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タブレットの熱気、我が国の舵取り論議で始まった新年

新年、2011年のスタートは、米SIAからの月次販売高、JEITA賀詞交歓会、そしてConsumer Electronics Show(CES)(Las Vegas)と、業界関係イベントが早々立て続けである。開幕前からタブレットの熱気がCESを引っ張る一方、我が国内ではグローバル競争での地位の低下を盛り返す成長戦略を如何にとるかが中心の論点となっている。先進経済圏の巻き返しを図るべきこの新年のスタートでもあるという思いが強まっている。

≪11月の世界半導体販売高:JEITA賀詞交歓会≫

米SIAから11月の世界半導体販売高が、次の通り発表されている。10月からは若干ながら低下しており、市場の飽和感を反映する形である。3ヶ月移動平均でSIAは販売高数値を表わしているが、2010年1月から11月までの累計が$271.8 billionとなって、11月の中期予測では$300.5 billionとみている2010年販売高が、$300 billionの大台を突破するかどうか、微妙になる雲行きを感じるところがある。

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○SIA、11月半導体販売高を発表…1月3日付けSIAプレスリリース

11月のグローバル半導体販売高が$26.0 billionで、前月、10月の$26.2 billionから0.9%の減少、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。昨年、2009年11月の販売高、$22.7 billionからは14.4%の増加である。本年1月から11月までの累計販売高は$271.8 billionであり、2009年同期間の$202.8 billionと比べると34.0%の増加となる。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「マクロ経済の不安定さが続いているにも拘らず、この約10年で経験していない前年比の伸びをもって半導体業界は記録的な販売高水準の年になろうとしている。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「先端技術の応用により、mediatablets, smartphones, eReadersおよび車載などさらに広範囲の末端製品に半導体が引き続き入っていって、2010年の印象に刻む半導体販売高となっている。」とToohey氏は特に言及した。「販売高の伸びは引き続き穏やかになっていって、11月のSIA予測に沿っていくと見る。」とToohey氏は締め括った。

※11月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/SIA%20PR%20--%20GSR%20Release%20November%202010%20--FINAL.doc
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11月の販売高については、次の見方もある。

◇November's 'actual' global chip sales slip below par(1月3日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organization発。11月の"実際の"グローバル半導体販売高は$24.64B、前月($24.40B)比1.0%増、前年同月比13.9%増。ここ10年では11月の販売高は平均で前月比2.4%増であり、これは下回る旨。

DRAMメーカーの業績低下が具体的に表われてくるなど、市況後退の基調が高まってきているが、年初早々の関連する内容として次の通りである。

◇DRAM price collapse continues, says iSuppli (1月4日付け EE Times)
→iSuppli発。DRAMsおよびDRAMモジュールの価格が引き続き12月に低下、少なくともさらに6ヶ月は止めるものがありそうにない旨。

◇UMC's December sales fall less than trend (1月7日付け EE Times)
→UMCの2010年12月net販売高約$347M、前月比2.5%減、前年同月比9.5%増。
 2000年から2009年の10年について、12月販売高の前月比平均は5%減の旨。
 2010年の年間売上げは約$4.10B、2009年比35.9%増。

◇Samsung lowers Q4 forecast (1月7日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.の第四四半期販売高見込み$36.5B、前年同期比4.46%増。operating profitは、前回$2.97Bから下方修正して$2.67Bの見込み、これだと前四半期比38.3%減、前年同期比12.8%減。

1月6日に開催された社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)の平成23年新年賀詞交歓会に出席、いつもながらの大勢の人波に揉まれながらの以下の手元メモであるが、心なしかいつもより動くのにゆとりがあったように感じるところがある。  

○JEITA 下村会長
・昨年の世界経済は、深刻な不況から業績が回復基調、一方、欧州の金融不安や米国経済回復の遅れ等、新たな問題に直面。
・2010年の電子情報産業の世界生産は約210兆円の見込み、前年比10%増、ただし2007年比では約12%減。
・海外メーカーとの熾烈な国際競争に加え、大幅に円高、日本企業の地位は相対的に低下、自律的な回復過程には入っていない状況。
・今後はさらに、最先端の環境技術を駆使、グリーン・イノベーションを推進、環境と経済成長の両立を目指していくことが重要。
・法人税率の引き下げおよび低炭素、パワー半導体、スマートcommunityへの予算増額に対し御礼。
・当面する課題
 *COP17対応
 *EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)の締結を通じた世界的な経済、貿易に関する環境整備
 *農業政策と一体でのEPA、FTA等の推進
 *本年7月には地上デジタル放送への完全移行

○経済産業省 松下副大臣(鹿児島県出身)
・JEITAの取り組む課題と決意に敬意
・官民一体のしくみ、取り組み
 →国も官僚も変わらなければ
・農業を強いものに 国益そのもの
 →外に向かって国力を示す
 →首相率先の農業改革の本部
・中小企業 製造業
 →海外に出て行く心配
 →なんとか元気に
 →低炭素立地に1100億円

○JEITA 矢野 副会長
・成長戦略の確実な遂行
・農業を含めたイノベーション

やたら"農業"が出てくると思ったら、今年を「平成の開国元年」と位置づけた菅直人首相は、他国との経済連携と農業改革を進める態勢を構築するため、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を積極的に推進したい考え、と翌日の新聞記事で見い出したところである。我が国の成長戦略というものをしっかりクローズアップする必要がある。


≪市場実態PickUp≫

新年早々の恒例イベント、Consumer Electronics Show(CES)は、今回は1月6日〜9日、ラスベガスコンベンションセンターでの開催である。開幕前から溢れ出ているタブレットの熱気であり、関連記事で追うと次の通りである。

【Consumer Electronics Show(CES):タブレットの熱気】

◇CES Predictions: New Chips, Tablets, TVs, and more(1月3日付け PC Magazine)
→今週後半に始まるCES、いつもいくつかの驚きが待ち構えているが、tabletsからパソコン、TVsに至る新しい半導体と出てきそうなものの多くがすでに分かっている旨。tabletsが今回の明らかな本命である旨。

◇Analyst: Tablet PC users are conceited (1月4日付け EE Times)
→Needham & Co. LLCのアナリスト、Vernon Essi氏の大胆予測。tablet PCに熱狂する喧騒は、2011年に"下火になる"と見る旨。

次はオーソドックスな半導体の話題、IntelとAMDの揃い踏みである。

◇Intel, AMD get graphic with CPUs (1月5日付け EE Times)
→予想通り、ライバル同士のIntel社とAMD社が水曜5日、1個のdieにMPUおよびグラフィックス処理capabilitiesを合わせもつ新しいmulticore半導体を正式に打ち上げの旨。

早々のタブレット部品の増産打ち上げである。

◇Cypress expands touchscreen capacity (1月5日付け EE Times)
→Cypress Semiconductor社が、市場需要が力強いとして、touchscreenコントローララインについてかなりの製造capacity増強を図る計画、CypressのFab 4(Bloomington, Minn.)および同社の主要ファウンドリーパートナー、Grace Semiconductor Manufacturing Co.が、S8製造プロセスについて2011年のcapacityを2010年水準の3倍にする旨。

◇米家電見本市、タブレット端末、普及元年、パナソニック・モトローラ参入。(1月7日付け 日経)
→パソコンと携帯電話の「隙間」を狙え――今回の場で、タブレット型と呼ばれる情報携帯端末の発表が相次いでいる旨。パナソニックなどの参入で、機能や価格の競争が一気に本格化する旨。「画面サイズが15型以上のパソコンやテレビと、3〜5型が主流の携帯の間にぽっかりと空いていた『空白地帯』を(iPadは)埋めた」との指摘(CESを主催する米家電協会のチーフエコノミスト、ショーン・デュブラバック氏)がある旨。

インターネット百科事典によると、 
※タブレットPC(Tablet PC)は、平板状の外形を備えタッチパネル式などの表示/入力部を持った携帯可能なパーソナルコンピュータ。2010年にAppleがiPadを発売して新たな市場を広げたことや、GALAXY TabといったAndroidOSを備えたスマートフォンに分類されるタブレット端末が登場したこと、電子図書の本格的な流通がはじまるとリーダー機の需要が見込めること、将来のデジタル教科書への布石なども関係して、再びこのカテゴリの製品が活発になっている。
とある。この記述のアップデートもまめに必要と感じる目まぐるしさではある。

さて、早々の注目すべき戦略的な動きとして、2社が目に留ってくる。
Qualcomm社とNvidia社の以下の内容であり、今後に注目である。

【Qualcomm社の動き】

◇Report: Qualcomm to buy Atheros for $3.5B (1月4日付け EE Times)
→New York Times発。Qualcomm社(San Diego)が、同業のワイヤレス半導体メーカー(WiFi半導体大手)、Atheros Communications社を買収する$3.5B取引の合意に近づいている旨。

◇Qualcomm-Atheros to propel 'combo' efforts (1月5日付け EE Times)
→Qualcomm社(San Diego)のAtheros Communications社(San Jose)を」$3.1Bで買収する驚きの動きは、Apple, HTC, Motorolaはじめモバイルおよびtablet PCカスタマーの新たな取り組みに向けて一層の統合半導体ソリューションを提示する努力を加速する期待の旨。

【Nvidia社の動き】

◇Nvidia to attack CPU market with ARM (1月6日付け EE Times)
→graphics processor units(GPUs)サプライヤとして最もよく知られるNvidia社(Santa Clara, Calif.)が、PCs、サーバからワークステーション、スーパーコンに至るアプリに向けた高性能MPUsを作る意向、ARM Holdings plc(Cambridge, England)からライセンスされたアーキテクチャー設計を基本とし、世界最大の半導体メーカー、Intel社を真っ向から攻めていく旨。

◇Windows on ARM: It's a whole new ballgame (1月7日付け EE Times)
→2011年1月5日が、銘記されるPC激震の日に。
・Windowsの次のversionがARMで走る、とSteve Ballmer氏
・Nvidiaがcomputing用ARM半導体の一部始終のファミリーを供給する初めての半導体メーカーになる、とJen-Hsun Huang氏


≪グローバル雑学王−131≫

国情、取り組みをかくも強く反映するものかと国語の教科書を見てきたが、まさに教育の根幹を成すということと思う。今回が締めとなり、ケニア、そして日本の教科書事情を  

『こんなに違う! 世界の国語教科書』
 (二宮 皓 監修:メディアファクトリー新書 002)…2010年6月30日 初版第1刷 発行

より理解を深めることとする。教育の重みというものに鑑みて、今後とも注目、注意にし過ぎはないということと思う。


[第10章 ケニア …独立から半世紀、厳しい現実に抗う教育]

・赤道直下、東アフリカに属するケニア共和国
・紅茶、園芸作物を中心とする農業 →国民総所得の4分の1
・貧困と繁栄が背中合わせ →格差が広がるばかりの首都ナイロビ
・70以上ある民族語のいずれかを家庭で、スワヒリ語と英語を学校で学ぶ
・小学校の国語教科書にも宗教の習慣上の違いを解説する教材
・父親がケニア出身のバラク・オバマがアメリカ大統領に就任
 →ケニアはその翌日を急遽、祝日に決定

◆「試験一発」の功罪
・教育制度 …小学校 8年、中等学校 4年、大学 4年
・勉強といえば暗記、行われる教育はもっぱら「試験対策」
 →全国の小学生が卒業時に受験する「国家統一試験(KCPE:Kenya Certificate of Primary Education)」
・近代産業で働きたいと思ったら、KCPEで高得点を取る以外にないのが現実
・現在は高学歴者の失業も深刻、路上で物売りをしている大卒者も存在

◆偉人が扱われない理由
・教科書はスワヒリ語を除き、すべて英語で書かれている
・教育省認定の教科書リストから各学校が選択
・日本やアメリカに比べて使われる物語のバリエーションが少ない印象
 →例:歴史上の人物の話がない
 ・日常的風景の次に目立つのは、野生動物を擬人化して登場させる教材

◆ストリートチルドレンの物語
・ストリートチルドレンや学校に行けない児童の話
 →ケニアにとって看過できない問題

◆現実に言及する編集方針
・児童に人気 →ケニア国立公園にいる動物たち
・一部の現実的問題については率直に言及
 →ある教材のタイトルは「エイズに罹った人も人間だ。」
・厳しい現実を見つめ、抗う力を与えたい
 …ケニアの教科書にはそんな願い

≪おわりに≫ そして日本の教科書は

・1872(明治5)年、「学制」発布
・最初の国語教科書 …2種類
 −洋学者・田中義廉(よしかど)編集の全4巻もの
 −国学者・榊原芳野(よしの)編集の6巻もの
・「国語」は、実は日本の造語
 →1900年、坪内雄蔵(逍遥)が編集した『国語読本』
・今日、小学校の国語教科書は、少なくとも5社以上の出版社で発行
・PISA(OECD「生徒の学習到達度調査」)テストの結果
 →「ゆとり教育」見直しへと教育政策を動かしたほどのショック
・日本では2009年に読解力の向上を目指す新しい国語教科書の検定
 →国語もページで2割以上増

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