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先行性およびセグメント選択を巡る市場戦略のせめぎ合い

米欧プレーヤーの間での市場戦略の動きが活発化してきている。22-nmノード・トランジスタ、スマートフォンおよびタブレット覇権がここのところのキーワードとなっているが、アナリストmeetingでのインテルおよびSTマイクロでのプレゼンから、さらに進んで市場先行、セグメントの選択をアピール、問いかける色合いを一層鮮明に感じている。容赦のないせめぎ合いの様相を受け止めている。

≪米欧プレーヤーの戦略展開≫ 

プロセッサlicensor、ARM Holdings plc(Cambridge, England)が、x86アーキテクチャーに替えてARMプロセッサのライセンス供与を受けるようAMD社を説得しようとしている動きが先月終わりに見られたが、次の見方が出されている。

◇Analyst: AMD-ARM deal makes no sense (5月16日付け EE Times)
→Raymond James & Associates社アナリスト、Hans Mosesmann氏。ARM Holdings plcが、Intel社の長年のライバル、AMD社に対し、ARMプロセッサのライセンス供与を受けてx86アーキテクチャーの替わりに使うよう説得しようとしていることは、AMDにはほとんど意味がないこと、AMDはさしあたりx86に傾倒している旨。

この駆け引きに対し、インテルのアナリストmeetingでは真っ向から対抗する以下の動きである。PC市場に加えて、スマートフォンおよびタブレット市場の同社での重みの高まりを感じさせている。

◇Intel: ARM gets Windows four ways (5月17日付け EE Times)
→annualアナリストmeeting(SAN JOSE)にて、Intelのchief executive、Paul Otellini氏。MicrosoftのARMプロセッサにWindowsを載せる動きは、ばらばらの4つの環境を生じており、そのどれも在来のPC Windowsアプリを動かさない旨。ARM向けWindowsの4バージョンについての説明は今回ない旨。これとは別個にIntelは、新たなプロセッサ上のセキュリティ水準を可能にするMcAfeeからのソフトウェアを今秋展開する旨。

◇Updated: Intel rewrites Atom road map (5月17日付け EE Times)
→annualアナリストmeeting(SAN JOSE)にて、Intelのchief executive、Paul Otellini氏。Intelは、新しいAtomコア設計を展開する速度を早め、notebook用半導体の目標パワーを下げ、SoCsの温度範囲を拡げていく旨。
これらの動きは、x86半導体をスマートフォンおよびタブレットにもっていき、ARMベース半導体からの高まる競合に対抗していくものである旨。

具体的な裏付けデータとして以下の例である。

◇Intel: Under the smoke and mirrors (5月18日付け EE Times)
→Intelのannualアナリストmeeting(SAN JOSE)におけるプレゼン資料から。
・Tomorrow's PC looks like today's tablet
 …embedded x86販売はたくさんの伸びる余地
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Intel%20in%20embedded%20x%20420.jpg
・Obfuscation by Powerpoint: Intel in software
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Intel%20software%20x%20190.jpg
・Obfuscation by Powerpoint: Medfield power consumption
 …現在の40-nmアプリプロセッサに対するインテル32-nm Medfieldの電力消費比較
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Medfield%20Power%20x%20420.jpg

一方、STマイクロのInvestor and Analyst Dayでは、SoCsおよびアプリ・プロセッサというオーソドックスな大物狙いの製品戦略が打ち出され、戦略の転向を図るNXP Semiconductorsとの対比が目立つ以下の流れの動きである。

◇ST keeps faith in wireless 'big-chip-in-the-middle' (5月19日付け EE Times)
→STMicroelectronicsのInvestor and Analyst Day(NEW YORK)にて。
"no-big-chip-in-the-middle"戦略ベース転向を約しているNXP Semiconductorsと対照的に、TMicroelectronicsは、digital TV SoCsおよびST-Ericssonのmulti-mode modem/applicationsプロセッサのようなbig chips in the middleを含むずっと一層広い製品portfolioに今後を賭けている旨。

◇NXP's foray into 'Internet of things' starts with light bulbs (5月17日付け EE Times)
→NXP SemiconductorsのCEO、Richard Clemmer氏。同社の"Internet of things"への参入は、IPベース光bulbsからスタート、同社自前のIP connectivityを新たに開発したエネルギー効率の良い照明技術といっしょにしている旨。

◇ST's new ARM-based DTV platform leverages ST-Ericsson (5月20日付け EE Times)
→STMicroelectronicsのInvestor and Analyst Day(NEW YORK)にて。
digital TV(DTV)が、同社automotive, consumer, computer & communications infrastructure(ACCI)事業の"the top-line evolution"への鍵としてCEO、Carlo Bozzoti氏が挙げたいくつかのspecific製品の1つの旨。

このような動きのなか、第一四半期、1-3月の半導体販売高ランキングが次の通り発表されている。インテルの先行性と呼応する業界の動きに当面注目である。

◇Intel grows lead in Q1 chip sales rankings (5月19日付け EE Times)
→IC Insights社がまとめた2011年第一四半期半導体販売高ランキング。ここ数四半期差を詰められた首位のIntel社が、第2位のSamsung Electronics Co. Ltd.に対するリードを拡げている旨。
・2011年第一四半期半導体販売高ランキング・トップ20
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/110519_ic_insights_chip_rankings1.png
・2011年第一四半期半導体販売高伸び率ランキング・トップ20
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/110519_ic_insights_chip_rankings2.png

◇Intel remains 'firmly in control' of top semiconductor supplier spot, IC Insights reports-Intel showed 25% Q1 year-over-year growth, as did Broadcom, in IC Insights top 20 semiconductor supplier ranking. However, number two Samsung could still overtake Intel mid-decade. (5月19日付け Electronics Design, Strategy, News)


≪市場実態PickUp≫

世界最大の電子ディスプレイに関する学会、Society for Information Display(SID) conference(5月15-20日:Los Angeles)であるが、ここでもスマートフォンおよびタブレットの人気が色濃いということか、タッチ画面の話題が中心という受け止めになる。

【touchscreens一色】

◇SID: Single layer technology boosts capacitive touchscreens (5月16日付け EE Times)
→Cypress Semiconductor社が、同社のTrueTouch touchscreenコントローラに向けた本当のsingle layerを可能にする技術を開発、今回の場で詳細を披露の旨。説明図面、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/2011-05-16_crh_cypress.jpg

◇Stantum enhances multi-touch panel IC design(5月19日付け EE Times)
→Stantum(Bordeaux, France)が、multi-タッチパネルで用いる同社特許、Interpolated Voltage Sensing Matrix(IVSM) touch-and-write技術に向けたdual-chip high-resolutionアーキテクチャーをお披露目の旨。

これからの半導体市場そして製造の拡大を担っていく新興経済圏における関連する動きが、重なるように次の通りである。

【新興経済圏】

◇Brazil's growing global profile - and the electronics opportunity (5月17日付け EE Times)
→Embedded Systems Conference(ESC) Brazil 2011(5月24-25日:Sao Paulo)が来週開催されるブラジル、疑いなく注目度が高くなる"BRIC"の国。米国、中国そしてインドなど多くの国々の政府が、ハイレベル派遣団および相互訪問を同国と最近行ってきている旨。

◇Report: Abu Dhabi fab to break ground in 2012 (5月18日付け EE Times)
→Bloombergニュースサービス発。半導体ファウンドリー、Globalfoundries社が、Abu Dhabiの半導体fabに$6B〜$8B投資する計画、2012年に起工、2015年に半導体生産を始める運びの旨。

◇India launches first smart grid project (5月18日付け EE Times)
→インドのBureau of Energy Efficiencyが、IBMと連携、同国最初のsmart gridプロジェクトを起こす旨。

もう一つ、ロシアではMRAM製造の話の前進である。

【ロシアのMRAM支援】

◇Russia backs MRAM startup in $300M deal (5月17日付け EE Times)
→MRAM技術開発のCrocus Technology(Sunnyvale, CA)とロシア政府ナノテク投資基金、Rusnanoが、合わせた総投資$300MでMRAM製造会社、Crocus Nano Electronics(CNE)(ロシア)を設立する合意締結の旨。90-nmおよび65-nm lithographiesでCrocusのThermally Assisted Switching(TM)(TAS) MRAM技術ベース・中から大容量のMRAM製品が作れる先端MRAM拠点をロシアに建設する旨。

さらにもう一つ、もうすでに世界の半導体プレーヤーの一角、中国であるが、こちらの方は今の景気の続き具合はどうなのか、市場の足取りの方にどうしても敏感になる現状ということと思う。

【中国の景気】

◇中国景気に黄信号、自動車・液晶TVが前年割れ (5月15日付け 日経 電子版)
→中国の消費を牽引してきた自動車と液晶TVの販売に黄信号がともった旨。
4月の新車販売台数は2年3ヶ月ぶりにマイナスとなり、メーデーに合わせた5月始めの3連休では液晶TVの販売が初めて前年実績を割り込んだ旨。大手メーカーの業績にも陰りが出ており、中国景気の不安要因に浮上してきた旨。


≪グローバル雑学王−150≫

前回に続いて同じくドイツのこんどはビールである。ミュンヘンで開催される世界最大規模の祭り、オクトーバーフェストが、ドイツのビールというとどうしても頭に浮かんでくるが、1810年以来ミュンヘン西方のテレージエンヴィーゼ(Theresienwiese:テレーゼの緑地という意)で9月半ばから10月上旬に開催され、毎年600万人以上の人が会場を訪れている(ウィキペディア百科事典)とのこと、

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
 …1957年 1月17日 第 1刷 発行
  2010年11月19日 第30刷 発行

による1950年当時の以下の情景は、第二次大戦の影響、爪痕を除くと今とそんなに変わりないのではないだろうか。


12 ビールの本場(ドイツ)

★ミュンヘン、深夜の駅頭、降り積む雪に靴もうずまるほど。
 オランダから南下しているのに、北へ向かって進んでいるような錯覚

□ミュンヘン醸造試験場
・ミュンヘンの醸造試験場
 →古くから世界に響いたビールの試験場
 →ビール業者の組合から一定の研究資金を得て経営
  …ビールや麦芽ばかりではなく、馬鈴薯や澱粉の生産業者、蒸留酒や酢の業者の組合まで
・各国ともビールの醸造試験場は、民間組合の経営が多い

□金になる研究
・日本のビールの会社は三つ
 →共同出資の研究所、比較的容易
 →大麦やホップのように共通する問題
 →ビールの声価を世界に高めるためにも、消費者に対する義務としても必要

□ドイツ人のくせ
・ミュンヘン醸造試験場
 →目前の問題も取り上げてはいるが、基礎的な問題ともかなりの取り組み

□ビールにヴァリエーションを
・ミュンヘン工業大学の醸造学教室
 →大いに著者の意を得た研究
 →各醸造場からたくさんの酵母を集めて、ビールの特殊性の面から特徴ある酵母を選択

□ビール研究の御本山
・ビール研究の御本山、リューエルス教授宅を往訪
 →ミュンヘンから南へ1時間、軽井沢に似たテーガンゼー

□飲み歩き
・ミュンヘンの宿へ戻ってから、ビアホールを2、3軒歩き
・まず、レーウェンブロイのホール
 →ガラスの大コップ、シェンク・ビーヤの黒
 →次はシェンクの白

□白くなるミュンヘン・ビール
・ミュンヘンでは近年、次第に名物の黒が減って、白が増加
 →おそらく80%くらいが白
・ミュンヘンの水は炭酸塩の硬度が高く、よく炒って黒くした麦芽と相マッチのはずなのに

□次はエキスポルトとボック
・次に出たのはエキスポルト、その次はボック・ビーヤ
・次の酒場、ホーフブロイの付近
 →すでに何百人もの人でいっぱい
 →歓声が大ホールの高い天井をどよもしている

□水のような
・著者の平素自己流の酒の鑑定の秘訣
 →水のように飲めるものを良酒

□はしごの末端
・次は、ミュンヘンでも大メーカーの一つのビヤホール、プショルブロイ
 →失せる記憶

□工場めぐり
・はしごの翌日の朝、工場見物の案内
 →戦後のドイツ・ビールの生産、最大のものが、レーウェンブロイと、ドルトムンドのユニオンという苦いビールを造る会社
 →その他の雄、チェコのピルゼン・ビール

□レーウェンブロイ
・レーウェンブロイの工場も、他のミュンヘンの建物と同様にひどい爆撃、修理がまだなかなか追いつかない状態

□腐らない生ビール
・かぶさる王冠の内側、小さなガスの炎がさっと吹きかかって、そこについている菌を殺す仕掛け
 →いつまでも腐らない生ビールの壜詰め

□ミニアチュア工場
・一回約20石くらいの製造規模のビール工場
 →冷却装置から濾過機まで、すっかり大工場のミニアチュアであるには驚き

★思い出のミュンヘン駅を発ち、南の国、スペインへの旅へ

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