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半導体販売高に見る大震災の余波、一方、携帯端末を巡るあの手この手

4月の世界半導体販売高が、米Semiconductor Industry Association(SIA)から発表され、前年同月は上回るが、前月比はマイナスに転じるとともに、我が国の震災による落ち込みが世界各地域に波及している様相を一層色濃く映し出している。懸命に行われているサプライチェーン回復努力に、本年後半にかけての半導体業界の方向性がかかる状況である。市場競争については、この時期の各種イベントの場で、スマートフォン、タブレットはじめ高機能携帯端末を巡るあの手この手の攻防が激しさを増している。

≪4月の世界半導体販売高≫ 

米SIAからの発表は、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○4月の半導体販売高、業界を元気づける前年比3.9%の増加 …5月31日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2011年4月の世界半導体販売高が$24.7 billionで、前月の$25.2 billionから2.2%減少、昨年の2010年4月における$23.7 billionからは3.9%増加している、と発表した。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「前月比では販売高が若干減っているけれども、前年同月比では増加しているということで依然楽観している。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「本年の残りを通して穏やかな伸長が続くものと見ている。」

前月比の結果は、日本での自然大災害が一つにはあって季節的なパターンを下回っている。業界はそのインパクトを低減するようサプライチェーンを回復する努力を続けており、2011年後半には大きく改善されるものと見られる。半導体業界は、year-to-dateの伸びが国家GDPを上回る流れに引き続きあり、2010年には世界年間売り上げの新記録、$298 Billionを打ち立てている。

全体的には、燃料および食料コスト上昇で、消費者の手元裁量資金が減ってきている。この傾向は、米国に本拠を置く製造業界すべてにわたって伸びが軟化する要因になる可能性がある。SIAは、6月始めにWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationからの2011-2014年に向けたSemiconductor Growth Forecast更新版をリリースする。

※4月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/Combined%20Charts_April%202011.pdf
★★★↑↑↑↑↑

前年比の増加が強調されているが、各地域別には以下の通りであり、我が国の震災による落ち込みが他地域にも大きなマイナスのインパクトを与えている様相をはっきりと表している。

【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Apr 2010
Mar 2011
Apr 2011
前年同月比
前月比
Americas
4.11
4.67
4.50
9.5
-3.7
Europe
3.07
3.31
3.26
6.0
-1.7
Japan
3.68
3.61
3.42
-7.0
-5.2
Asia Pacific
12.88
13.63
13.49
4.8
-1.0
$23.74 B
$25.22 B
$24.67 B
3.9 %
-2.2 %

市場地域
11- 1月平均
2- 4月平均
change
Americas
4.70
4.50
-4.1
Europe
3.30
3.26
-1.2
Japan
3.80
3.42
-10.0
Asia Pacific
13.62
13.49
-0.9
$25.41B
$24.67B
-2.9 %


4月の半導体販売高を受けた関連記事は、次のトーンとなっている。

◇April global chip sales show softness (6月1日付け EE Times)

◇Japan's chip market contracts year-on-year (6月1日付け EE Times)

◇Japan 'actual' chip sales collapsed in April (6月3日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationによる4月単月実際の半導体販売高について。日本は、大震災の余波の様相の23ヶ月ぶりの低い水準の一方、他の地域はすべて前年比伸びているのは注目に値する旨。

前月比
前年同月比
Japan
$2.94B
26.4%減
18.8%減
Americas
$4.34B
8.9%増
Europe
$3.14B
7.6%増
Asia Pacific
$13.09B
1.1%増

他の地域の単月で見た前年比増は、サプライチェーン回復の度合いを示す指標としても注目ということと思う。このサプライチェーンについて、今後に向けた以下の見方が出されている。

◇Report: IDC cuts chip growth on poor PC sales(5月31日付け EE Times)
→Dow Jones発。International Data Corp.(IDC)が、半導体分野の年間売り上げの伸長予測を、6-8%から4-5%に下方修正の旨。PC出荷の伸長予測、7.0%から4.2%への下方修正からきている旨。日本の需要が大震災の余波で戻っておらず、米国での経済回復が依然鈍いことが効いている旨。

◇Inventory spike saved industry, says IHS (6月2日付け EE Times)
→IHS-iSuppli発。2011年第一四半期に2年ぶりの高水準となったIC在庫で、第二四半期における東日本大震災の余波によるコンポーネント不足の最悪の事態をエレクトロニクス業界は免れている旨。しかしながら、各社は現状の生産のみならず従来力強い第三四半期に向けた在庫を備える必要から、先々供給問題があり得る旨。

米SIAからは、4月販売高に続いて温室効果ガス削減に関する世界半導体業界の取り組みが次の通り発表されている。日米半導体摩擦に終止符を打って、グローバルな協調と競争を謳う下記WSCに移行している経過があるが、小生も業界活動として第1回開催に関わっている。あれから早15年、改めて我が国半導体業界の激動の推移を振り返るところがある。

◇Global Semiconductor Industry Exceeds Goal to Reduce Greenhouse Gases -Accounting for nearly $300 Billion in annual revenue, global industry reduces GHG emissions by 32%, sets new goal for 2020 (6月2日付け SIA Press Release)
→Semiconductor Industry Association(SIA)発。世界半導体業界は、World Semiconductor Council(WSC)での協力を通して、perfluorocompounds(PFCs)放出10%の当初削減目標を越え、10年でPFCs放出全体を32%低下させている旨。さらにWSCメンバーが運営する新しい半導体製造拠点すべてで最新のpracticesを取り入れた新しい10年目標を設定、2020年までにnormalized放出30%削減の結果を期待する旨。
WSCは、先週福岡で、第15回会合を行った旨。


≪市場実態PickUp≫

パソコンとスマートフォン、タブレットの区分が難しくなってきているなか、世界各地からあの手、この手、目まぐるしく新たな市場獲得を目指すプレゼンがひっきりなしに行われている感じ方である。

【携帯端末を巡る攻防】

Computex 2011(5月30日〜6月4日:台北)より、以下のアジア勢の打ち上げである。

◇Trip report: The tablet wars (aka Computex 2011) (5月31日付け EE Times)
→世界2番目の規模のコンピュータショー、Computexの第31回が、火曜31日台北で開幕、以下の注目内容:
Acer Iconia
Samsung Galaxy Tab
Asus Transformer
Asus Padfone
富士通 hinged tablet

◇スマートフォンとタブレットの融合注目、台北国際電脳展 (6月1日付け asahi.com)
→世界各国の1800社が出展、アジア最大規模の台北国際コンピューター見本市(COMPUTEX)が31日、台北市内で開幕、今年注目されているのはスマートフォン(多機能携帯電話)とタブレット端末の融合の旨。
台湾パソコン大手アスースは、見本市に合わせて「パッドフォン」を発表、タブレット端末の裏側にスマートフォンがはめ込んであり、スマートフォンだけ取り外して使うこともできる旨。もう一つの台湾大手、エイサーは、一回り大きなスマートフォン「アイコニア・スマート」を発表の旨。

Qualcomm Uplinq developer conference(SAN DIEGO, Calif.)からは、次の通り、マイクロソフトが巻き込んでいるのか、巻き込まれているのか、組んずほぐれつの様相が見てとれる。

◇Microsoft gives first peek at Win 8 (6月2日付け EE Times)
→Microsoftが、Windows 8について初めてのビデオ・リリース、同社ZuneおよびWindows Phone 7モバイルシステムに似たPCsおよびnotebooks用ユーザインタフェースとなっている旨。MicrosoftがWindows 8でサポートするARM-ベースモバイルSoCメーカーのリストでは、Freescale, Marvell, SamsungおよびST-Ericssonが外れている様相の旨。
Computex Taipeiにおいては、Microsoftは、AMD, Intel, Nvidia, QualcommおよびTexas Instrumentsのプロセッサ上で走るWindows 8版を展示の旨。

◇グーグル会長「アップルなど4社優勢」、MSは触れず (6月2日付け 日経 電子版)
→米グーグルのエリック・シュミット会長が「消費者向け分野では4社が優勢」と述べ、同社とアップル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックの米4社が利用者を集める仕組み作りをリードしているとの見方を示した旨。
一方、「4社」から外された米マイクロソフト(MS)は1日、次期OS「ウィンドウズ8(開発コード名)」の試作版を公開、2012年にも製品に搭載、劣勢の多機能携帯端末で巻き返しを狙う旨。

このようなせめぎ合いのなか、アップルも次の手の発表のようである。

◇アップルもクラウド事業本格参入、6日に概要表明 (6月1日付け asahi.com)
→米アップルが5月31日、インターネットを使って様々なサービスを提供する「クラウドコンピューティング」に本格参入すると発表した、利用者がネットを通じて音楽や動画を管理したり、購入したりするサービスになるとみられる旨。同社は、6月6日に米サンフランシスコ市内で開幕する年次イベント「世界開発者会議」で、近く始めるクラウドサービス「iCloud」の概要を明らかにする旨。

◇米アップル、ジョブズ氏が「iクラウド」など6日発表 (6月1日付け 日経 電子版)
→発表を予告した3点:
1.パソコン「マック」用OS「マックOS X(テン)」の新バージョン「ライオン」
2.「iPhone」や「iPad」に搭載する新OS「iOS5」
3.クラウドサービス「iクラウド」

熱気最高潮の様相であるが、タブレット生産について以下の見方が出されており、新陳代謝の早い市場性を早くも感じさせられている。

◇Analyst: OEMS cut tablet builds for 2011 (6月3日付け EE Times)
→FBR Capital Markets社アナリスト、Craig Berger氏。2011年のメディアtablets生産は、Apple社のiPadは別にして、以前考えられたより今やかなり下回る見込みの旨。Research and Motion Ltd.(RM)およびMotorola Mobility社は、2011年生産見積もりを落としている旨。
・2011年tablet生産見込み
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110603_FBR_tablets.png

さて、いつものDRAM四半期売上げデータであるが、この第一四半期の平均売価の低下の度合いに注目させられる以下の内容である。

【第一四半期DRAM売上げ】

◇DRAM rankings: Q1 sales down on weak ASPs (5月31日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。第一四半期のグローバルDRAM売上げは$8.3B、前四半期比5.6%減、average selling price(ASP)は$1.61で前四半期の$1.97から低下、このpricing弱含みが効いている旨。
・第一四半期グローバルDRAM売上げランキング
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110531_isuppli_dram.png

半導体を製造、作っていく業界をこれから形成していくアブダビ、インドのそれぞれ取り組みである。

【半導体新興圏の動き】

◇Singapore training Abu Dhabi fab workers (5月30日付け EE Times)
→教育機関、Singapore Polytechnicが、Abu Dhabiに向けてウェーハfab労働者を訓練する合意に調印、Abu Dhabi首長国からの男女約50人が先駆けのクラスとなる旨。

◇India starts hunt for fab-building chipmakers (5月31日付け EE Times)
→インド政府が最近設立、該亜大陸での半導体製造の確立に向けて推進を図る委員会が、最初の会合、半導体メーカーに対してウェーハfabsをそこで作るよう求める働きかけを開始の旨。


≪グローバル雑学王−152≫

ワインというと、子どもの頃から馴染みのあるのが「赤玉ポートワイン」であるが、そのポートワインの本家本元、ポルトガルにおける正真正銘の姿、奥深さを、

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
 …1957年 1月17日 第 1刷 発行
  2010年11月19日 第30刷 発行

より認識していく。保証書付きのポートワインの味わいは如何に? 以下の知識、認識のもとに験してみたく思うところである。


14 ポート・ワインを見ざるの記(ポルトガル)

・名高いポート(Port)・ワインの産地、ポルトガル
 →その産地、オポルトを訪ねるのがもともとの目的
 →思わぬ手違い、ポルト、即ちポート・ワインは見ざるの記ということに

□間違いのもと
・手違いの第一は地図 →地図の上ではすぐ隣でも
 次は、列車の時刻表 →その列車は今日は出ない、明日、という調子
・リスボンに、政府のポート・ワイン研究所
 →そこへ行けば一切の知識 →まさに地獄で仏

□ポート・ワイン研究所
・この研究所の主な部分
 →1840年以来の幾多のポート・ワインの銘醸品の貯蔵庫、階上は立派なバー
 →「研究所」としては妙な景色

□酒は土地から生まれる
・ポート・ワインの本物である条件
 →1.この国の北部のドウロ山地で造られること
  2.その葡萄酒を樽(ポート・ワインの樽をパイプと呼ぶ)で河口のオポルト港へ、そこから輸出されること
・日本あたりに、やたらにいろいろな「ポート・ワイン」が氾濫
 →ポルトガル政府のカンに触る

□葡萄を使わぬポート・ワイン
・日本で昔栄えた「ポート・ワイン」
 →葡萄酒に砂糖などを入れて造る
 →まさにヴェルモット、アペリチーフの類
 →終いには、まったく葡萄を使わない「ポート・ワイン」という日本の特産物の可能性も

□テキストは語る
・この研究所で出している訪問者用のテキストから
 →ポート・ワインは、すなわちオポルト・ワイン
 →葡萄酒こそは、まさに土地と気候との産物であることを知るべき
 →近道(short cut)の如き安易なる道のあるべきはずがない
 →子供の誕生に際して、ヴィンテージ・ポート(当たり年の若酒)を買い入れおかば、彼に価知れぬ貴き遺産

□珍しい道具
・この研究所での珍しい機械二つ
 →1.大昔使われた葡萄酒の比色計
  2.葡萄酒のおりを立たせずに注ぐ機械

□おりはつきもの
・ポート・ワインのおり、クラスト
・元来、ポート・ワインの造り方が、おりを多く出しやすい方法
 →濃いブランデーを加えて、醗酵を中途で停めてしまう
 →酒の中にいろんなもやもやが生じて、なかなか澄明にならない
・おりは、樽の中で長い間かかって沈んでしまう
 →酒の色もさめて、いわゆるタウニイ色という褐色味を帯びた薄い赤色に
 →ティピカルなポート・ワイン

□真紅のポルト
・ポート・ワインでも特に葡萄の出来の良い年などのもの
 →長く樽に置かず、普通の葡萄酒のように2,3年目には樽から壜に移す
 →普通の赤葡萄酒に近い真紅の色、その代り、おり、すなわちクラストがどっさり壜の中にたまる
 →ヴィンテージ・ポート。ほかに、ルビー・ポート、ホワイト・ポートも。

□イギリスの酒ポート・ワイン
・イギリス人が腐らないようにする必要上、ブランデーを途中で加えることをやりだした
 →実はイギリスの酒といってもよい

□飲酒という研究
・証明つきの本物のポルト
 →どれもこれもとても高価、一壜5ドルから10ドル、中には170ドルのものまで
・ポート・ワインには、エキストラ・ドライ、ドライ、メジアム・スウィート、スウィートなど、辛口から甘口までいろいろな段階
 →辛口は食前、甘口は食後が普通
・ポート・ワインは料理にも
・ポート・ワインの壜の、特徴ある首のしまって細くなっている部分
 →ボトル・ネックという表現

□ヴィニオ・ヴェルデ(Vinho Verde)
・リスボンの名物、ヴィニオ・ヴェルデという酒
 →どぶろくの一種

□リスボア・ワイン
・いろいろ珍しいイミテーションの方法
 →悪い葡萄酒を直火で煮詰めてこがして、葡萄酒の着色料や香味料に
 →悪い葡萄酒を蒸留、混和用のアルコールに

□処女コルク
・リスボンの郊外の山々、見渡す限りオリーヴでなければコルクの林
 →初めてのコルクは処女コルク、次は9年ごとにはいでいく

★リスボン空港から、ロンドンのクロイドン空港に
(注)Croydon Airport …1920年開港、1959年閉鎖

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