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新興市場・新携帯端末拡大の一方、震災復旧にかかる供給対応

タブレット、スマートフォンなど新しい携帯端末の展開に軸足を置いた当面の半導体・エレクトロニクス市場の見方が強まってきている一方で、東日本大震災によるグローバルSupply Chainへの縛りを早急に取り除くことが前提となる全体的な情勢を感じている。世界の市場が注目するなか、我が国の供給に向けた取り組みとともに、関心を呼ぶ実態データをできるだけ明らかにしていくことが、お互いの交流の回復・促進を図る上で欠かせない状況となってきている。

≪軸になる新携帯端末≫

世界の受け取り、感じ方は、以下のG20声明に表わされていると思うが、各国・地域の信頼感を膨らませていく必要性ということと思う。

◇G20、日本の復興期待、共同声明「経済に回復力」 (4月16日付け asahi.com)
→米ワシントンで開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が15日、「(東日本大震災があった)日本の経済、金融の回復力を信認する」との共同声明をまとめ、閉幕、日本の復興に期待しつつ、各国が協調して日本を支援することも確認した旨。声明では、世界経済について「回復は広がりをみせている」と全体としては明るい見通しを維持、だが、日本の震災や中東・北アフリカ諸国の政情不安によって、今後、景気が悪化するおそれがあることやエネルギー価格上昇への警戒感も示した旨。

半導体・エレクトロニクス市場に注目すると、新興市場および新携帯端末が伸びの2つのキーワードとして感じている。北京でのIntel Developer Forum(4月12-13日)では、タブレットやスマートフォンに向けた新しいプラットフォームが発表の目玉となっている。

◇Is Intel Really Rewriting Moore's Law With Atom? (4月12日付け PC Magazine)
→今週、netbooksおよびtablets用の新しいOak Trailプラットフォームを発表するなか、Intelは、向こう3年にわたり"Atom製品ラインをMoore則より早い動きに前倒ししていく"旨。これは、メディアtabletsおよび smartphonesのような機器についての市場競合を非常に重大に考えていることを示している旨。

EMS世界第1位のFoxconnが、こんどはブラジルで新たに取り組むスタンスとのこと、新興市場拡大の今後へのインパクトに注目である。

◇Foxconn could spend $12B on Brazilian move (4月13日付け EE Times)
→世界最大のエレクトロニクス製品contractメーカー、Foxconn Technology Groupが、ブラジルでのoperationsを設立、向こう5-6年にわたって$12Bまで投資する可能性の旨。

携帯電話のカメラ用のCMOSイメージセンサが、生産の抑制要因として挙げられている。それぞれに逼迫の時間軸に差があると思うが、半導体ウェーハはじめ生産工程のあらゆるものへの目配りが、当面絶えず求められる状況を受け止めている。

◇IHS: CMOS image sensor supply hit by quake (4月13日付け EE Times)
→IHS-iSuppli発。CMOSイメージセンサの供給が、今回の地震で影響を受けており、今度はこれが携帯電話用カメラモジュールの製造、供給に影響を与えている旨。
グローバルCMOSイメージセンサの約17%を供給しているメーカーの2つのウェーハfabsが、地震以降閉鎖、再開に向かうも余震の影響を受けている旨。

◇Japan disaster slows cell phone manufacturing-Researcher iSuppli reports that image sensors used widely in mobile phones, are in short supply (4月14日付け Computerworld)

パソコンの世界出荷台数が、この1-3月で前年同期を下回るデータが発表されている。盛り返しの伸びの基調が続いて久方のマイナスとなるが、1つには伸びるタブレットをカウントしていないところがあると思う。震災の影響に加えて今後に注目である。

◇Weak PC market in Q1 surprises Gartner (4月14日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Connecticut)発速報。2011年第一四半期の世界PC出荷台数総計が84.3M台、前年同期比1.1%減、同社の前回予測の3%増を下回る旨。
同社は、desk-based PCs, モバイルPCsをパソコンとし、notebooksおよびmini-notebooksは含めるが、Apple iPadのようなメディアtabletsは入れていない旨。

◇パソコン世界出荷、7四半期ぶり減少、震災「今後影響も」 (4月14日付け 日経 電子版)
→IDCが13日、2011年1〜3月期のパソコン世界出荷台数が、前年同期比3.2%減の8055万7000台になったと発表、ガソリン価格の高騰や多機能携帯端末「タブレット」の人気拡大がパソコン販売に影を落としており、金融危機の影響で市場が縮小した2009年4〜6月期以来、7四半期ぶりに減少に転じた旨。

今年、そして今後の半導体市場はどう展開するか。新興経済圏そして新携帯端末の伸びを期待して以下の見方が優勢な雰囲気にはあるが、グローバルSupply Chainのきめ細かいアップデートから裏付けていく必要があると思う。

◇Chip Industry to Hit Record Revenue This Year, Says SIA (4月14日付け PC World)
→smartphonesおよびtablet PCsなどモバイル機器の需要が高まって、半導体業界は総売上げ記録を更新していく、とする米SIAの見方:
 2010年  2011年  2012年
 $298B   $319B   $330B
 24%増
"Windows 7打ち上げで駆り立てられる新しいPCs販売およびtablet PCsおよびsmartphonesへの消費者購買欲求が、半導体需要の加速を助長している"(SEMI台湾オフィスのseniorリサーチmanager、Clark Tseng氏)旨。

◇Chip market on 9% CAGR to 2013, says analyst(4月15日付け EE Times)
→RNCOS E-Services Pvt. Ltd.(Noida, India)発。グローバル半導体業界は、中国、インド、南米および中東でのコンピュータおよび携帯電話の初期需要が大きく効いて、2011年から2013年まで約9%のCAGRで伸びると見る旨。


≪市場実態PickUp≫

本年の半導体capital spendingについて、上方修正する見方が出ている。慎重論があるなかの上に述べた期待感ということと思う。

【2011年のcapital spending】

◇Firm ups capex forecast (4月11日付け EE Times)
→Barclays Capitalのアナリスト、C.J. Muse氏。2011年のcapital spending予測について、当初の+5-10%増から、今朝ほど正式に+15%増に上方修正する旨。牽引する要因:
1)TSMC, GlobalFoundries, SamsungおよびUMCの間の鬩ぎ合いからくるファウンドリーspendingの力強さ …2011年は約43%増
2)NAND capacityの〜200K wspmの拡大 …初めてDRAMを上回るspending
3)Intelが大方を引っ張るロジックspendingの力強さ

TIのNational Semi買収のほとぼりが冷めやらぬうちに、NXP Semiconductor NVを巡る買収話が取り沙汰されている。アナログ技術を中軸とする業界構図の今後如何ということと思う。

【こんどはNXP】

◇NXP: Pump, dump or dancing (4月11日付け EE Times)
→金曜8日の朝の噂の件、すなわちNXP Semiconductor NVが、Intel, Qualcomm, Broadcommのうち1社以上との買収話の対象とされることについて、その日の午後までにNXPのCEO、Rick Clemmer氏がそのような話は行われていないと打ち消した旨。それでは何が起こっているのか?

◇Report: NXP not in talks, would consider offer (4月11日付け EE Times)
→Reuters発。NXP Semiconductor NVのCEO、Rick Clemmer氏が、買収話の噂を否定、 Texas instruments社のNational Semiconductor社買収提示にあるような高いpremiumオファーを考えなければならない、との弁の旨。

NANDフラッシュに向けたIntelとMicronの合弁の足取りについていろいろ観測を呼んでいる状況があるが、以下のように最先端プロセス技術を投入して市場リードを広げていくという発表になっている現時点である。

【IntelとMicronのNANDフラッシュ】

◇Rumor mill: Intel, Micron to talk NAND (4月12日付け EE Times)
→Intel社とMicron Technology社が、木曜にNANDフラッシュについて発表を行う予定の旨。両社のNAND合弁、IM Flash Technologies(IMFT)のSingapore fabについてか、との見方。Micronはそこの300-mm fabで限定NANDウェーハ生産を始めているが、Intelは投資を行っていない旨。

◇Update: Intel, Micron take NAND process lead(4月14日付け EE Times)
→Intel社とMicron Technology社が、NANDフラッシュメモリ製造用の新しい20-nmプロセス技術を投入、市場での先行を図る旨。IntelとMicronのNANDフラッシュ合弁、IM Flash Technologies LLC(IMFT)による製造、その新しい20-nmプロセスから8-gigabyte(GB) multi-level cell(MLC) NANDフラッシュデバイスを生産する旨。


≪グローバル雑学王−145≫

本当に奥の深い葡萄酒、赤玉ポートワインがまず思い浮かんでくる小生にはなおさらではあるが、

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
 …1957年 1月17日 第 1刷 発行
  2010年11月19日 第30刷 発行

より、さらに奥義を極めていきたい。1950年時点の旅する記述に基づいて、シャムパン(Champagne)およびブランデー(Brandy) or コニャック(Cognac)という葡萄酒系列のお酒のそれぞれ製造方法、味わい方に触れてみる。


5 ランスの一日(シャムパン)

□ブラン・ド・ルージュ
・シャムパン酒
 →軽くて魚料理などに適するブラン・ド・ブラン(白の白)は、白葡萄のシャルドネーのみで製造
 →肉類に適するブラン・ド・ルージュ(赤の白)は、黒葡萄のピノー・ノアルを原料

□赤葡萄から白葡萄酒
・葡萄の赤い色素は、ある特別の種類を除いては、全部果皮にあって中身はみな白い
・赤葡萄からは、赤白、あるいは中間色、すなわちばら色など自由自在な酒が得られる

□ローマ人の酒庫
・このシャムパン会社の場所が、古のローマ軍の造酒工場の遺跡

□坊さんの発明
・シャムパニュ地方でのシャムパン酒の造り方は、今から250年ぐらい前、ルイ十四世華やかなりし時代、ドム・ペリニョンというベネディクト派の僧が発明

□シャムパンの作法
・食卓で出す場合、ブッカキ氷を満たした小桶に、約30分ぐらい前から浸けておく
・古い上物は決して華氏の40度以下に冷やすべきではない

6 生命の水(コニャック)

★ブランデーの町、コニャック …中部フランスの高原

□サボの国
・大西洋岸、古くからコニャックの積み出し港として名高いラ・ロシェル
 →珍しい彫物をした木靴(サボ)を履いた人
・コニャックの町は、シャラント河に臨んだ岡の上
 →ブランデー業者が20軒
  …大手3つ →ヘネシー、マルテル、クルボアジー

□黒い屋根瓦
・マルテルの工場の黒い瓦
 →デマチウムという一種のカビ、特有の黒ずんだ色

□駄酒から名酒
・約300年ほど前にオランダの薬剤師が酒を買いにきて、これを蒸留することを教授
 →そのままでは品質の良くない葡萄酒が、かえって極上のブランデーに
・葡萄酒をブランデーにすれば、容積が10分の1近くに

□軍需的適格性
・ナポレオンも大のお得意
 →今でもコニャックの会社では100年近い樽の貯蔵品は一般にナポレオンと呼ぶ
・普通は2回の蒸留、1回目は酒中のアルコールを全部留出、2回目は中留のいわゆるハートの部分のみを取る
 →68から70%内外のアルコール含量
・樫の大樽 → 大桶 → 樫の小樽 → 貯蔵庫

□難物の樽
・材質の吟味は特にやかましい
 →コニャック地方では中仏のリムザン地方の樫材を珍重

□V.S.O.P.
・コニャックの壜にはられたレッテルにある星の数
 →多いほど古い
・それ以上 →V.S.O.
        V.S.O.P.(Very superior old pale)
・最後のものは30年ないし70年もの …今では保証の限りではない
・貯蔵で酒が次第に美味くなる理由 →物理学の面白い研究題目
・コニャックの町の品 →熟成にたいへん長年月
             →出来上がった酒は濃醇

□熟成は神わざ
・葡萄酒の貯蔵はもっぱら壜詰め後
 ⇔ブランデーの熟成は樽中に限る
 →葡萄酒の壜のレッテルは古いほど尊ばれるが、ブランデーの場合は真新しくても少しも差し支えない
・貯蔵を経た酒は、壜詰めの前にいちいち厳密な利き酒の上でブレンド
 →このブレンディングの技術こそブランデー造りの生命

□粕取りブランデー
・フランスでは、
 ブランデー  =「生命の水」(オー・ド・ヴィー:Eau-de-vie)
 粕ブランデー =オー・ド・ヴィー・ド・マール(Eau-de-vie-de-marc)
          あるいはマール(粕)
   →葡萄酒の搾り粕に蒸気を吹き込んで取ったもの

□アルマナック
・ブランデーの名産地、コニャックのほかに、ピレネー山脈に近いところにアルマナック(Armagnac)
・ブランデーの鑑定
 →円形の口のすぼんだグラスの底に少量、手中に温めながら、おもむろに香味

□さかなはチーズ
・デザートコースでの辛党の楽しみ
 →良いブランデーの一杯とうまいチーズの一片
・チーズは、日本の味噌などと同じくカビやバクテリアで乳のカゼインを醗酵
 →品質も千差万別、料理通の特別な楽しみ
・フランスの代表的なチーズ →ロクフォールとカマンベール

★さらに南下、待望の葡萄酒の聖地、ボルドーへ

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