corp.(IDC)(Framingham, Mass.)が、2011年PC出荷伸長予測を7.1%増から4.2%増に下方修正、第一四半期の出荷減少、ますます慎重な経済見通し、および開発途上諸国での消費者の間でのPC市場が比較的飽和していることを挙げている旨。
・地域、Form Factor別PC出荷台数、2010〜2015年
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/110606_idc_1.png
・地域、Form Factor別PC出荷伸び率、2010〜2015年
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/110606_idc_2.png
大震災の影響が影を落としていると見ざるを得ないファウンドリー業界の業績速報である。
【5月業績速報】
◇UMC's May sales show signs of weakness (6月8日付け EE Times)
→UMCの5月販売高約$327M、前月(約$333M)比1.7%減、前年同月比6.8%減。一つとして、日本の大震災による電子部品supply chainの乱れが需要を抑えており、発注が先延ばしになっている旨。
◇TSMC's May sales up 6.3% on year (6月10日付け EE Times)
→TSMCの5月連結net販売高が約$1.28B、前月比1.1%減、前年同月比5.4%増。
単独ではそれぞれ約$1.25B、0.7%減、6.3%増。
1-5月の累計では約$6.23B、前年同期比11.4%増。
ここ10年の平均では、5月販売高は4月より5-6%増で今回は下回る結果、ライバルUMCと同様な落ち込みの旨。
中国の世界一ニュースにも見飽きた感じ方が率直に出てきているが、以下の通り引き続いている。これからは質の向上を図らなければ世界全体が収まらないし、先進経済圏がそれを引っ張っていく経済バランスが図られなければというますますの感じ方である。
【またまた中国の世界一】
◇中国、世界一の贅沢品市場へ、来年にも日本超す見通し 6月11日付け asahi.com)
→ブランド品や宝石などの贅沢品の中国での市場が、来年にも日本を上回り、世界一の規模になる見通しとなった旨。今年5月時点では日本が首位だったが、世界贅沢品協会は、東日本大震災による買い控えにより、中国人が世界で最も存在感のある贅沢品消費者になるのは確実と発表の旨。
◇中国、エネルギー消費世界一に、2010年、米国を抜く 6月10日付け asahi.com)
→国際石油資本(メジャー)の英大手BP、8日発の世界エネルギー統計(2011年版)より、中国が2010年、米国を抜いて世界一のエネルギー消費国になった旨。世界のエネルギー消費は2009年に世界的な景気低迷で落ち込んだが、2010年には第1次石油危機が始まった1973年以来の高率(5.6%伸長)で回復、中国は11.2%伸長、石油換算で24億3220万トン(世界の20.3%)を消費、22億8570万トン(同19%)だった米国を抜いた旨。
≪グローバル雑学王−153≫
発酵、醸造の世界的権威、坂口 謹一郎氏の1950年秋からの欧米諸国の旅に、
『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)
…1957年 1月17日 第 1刷 発行
2010年11月19日 第30刷 発行
により同行しているが、欧州の大詰め、イギリスである。まずはビール、小生が思い起こすのはエジンバラの街のパブで飲んだギネスである。厳しい地域対立が見られる国柄ではあるが、まったく別世界のパブの中の明るさ、喧噪である。
15 エールとスタウト(イギリス)
□ウィスキーに見捨てられた国民
・ウィスキーは今や(1950年当時ダラー稼ぎ(アーナー)の花形
…対米輸出総額の3分の1近くはウィスキーが稼いでいる
→甚だしい国内の消費制限の強化
□お酒に代ったお茶
・葡萄のできないイギリス
→酒の王者は、何といっても、ビールと林檎酒とウィスキー
□ピンからキリ
・イギリスは、世界第三番目のビール消費国
→ヴァラエティーの多さはおそらく世界一
・大別すると三種
○辛口のペール・エール、またはビター・ビーヤ
○甘口のブラウン・エール、マイルド・エールまたはスウィート・ビーヤ
□ハーフ・アンド・ハーフ
○アルコールの強い、色の濃いもの
→ギネス会社のスタウト(Stout)
・壜詰めの貯蔵ビールはイギリスでもラガー・ビーヤ
・エールという言葉はビールのアングロサキソン語
□百年前のビールの味
・1869年12月16日製の、ナンバーワン・ストロング・エール
→アルコール容量13%
・1902年製のキングス・エール
→アルコール容量11%
・古い酒にはいずれも共通した一種独特の風味
□板についた頑固性
・英人は万事に古い習慣やしきたりを尊重、容易に改めない
→ビールにおいても然り
・19世紀の中葉までは、世界中のビールはすべて表面醗酵性の酵母の醗酵
・底面醗酵性の酵母を使う方法が、デンマークのカルルスベルヒ会社で完成
→現今の安全なビール工業の完成
→世界中のビールはすべてこの方法に切り替え
□頑固のむくい
・イギリス人だけは今なお旧態依然たる古来の表面醗酵式の方法を墨守
→どんなにひどい不便や不経済をさえもしのんでいるか
□鱈の浮袋
・イギリスのビールでの浮いた酵母の濁り取り
→アイシング・グラスという魚の浮き袋をとかして造った膠を加えて清澄させるのが普通
→ニュー・ファウンドランドの鱈が珍重
・イギリス・ビールの7割
→ドラフト・ビーヤとして生で出され、街のパブ(public houseというふつうの飲み屋)では樽を1週間以内で空けるように工場から出す
□捨てがたいわけ
・イギリスの気候は、醗酵も貯蔵もやってのけられる表面醗酵式に適合
→冷凍設備がほとんど必要がない
□ジョンブルのやり方
・イギリスの銘醸地
→バートン
アイルランドのダブリン
イングランド北部の西海岸のヨーク地方
…ストーン・スクェヤ式のビール
エジンバラ
…スコッチ式
ロンドン
□イギリスの居酒屋
・イギリスでビールを飲む
→パブ(public house)という居酒屋