震災インパクトの見極めを要する一方、予想を上回る第一四半期業況
大震災の被害を乗り越えて操業を再開する各社からの発表が相次いでいる。
この1-3月、第一四半期の業績発表も行われ、多かれ少なかれ大震災の影響についてのコメントが付されているが、大方の予想を上回るインテル、アップル両社の記録的な売上げが目立つ形である。しかしながら、部品・材料在庫の切れ目に間に合う補充が、操業再開で埋められるかどうかが焦点となっており、現下の第二四半期の業況推移に特に注目ということと思う。
≪求められる様々な備え≫
スマートフォン生産の現況が、以下のように表わされている。
◇被災の液晶部材工場、続々再開、スマートフォンは綱渡り (4月23日付け 日経 電子版)
→世界的に需要が急伸しているスマートフォン(高機能携帯電話)などに使う液晶パネルの関連工場が、相次いで操業を再開、だが、中小型パネルをつくるのに必要な先端素材や部品、装置の生産水準は低く、安定調達になお不安もある旨。東日本大震災前の部品在庫を使い切る5〜6月にサプライチェーン(供給網)がどこまで回復するかが焦点の旨。
Apple社の発表では、第一四半期のiPads出荷数量の不足に言及しており、震災による影響とともに別の生産問題も見られている。
◇Apple's profit steady on record iPhone sales(4月20日付け EE Times)
→Apple社(Cupertino, Calif.)の第一四半期売上げ$24.67B、前四半期比8%減、前年同期比約83%増。iPhonesの販売数量は最高を記録、iPadsについては日本の大震災に関連するsupply chain問題からアナリストの予想には届いていない数量の旨。
◇Production issues hit iPad 2 shipments (4月21日付け EE Times)
→Apple社での製造問題により第一四半期のiPad 2出荷が不足する事態に、IHS iSuppliが予測を下方修正の旨。
iPad全モデルの本年出荷数量:
前回(2月時点) 43.7M台 →今回 39.7M台
189.6%増 → 163.3%増
この第一四半期には日本の震災は関連していない旨。Cirrus Logic社には、Apple向けオーディオデバイスの生産問題がある旨。
Intel社の方は、アナリストの見方を大きく遮って、パソコン市場への逆風を打ち消す最高記録の売上げを示している。
◇Intel's record Q1 smashes analyst estimates (4月19日付け EE Times)
→Intel社(Santa Clara, Calif.)の第一四半期売上げ$12.8B、前四半期比12%増、前年同期比25%増。
◇Intel record Q1 proves PCs, tablets can coexist, analyst says-Intel's 25% year-over-year growth was more than expected by analysts and the company. On that, Intel has raised full-year revenue expectations and capex. (4月20日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Intel社が第一四半期に記録的な売上げを示し、買い手が新しいタブレットに目が向いてPCs需要に逆風となり湿っぽい四半期になるという多くのアナリストの見方に逆行の旨。
一方、大震災のサプライチェーンへの影響は、以下の通り続いていて、予断を許さない状況が見え隠れしている。
◇Report: LG Electronics faces IC shortage (4月19日付け EE Times)
→Dow Jones発。consumer electronicsメーカー、LG Electronics社が火曜19日、同社home appliance部門において日本からのICs不足に直面、代替サプライヤを探し求めている旨。
◇Toshiba reportedly to halve NAND flash output in May, June (4月20日付け DIGITIMES)
→業界筋発。東芝が、震災によりblankウェーハはじめ原材料の出回りが抑えられて、5月および6月はNANDフラッシュの産出が50%ほど削られると顧客に通知している旨。
世界の半導体生産地域について、地震発生の活発な地域との重なり具合が以下に調べられている。大方は重なっている現状となっており、市場、水、環境、交通などの基本要件にこれからは比重を増した立地条件になっていくことが必至である。
◇Study: 63% of IC fabs in earthquake zones (4月19日付け EE Times)
→IC Insights社発。世界半導体製造capacity全体の約2/3が、地震の多い地域に位置し、ファウンドリーcapacityの90%以上がそれに入る旨。
・地震リスクのあるIC業界capaciy
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110418_IC_insights_earthquake.png
自前完結の半導体製造の本格的な取り組みがこれからとなる中国とインドからは、以下の通り今後に向けた国家的な備えの動きが出てきている。ここでも立地の問題はますます重みを増してくるものと思う。
◇China to support 'strategic' IC sector (4月18日付け EE Times)
→Xinhua(新華社)発。工業・情報化部の楊学山(Yang Xueshan)副部長の発言を引用、中国は、IC業界を国家にとって戦略的に重要として、向こう5年にわたりサポートを追加、目標として、2015年の中国製IC販売高は330B元(約$50B)を超え、国内需要の27.5%対応可とする旨。
◇China investment fund buys 12% of SMIC (4月18日付け EE Times)
→中国のファウンドリー、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)が月曜18日、中国政府が支援するventure capital fund、China Investment Corp.(CIC)から$250Mの出資を獲得の旨。
◇India's latest fab push pegged at $5 billion(4月21日付け EE Times)
→半導体製造initiativeが頓挫、インドが、少なくとも2つの国内ウェーハfabs建設を目論む新たな計画に乗り出している旨。
≪市場実態PickUp≫
スマートフォンやタブレットの様々な部位技術を巡って、Apple、Samsung両社の特許侵害応酬合戦である。
【サムスン電子とアップルの提訴応酬】
◇Apple says Samsung copied iPhone, iPad (4月18日付け EE Times)
→Wall Street Journal発。Apple社が、Samsung Electronics Co. Ltd.を相手取って特許侵害提訴、Samsungがsmartphoneおよびメディアtablet offeringsでiPhonesおよびiPadsの"look and feel"(略して"LnF"とも書く。グラフィカルユーザインタフェースにおける色、形状、レイアウト、書体のような要素を含むデザインの側面["look"]と、ボタン、ボックス、メニューといった動的要素["feel"]の振る舞いからなる。≪BIGLOBE百科事典より≫)を模倣している旨。
◇サムスン電子、米アップル提訴 「スマホの特許侵害」 (4月22日付け asahi.com)
→韓国サムスン電子が22日、スマートフォン(多機能携帯電話)の関連技術の特許を侵害されたとして、米アップルを相手に、特許の侵害禁止と損害賠償を求める訴訟をソウル中央地裁に起こしたと発表の旨。提訴は21日付で日本やドイツでも同様の裁判を起こし、米国でも提訴の準備を進めている旨。 サムスン電子は、データ送信時に電力の消耗を抑える技術や、パソコンにつなげて無線データ通信を可能にする技術など計10件の特許について、アップルが無断で「iPhone」や「iPad」に使った、と主張している旨。
歴史あるGartner社の2010年半導体ランキングにまた新たな入れ替わりを感じるとともに、ファブレス・ランキングでの米国勢依然席巻ぶりを再認識している風情がある。
【2010年半導体ランキング】
◇Broadcom enters top 10 chip rankings (4月18日付け EE Times)
→Gartner社による2010年半導体ランキング・トップ10、出入りは次の通り:
トップ10入り→Broadcom, Micron Technology, 新生Renesas Electronics
トップ10後退→Advanced Micro Devices, Infineon Technologies AG
・トップ10ランキング・データ
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110418_gartner_rankings.png
◇U.S. firms still dominate fabless rankings (4月21日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)の2010年グローバルファブレス半導体サプライヤ販売高ランキング、トップ10のうち9社、トップ20のうち13社を米国メーカーが占めた旨。2010年ファブレスIC販売高$59.9Bにおいてトップ20合計が占める比率は77%、2009年比2ポイント減、2008年比2ポイント増の旨。
・2010年ファブレスICサプライヤ・トップ20データ
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110421_icInsights_fabless1.png
我が国内でも再編が続いた感があるHDD業界、今度はSeagateがSamsungの事業買収の動きである。ますます絞られていくグローバル業界のサバイバル様相である。
【HDD業界再編】
◇Seagate buys Samsung HDD for $1.4 billion (4月19日付け EE Times)
→Hard disk drive(HDD)メーカー、Seagate Technology plcが、$1.375Bを支払ってSamsung Electronics Co. Ltd.のHDD事業を買収しようとしている旨。
三次元(3-D)実装の市場が定量的に表わされるようになってきている状況を感じている。それがなくては先に進めない市場、およびインターポーザによる2.5-Dアプローチが、その牽引役になっている。
【3-D IC市場】
◇'Mid-end' foundries alter advanced packaging landscape (4月19日付け EE Times)
→外形小型化、性能改善およびコスト削減がICsの3-D実装化を引っ張っており、3-D IC市場は2016年までに$4.5Bを上回る可能性、まず現れている3-D ICの流れの1つは、Siあるいはガラスのインターポーザ使用である旨。
≪グローバル雑学王−146≫
フランスの、いや世界のワイン名産地の最高峰と言われるボルドーとブルゴーニュ、その度合いのほどを、
『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)
…1957年 1月17日 第 1刷 発行
2010年11月19日 第30刷 発行
より辿ってみる。著者のこの旅行記から約60年経っている今、そんなに変化があるとは思われないが、本当の味の方はやはり実際に飲んでみてといきたいものではある。
7 彼女と彼(ボルドー)
・フランスの全産額の3分の2を出す貴重な宝庫、ボルドー(Bordeaux)地方
→質においてはこのボルドーが第一
・葡萄酒は、フランス人には自分たちの村のもの郷のものが一番良いということに
→さすがにボルドーとブルゴーニュだけは一目
□河と酒
・フランスの葡萄酒の名産地 →河と関係して覚えると楽
・ボルドー地方は、少し河を離れて小高い岡の起伏した小石まじりの砂利土のところでできる葡萄で造られる酒
→世界の銘醸
・コニャック地方を貫流するシャラント河
・フランス中部の大半の水を集めるロアール河
・英仏海峡に注ぐセーヌとマルヌの上流 →シャムパン酒
・ドイツに向かって北流するラインの上流
→香も高いアルザスの白葡萄酒の産地
・長流ローヌ河の両岸
→上流のリヨン …銘醸、エルミタージュ(Hermitage)
下流のプロヴァンス …アヴィニョン
□ブルゴーニュ
・も一つ、世界の銘醸地、ブルゴーニュ(Bourgogne)、すなわちブルガンディー …一つの地方
→"ブルガンディー"だけが葡萄酒のあるタイプの一般名詞として世界中に
□彼女と彼
・フランス人の酒通
→ボルドーは彼女であり、ブルゴーニュは彼氏
⇒それぞれ異なった気候と地味とによって独特な酒質、いずれ劣らぬフランスの銘醸
□ホテル・ツルネー
・ボルドーの地図 →パリのシャンゼリゼ―に相当する大通り、ツルネー
→エピソード:著者が泊まった「大」ホテルの名前がホテル・ツルネー
□ボルドー大学
・著者が乞われて、ボルドー大学の大講堂で講演
・ボルドーの数日間 →ボルドー市内の酒庫や、有名なメドック地方の2、3のシャトーを見物
□シャトーとシェー
・ボルドー地方の二通りの葡萄酒業者
1.広大な葡萄畑、シャトーを構え自家の酒の貯蔵から壜詰めまで
→いちばん多い
2.ボルドーの市中、方々のシャトーの若いものを樽詰めのまま買ってきて、貯蔵またはブレンド、適当の時期に壜詰め、または若い酒を買ってきて、壜貯蔵のみをやって出す
→シェー(酒庫業)
・シェーはもともと、樽詰めの葡萄酒を貯蔵する庫
壜詰め葡萄酒を貯蔵する庫は、カーヴ
・シェーの業者ももちろん、膨大なシェーとカーヴをもつ
□ラコジウム・セラーレ
・多くの貯蔵庫には灰褐色に薄汚れたカビが一面に
→ラコジウム・セラーレというカビ
→このカビさえ生きていればその庫は良い庫ということに
□シャトー・ラフィッツ
・ボルドーのシャトー中の最上位、すなわち世界最良の葡萄酒を出す葡萄園
→メドック地方ポーイヤック村のシャトー・ラフィッツ
マルゴー村のシャトー・マルゴー
・シャトーといっても、田舎の金持ちの邸宅といった形
→隣に仕込み倉や壜詰め場、カーヴは多く住居の地下
□ビスマークのこぼしたインキ
・案内されたシャトー・ラフィッツ
→ある室のテーブルに古色蒼然たるインキのこぼれた跡
…ビスマークが話の途中で興奮して卓を叩いたときにこぼれてついたあとの旨
□銘醸は手造りで
・原料葡萄 →ここでは全部カベルネー・ソービニヨン
→この地方は毎年、葡萄の品位を組合で審査、八級ぐらいに分ける
⇒ここのものはいつでも第一級
□1811年の葡萄酒
・最後に試飲室に案内
→葡萄酒もかく古くなると香味はまことに枯淡、水の如き感
→1811年のもの …世界中に2本しかない旨
・フランスの葡萄酒の話は、このへんで打ち切りに
□量か質か
・世界の葡萄酒工業の技術上のいき方について一言:
二つの形式に分かれていく葡萄酒製造法
→たくさんの人手と多くの年月とをかけて少量の良い品を造る
…シャトーのやり方
→新式の大規模、安い並酒を造る
⇒じゅうぶん研究を要するテーマ