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余波、風評乗り越えて、世界のサプライチェーン確保最優先

大地震、津波、原発事故そして続く余震と、約1ヶ月が経過するが、正しいデータに基づく理解、納得がなによりまず、と日増しの思いである。韓国、台湾はじめ近隣諸国の反応を見ると、胸襟を開いて率直に意思疎通を図ることの重みをますます感じざるを得ない。萎縮・マイナス思考は際限がなく、お互いの今後に禁物であり、今は世界の産業界のサプライチェーン確保が最優先であるとともに、半導体・デバイスの絶え間ない技術の進展は止めてはならないという強い感じ方である。

≪2月半導体販売高および震災余波≫

米国SIAからの定例月次世界半導体販売高の発表にも、震災インパクトが大きく表われているが、具体的なデータとしては来月以降ということになる。

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○SIA発表: 2月のグローバル半導体販売高は$25.2 Billion …4月4日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2011年2月の世界半導体販売高が$25.2 billionで、前月の$25.5 billionから1.1%と僅かに減少、業界の歴史的な季節的傾向に沿っている、と発表した。昨年の2010年2月における$22.2 billionからは13.6%増加している。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「2010年2月からはかなりの増加となっている本日リリースの2月販売高の数字は、日本での3月11日の地震および津波の前のものである。日本の方々に対してこの悲劇から回復するよう、最も深い同情の念を差し伸べるものである。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「我々のメンバー会社の多くが、最も被害を受けた地域に対する人道的な物資供給および資金援助に即座に反応し、復旧活動への価値のある援助を引き続き行っている。supply chainに対するインパクトの可能性への目配りをしっかりと続けている。」

※2月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/default-file/GSR%20Chart_February%202011.pdf
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この2月の販売高に関する追加データとして、次の通りである。

◇February 'actual' chip sales show 7.9% drop (4月4日付け EE Times)
→2月の実際のグローバル半導体市場は$23.50B、前月($25.51B)比7.9%減、前年同月比11.9%増。この前月比の落ちは、2007年の6.5%減を上回ってここ10年で最も急峻、かけ離れて高い水準を示した1月を補う部分がある旨。

◇February 'actual' chip sales show 6.8% drop (4月5日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)からの数字。2月の実際のグローバル半導体市場が$23.65B、前月($25.37B)比6.8%減、前年同月比12.6%増。

震災インパクトについて、一層具体的なデータ、兆候あるいは決断として、それぞれの切り口で表われている。

<続く厳しいインパクト>

[成長率押し下げ]
◇日本の4〜6月成長率、震災で最大1.4ポイント低下−OECD見通し、成長率予測は見送り (4月5日付け 日経 電子版)
→経済協力開発機構(OECD)が5日、日米欧の短期的な経済見通しを発表、東日本大震災の影響を現時点で織り込むのは不可能として、日本の成長率の予測は見送った旨。ただ被災地の生産の減少や計画停電などで、実質成長率は1〜3月期に0.2〜0.6ポイント、4〜6月期は0.5〜1.4ポイント押し下げられる可能性があるとの見通しを示した旨。

[PC生産]
◇Analyst: Intel's Q2 target may fall short (4月6日付け EE Times)
→Canaccord Genuity社の半導体アナリスト、Bobby Burleson氏。第二四半期のPC生産が予想を下回る軌道の様相、大半は日本での大震災による供給の混乱にある旨。

[工場再開断念]
◇Freescale Sendai fab is latest quake victim (4月6日付け EE Times)
→Freescale Semiconductor社が水曜6日、今回の震災で深刻な被害を受けた仙台の6インチfab再開断念を決定、「仙台拠点は震央に最も近くに位置し、再開はうまくいきそうにないという結論に達した」(Freescaleのchairman and CEO、Rich Beyer氏)旨。

[自動車部品]
◇自動車生産、回復手探り、部品不足は世界に影響 (4月6日付け 日経 電子版)
→東日本大震災による部品調達の停滞が世界の自動車メーカーの足元を揺るがしている旨。1台当たり2万〜3万点にのぼる部品や素材を含めたサプライチェーン調達網は幾重にも寸断されており、自動車の生産が本格再開されるのはいつか、手探りの状態が続く旨。

[余震の影響]
◇Several Japan fabs halted by aftershock (4月7日付け EE Times)
→7日夜の余震で操業停止を余儀なくされた日本のエレクトロニクスメーカー:
 富士通
 ルネサスエレクトロニクス
 ソニー
 エルピーダメモリ
 東芝
 ニコン
 東京エレクトロン

半導体市場、capital spendingについても、インパクトを受けた改訂予測が次のように出始めている。

<予測見直し>

◇Quake makes analyst raise IC market forecast (4月5日付け EE Times)
→IHS-iSuppli発。今回の震災に関連するIC供給の混乱が、2011年のグローバル半導体市場の大きさを増すことになる、と見る旨。前回予測$320.1Bから、今回$325.2Bに上方修正の旨。しかしながら、半導体買い手にはbad news、average selling prices(ASPs)が上がって今までより数少ない半導体に多目の支払いをすることになる旨。

◇Japan quake won't slow capex, says analyst (4月7日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)による半導体業界capital spendingの改訂予測。

2010年2011年2012年
今回$51.8B$60.4B$63.3B
前回(1月時点)$59B


≪市場実態PickUp≫

TIとナショセミ、この米国老舗の両社の買収劇には、時間軸、アナログ分野などいくつかの切り口で驚きの感慨、思いが巡るところがある。

【TIのNational Semi買収】

◇TI to buy National Semi for $6.5 billion (4月4日付け EE Times)
→Texas Instruments社が月曜4日、National Semiconductor社を$6.5B in cashで買収する最終合併合意調印、「この買収は強さと伸びに関する」(TIのchairman, president and CEO、Rich Templeton氏)旨。

◇Analysis: TI-National deal a smart use of cash (4月4日付け EE Times)
→Texas Instrumentsが市場を揺り動かした買収劇は、遡って2000年6月のこと、アナログICメーカー、米Burr-Brown社を$7.6Bで買収して以来。10年以上おいての今回のライバル、National Semiconductorの$6.5B買収は、市場影響力、製品ラインを高めていく取引の旨。

◇TI, National pairing: A bright idea for LED lighting (4月5日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Texas InstrumentsによるNational Semiconductor買収は、LED照明の世界ではどんな意味をもつか?IMS Researchのデータでは、$1B LED IC driver市場で、シェア第1位 TI 19%、第2位 National 7%の旨。

この買収劇に対してはやはり大きな反響を感じるが、欧州のNXP、そしてIntersilにと、古くからの蓄積のある半導体メーカーに次の買収ターゲットの目が向けられている。

【買収劇の波及】

◇NXP next as TI resets market values? (4月6日付け EE Times)
→Texas InstrumentsのNational Semiconductor社$6.5B買収は、取引株価から80% premiumの高値、このことは他の誰かがNational Semiconductorに気のある素振りを見せていたということ、この動きはアナログ半導体の価値の市場の受け止めを改める様相に思われる旨。

◇Report: Intersil is takeover target (4月8日付け EE Times)
→8日付け Bloomberg発、"Intersil in Play After Texas-National Semi Takeover: Real M&A"という記事。アナログ分野で次の買収ターゲットはどこか?" Intersil社の株価が、TI-National取引の後上がってきている旨。

◇Report: NXP in takeover talks with Intel, Broadcom, Qualcomm (4月8日付け EE Times)
→オランダのDe Telegraaf紙を引用したonlineレポート。2006年にprivate equity buy outによりKoninklijke Philips Electronics NVから分離された半導体メーカー、NXP Semiconductors BV(Eindhoven, The Netherlands)が、Intel, QualcommおよびBroadcomと事業引き継ぎの話がある旨。

知財関係の動きが活発化の様相を呈しており、上記のアナログ事業にも通じるところを感じるが、長く豊富な経験に基づく特許資産の買収が事業展開に向けて行われている。

【特許資産買収】

◇Google bids $900M for Nortel's patents (4月4日付け EE Times)
→Google社(Mountain View, Calif.)が、破産したテレコム装置メーカー、Nortel Networks社の特許および応用6000件についての競売で出発点となるよう、$900Mの"stalking horse"(当て馬)入札を行った旨。

◇OmniVision buys Kodak patents (4月4日付け EE Times)
→CMOSイメージセンサ・サプライヤ、OmniVision Technologies社が、Eastman Kodak Co.からイメージセンサ関連特許および応用約850件を$65.0Mのcash取引で購入、該取引は2011年3月31日に完了の旨。

TSMCの米国西海岸での恒例イベントが行われ、日本の地震インパクトがここでもまず取り上げられている。直後に発表された同社の2011年1-3月売上げは、前年同期比14.3%増の約$3.64Bとなっているが、今後の世界半導体市場の展開そのものを映し出す指標の一つとして引き続き注目である。

【TSMC 2011 Technology Symposium(SAN JOSE, Calif.)】

◇Seven takeaways from Morris Chang's keynote (4月5日付け EE Times)
→TSMCのchairman and chief executive、Morris Chang氏の基調講演からポイント7項目:
1. Japan impact   →影響は1四半期止まり
2. Semi forecast   →2011年のメモリを除くIC市場、7%→4%増
3. Drivers      →3つ目のキラーとしてsmart phones & tablets
4. 28-nm update   →HKMG、生産準備完
5. 3-D chips     →TSVによる"systems-level scaling"
6. 450-mm      →試作2013-2014、生産2015-2016、"20-nm"対応
7. The competition  →TSMCはプロセス技術リーダー

◇Analysis: TSMC reveals less but says more (4月7日付け EE Times)
→今回は振り返って正しく道筋を説明する場に。今年はセッション数は少なめ、同社のロードマップについての詳細を提示の旨。


≪グローバル雑学王−144≫

食とワインの通で知られるフランスについて、1950年当時のお酒を巡る雰囲気を、

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
 …1957年 1月17日 第 1刷 発行
 2010年11月19日 第30刷 発行

よりしばらく辿っていく。ワインの飲み方、料理による場合分け、"然るべき30本"と見ていくと、奥の深さと修行のいかにも足りなさを痛切に知らされてくる。


4 世界の酒蔵(フランス)

★ローザンヌから北行、フランスの田舎の電車に乗りかえ
 →ディジョンという、フランス料理の本場で、かつブルガンディー酒の中心地の町
 →パリのリヨン駅。ここからコペンハーゲンに飛ぶまでの約1ヶ月半、酒の名所や研究所巡り歩き

□葡萄酒の足りない国フランス
・フランスは、世界の酒庫
・少なくとも量的には輸出国ではなしに輸入国、葡萄酒の足りない国

□ふえゆくビール
・日本とは違って、ビールの会社の数はすこぶる多く約3500くらい
・そのほか、ブランデーやアペリチーフやリキュールの類もおそらく世界一の生産量

□パスツールの研究した酒
・少し変わった葡萄酒に、ジュラ地方のアルボア(Arbois)の酒
 →この場所はパスツールの生地
 →腐敗を防ぐための研究を始めたのが、後年彼が微生物学の開祖といわれるようになった機縁

□ヴァン・ロゼー
・桃色酒 …ヴァン・ロゼー(ばら色酒:Vin rose)
 →果皮をいっしょに仕込み、十分色の溶け出さないうちに搾ってしまうのが本格的な作り方
 →白葡萄酒と同じく冷やして出すのがほんとう
・フランスの葡萄酒宣伝委員会発行の書物、葡萄酒の飲み方
 →白は甘味に従って摂氏5度から10度くらい
  赤は15度を標準

□味わうべし、飲むべからず
・続けて、上記の書による葡萄酒の飲み方
 第一: 酒の色や照りの鑑賞、次は香り
     …いきなり飲み込むなどということは、もってのほか
     →少量ずつ口に、まんべんなく舌や口中の全面に、最後に喉越しの風味、鼻の奥から戻ってくる香気もまた大切
 第二: 食べ物と酒とのハーモニーの問題
     …台所と酒庫は手をたずさえてゆくべき、お互いに助け合ってゆくべき
     →サラダにかける酢が折角の酒の風味の鑑賞を台無しに
     →卵の類も感心しない
 第三: 食前のアペリチーフはむしろ辞退するのが通人の心得

□コースと酒
・場合分け
 スープ →
 オルドーブル、オイスター、魚 →
 魚がしつこい料理の仕方や、チーズソースやマヨネーズなどをかけてある場合 →
 獣肉類や山野の鳥獣肉の場合 →
 豚や羊 →

□菓子に合う酒
・山野の狩で取る肉類にはいいつたえ
 →そこでできる銘醸を使ってはならない
・チーズは菓子の前に出すのがほんとう
・菓子とデザートのコース →シャムパンか白酒の大物

□ブィヤベースには
・マルセーユ名物の魚すき焼のブィヤベース →
 カタツムリや臓物料理 →
 ワインソースをかけたもの →それに使ったと同じ葡萄酒が原則

○中産階級人の酒庫として然るべき30本の貯蔵
 ボルドー(Bordeaux)  
  赤酒 メドック(Medoc)
      グラーヴ(Graves)
      サンテミリオン(ST. Emilion)
      ポメロール(Pomerol)
  白酒 ソーテルン(Sauterne)
      グラーヴ(辛口)(Graves)
      スロン
      プルミエル・コーツ

 ブルゴーニュ(Bourgogne) 
  赤酒 コーツ・ド・ボーヌ(Cote de Beaune)
      コーツ・ド・ヌイ(Cotes de Nuits)
      サントレー
      ボージョレー(Beaujolais)
      メルキュレー
  白酒 コーツ・ド・ムルソー(Cote de MEURSAULT)
      シャブリ(Chablis)
      プイイ・フュイセ(Pouilly - Fuisse)

 ロアール(Loire)  
  赤酒 ブルグイユ
      シノン(Chinon)
      カベルネー(ピンク)
  白酒 ヴヴレー(Vouvray)
      コトー・ジュラヨン

 アルザス(Alsace)  
  白酒 リースリング
      ゲウュルツ・トラミネ

 ジュラ(Jura)   
  赤酒 アルボア(Arbois)
  白酒 シャトー・シャロン(Chateau Chalon)

 ローヌ(Rhone)   
  赤酒 エルミタージュ(Hermitage) 
      またはシャトーヌフ・デュ・パープ(Chateauneuf du Pape)
  白酒 タヴェル(ピンク)
      またはシャトー・グリエ

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