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修復促進、前倒しに向けて信頼あるデータの必要性

半導体・デバイス業界でも、大震災からの復興に加えて、グローバル市場へのインパクト回避・最小化を目指す各方面の動きが日ごと活発になってきている。影響の世界的規模・広がりを改めて知るように、世界各地から我が国発供給の早期回復を求めるメッセージが届いているという受け取りである。
原発・風評の壁を取り除く喫緊の課題もあるが、早期回復に向けて万人の信用、信頼が得られるデータの取得・開示にかかる状況を感じている。

≪インパクトおよび回復への動き≫

シェアの高い、あるいは独占的な供給状況となっている部品についての影響とともに、放射線の部品に対する影響を懸念する向きも表われている。

<引き続く影響>

◇Missing sensor hits global automakers (3月28日付け EE Times)
→IHS Automotive発。日本およびグローバル自動車生産にairflow sensor不足が打撃になっており、Hitachi Automotive plant(Sawa[佐和], Ibaraki)の地震および津波による被害起因の供給難の旨。

◇Shortage of slim-type ODD pick-up heads may surface in June (3月30日付け DIGITIMES)
→notebookおよびコンポーネントメーカー発。台湾のslim-type optical disc drive(ODD)メーカーは、5月まではpick-up heads(PUHs)の使える在庫があるが、今回の日本での震災のインパクトから6月から供給不足になる可能性の旨。

◇Do parts from Japan pose radiation risk? (4月1日付け EE Times)
→Electronic Components Industry Association(ECIA)、金曜1日発。米国Customs and Border Protection(CBP)当局が日本からくる貨物の放射線レベルを引き続き測定、有害な水準にあると思われる放射線警報は得ていない旨。

工場の再開、生産レベル回復に向けたスケジュールが日々具体化してきているとともに、代替補充生産の動きが見られている。

<回復、補充の動き>

◇Fujitsu restarts two front-end chip fabs (3月29日付け EE Times)
→今回の地震と津波の影響で止まっていた福島県会津若松市の富士通グループ2つの前工程半導体fabsが、月曜28日、部分的に稼働再開の旨。

◇Reports: Renesas mulls foundry for MCUs (3月29日付け EE Times)
→Bloomberg発。Renesas Electronics社が、車載用MCUs産をGlobalfoundries社に属するSingaporeのウェーハfabに委託、携帯電話IC生産のあるものをTSMCに移す協議を行っている旨。

◇TI expects chips from Miho fab in September (3月30日付け EE Times)
→Texas Instruments社が、美浦のウェーハfabフル生産復帰はスケジュール通り7月半ばまで、すなわち半導体出荷は9月、また同社の会津fabは4月半ばまでにもフル生産の運びの旨。

◇BT resin in full production in May, says maker (4月1日付け EE Times)
→tabletコンピュータで用いられるICs実装の重要な材料をほぼ独占的に作っていると思われる三菱ガス化学が、半導体パッケージ基板用bismaleimide triazine(BT) resinについて5月始めから地震前の生産レベルが得られる見込みの旨。

大震災が世界経済に及ぼすインパクトで今年の指標数字はどうなるか、ということでいろいろな切り口の予測が表われ始めている。

<今後への予測>

◇Five predictions following Japan quake (3月29日付け EE Times)
 →IC Insights社のpresident、Bill McClean氏。今回の日本における地震の状況を分析、世界GDP、electronicシステム販売高および世界半導体市場に対する影響について以下の予測5点:
1. GDP to fall   
 →2011年の日本のGDPは1-3%低下
2. Electronic systems to take hit
 →2011年electronicシステム販売高が、$1,348Bから$1,342Bへ
3. No change in IC forecast
 →2011年IC予測が、$346.8Bから$345.4Bへ(これでも10%増)
4. Supply chain questions
5. Net impact?
 →世界ベースではelectronicシステムおよび半導体の需要減は僅か

◇Taiwan lowers 2011 economic growth due to Japan earthquake (3月30日付け DIGITIMES)
→台湾のCouncil for Economic Planning and Development(CEPD)が29日、日本の震災の台湾経済に対するインパクト評価をリリース、2011年の台湾の経済成長率が、当初見通しの4.92%から0.11-0.2%低下して4.72-4.81%になると見る旨。


≪市場実態PickUp≫

大震災インパクトから目が離せない日々が続く中、世界経済全体は堅調な伸びキープをと望むところであるが、デバイス市場を牽引する目玉となっているスマートフォンについて、今年はパソコンを上回る出荷数量の予測が出されている。

【スマートフォン出荷】

◇スマートフォン世界出荷、2011年は49%増の4億5250万台 (3月30日付け 日経 電子版)
→米調査会社のIDCが29日、2011年のスマートフォン(高機能携帯電話)世界出荷台数が前年比49%増の4億5250万台になるとの予測を発表、スマートフォンやタブレットがIT機器の市場を牽引する構図が鮮明になっている旨。
別の調査会社、米ガートナーは、2011年世界パソコン出荷台数が11%増、3億8780万台の見通し、スマートフォンの出荷台数は2010年10〜12月期に四半期ベースで初めてパソコンを抜いたが、2011年は通年でもパソコンを上回るのがほぼ確実の旨。

昨年、2010年の急激な半導体市場盛り返しを映し出して、グローバル半導体材料市場も2010年は市場最高を更新する規模を記録している。本年はどうなるか、大震災インパクトを軸に注目である。

【2010年半導体材料市場】

◇SEMI Reports 2010 Global Semiconductor Materials Sales of $43.55 Billion (3月28日付け SEMI)
→半導体業界の出荷数量最高に伴なって、2010年のグローバル半導体材料市場が2009年比25%増、今までの最高である2007年の$42.67Bを上回る旨。
2009-2010年 世界地域別半導体材料市場(単位:USB$Dollar)、次の通り:

地域
2009年
2010年
伸び率(%)
Japan
7.66
9.20
20%
Taiwan
6.87
9.11
33%
Rest of World
6.05
7.32
21%
South Korea
4.73
6.20
31%
North America
3.74
4.47
19%
China
3.27
4.15
27%
Europe
2.51
3.11
24%
≪総計≫
34.84
43.55
25%

 [Source: SEMI March 2011]

大震災の影響を受けている国内生産の復旧に向けて、生産体制全体の効率化を急ぐことから、ルネサスエレクトロニクスが米国のウェーハ製造拠点をドイツ企業に売却している。KビットからMビットへのメモリ容量世代に遡って、半導体業界の推移が頭を駆け巡るところがある。

【Renesasの米国工場売却】

◇Renesas sells U.S. fab to Telefunken (3月30日付け EE Times)
→Renesas Electronics社が、Roseville, Calif.の半導体ウェーハ製造拠点をドイツのTelefunken Semiconductors International LLCに約$53Mで売却、Telefunkenは、自らのアナログ/mixed-signal, high-voltage製品および戦略ファウンドリー・パートナー向け製品の製造に該200-mm fabを活用する意向の旨。

米国で長きにわたり議論を呼ぶH1-B就労ビザ問題であるが、引き続く最近の状況として次の通りである。

【H-1B visa】

◇SIA and IEEE-USA Team Up to Advocate for High-Skilled Immigration Reform (3月30日付け SIA Press Release)
→Institute of Electrical and Electronics Engineers - USA(IEEE-USA)とSemiconductor Industry Association(SIA)が、H1-B一時労働ビザなど法的immigration改革についての最近の重点化を評価の旨。
現在米国の大学の電気・電子工学を修了する修士の50%およびPh.D.の70%が外国人である旨。

◇Congress hears two views on H-1B visas (3月31日付け EE Times)
→米国議会で木曜31日、公聴会で議論を呼ぶH-1B visaプログラムに対する2つの対処案が示された旨。

これも長きにわたり訴えられた側が、今度は訴える側に。今後に注目である。

【立場逆転】

◇マイクロソフト「グーグルが競争阻害」、欧州委に申し立て (4月1日付け 日経 電子版)
→米マイクロソフト(MS)が31日、インターネット検索で高いシェアをもつ米グーグルが支配的地位を乱用しているとして、欧州連合(EU)の欧州委員会に調査を申し立てたことを明らかにした旨。両社は特許を巡る訴訟を抱えているが、独禁法を巡る全面対決は異例、MSはパソコン用OSで欧米独禁当局と対立した経験があり、逆の立場での戦いが注目されそうな旨。


≪グローバル雑学王−143≫

1950年後半から1951年前半にかけての著者のお酒を巡る旅行記は、イタリアからスイスの行程で始まったが、2回目の今回は、スイスに足場を置いて広くいろいろな考察を加えている。  

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
 …1957年 1月17日 第 1刷 発行
  2010年11月19日 第30刷 発行

より、特に日本酒考は興味深く、焼酎考の下りは現在の焼酎の高い人気、豊富なラインアップを予見する雰囲気がある。


3 かえりみて(スイス)

→スイス国民は林檎酒と葡萄酒とビールとを、それぞれ同量ずつ飲む計算だが、多少の地方的差

□キルシ(Kirsch)
・キルシまたはキルシワッサー
 …桜実を発酵させて蒸留した強い焼酎のような酒
 →ふつうは安価、だが古いものなどになるとすばらしく高い。
・オランダの名産、チェリー・ブランデー
 →桜実をアルコールで浸出、色や香をつけ砂糖を加えたリキュールの一種

□麦の国は麦の酒
・世界の酒を見渡すと、大物はまず葡萄酒とビール
 →そのほか、葡萄酒を蒸留したブランデー(コニャック)、ビールを蒸留したウィスキー
・麦の国は麦の酒、日本や中国のような米の国は米の酒
 →しかし、一国の酒の種類も時代とともに移り変わる

□酒と文化
・一番飲まない国
 →回教圏を含むインドネシア、マレー、ビルマ、インド、パキスタン、ペルシャ、アラビアなどの地方
・一番多く飲む国
 →もちろんフランス。次いで、ポルトガル、スペイン、イタリアと、葡萄酒を飲む南欧の国々
 →アメリカ 23位、ソ連 26位、日本 29位
・酒は文化の結果 
 →しかも悪い方の結果であるなぞと説く方も

□酔っ払いの国
・我が国は、酒を飲むことを何となくスピリチュアルなものとの考え方
・アイヌ語の酒 →カムイワッカ(神の水)
 フランス語のブランデー →生命の水(オー・ド・ヴィー)
 ⇒考え方の相違
・「酔っ払い」が日本に特に多い現象
 ⇔葡萄酒やビールは水と同様 →日本人の場合のような愉快感も予想しなければ、まして罪悪感もない

□高価な水
・フランスやスペインやイタリアなど
 →レストランやホテルで食事をする時は水の方がよほど高くつく
・フランスでは、ウェーターは「お飲み物は」と聞かずに「赤」か「白」か?

□家常酒飯事
・禅家に家常茶飯事という言葉
 →ヨーロッパの連中に言わせれば家常酒飯事
  …飲酒は食事と同様の当たり前のこと

□日本酒はアペリチーフ
・西洋では食べると同時に飲むのが普通
・西洋人は珍しい酒にあうと、まずこの酒は食事のどの部分で使うことができるか考えるらしい
 →著者持参の灘の上物は、アペリチーフ(食前酒)との評価

□統制好きの国民性
・日本酒について、全国どこの酒でも個性を忘れてすべて一色の風味、辛口甘口といってもその差は紙一重
 →日本は統制好みな国民性

□法律で決めた酔いかげん
・日本酒は税法で決められて、16と15%の高いアルコール含量
・日本酒は、腐りやすくなることで、アルコールのパーセンテージを下げられない

□日本酒の封建性
・日本酒の強アルコール禍
 →婦人に酌をさせて男子のみがよい気持ちになるというような日本の家庭における封建性
 →打破すべき悪習
・短い日本酒の寿命、1年こっきり
・焼酎 
 →明治初年までは全部粕取り焼酎、明治の中ごろ西洋から新式の蒸留機が輸入
 →ごく最近、昔懐かしい粕取り香味が見直され、我が国の焼酎にも、中国の茅台酒(マオタイチュウ)やイギリスのスコッチ、フランスのコニャックに見られるような黄金時代の到来も、単なる夢ではない

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