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国際関係の緊張のなか、絶え間ない先端技術の脈流

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感謝祭(Thanksgiving Day)のリラックス気分を一挙に吹き飛ばしてしまう朝鮮半島での緊張の事態である。関係の国々それぞれ節目となる2012年に向けた動きが起こってくるかと思うが、半導体・デバイス業界については、健全な"グローバルな協調と競争"路線を揺るぎなく歩んでいかなければ、と余計に感じてくる。年末年始の恒例の関係国際会議の前触れが、一層豊かで便利な将来に貢献しそうな先端技術の新たな発案の数々を提示しているのは、尚更に救いを感じさせるところがある。

≪IEDM、ISSCCの予告から≫

国際関係の問題の波紋は半導体・デバイス市場にもすぐさま影響してくるところがあるが、今回の朝鮮半島の事態を受けて実態あるいは関係先の心理が反応している台湾発の次の動き、捉え方が見られている。

◇Korea conflict may bring short-term benefit to the panel industry(11月24日付け DIGITIMES)
→北朝鮮と韓国の間の衝突は、ベンダーが物不足の事態を避けるよう備蓄を始め、低下するTVパネル価格の歯止めにもなり得ることから、パネル業界に短期的な利点をもたらす見込みの旨。

◇Taiwan notebook vendors trying to be flexible about Korea conflict(11月25日付け DIGITIMES)
→北朝鮮と韓国の間の衝突が勃発、台湾のパネルおよびDRAMメーカーがともに顧客からの振り替え受注の可能性を予想しており、韓国メーカーから購入しているグローバルnotebookベンダーは、今回の衝突は購買に影響を与えるほどの水準にはまだ達していないが、事態が悪化する場合には柔軟に対応する、と指摘している旨。

◇Korea tensions send NAND flash spot price up, says inSpectrum(11月26日付け DIGITIMES)
→朝鮮半島の緊張による供給不安の渦中、11月19-26日の週でNANDフラッシュ半導体の価格上昇が続いた旨。一方、DRAMについてはほとんど動きが見られない旨。

グローバルな経済不況から盛り返して史上最高の販売高を見越している本年の半導体業界であり、ひたすら影響のないことを願うが、今後に向けた有望な技術シーズの出現、到来が現時点のもう一つ、願い事ではある。半導体・デバイス関係恒例の国際会議の予告から、以下その息吹きに触れたくピックアップしている。間近なIEDMは、エネルギー重点のようである。

◇IEDM confab tackles power large and small (11月24日付け EE Times)
→来る12月6日から始まるInternational Electron Devices Meeting(IEDM)、半導体をはじめとするデバイスを通してエネルギーを発生、伝送、使用そして節減する方法改善を見い出すことに大きな重点がある旨。

今も通称されているかどうか、"デバイスのオリンピック"、ISSCC(International Solid-State Circuits Conference:2011年2月20-24日:San Francisco)からは、MEMS、センサ、医療はじめ具体的な応用が前面にますます出てくる様相を感じている。

◇2011 ISSCC highlights progress in MEMS, sensors(11月22日付け EE Times)
→2011 International Solid State Circuits Conference(ISSCC)の技術プレゼンで見られるように、microelectromechanical systems(MEMS)およびセンサのsilicon integration展開速度が指数関数的に伸びてきている旨。

◇Medical electronics a focus for ISSCC '11 (11月22日付け EE Times)
→医療エレクトロニクスがInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC)の前面に、2011年テーマにElectronics for Healthy Livingを選んだ旨。MedtronicおよびImecからの基調講演があり、また、医療用デバイスに特化した論文&パネルセッションを設ける旨。

◇NAND, PCM vie for ISSCC attention (11月22日付け EE Times)
→複数のノンボラメモリ技術が来年のInternational Solid-State Circuits Conference(ISSCC)に現れてくるが、進展にますます厳しいものがあり、フラッシュ、MRAM, ferroelectric, phase-changeも他のresistive memory形式のものも、圧倒的な基礎を得ておらず、他を無効にするほど技術的に席巻する勢いにはない旨。それぞれに支持者および応用があって、上手くいくと考えている旨。

◇ISSCC'11 picks of practical gems shine (11月23日付け EE Times)
→世界中から先端回路設計開発の粋が集まるInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC) 2011は、寄せられた論文応募669件、うち211件が受理され、内訳は北米から80件、Far Eastから69件、欧州から62件の旨。

◇Researchers carve CPU into plastic foil (11月23日付け EE Times)
→来る2月のInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC)にて、プロセッサ関係の注目内容。
・2枚のプラスチックfoilで作られた簡素なMPU。Imec research center(Belgium)、startupのPolymer Vision(Eindhoven, Netherlands)など5メンバーによる8-bit, 6-Hzデバイス。25μm厚foil、10V電源。
・IBMの5.2-GHzプロセッサ
・54-Mバイトcacheが入ったIntel Itanium半導体

先端技術の出現、推移に注目、我慢強くそれぞれの開花を見守る時節である。


≪市場実態PickUp≫

半導体の歩みとともに節目節目でその意味を取り上げられるMoore則であるが、今回は次の見方である。

【Moore則の再定義】

◇Moore's Law enters the fourth dimension (11月22日付け EE Times)
→Marvell Technology Groupのchairman, president and CEO、Sehat Sutardja氏。Moore則の標準的な定義は、2年ごとに密度が倍になるコンピュータ半導体であるが、実際はずっと複雑で、異なる変化軸で表わされるいくつかのdimensionsがある旨。
・サイズ(密度) →ある一定Tr数の面積
・性能 →メモリ容量、computation速度
・価格 →チップが小さくなると安くなる価格
Moore則に隠れている4番目のdimensionとして、efficiency(効率)がある旨。ビルの大きさで独自の電源、冷却を要するメインフレームが、ほんの50年でずっと性能の高いlaptopsに至っている説明となる旨。

これも古くて新しいというニュアンスを感じてしまうが、半導体ビジネスモデルの考え方の更新版である。

【末端顧客密着】

◇Semiconductor success is no longer about the chips, it's about end customers (11月22日付け EE Times)
→AccentureのSemiconductor Business、managing director、Scott Grant氏記事。engineering-centricモデルからend-marketモデルへの変換には新たなskills一式が求められ、value chainで必要なintegrationおよびresponsivenessを作り出すのに次の5つで大きな変化が求められる旨。
 − market and customer segmentation
 − engineering
 − product lifecycle and release management
 − supply chain and supplier management
 − sales operations and deal management

電子書籍リーダー(E-リーダー)がこのほどソニーからも発表されているが、半導体市場へのインパクトの見方である。

【E-リーダー】

◇E-readers could mean $1B for chip makers in 2011(11月23日付け EE Times)
→In-Stat(Scottsdale, Ariz.)による予測。Amazon.com社, Barnes & Noble社およびソニーなどのサプライヤからのe-readers出荷が、2010年12M台から2014年には35M台に着実に伸びて、来年のe-reader市場は半導体サプライヤには$1B規模のチャンスが見込める旨。

◇E-readers to open up $1B semiconductor opportunity in 2011-Increasing shipments of e-readers brings new opportunities for microprocessor and memory vendors, according to In-Stat.(11月24日付け Electronics Design, Strategy, News)

IBMも半導体製造から遠のくのか、という以下の記事である。IBMを軸とするグローバルなメンバーのコンソーシアム活動がすでに続けられている状況があり、自然な流れとも思うが引き続き注目である。

【IBMもfab-lite?】

◇Is IBM moving to fab-lite, research heavy? (11月24日付け EE Times)
→IBMが、半導体製造からだんだんと後退して、ファウンドリー・サプライヤとしてのSamsungおよびGlobalFoundriesに先端シリコンを頼っていく様相の旨。SamsungとGlobalFoundriesともに、米国でのファウンドリーoperationsに向けたウェーハfabsをもつ運びであり、固い結びつきを助長する可能性の旨。


≪グローバル雑学王−125≫

ロシアの内政、外交、経済・エネルギーと、考え方、ルールを、

『ロシアの論理 −復活した大国は何を目指すか』(武田 善憲 著:中公新書 2068)
 …2010年8月25日 発行

より見てきたが、今回の国民生活で読み終わりとなる。旧来のものからの脱皮の過程がいろいろな切り口でわかるとともに、新たなものとのバランスが今後とも問われ続けるという理解である。当面は、原油価格はじめ経済環境の追い風の度合い、ロシアの今後の発展のロードマップ推移に目を離せないところがある。


[第四章 国民生活 −「ロシア的」と「西欧的」の両輪]

1 優先的国家プロジェクト
・「プーチンのプラン」
 →現代的な福利厚生を国民に対して保証しつつ、中長期的な社会経済の発展を実現する
・現代のロシア
 →「西欧的なもの」と「スラブ的(ロシア的)なもの」の分裂を回避しつつ、国民生活の質的向上を図っている

○プロジェクト開始の意味
・優先的国家プロジェクト…2005年9月スタート
 →教育、保健、住宅、農業という、国民生活に直結する4つの分野の改善を図ることを目指した事業
 →後に、「人口」が事実上の5つ目の分野として設定
・2006年の本プロジェクト財政支出は、45億ドル(…連邦全体の支出の10%相当)
 →2008年の予算額は120億ドル規模に
・本プロジェクトが始まった意味
 第一: ロシアの発展の方向性がはっきりとした
 第二: メドヴェージェフが、その実行のために大統領府長官から第一副首相に異動した
・国民生活を目に見えて改善すること →メドヴェージェフの課題に

○大統領府審査局の役割
・メドヴェージェフを支えたのは大統領府のスタッフであり、特に審査局の関係者
 →優先的国家プロジェクトに関与したチームが、ほとんどそのまま大統領メドヴェージェフの側近に

○教育
・充実した教育、有能な人物を出自に関係なく選抜できるシステム
 →ソ連時代にはある程度実現
・ソ連崩壊: 社会主義の瓦解
 →教育システムを支える予算が決定的に不足することに
・優先的国家プロジェクトは、ロシアにとっての得意分野であるはずの教育を立て直す事業でも
・政権与党の「統一ロシア」 
 →教育分野の改善を重要な成果として強調、国民にアピール
・高等教育機関の国際競争力向上を意識した事業も登場
 →ビジネススクール(MBAを取得する課程)の強化

○保健
・優先的国家プロジェクトの一つの「保健」
 →1990年代の混乱と厳しい経済状況によってすっかり荒廃してしまった医療現場の改善
 →問題は、設備のほう
・二つの課題の取り組み
 →医療現場のインフラの整備
 →社会保険制度の充実
・保健分野での改善を数値を並べて成果を強調
 →演説における恒例行事に

○人口
・2005年時点の世界銀行データ
 →ロシアの人口: 約1億4300万人
  男性の平均寿命: 59才
  女性の平均寿命: 72才
 →年に70万人の人口減
 ⇒人口が優先的国家プロジェクトの1分野に
・人口問題の改善は、社会の活力を高めることと事実上イコール
・経済の状態が改善、特にモスクワなどの都市部で出生率が上がるなど前向きな兆候

○住宅
・ソ連時代の住宅 →それぞれの社会的な役割に応じて国家機関から与えられるもの
・ソ連が崩壊 →アパートが売買の対象に
 →1990年代の混乱と貧困の最中に二束三文でアパートを手放し、住む場所もないような目に遭う者があふれ始める
 ⇒最も典型的な住宅問題
・プーチン時代 →経済成長に合わせて不動産価格も高騰
・ロシアの住宅問題は二つのベクトル
 第一: 「中産階級」にとって適当な住宅が少ない状態
 第二: 住宅ローンに派生する問題が深刻化
・この分野においても、経済の高度成長によって国民生活全般が良くなっていったこと、そして国際金融危機の負の影響が最小限であったことが、クレムリンを救った

○示された方向性
・優先的国家プロジェクト →劇的な成果を上げられず、かといって、失敗でもない
 ⇒最大の意味は、ロシアの発展の方向性を明確な形で示したこと

2 宗教の復権

○ロシア語
・世界最大の土地面積のロシア
 →1億4000万人の国民を束ねているものは、ロシア語と正教
・見事なまでに画一的なロシア語
 →方言らしい方言に出会うことはない
・ロシア人は、特に行為の主体を特定しない受動態を好む(英語のby以下を明示しない)
 →物事や出来事を「上から与えられた(上の思し召し)」と考えることに起因

○正教
・混乱の1990年代 →正教は国民の心の拠りどころに
・プーチン政権以降のロシア →ロシア正教会は、最大の受益者の一つに
 →ソ連崩壊以降、ロシア正教は、帝政時代に続いて2度目の繁栄を迎えつつある

[終章 これからのロシア]

○「プーチンが暗殺されたら」
・ソ連の崩壊 →それまでのゲームのルールの多くは崩壊
・1990年代の混乱 →予測不可能な世界で行動、判断
・自らを法律家と呼ぶプーチン →立法のプロセスを堅持
 →長期的発展計画、「プーチンのプラン」のルール作りそのものに見出される特徴
  第一:プーチンという圧倒的に影響力のある指導者自身の関与が不可欠
  第二:ルールの形成によって、プーチンの個人的要素は薄まっていった
・2007年冬、アメリカの研究者が発表した「プーチンが暗殺された場合、ロシアはどうなるか」という分析
 →「基本的な構造は不変」としたこの研究者の指摘 
  →先見の明に富んだもの
 →当時どん底の米露関係、この1件はスキャンダルに

○普通の豊かな国へ
・権威主義的な体制、プーチンによる独裁体制、そのような予兆は何一つなし
 →ロシアは「普通の豊かな国」になろうとしている
・ロシアの中期的発展計画 …進行を遅らせるような妨害要因は存在
 →国内的には、汚職問題が深刻
 →特に決定的なのが原油価格など、天然資源の国際価格

○「強いロシア」とどう付き合うか
・ロシアと関わりを持ち、それを真に互恵的なものに
 →お互いの意図を理解することが不可欠
・エネルギー資源の開発
 →ロシア領内に外資100%のプロジェクトを認めることは、ロシアとしてどうしてもできない
・「豊かな精神性のうえに立つ豊かな国」という、国民生活のゲームのルール
 →今後に向けて重要に

○日本とロシア
・ロシアにとっての判断基準
 →自らの中長期的目標を達成するうえでパートナーとなるに相応しいアイディアとリソースを提供してくれるかどうか
・今後の日本とロシアの関係をより良い状態で維持
 第一: より多くの「成功例」を築き上げていくこと
 第二: 「成功例」を積み上げる障害をできるだけ早期に取り除く必要

≪あとがき≫
・ロシアは少なくとも1990年代のようなどん底をもう一度味わうつもりはなく、強く、安定した国を目指している
・ロシアは日本人や欧米人が感覚的に有しているゲームのルールとは違った行動パターン
 →我々も現実的になってそのルールを理解し、対話していくべき

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