伸び率が下方修正される中、最先端の技術・工夫による需要喚起を
各種経済指標や各社業績の発表に、東日本大震災の影響による下方修正がさらに具体的に表われてきている。落ち込みは一時的で今年半ば以降、第三四半期にも以前の水準を取り戻すという見方が出ているが、半導体のサプライチェーンをとっても非常に多数のアイテム数に及ぶのと一つ欠けても成り立たない性格であり、注意深い見極めを引き続き要するところと思う。一方、特に国内の市場需要の萎縮があってはならず、最先端の技術、サービスを駆使した喚起努力が一層求められる情勢を感じている。
≪縮こまりの打破≫
我が国の3月の鉱工業生産指数が、大震災のインパクトのほどを非常に端的に表わしている。
◇3月の鉱工業生産、過去最大15.3%減、震災の影響で (4月28日付け asahi.com)
→経済産業省が28日に発表した3月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整済み)の速報値は、東日本大震災の影響を受けて、前月比15.3%減の82.9と過去最大の落ち込みとなった旨。減少は5カ月ぶり、これまで最大だった落ち込みは、リーマン・ショック後の経済低迷による2009年2月の8.6%減(確定値)の旨。
GDPの成長率もこのインパクトを盛り込んで引き下げられているが、同時に回復の期待感が来年度の数字に盛り込まれている。
◇2011年度成長率0.6%に大きく引き下げ、日銀リポート (4月28日付け asahi.com)
→日本銀行が28日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)より、2011年度の実質国内総生産(GDP)の成長率を、1月時点の前年度比1.6%増から同0.6%増に大きく引き下げた旨。
東日本大震災の影響で生産活動が低下、景気が一時的に落ち込むことが避けられないと判断した旨。一方、2012年度の成長率見通しは1月時点の2011年度比2.0%から同2.9%に引き上げ、今後、震災による復興が進むための旨。
各社の業績発表の中から、具体的に大震災の影響を表わした例として以下が見られる。
◇Amkor's earnings fall as Japan disaster hits sales (4月28日付け Bloomberg Businessweek)
→Amkor Technology社(Chandler, Ariz.)の第一四半期売上げ$665M、前年同期比3%増、日本の大震災で$6M減少とみている旨。earningsは43%減の旨。
半導体について特に回復の度合いを左右する一つとしてウェーハ生産があるが、本年半ば以降には元に戻る動きとなっている。
◇Shin-Etsu To Resume Pre-Quake Wafer Output By June (4月28日付け Nikkei)
→信越化学(Shin-Etsu Chemical Co.)が木曜28日、同社の主要半導体Siウェーハ工場での生産が6月末までに前月の地震以前の水準に戻る旨。
もう一つ問題は、購買気分を誘う市場需要の火つけが強力に必要になってくることであるが、延期されていた国内でのApple社「iPad2」発売が行われている。以下に示すように、同社の第一四半期handset売上げは、長きにわたるリーダー、Nokia社を上回る勢いとなっている。
◇アップル「iPad2」、あす日本でも発売 (4月27日付け 日経 電子版)
→米アップルが多機能携帯端末「iPad2」を日本国内で28日に発売する方針を固めた旨。27日に発表、当初は3月25日に売り出す予定であったが、東日本大震災に配慮して発売を延期、いつ発売するかが注目されていた旨。
世界的な動きとして、e-bookリーダーと書籍印刷出版の今後に向けた対比が、次の通り示されている。市場気分がどう反応していくか、これも一つの例であるが、需要喚起を占う指標になっていくものと思う。
◇IHS: E-readers to decimate book publishing (4月28日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。大きな屈曲の節目、e-bookリーダーの売れ行き増大で、書籍印刷出版業界が長期的な低下期間に入ってきている旨。
・米国書籍販売高予測: 2010-2014年業界全体CAGR -3%
2010-2014年印刷出版CAGR -5%
2010-2014年eBooks CAGR +40%
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/110428_IHS1.png
・グローバルeBook Reader出荷推移&予測: 2008-2014年
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/110428_IHS2.png
TSMCの総帥、Morris Chang氏も、本年の市場伸び率の下方修正の見方を次の通り表わしている。改めて大震災の業界インパクトを感じるところがあるが、ここでこそ最先端の技術を駆使すれば市場を引っ張れるというメッセージが前面に出されていると思う。
◇TSMC Maintains Bright Estimate for Its Annual Operations (4月29日付け Taiwan Economic News)
→機関投資家conferenceにて、TSMCのchairman and CEO, Morris Chang氏。
・日本を襲った大震災の業界インパクトは、高々第二四半期末まで続き、7月には半導体市場の先がもっと見えるようになる。
・インフレの陰、欧州の国家負債および日本の大震災から、伸び率予測を下方修正。
前回 今回
グローバルPC市場 12% 8%
グローバルhandheld機器市場 9% 7%
グローバルconsumer electronics市場 6% 半減
・グローバル半導体業界の伸長率は、当初予測の7%から4%と約半分になると見るが、TSMCの今年の売上げは計画通り20%増と見ている。同社の先 端プロセス技術およびスマートフォン、タブレットの力強い需要が引っ張る旨。
≪市場実態PickUp≫
二転三転、慌ただしい動きに映ってくる台湾のDRAM業界のこのところである。
【台湾のDRAM業界】
◇Report: Micron may take over Inotera (4月26日付け EE Times)
→US-Taiwan Business Council発。Micron Technology社が、台湾のDRAM合弁パートナー、Inotera Memories(MicronとNanya Technologyの合弁)の買収を進める可能性、台湾第二のDRAMメーカー、NanyaがInoteraにおけるstakeをMicronに売却かという噂がある旨。
◇Powerchip re-enters DRAM business (4月27日付け EE Times)
→台湾のPowerchip Technology社が、僅か3ヶ月の隙間を経て、DRAM事業に再参入の旨。Powerchipが現状のビジネスモデルを更新、日本のElpidaからモバイルDRAM技術およびその製品販売権を取得の旨。
◇Micron, Inotera deny acquisition rumors (4月28日付け DIGITIMES)
→Micron Technologyが台湾のInotera Memoriesの全体所有買収を求めているという噂が、また飛び交い始めているが、両社ともにその可能性を否定している旨。
Apple社の急伸ぶりが目立つこの1-3月のhandset業界である。パソコン、スマートフォン、タブレットなど含めて、総合的に見ていかざるを得ないますますの最近の市場状況である。
【第一四半期handset売上げ】
◇Apple moves to No. 1 in handset revenue (4月25日付け EE Times)
→Strategy Analytics社のseniorアナリスト、Alex Spektor氏。第一四半期のApple社のiPhone handset部門卸売上げが$11.9B、初めてNokia社の第一四半期handset売上げ、$9.4Bを上回った旨。
・2011年第一四半期のグローバルhandset卸売上げ
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110425_strategy_analytics_apple.png
研究開発から本格的な実用化へ、三次元実装の業界の取り組みが、一層広範になってきている。貫通電極(TSV)、シリコンインターポーザ(2.5-D)を当面の足掛かりとする動きが見られている。
【三次元実装への備え】
◇Six more firms join Sematech's 3-D team (4月25日付け EE Times)
→半導体リサーチ・コンソーシアム、Sematechの3-D enablementプログラム(Albany大のCollege of Nanoscale Science and Engineering[CNSE])に、6社が加わる旨。through-silicon via(TSV)で可能になる3-D stackedコンポーネントに備える旨。
今回の6社→Advanced Semiconductor Engineering Inc.(ASE)
Altera Corp.
Analog Devices Inc.(ADI)
LSI Corp.
On Semiconductor Corp.
Qualcomm Inc.
元々のメンバー→Globalfoundries
Hewlett Packard
Hynix
IBM
Intel
Samsung
UMC
◇Si2 to form 3-D IC standards group (4月26日付け EE Times)
→IC設計改善に向けた標準化の開発&採用に重点化する機関、Silicon Integration Initiative(Si2)が、3-D半導体の標準化グループ、Open3D Projectを控えめに形成、オープン標準をもって相互運用性のある2.5-D/3-D設計およびEDAフローを目指す旨。''kickoff meeting''を、来るDesign Automation Conference(DAC)(6月5-9日:San Diego)にて行う運びの旨。
今度は一気に進むかと思われた米国の特許改革であるが、なかなか迅速とはいかない状況が見られている。
【米国の特許改革】
◇U.S. patent office shelves fast track plan (4月27日付け EE Times)
→米国特許局が、新しい迅速な審議手続きプログラムを作り出す計画について、履行にあたって必要になる審査員を雇用する資金が不足として無期延期する旨。
≪グローバル雑学王−147≫
フランスの林檎酒およびデンマークのビール会社について、
『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)
…1957年 1月17日 第 1刷 発行
2010年11月19日 第30刷 発行
より、小生には新たな知見の以下の内容である。のどかな牧場そして豊かな海の幸の覚えもあるノルマンディーの林檎酒、そして海外出張でよく目にし試したビール、カールスバーグがデンマーク発とは、という受け取り方である。1950年時点の記述であるが、アップデートが必要であろうか?
8 シードルとキャルヴァドス(ノルマンディー)
・シードル(cider, cidre) …フランス語で林檎酒
□イヴの林檎
・イヴが誘惑された林檎は、さだめし渋い酸っぱいしろもの
→こういうものからこそ美味いコクのある林檎酒
□各国のサイダー
・林檎酒 →イギリス: サイダー
フランス: シードル
ドイツ : アッペルワイン
イタリア、スペイン: シドラ
アメリカ: ハード・サイダー
・日本のサイダー →すなわちラムネ、林檎とは別に関係ない
・林檎酒の世界の銘醸地、ノルマンディー
→緩やかな起伏の多い牧場地帯: たくさんの林檎の樹: 春には美しい花
→まことにのどかな景色
□泥まみれの功徳
・牧場のあちこち、地上にうず高くピラミッド型に積まれる泥まみれの林檎
→林檎の熟成と、したがって林檎酒のためにも大変良い影響があるとのこと
・工場に運ばれた林檎
→まず洗滌機 →次に粉砕機 →次に圧搾機
□シャポー
・汁は、巨大なコンクリートのタンクに導いて、低温に放置して清澄に
→清澄操作…デフィカシオン (醗酵のガスで上に浮かぶものを帽子[シャポー])
⇒フランス林檎酒製造の特徴
・林檎酒は、葡萄酒のように神経質なお世話は要らぬよう
→アルコールが3-5%、うす甘くて、コップに注げば泡が静かに上がっていく
→穏やか、女性にも子供にも向く
□キャルヴァドス
・林檎酒を蒸留すると、キャルヴァドス(Calvados)に
→果物のブランデー
・イギリスやアメリカでは、このものをアップル・ジャック(Apple Jack)
→古いものはたいへん高価
□ジャック・ローズ
・アップル・ジャックを使ったカクテール
→ジャック・ローズ …ばら色
→調合の一例: 1パート グレナジン(赤い色のシロップ)
2パーツ レモンジュイス
8パーツ アップル・ジャック
・キャルヴァドスは、どこの国でもあまり上品な飲み物の部類に入らないよう
→対して、シードルの方は、女子供にも結構愛用、パリの小学校では遠足の時には小使さんがシードルを背負ってついて行くそう
9 塔の都(デンマーク)
・九州に近い面積の小国、デンマーク
→生化学、微生物学、物理、化学その他の分野で昔から多くの碩学
・「麗しい塔の都」、コペンハーゲン
→すべてがビールのおかげ
□カルルスベルヒ
・近代化した安全な大工業の形になったビール醸造の仕事
→実はデンマークでの始まり
→ビール工業近代化発祥の地、コペンハーゲンのカルルスベルヒ
→世界中どこでも見られるカルルスベルヒのビール
…いくぶん高価、品質が良い
□ヤコブセン父子
・19世紀の初め、クリステン・ヤコブセンという若い農夫が、コペンハーゲンの街の横丁で小さな酒屋
・その子供、ヤコブ・ヤコブセン →優れた醸造技術を造出
→息子のカルルの名を取ってカルルスベルヒと名づけ工場スタート
→現在世界に有名
・親の代から科学の利用によって成功
→カルルスベルヒ研究所を設立
→始めて迎えた学者が、ハンゼンとケルダール
□ハンゼンの偉業
・ハンゼン →醸造学ではフランスのパスツールと相並ぶ
→ビールの醗酵液の中から、酵母だけをしかも一匹ずつ純粋に取り出す方法を発明
→純粋な醗酵でビールを造ることに成功
・ビール醸造が一躍、機械化した安全な企業としての「酒造工業」に
→カルルスベルヒ会社の事業も一大発展
□壁上の言葉
・この研究所の玄関の正面の壁の上の大書
→「本研究所にて為したる業績は、すべて世界に向かって公開すべし」
・工場のモットーも →「自己のためではなく世界の全醸造業界の利益のために」
□親子の商戦
・親父のヤコブ →古工場(ガムル・カルルスベルヒ)
息子のカルル →新工場(ニイ・カルルスベルヒ)
⇒別会社として十数年間火の出るような商戦
・この利益の全部がデンマーク国民の福祉と世界の学術の進歩とのために寄贈、現在に至る
□シュナプス
・デンマーク人の飲料
→ビール 65%
シュナプス 35% …馬鈴薯からつくったアルコールを薄めた焼酎みたい
★オランダのアムステルダムへ