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2011年、引き続く伸びを願って、激動の2010年を振り返る

新年、2011年を迎えたが、世界的不況による大きな落ち込みから急激に回復した2010年の余韻が今なお強く残るところがある。各国・地域の経済対策が奏功、新興経済圏が飛躍的な伸びを引っ張って、後半には飽和感が高まってきたものの、一体どの辺がピークなのか、いまだに戸惑う空気を感じている。この新年、引き続く市場の伸びを願うとともに、こんどは米国、我が国はじめ先進経済圏が奮起して開拓・牽引役になることがそのための必須の条件と受け止めている。

≪年越しの2010年総括≫

激動の2010年半導体市場を、まずはグローバルな指標を与える米SIAの月次および定例発表からその推移を辿ってみる。世界販売高のポイントとなる数値を抜き出すと、以下の通りであり、振り返って注目するところを挙げてみる。
・2009年の販売高が、9%減と予想より小幅に収まっている。新興経済圏が引っ張る後半土壇場の盛り返しが効いていると見る。
・1月の$22.5 billionから9月の$26.5 billionへ、史上最高を塗り替える勢いの高水準の世界販売高が続いて、前年同月比では60%増近くになる月がみられるほど従来にないパターンを感じている。まさに新興経済圏の爆発的拡大である。
・このために下記の6月と11月の欄に示す中期予測を比べると、大きく上方修正されている。来る2月まで待たなければならないが、2010年が最終的にどのような数値で締まるかに注目ではある。
・後半の鈍化傾向がしばしば取り上げられているが、以下の推移では飽和はしているものの、目立つ低下には至っていない。やはり今後に注目である。

≪2010年米SIA発表≫

1月 2009年11月 $22.6 billion 前月比3.7%増 前年同月比8.5%増
   2009年1月〜11月販売高総計は$202.1 billion 前年同期比13.2%減

2月 2009年12月 $22.4 billion 前月比1.2%減 前年同月比29%増
   ※2009年の世界半導体販売高は$226.3 billionで、2008年の$248.6 billionから9%の減少

3月 2010年 1月 $22.5 billion 前月比0.3%増 前年同月比47.2%増

4月 2010年 2月 $22.0 billion 前月比1.3%減 前年同月比56.2%増

5月 2010年 3月 $23.1 billion 前月比4.6%増 前年同月比58.3%増
   2010年1月〜3月販売高総計は$69.2 billion 前年同期比58.4%増

6月 2010年 4月 $23.6 billion 前月比2.2%増 前年同月比50.4%増
   2010年1月〜4月販売高総計は$92.6 billion 前年同期比54.2%増
   ※2010年央中期予測 2010年   2011年    2012年
                 $290.5B   $308.7B   $317.8B
                 28.4%増   6.3%増    2.9%増

7月 2010年 5月 $24.7 billion 前月比4.5%増 前年同月比47.6%増

8月 2010年 6月 $24.9 billion 前月比0.5%増 前年同月比49.3%増
   ※2010年第二四半期のグローバル半導体販売高は$74.8 billion、第一四半期全体の$69.9 billionから7.1%増。

9月 2010年 7月 $25.2 billion 前月比1.2%増 前年同月比37.0%増
   2010年1月〜7月販売高総計は$169.2 billion 前年同期比46.7%増

10月 2010年 8月 $25.7 billion 前月比1.8%増 前年同月比32.6%増
    2010年1月〜8月販売高総計は$194.6 billion 前年同期比44.4%増

11月 2010年 9月 $26.5 billion 前月比2.9%増 前年同月比27%増
    2010年1月〜8月販売高総計は$194.6 billion 前年同期比44.4%増
    ※2010年第三四半期の販売高は$79.4 billion、前四半期の$74.8 billionから6.1%増。
    ※2010年年次予測  2010年   2011年   2012年
                 $300.5B   $318.7B   $329.7B
                 32.8%増   6.0%増    3.4%増

12月 2010年10月 $26.3 billion 前月比横這い 前年同月比19.8%増
    2010年1月〜10月販売高総計は$248.2 billion 前年同期比37.0%増

小生が注目して記した2010年の記事見出し&内容から、特に頭に残るものを論うと次の通りである。振り返ってのコメントをつけている。
 
1月
・「三星電子は立ち食いうどん屋、日本企業は高級うどん屋」
・AppleのiPadお披露目
・Intel & MicronのNAND攻勢

→三星と日本勢のマーケティング・スタンスの違いがクローズアップ
→iPad旋風吹き始め

2月
・PC需要増を受けて目立つDRAMの急回復ぶり
・春節の週に感じること 中国の経済界の世界をまたにかけたダイナミックな動き

→新興圏でのPCおよび携帯など急激な拡大へ

3月
・注目の高機能携帯電話(スマートフォン)分野 AppleのHTC提訴
・驚きのPC市場 2009年のPC出荷は302.3M台に達し、2008年の299.2M台から1%増

→スマートフォンが前面へ

4月
・Renesas Electronics社のいよいよスタート
・パソコン世界出荷、24%増、1〜3月で過去最高
・今回の不況による落ち込みの大きさを物語る2009年半導体装置トップ10

5月
・収まらない世界同時株安、金融危機再燃の懸念も
・旺盛な需要に押されたモノ不足の記事

→懸念要因の台頭

6月
・相次ぐ大規模設備投資 Intel, Samsung, TSMC, GlobalFoundriesそして東芝という顔ぶれ
・「世界の工場」中国の苦境 人権問題に報道陣の焦点が最近当てられるFoxconnおよびApple
・6月24日に販売が開始されたアップル社のiPhone 4

→市場急拡大の表と裏

7月
・Grove氏(Intel社)記事 →米国の雇用拡大に向けて問題意識の高揚&提起
・半導体、上向き鮮明。新興国が需要の中心

→Grove氏記事は11月にも。米国、そして他人事ではない日本、jobを作り出す重要性の問題提起

8月
・米国、そして中国での経済指標の発表を受けて、即座に敏感に反応する世界経済の動き
・Intel社がセキュリティソフト大手、McAfeeを買収

9月
・強気の見方の一方で下方修正が色濃く混じる市場の空気
・大手プレーヤーの覇権拡大の動き …ARM、インテル、Qualcomm、Oracle

→市場の拡大・創出に向けたインテルはじめ大手のつばぜり合い

10月
・スマートフォン、新型携帯、世界のプレーヤーたちの相次ぐ訴訟合戦 …モトローラとAppleの鬩ぎ合い
・マイクロソフト、新OSスマートフォンを米で11月8日発売

11月
・インテルのAndy Grove氏、アメリカにおける製造について
・世界経済の最大の震源、中国で、上海万博が閉幕、直後の動き、各方面への波紋に注目

12月
・第三四半期のパソコン出荷、伸びの基調が続いているが、鈍化傾向があり引き続き注目
・主要プレーヤーの戦略立った激しい動き、半導体業界のこの年の瀬

→鈍化の兆しを含みながら高水準の販売高を維持


≪市場実態PickUp≫

上記の推移の捉え方の2010年であるが、このクリスマス商戦はどうであったか。消費者の財布は緩んできたものの、エレクトロニクス商品にはさほど、という速報が見られる。

【クリスマス商戦】

◇Santa brought fewer gadgets in 2010 (12月28日付け EE Times)
→NPD Group(Port Washington, NY)の業界分析vice president、Stephen Baker氏。Christmas Holiday spendingは昨年比増えているが、consumer electronicsではそうではない旨。人びとはたくさんのエレクトロニクス製品をもっており、食べ物、衣服および旅行など他の製品カテゴリーに移っている旨。

万博、アジア大会を終えた中国であるが、経済、そしてエレクトロニクスについて波紋を呼ぶ動きが早速である。

【中国の動き】

◇中台間の関税下げ1月開始、進出企業、台湾回帰も―日本勢、中国開拓の足場に。(12月27日付け 日経)
→台湾と中国との間での経済協力枠組み協定(ECFA)締結を受け、2011年1月から825品目の関税の引き下げが始まる旨。馬英九総統率いる台湾の国民党政権はこれをテコに内外から企業や投資を呼び込む戦略を本格始動しており、一部で新工場建設を台湾に回帰させる動きも出てきた旨。


◇China to cut rare earth exports in '11 (12月29日付け EE Times)
→Associated Press発。中国が、2011年上半期について輸出する希土類の量を10%以上削減する旨。


≪グローバル雑学王−130≫

今回はアジアから、最も身近な国、韓国および微笑みの国、タイについて、

『こんなに違う! 世界の国語教科書』
 (二宮 皓 監修:メディアファクトリー新書 002)…2010年6月30日 初版第1刷 発行

より理解を深めていく。北朝鮮の事情、実態も触れてある。改めてのそれぞれの独特性見い出しがある。


[第8章 韓国…ハングル・アリラン?(ラブ) 愛国心で目指す「完全なる人」]

・現在でも根強く残っている儒教思想

◆送金する雁のお父さん
・韓国の教育事情 1.英語偏重主義…小学校3年生から始まる
          2.高額な教育費
・単身韓国で働いて、留学費用を送金する「雁のお父さん(キロギアッパ)」

◆ハングル制定者は英雄
・韓国の教育は6・3・3・4制、日本の学校制度とほぼ同じ
・開いた最初のページに世宗大王(セジョンデワン)の話題
 →韓国の国語教科書の大きな特徴
 →世界一合理的な表音文字といわれるハングルを制定
・漢字教育は、禁止されていないが義務づけられてもいない

◆アリラン百説
・朝鮮民族の国民歌謡とされる「アリラン」
 →解釈や理解は人によって異なる
 →例えば「密陽(ミリャン)アリラン」「珍島(チンド)アリラン」
  …旋律と歌詞も地方によって異なる
・古典小説:韓国版「舌切り雀」ともいうべき「興夫伝(フンブジョン)」
 …強欲無情な兄と心優しい弟の話
 →「兄弟愛」で終わるところが、家族愛の国らしい

◆田中先生がやったこと
・1年前の国語の授業での比較的長い小説『花びらで書かれた文字』
 →日本による植民地支配下、「皇民化政策」として朝鮮の学校で日本語を教えていた時代を描いた作品
 →厳しくて残酷な日本人教師を子どもたちの目線で強烈に描写
 →作者の名はソン・ヨンジャさん …「ジャ」は韓国語で「〜子」の意。
  彼女自身も植民地時代に生をうけた人か
 →単に日本人の過去の悪いイメージをあげつらうのではなく、家族愛と韓国固有の文字、ハングルを通して痛みを克服しようとする、かの国の強さ

◆北朝鮮の子どもも登場
・「平壌(ピョンヤン)児童芸術団の公演」(2005年、ソウルにて)の記載
 →この版に至るまで北朝鮮関連の記事は皆無に等しい
 →本文ではあえて国家名を出していない
 ⇒分断国家という事情が関係

◎元帥様の教えを阻む経済破綻 −−北朝鮮
・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は世界的にも識字率の高い国
・教育の無償制度と共に医療の無償制度
 →が、しかし
  ・教科書や文房具などの学用品は個人の自己負担
  ・小学校では年に2〜4週間の「義務労働」
・国定の教育図書出版社発行の『国語小学校4』
 →62単元構成
 →新聞や出版物などに金日成、金正日の名前や二人のお言葉(マルスム)を掲載する場合、必ず大文字、カギカッコつき
 →国語の全単元中の8割以上が金日成・金正日親子(それに金正日の母、金正淑[キムジョンスク])に関する内容

[第9章 タイ …微笑みの国を襲った経済危機と復興]

・タイの学校 →校門の周辺に必ず安置されている仏像
・現在のタイの教育への影響 →仏教国: 王国: グローバル経済

◆通貨危機の悲痛な記憶
・1997年、深刻な通貨危機
 →行き過ぎたグローバル化への反省
・1999年に制定された「国家教育法」
 →「もうグローバリズムにいたずらに翻弄されない人間像」の育成
・あくまでも「タイ語教育」である点
 →タイとして国民統合を図っていくための共通言語

◆再び仏教へ
・元来「仏教に根ざした教育」
 →入学式には黄衣をまとった僧侶が参加、新入生に聖水をかける
・2002年からの国家プロジェクト
 →あらためて仏教式学校の普及運動
 →約6割の学校が参加
 →定番は「食育」…なんのために飲食するのかを内省、本来的価値について考える

◆開放的な検定制度
・タイの教科書 →タイ教育省発行のものと民間の教科書会社発行のもの

◆王様とお坊様
・国王・王族や古典文学などを題材として取り扱っている点が特徴
・タイの王朝は13世紀から現在にかけて4代ほど変遷
 …ラムカムヘン大王は現在のタイ文字の原型を作った名君

◆経済成長の負の遺産
・国際人を育成するために環境問題やエイズ(HIV感染症)についても言及
・1990年代 →エビ養殖でマングローブの森が破壊
       →輸出材の乱伐による洪水増加
       →工場排水による川の汚染

◆子は親に恩を返すもの
・「恩返し(カタンユー)」という考え
 →両親の恩(プラ・クン)に感謝、育ててくれた親に恩返しせねばならない

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