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$300 Billion規模から今後へ、求められる一層の融合と連携

米国SIAからの世界半導体販売高の月次定例発表、今回は2010年を締めるタイミングであり、2009年から31.8%増の$298.32 Billionと、史上最高の販売高となっている。世界不況の試練を乗り越えて、新興経済圏が拡大を引っ張るとともに、絶え間のない新技術、新分野の開拓がこの結果を導いている。
販売高の大台に達した今、これからに向けては、先進圏と新興圏、設計と製造、など要となる切り口での一層の融合と連携が求められている。

≪2010年の世界半導体販売高≫

米SIAの発表内容は次の通りである。世界半導体市場の半分以上をAsia Pacific地域が占めている今、新技術、特に設計と製造で米国国家の強みを発揮して輸出産業トップの座を維持していかなければ、と米国政府へ強くアピールするメッセージが見られる。米国とともに半導体業界を先導してきた我が国に通じるし、通じなければならないトーンと感じている。

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○2010年グローバル半導体販売高、史上最高$298.3 Billionを記録−約32%増の年間グローバル半導体販売高 …1月31日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国の指導力および米国イノベーションの鼓動を代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2010年の世界半導体販売高が$298.3 billionの最高記録に達し、2009年の$226.3 billionから31.8%増加した、と発表した。2010年12月の世界半導体販売高は$25.2 billionとなり、歴史的な季節性に沿う形で前月比3.0%の控えめな減少であり、前年、2009年12月に対しては12.2%上回っている。第四四半期、10-12月の販売高は$75.5 billionで、前四半期比4.0%の減少、前年同期比12.2%の増加である。

「半導体販売高は現状の経済状勢では明るい材料であり、史上最高のbillions値となっている。前年比の伸びは、一つには我々が現代生活で楽しむようになっている電子機器の一層広範囲に半導体技術がますます使われていることがある。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「我々のメンバー会社は、半導体イノベーションの増大する需要に適合するよう、引き続きoperationsを立ち上げている。」

2010年は、主要半導体製品カテゴリーのすべてが前年比二桁の伸びを示している。半導体はここ5年にわたり米国の輸出のトップできており、Asia Pacific地域が世界半導体市場全体の54%を占めることを銘記することが重要である。Americas半導体市場は、世界市場の18%だけに留まっている。

「半導体製造&設計facilitiesは、わが国家の経済成長に対して戦略的なものである。しかしながら、我が業界は熾烈なグローバル競争に直面しており、政策立案者およびregulatorsは、我が業界が引き続き米国で繁栄し、米国最大の輸出産業であるように、税制、規制および通商政策のバランスを確固なものにしなければならない。」とToohey氏は締め括った。

本年については、SIAは業界全体として控えめな一桁の伸長を予想している。経済低迷のインパクトが引き続きあるとしてのこの伸びの見通しとなっている。

※12月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_Stats_2010.pdf
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2009年から2010年にかけての地域別販売高は、次のようになる。米国そして中国の経済刺激策が大きく牽引するとともに、アジア地域での規模の拡大が全体を大きく引き上げる様相の結果と受け止めている。

 市場地域    2009年    2010年    change
 Americas    38.52     53.68     39.3
 Europe     29.87     38.05     27.4
 Japan      38.30     46.56     21.6
 Asia Pacific  119.63    160.03     33.8
           $226.31B  $298.32B   31.8 %

$300 Billion規模の半導体がどう使われたか、設計して消費したOEMsトップ10が次の通りとなっている。

◇HP, Apple, Samsung largest chip consumers in 2010-Semiconductor device vendors must pay attention not just to the design and purchasing TAM by company, but also to that by region, Garter says. (1月31日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner社発。2010年のOEMsトップ10で半導体消費が$104.3B(設計total available market[TAM]ベース)となり、2010年世界半導体売上げの34.7%に相当する旨。2009年より約$26.3B増えて、前年比33.7%増、2009年のトップ10社中8社が2010年トップ10に残った旨。
・2010年半導体設計TAMトップ10ベンダー、下記参照。
http://www.edn.com/photo/288/288768-HP_Apple_Samsung_largest_chip_consumers_in_2010_table.gif


≪市場実態PickUp≫

かくも拡大した半導体業界の今後について、これまでの「グローバルな協調と競争」からさらに踏み込んだ「グローバルな融合と連携」が求められる状況をいろいろな切り口で感じている。以下に続く2項目は、早速に乗り越えるべき障壁として具体的にまず見えてきている。

新技術を切り開く先進経済圏と爆発する勢いの市場規模拡大を示す新興経済圏と、極めて雑駁な分け方ではあるが、展示会、学会など国際交流の場での両者のいろいろな切り口での摩擦局面が見えてくる状況を受け止めている。

【新たな摩擦?】

◇7 things to look for at Mobile World Congress(2月1日付け EE Times)
→2週間して開幕のMobile World Congress 2011(Barcelona, Spain)、ハイライトとなりそうな項目の拾い出し:
 1. The $150 smartphone
 2. Mobile payment over NFC--finally
 3. Spotlight on LTE
 4. Rising tide behind femtocells
 5. Tablets, tablets, tablets
 6. The China factor
 7. Western bias?

長年にわたる懸案、すなわち、設計と製造の融合、signal integrityなどがテーマとして引き続く今年のDesignConである。

【DesignCon 2011(SANTA CLARA, Calif.)】

◇DesignCon: FPGA caveman lag in tools (2月1日付け EE Times)
→Altera社およびXilinx社の新しいcomplex 28-nmデバイス・ファミリーがそれぞれ発表されているが、伝統的な設計ツールと基礎を成すシリコンcapabilitiesとの間の乖離が拡大している旨。

◇It's a mad, mad, electronics test world (2月1日付け EE Times)
→Agilent TechnologiesのDesign Validation Division、vice president and general manager、Jay Alexander氏基調講演。ワイヤレス機器の急増および低コスト・高性能製品需要からくるデータレートの増大が、高速serial pathsのテスト&計測要求に輪をかけて、signal integrity問題を生じている旨。

◇Xilinx CTO: FPGA can drive the crossover SoC (2月2日付け EE Times)
→Xilinx社のchief technology officer、Ivo Bolsens氏の基調講演。ソフトウェアprogrammable MPUコアによりmonolithic回路で併合するか、あるいは三次元system-in-packagesでmulti-die構成を利用するかして、今後FPGAsはsystem-on-chip(SoC)の基本部分となっていく旨。

話変わって、Intel社が450-mm fab計画を確認との見出しの覚えがあるが、TSMCからもMorris Chang氏のコメントが出されている。

【450-mm fab】

◇TSMC tips 450-mm fab (1月31日付け EE Times)
→VLSI Research社のCEO、G. Dan Hutcheson氏。先週、TSMCのCEO、Morris Chang氏から、自分たち最初の450-mmラインをFab 12 Phase VIで計画との弁、20-nm生産立ち上げ用、試作ラインが2013-2014年あたり、最初の450-mm生産ラインは2015-2016年ごろの計画の旨。

そのIntel社の最新プロセッサのcompanion半導体に設計エラーが見つかったとのこと。一方では、同社業績予測について上方修正が行われている。

【設計エラー】

◇Intel finds design error in chip (1月31日付け EE Times)
→Intelが、最近発表されたSandy Bridgeプロセッサ用のIntel 6シリーズサポート半導体、コード名Cougar Pointで設計エラーを見い出した旨。1月9日以降出荷されており、解決策を施しているが、該エラーには$700Mの負担を要する可能性の旨。

研究開発の試作要求に対応する製造サービスの新たな取り組みが、このところよく見受けられる感がある。半導体を軸にMEMS、光、バイオなど組み合わせる新たな段階のintegrationの高まりを反映する様相である。

【製造サービス】

◇Firm rolls R&D foundry service (2月1日付け EE Times)
→改造半導体製造装置プロバイダー、Semiconductor Support Services Co.(Cedar Park, Texas:Austinの北西)が、R&D製造サービスを打ち上げの旨。

◇Photonics foundry service opens (2月4日付け EE Times)
→Washington大が、シリコンphotonicsファウンドリーサービスを開始、Intel社が共同出資、ハイエンド半導体製造がこのプログラムOptoelectronics Systems Integration in Silicon(OpSIS)により行える旨。Southern California大でのMetal Oxide Semiconductor Implementation Service(MOSIS)と同様のサービスの旨。


≪グローバル雑学王−135≫

消費税、法人税、・・・と時の政府の基盤を大きく揺るがしかねないもの、それが税金である。その世界の国々における高さ加減を、

『世界の国 1位と最下位 −国際情勢の基礎を知ろう−』
 (眞 淳平 著:岩波ジュニア新書 664)…2010年9月17日 第1刷 発行

より見ていく。社会福祉国家、産油国など現状が知っていくと、どうすればより幸福になるか、なれるか、いろいろな切り口で考えさせられる。


第II部 経済・政治

第4章 税金

□行政サービスと税金
・税金の高さという観点から世界の現状を以下見ていく。

□国民負担率
・ある国の「税金の高さ」
 →「国民負担率」で見ることが多くなっている
 …「税金」の額や割合 + 保険料など「社会保障」の負担分を足した割合

□国民負担率が大きな国
・データ例として、各国の政府(中央政府)の予算をその国のGDPと比較した割合
 →最も高いのは、レソト(南アフリカの中にある国:九州の7割程度の面積) 
 …51.5%(2007年)
  →政府の相対的な規模の大きさは、停滞につながっているとも

□政府の割合が大きいヨーロッパ諸国
・続いて高いのは、フランス …44.5%
 →国民生活のためにも活用 
  →様々な「社会福祉政策」が特徴的
   …医療費全体の多くを政府の医療保険制度が負担
    →個人の自己負担分は10%程度
・フランスの次は、ハンガリー …43.6%
・因みに、日本は22.0%、アメリカは21.6%

□予算の内訳はどうか?
・たとえばアメリカ 
 →2011年度の軍事予算がGDPの4.7%になる見通し
  →1980年代後半(冷戦の終盤)では、約6%
   1960年代後半(ベトナム戦争中)では、10%弱

□福祉関連の予算規模
・社会福祉関連の予算がGDPに占める割合
 →最も大きいのは、スウェーデン …29.4%
  次はフランス …29.2%
・因みに、日本は18.6%、アメリカは15.9%、OECD最下位の韓国は6.9%

□税金がもっとも安い国
・「産油国」、たとえばアラブ首長国連邦(UAE)
 →石油などから得られる資金を使い、国民に対して手厚い生活保障
  …医療費は無料
  …教育費用も政府が肩代わり
・その他の産油国も、基本的に、個人への所得税や企業などへの法人税がかからないか、かかってもわずか、という社会制度

□課税なくして代表なし
・産油国の国民
 →王族が富と権力を握り、多くの関連企業をもつ
 →国民には政治的な発言権も与えられない

□タックス・ヘイブン
・もう一つの税金・国民負担率が低い国
 →ヨーロッパの極小国
  …ヨーロッパの多くの大富豪がここに籍を置くという現象も
 →欧米先進諸国が、「タックス・ヘイブン」(租税回避地)と呼んで、非難するケースも

□日本は先進国一の累積債務をかかえていた
・EUの加盟国になるための条件
 →毎年の財政赤字がGDPの3%を越えない
  たまった赤字の合計である「累積債務」がGDPの60%を越えない
・累積債務の額がGDPの171%、巨額の財政赤字に直面
 →それは日本
  →2009年度の数字:国家予算の半分以上、52.1%が借金

□ジンバブエに迫る日本の状況
・日本に次ぐ累積債務 
 →約115%のギリシア …「闇経済」が非常に大きな割合
            …膨れ上がる財政赤字
  →2010年春、同国の危機の事態
・アフリカ・ジンバブエの累積債務の割合 …220% →世界最大では
・日本でも今後 →ずばり増税 ⇒諸費税筆頭の論点

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