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飽和感、減速感が強まって見えるグローバル半導体市場

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7ヶ月連続の前月比増加を示していたグローバル半導体販売高が、10月は9月と横這いになった、と米国SIAから恒例の月次発表である。市場の鈍化気分は今年後半になって各方面から言われてきているが、なにしろ爆発的な拡大ポテンシャルを秘めた中国はじめ新興経済圏が牽引する現状であり、なかなか精度良く読めないところがある。注意深いデータ、市況模様眺めの必要性が引き続く状況を受け止めている。

≪10月のグローバル半導体販売高≫

米SIAからの発表は次の通りである。

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○グローバル半導体販売高、前月比フラット…12月3日付けSIAプレスリリース

10月のグローバル半導体販売高が$26.3 billionで、前月、9月のやはり$26.3 billionから横這いのまま、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。昨年、2009年10月の販売高、$22.0 billionからは19.8%の増加である。本年1月から10月までの累計販売高は$248.2 billionであり、2009年同期間の$181.2 billionと比べると37.0%の増加となる。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「予想通り、季節的パターンに合致して前月比の販売高の伸びが緩やかになってきており、年末まで続きそうな傾向である。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「今後の伸びは、モバイル機器やconsumer electronicsなど半導体末端製品の急速な普及が続く新興途上市場での需要にますます引っ張られていく。」とToohey氏は締め括った。

※10月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/SIA%20PR%20--%20GSR%20Release%20October%202010%20--FINAL-2.doc
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季節要因が絡む可能性はあるが、飽和感、頂上感が強まってきたということか、中期予測にも下方修正が表われてきている。

◇VLSI cuts estimates for chip, tool markets (11月30日付け EE Times)
→VLSI Research社(Santa Clara, Calif.)が、半導体およびその装置市場の見通しを次の通り更新の旨。

2010年
2011年
2012年
半導体販売高:今回
31%増
4.4%増
7.9%増
$248.6B
$259.6B
$280.2B
半導体販売高:前回
32%増
8%増
半導体装置 :今回
5%減
7.2%増
$46.3B
$49.7B
半導体装置 :前回
103%増
10.6%増

今回の予測シナリオデータ、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/101130_vlsi_chip_tool_markets.png

米SIA発表の10月データを市場地域別に見ると、次のようになる。中国に注目すると、$5.56 billionで9月の$5.66 billionから若干減っているが、前年同月比は25.2%増と、Asia-Pacificの同18.8%増と比べると勢いの良さを示している。その10月販売高の対世界比率は21.1%となる。

【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域
Oct 2009
Sep 2010
Oct 2010
前年同月比
前月比
========
Americas
3.68
4.81
4.81
30.7
0.0
Europe
2.81
3.25
3.36
19.6
3.3
Japan
3.75
4.20
4.22
12.5
0.3
Asia Pacific
11.73
14.06
13.93
18.8
-0.9
内中国
5.66
5.56
$21.96 B
$26.33 B
$26.32 B
19.8 %
0.0 %


この中国の半導体市場について、最新の見方の一つが次のように示されている。
    
◇「中国の半導体市場、世界をリード」米調査会社(12月1日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→米国の会計事務所大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)がこのほど発表した報告書によると、世界の半導体産業がこの8年間浮き沈みする中、中国市場はその他の市場をリードし続けてきた。
PwCグローバル科学技術部門のシニアパートナー、Raman Chitkara氏によると、世界の半導体市場における中国のシェアは拡大を続けており、半導体の消費量はすでに世界全体の41%に上っている。また新規上場した半導体企業のうち、中国企業がその半数以上を占め、従事者数は世界全体の25%に達しているという。
世界の電子設備製造業に占めるシェアが拡大する中、中国は電子製造業における支配的地位を維持していく。こうした支配的な地位を背景に、世界の半導体市場における中国の消費シェアは伸び続けている。さらに、半導体産業は一貫して科学技術分野のフロントランナーとしての役割を担っている。中国は現在、このイノベーションに参与している状態にあり、世界全体の新規特許件数のうち、中国の特許が占める割合は2005年のわずか13%から現在は22%へと大幅上昇しているという。


≪市場実態PickUp≫

セミコンジャパン(幕張メッセ)開催に合わせて、最先端の半導体製造装置の話題からピックアップである。

【先端製造装置】

◇Applied rolls fast, 'intelligent' etcher (11月29日付け EE Times)
→3-D設計、double-patterningなどに向けたIC製造コストの低減化を求めて、Applied Materials社が、高スループット、''smart''エッチングシステム、Centris AdvantEdge Mesa Etchツールを展開、Lam Researchなどからのシステムと競合、ほかのetchersの約2倍高速、ウェーハ当たりコストを30%まで下げる旨。

◇半導体製造装置各社、「微細化」対応で新製品、3D実装や環境負荷低減。(12月2日付け 日経産業)
→大手各社が半導体メーカーの微細化投資の進展をにらんだ先端装置を出展、3次元(3D)実装や環境負荷の低減などで独自技術を打ち出すメーカーも増えるなど、半導体市場の急速な回復を受けて装置市場にも新製品投入の動きが活発化してきた旨。

半導体、エレクトロニクス大手の組織、体制の新たな取り組みの発表が続いている。Micronは、2008年に設立の IntelとSTMicroelectronicsのNORフラッシュメモリ合弁、Numonyx BVを買収して、以下の陣容での新たなスタートである。

【Micronの新組織】

◇Micron recruits Spansion exec amid reorg (12月1日付け EE Times)
→Micron Technology社が、今年始めにNORフラッシュベンダー、Numonyx BVを買収、今回同社メモリoperationsを再編、4つの部門に分ける旨。また、NORのライバル、Spansion社の前executive vice president and chief marketing and sales officer、Tom Eby氏を採用する旨。メモリoperationsの新しい構成、次の通り:
 DRAM Solutions Group
 NAND Solutions Group
 Wireless Solutions Group…ワイヤレスNORおよびMCP製品
 Embedded Solutions Group…embedded NORおよびphase-change memory(PCM)製品

半導体事業を数年前に分離したMotorolaが、今度は本体を2つに分けて新たなスタートである。

【Motorola分社】

◇Moto splits up, preps tablet PC (12月1日付け EE Times)
→以前に発表の通り、Motorola社が2つに分かれ、今週、MotorolaからのMotorola Mobility Holdings社の分離を承認の旨。
2011年1月4日付けで、Motorola社はMotorola Solutionsに社名変更する旨。

米国勢の統合、分離とは全くの対比になるが、サムスン電子は一族3代世襲でグローバル競争への新たな船出を発表している。

【Samsung代替わり】

◇サムスン電子、李副社長が社長に昇格、3代世襲が確定(12月3日付け 日経 電子版)
→韓国のサムスン電子が3日、李健煕(イ・ゴンヒ、Lee Kun-hee)会長(68才)の長男、李在鎔(イ・ジェヨン、Lee Jae-yong)副社長(42才)が同日付けで社長に昇格する人事を発表、グローバル展開する企業グループでは異例となる3代世襲が確定の旨。一族経営による迅速な意思決定の仕組みを維持、変化の激しい国際競争に臨む旨。


≪グローバル雑学王−126≫

今回からは各国の国語の教科書、それも主に小学校4年生の教科書に注目して、子供たちへの今後の成長を願い、期待する表れ方を見ていく。国別にそれぞれ精通した研究者が分担執筆している次の書、

『こんなに違う! 世界の国語教科書』
(二宮 皓 監修:メディアファクトリー新書 002)…2010年6月30日 初版第1刷 発行

より各国の実態に触れていくことにする。まずは、世界から夢と希望を求めて最もいろいろな人々が多く集まる国、アメリカである。


≪はじめに≫ なぜ国語教科書は面白いのか?

・公用語であり、母語でもある言語を「国語(national language)」として学ぶことができる日本
 →このような国は、実は少数派
・国語教育や国語教科書のそもそも
 →世界で最初、紀元前3000年頃のシュメールの学校
  …3R's(Reading, wRiting, aRithmetic)の初歩教育
 →古代ギリシアの学校は、「閑暇(ギリシア語でスコレー)の家」の呼び名
  …スクールの語源
 →江戸時代の日本では、寺子屋が多数開業
  …庶民の識字率を飛躍的に高める
 →維新後、近代国家となった日本、まず外国の教育制度に範
  …戦後は主にアメリカの制度
  …2000年から小学校〜高校で取り入れられた「総合的学習の時間」は、イギリスの制度の踏襲
・各国の教科書は、「諸国民の教育の形成要因」を如実に反映
・本書は、比較教育学の見地から、各国の人々が如何に子どもたちの成長と幸福を願い、教科書という制約の多い媒体にどうやってその願いを盛り込んでいるか、注目する試み
 →11カ国の小学校国語教科書を、その国に精通した研究者がそれぞれ解説、主に小学校4年生(またはその年齢にあたる学年)の教科書を紹介
 →そのくらいから内容が高度になり、面白い

[第1章 アメリカ …多民族を抱える超大国の「夢」と「平等」]

・「人種の坩堝」、アメリカの教育 →「アメリカ人になるための教育」

◆誰にでもチャンスがある
・アメリカ的価値観と理想的な生き方を教えること
 →常に教育の最重要課題
・込められたアメリカ的なメッセージ
 →「アメリカン・ドリームの礼賛」「多様性の受容(多文化主義教育)」
・高等学校までは無試験で進学、授業料も要らない
・オールカラーで分厚いハードカバーの教科書
 →3000〜4000円。各学校では5〜7年間使用。落書きなどした生徒は弁償。
・徹底した地方分権下での教育の目的・方法・制度
 ⇔「多様性の受容」

◆消えた「ディック&ジェーン」
・「多様なソースから多様な集団が、それぞれの地域の実情に従って教科書を選ぶ」
 →偏りを嫌うポリシー
・1930〜1970年代初頭、「ディック&ジェーン」という国語読本がアメリカ中で使用
 →1970年代に入ってこの教科書は完全に姿を消す

◆アメリカの夢になった男
・ディック&ジェーンに替わったのが、マーチン・ルーサー・キング牧師
・アメリカの国語教科書の内容的な特徴
 →しばしば「偏った思想」を敬遠、古典的な児童文学などはあまり掲載されない
 →登場人物の人種が偏らないよう最大限に配慮
・ノンフィクション、目立つジャンルは伝記
 →セオドア・ルーズベルト大統領が多く引用
 →早くからスポーツ選手が活躍
  …「ルー・ゲーリッグ 〜最も幸せな男」→メジャーリーグで最初に永久欠番「4」を指定させた
  ⇒貧しい移民の子が努力と運、友情に恵まれて成功した典型例

◆黒い肌のシンデレラ
・今回参考にした教科書で、3種類のシンデレラ
 →白人のシンデレラ  −3年生の教科書
  中国版のシンデレラ −3年生の教科書
  黒人版のシンデレラ −4年生の教科書
・「何を知っているか」ではなく、「何ができるか」「自分ならどう考え、どう行う(解決する)か」を考えさせるのがアメリカの教育の特徴

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