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インテルの22-nm発表はじめ、見えてくる新たな業界市場戦略の構図

米SIAから3月、そして第一四半期を締める世界半導体販売高が発表され、全体としては増加基調を維持しているが、大震災に見舞われた我が国の市場の落ち込みが表われており、復旧に向けた活動が全体の今後にどう効いてくるか、しばらく注目である。一方、従来の平面から立体構造にブレイクスルーを図る22-nmノード世代のトランジスタがインテルから発表され、それと時を揃えるように同社を軸とする市場制覇に向けた新たな駆け引きが表面化してきている。

≪3月の世界半導体販売高≫ 

米SIAからの発表内容は、次の通りである。

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○半導体業界の第一四半期、力強いグローバル販売高の締め …5月2日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2011年3月の世界半導体販売高が$25.3 billionで、前月の$24.7 billionから2.5%増加、昨年の2010年3月における$23.2 billionからは8.6%増加している、と発表した。2011年第一四半期の販売高は$75.8 billionに達して、昨年の第一四半期販売高、$69.8 billionに対しては8.6%の増加である。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「今年の第一四半期を締めるに当たって、グローバルおよび米国国内の半導体業界の業容に大変元気づけられている。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「今やこれまで以上に、半導体業界が米国経済を最近の不況から抜け出して前進させている原動力であることが明らかである。」

現在我々の業界は、高品質のエレクトロニクス製品を求める消費者及びビジネス需要の高まりおよびほとんどすべての業界に広範に行き渡っているintegrated circuits応用から、米国経済の伸びの予測を上回る軌道にある。加えて、日本におけるインフラの安定化および進んでいる復旧活動が、3月半ばの自然災害が半導体市場に与えてしまっているインパクトを和らげてきている。

※3月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/default-file/March%202011_GSR_ChartGraph.pdf
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SIA発表は3ヶ月移動平均の表わし方であるが、昨年の第四四半期と今年の第一四半期の販売高を地域別に見ると次の通りであり、我が国の落ち込みが表われているとともに、他の地域への実際のインパクトをこのデータの推移でこれからよく見ていく必要がある。

市場地域
10-12月平均
1- 3月平均
change
Americas
4.57
4.69
2.5
Europe
3.30
3.32
0.6
Japan
3.97
3.62
-8.7
Asia Pacific
13.31
13.63
2.3
$25.15B
$25.26B
0.4 %

今回の数字をもとに今年の販売高をどう見るか、一つの考え方として以下が出されているが、半導体のみならず装置、材料を世界に向けて供給している我が国の戻し具合に大きくかかってくる前提を感じている。

◇Chip market grows, despite revision (5月4日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)のグローバル半導体販売高の第一四半期の数字について次の下方改訂が行われている旨。
1月について$187.8M、2月について$1.46Bの減
日本の大震災の影響はあるが、例年の四半期パターンから本年を次の通り見る旨。
 1Q11: $75.766 billion (reported)
 2Q11: $77 billion to $80 billion
 3Q11: $82 billion to $85 billion
 4Q11: $80 billion to $86 billion
これだと2011年世界半導体販売高総計は、$315B〜$328B、5〜10%増となる旨。

現実の問題として、マイコンの例が以下の通りであり、影響が国内に留まらず世界に及ぶということで、ここは我が国の結集力の見せどころということと強く感じるものがある。

◇携帯・家電も半導体払底、ルネサス被災で月内にも−メーカー、生産・販売計画見直しに動く  (5月4日付け 日経 電子版)
→マイコンで世界シェア3割をもつルネサスエレクトロニクスの主力工場が被災で生産停止していることの影響が産業界に広がっている旨。国内生産がほぼ半減している自動車に続き、携帯電話機、白物家電、エレベーターなどのメーカーが、生産・販売計画を見直し始めた旨。マイコンなど電子部品の在庫が底を突く6月をにらみ、対応を迫られている旨。ルネサスは被災工場で6月半ばから生産を一部再開するが、フル生産に入る時期は未定の旨。

マイコンが主題の一つとなるイベント、Embedded Systems Conference(ESC)(5月2-5日:San Jose, CA)でも、要注意、要警戒のメッセージが出されている。

◇Microcontroller supply chain is out of control (5月6日付け EE Times)
→すでにsupply chainには厳しい切迫した事態、MCU製品サプライヤは東日本大震災によりさらに混乱、そして不足にこの先見舞われる見込みの旨。

このようななか、相次いで新技術が発表され、やはり新技術、新市場の出現には活性化される気分となる。ここではインテルの22-nm世代トランジスタに注目せざるを得ず、Moore則を継続する意志というものを強く感じている。まずは以下の記事の図面から従来との比較に当たることと思う。

◇Intel And Seagate: Silicon Transistor And Magnetic Storage Density Maintain An Impressively Steady Improvement Rate (5月5日付け Electronics Design, Strategy, News)
→2日間のうちに次の2つの根本的技術ブレイクスルーの発表。
1) Seagateが火曜3日発表、1 Tbyteの容量を1個のdouble-sided 3.5″HDD platterに詰め込み
2) Intelが水曜4日発表、coming-soon 22-nmプロセス
・インテルの技術ロードマップ
http://blogs.cancom.com/elogic_400000040/files/2011/05/intelprocessroadmap.jpg
・従来のplanarトランジスタ
http://blogs.cancom.com/elogic_400000040/files/2011/05/planartransistor2.jpg
・インテルが22-nmで使い始めるtri-gate '3-D'トランジスタ
http://blogs.cancom.com/elogic_400000040/files/2011/05/trigatetransistor.png
・比較図面:32-nm planarトランジスタ vs. 22-nm Tri-Gateトランジスタ
http://blogs.cancom.com/elogic_400000040/files/2011/05/trigatemicroscope.png


≪市場実態PickUp≫

ますます時間軸が忙しくなっている現代における新技術、新製品の発表の性格というものを改めて感じているが、ともかくそれと並行して市場制覇にかけた動きがインテルを軸に猛烈にけたたましく進行している状況、推移を以下の通り受け止めている。

【インテルを軸とする駆け引き】

◇ARM working on AMD to drop x86 (4月27日付け EE Times)
→プロセッサlicensor、ARM Holdings plc(Cambridge, England)が、ARMプロセッサのライセンス供与を受けてx86アーキテクチャーに替えてそれを用いるよう、AMD社を説得しようとしている旨。

◇Reports: Intel to fab PLDs for second startup(5月2日付け EE Times)
→Venture Beatおよび技術ニュースサイト、SemiAccurate.com発。昨年、programmableロジックstartup、Achronix Semiconductor社に対するファウンドリーサービス提供に合意、半導体業界筋を驚かせたIntel社が、もう一つ有望なprogrammableロジックstartup、Tabula社と同様な関係の合意に達している模様の旨。

◇Apple-Samsung friendship turns sour (5月2日付け EE Times)
→Piper Jaffray & Co.のアナリスト、Gus Richard氏。Apple社とSamsung Electronics Co. Ltd.は、かっては親密な友人であったが、ここにきて仲たがい、Samsungの売上げが食われる動きの旨。AppleはSamsungの2010年半導体売上げの17%を占める一方、SamsungはApple設計のA4およびA5プロセッサをファウンドリー製造、しかしながら最近になって両社は、PC, 携帯電話およびtablet PC市場で激しいライバル関係になってきている旨。

◇Intel vying for Apple foundry business (5月2日付け EE Times)
→Piper Jaffray & Co.のアナリスト、Gus Richard氏。現在は、Apple設計のA4およびA5プロセッサをファウンドリー製造しているSamsung Electronics Co. Ltd.であるが、まもなく変わる事態の可能性、AppleとTSMCがA5およびそれに続く半導体についてファウンドリーの関係に入っている旨。さらにもう一つのプレーヤーがAppleのファウンドリービジネスを追求しており、それはIntel社、すでにAppleのPCラインに向けてx86-ベース・プロセッサを供給している旨。

◇If Intel wins Apple, becomes leading ARM maker (5月4日付け EE Times)
→Intel社がApple向け半導体を作るファウンドリービジネスを獲得するとなると、同社がARM-ベースプロセッサの大手の、そうでなくともとにかくメーカーになる旨。

◇ARM to win 13% PC processor share in 2015, says IDC (5月5日付け EE Times)
→International Data Corp.(IDC)発。現在はdesktop, mobileあるいはx86 servers向け市場で存在しないARM Holdings plcのプロセッサ・アーキテクチャーが、2015年までに13%以上の市場シェアをつかむ勢いにある旨。
2011年第一四半期では、Intelが80.8%、AMDが18.9%、Via Technologiesが0.2%というシェア状況の旨。

少なくともインテルがタブレットやスマートフォンに今後どう関わることになるのか、半導体、そしてエレクトロニクス業界全体の今後として否応なく注目、ということになる。同社の22-nm世代トランジスタの今回の発表の概要は次の通りである。

【インテルの22-nmトランジスタ】

◇Intel tips 22-nm tri-gate, but mobile is MIA (5月4日付け EE Times)
→予想通り、Intel社が水曜4日、22-nmプロセスを新方式で発表、待望の3-Dトランジスタ設計、tri-gateに基づくプロセス、適用する最初の量産半導体は世界初の22-nm MPU、コード名Ivy Bridge-ベースのCoreファミリー・プロセッサで今年末までに量産予定の旨。
しかし今回の発表にないのが、ARM陣営からの脅威をかわす22-nmモバイルプロセッサである旨。

◇インテル、立体構造の半導体生産へ、省電力と高速化実現 (5月5日付け asahi.com)
→インテルが4日、立体構造をもった半導体チップを開発、年内に生産を開始すると発表した旨。立体構造にすることで、従来の平面構造では実現が困難だった高速で消費電力の少ないチップが実現する旨。

上記でも取り上げたイベント、Embedded Systems Conference(ESC)について、特に興味を感じた内容として以下の通りである。複雑度が増して問題意識が多岐に及び、付いていくのが難しくなる雰囲気が増す一途ではある。

【Embedded Systems Conference(ESC)(5月2-5日:San Jose, CA)から】

◇'Woz' says schools, corporations 'tamp down creativity' (5月3日付け EE Times)
→Appleの創業者の1人で現在はFusion-ioのchief scientist、Steve Wozniak氏の"炉辺談話"。アメリカの教育は、テストおよび創造性の破壊に取りつかれて停滞している、と描述の旨。

◇Xilinx currently showcasing mega-cool 28nm FPGAs and Zynq chips at ESC (5月3日付け EE Times)
→Xilinxが今回、Zynq-7000 Extensible Processing Platform(EPP)および世界初の28-nm FPGA、Kintex-7ファミリーを展示している旨。

◇Micron rolls longevity program (5月4日付け EE Times)
→Micron Technology社が、新しいproduct longevity program(PLP)を展開、10年以上使えるデバイスを作る主旨、車載、医療および産業用のembedded応用向けメモリ製品供給のために設計の旨。
PLPには業界のサポートを得ており、パートナーとしてAvnet, Arrow, Freescale, TIおよびRenesasが入っている旨。

最近も新たな工場建設策定計画が発表されたばかりのインドの半導体業界であるが、ハードウェアへの進出に段取り、時間を要している印象が続いている。$300B規模に達した昨年、2010年の世界半導体市場との対比を改めて感じている。

【インド半導体市場】

◇India's chip market hits $6.55 billion (5月4日付け EE Times)
→India Semiconductor Association(ISA)がFrost & Sullivanとともに行った評価レポート。周期的なグローバル半導体市場の傾向は2010年のインドにはほとんどインパクトがなく、インド半導体市場は28%増の$6.55Bと見積もられる旨。


≪グローバル雑学王−148≫

第二次世界大戦後まもない1950年ごろのオランダについて、

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
  …1957年 1月17日 第 1刷 発行
   2010年11月19日 第30刷 発行

よりお酒を主題に当時の雰囲気を知らされている。杜松の実を入れたジンのそもそもを辿ると、改めてその味をトライして実感したい気持ちになっている。


10 ジェネヴァ(オランダ)

★コペンハーゲンの空港:午後4時発 → アムステルダム:7時

□冷たい目つき
・当時のオランダ、日本人だと冷たい目つきや、いやな口ぶりに出会いがち
 →街の酒の勉強もここではあまり精が出せず
・ジンの本場、オランダ
 →ジンという名前は、イギリスで始まったジェネヴァの愛称
 →フランス語のジュニエヴル、すなわち杜松(ねず。盆栽では音読みのトショウの名で親しまれている。)
 →杜松の実を酒に入れた
・本場のジンの製造方法
 →穀類の醗酵液の中へ杜松の実を入れて、混ぜて醗酵させたものを蒸留
・ワルム・ジェネヴァ(熱いジェネヴァ)、
 クウド・ジェネヴァ(冷ジェネヴァ)

□ジンの生い立ち
・イギリスのジン、ロンドン・ドライジンの製法
 →杜松の実を醗酵液に入れずに、杜松の実とレモンの皮、カルダモン、カラウェーその他の香料植物といっしょにアルコール液に混ぜて蒸留
 →ドライで辛いのが建て前
・ジェネヴァ・ジンの銘醸
 →ホッキンス、フルストキャンプ、ボルスなどの会社
・ボルスのチェリー・ブランデー
 →桜実で造った赤い甘いリキュール。オランダの一名物。
・ジェネヴァは、カクテールの土台には向かないが、一滴のビタースを加えて飲む味の清涼さは忘れられない。
 (注)ビタース…草根木皮をスピリッツで浸出したもので,苦味のあるリキール.カクテルなどに用いる.

□縁の下の力持ち
・オランダは昔から、面白いサービスを世界の学界に提供
 →いろいろな菌株を集めて何千種となく保存、注文によってそれぞれ配布するという仕事
 ⇒学界の偉大なる縁の下の力持ちの役

□女性の力
・オランダのこのサービス事業の発展
 →ウェステルディーク女史の熱心が主な原動力
・バールンという森林地帯の景色の良い公園のようなところに女史の研究所

□カビを護って
・菌類のうちでも主に「カビ」に属するものを保管
 …菌を変性させずに保存する方法やその他の専門的な苦心談

□微生物学界の長老
・デンハーグ(Den Haag)の近くの古い町で工業の中心地、デルフト(Delft)
 →デルフトの工業大学のクライファー教授 …世界の微菌学界の長老
 →教授宅で振る舞われた食事、ここでもジェネヴァ

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