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$300B突破の2010年半導体販売高見通し、はてさて2011年は?

米SIAからグローバル半導体販売高について、恒例の月次発表に続いてこれも恒例の年次予測が発表されている。本年、2010年は$300.5Bと、史上最高を更新するとともに、$300Bの大台突破という節目達成となりそうである。
もっと何年か早くやってくるという予測が10年くらい前から出回っていた感じがあるが、経済危機の後の新興経済圏の急激な盛り返しを受けた今回は本物か、そしてその大台を超えた後の来年、2011年は如何?、早くもいくつかの見方が出回っている。

≪米SIAからの発表2件≫

9月、そして7-9月、第三四半期の半導体販売高が、米SIAより次のように発表されている。

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○グローバル半導体販売高、前四半期比6.1%増…11月1日付けSIAプレスリリース

9月のグローバル半導体販売高が$26.5 billionで、前月、8月の$25.8 billionから2.9%の増加、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。2010年第三四半期の販売高は$79.4 billionとなり、前四半期の$74.8 billionから6.1%の増加である。この第三四半期の販売高は、前年、2009年同期の$62.9 billionを26.2%上回った。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「半導体販売高は、consumerおよび産業用electronic製品の需要が力強く、2010年第三四半期を通してすべての地域で着実に伸びている。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「該業界の在庫は、引き続き需要と概してバランスしている。」とToohey氏は続ける。

「パソコン、flat panelテレビおよびモバイル機器などconsumer electronic製品の需要が経済の不安定が続いてインパクトを受ける可能性があり、年末に向けて伸び率が緩やかになると思われる。」とToohey氏は締め括った。

SIAは、11月4日に半導体予測アップデート版をリリースする。

※9月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/September%20charts.pdf
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これに関連する記事、データとして、以下の表し方となっている。今年前半からの伸びの基調は続くものの、率としては鈍化傾向が見られる、という分析である。

◇Analyst: September chip sales rise (11月1日付け EE Times)
→Carnegie Group(Oslo, Norway)のアナリスト、Bruce Diesen氏。9月のグローバル半導体販売高3ヶ月平均は$26.5B、8月の$25.7Bから僅かながら増加の旨。前年同期比は27%増、8月は33%増であった旨。

◇Q3 global semiconductor sales continue to show 2010 growth-Q3 is capped off by September sales growth and followed on a robust first half of the year, the Semiconductor Industry Association reports.(11月1日付け Electronics Design, Strategy, News)

◇September, Q3 chip sales fall below par (11月5日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationデータの分析。
9月の"実際の"グローバル半導体市場は$29.37B、前月比15.5%増、前年同月比20.8%増。この前月比増はここ10年の平均、24.2%を下回っている旨。
2010年第三四半期の半導体販売高は$79.385B、前四半期比6.1%増、前年同期比26.2%増。この前四半期比増はここ10年の平均、8.1%を下回る旨。

この月次発表に続いてすぐさま米SIAから、本年および向こう2年を展望する販売高予測が次のように発表されている。

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○SIA予測:2010 - 2012年…11月4日付けSIAプレスリリース

Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2010年から2012年についてグローバル半導体販売高の年次予測をリリース、2010年について32.8%増、$300.5Bの最高販売高記録を見通している。今回の予測では、2011年は6.0%増の$318.7B、2012年は3.4%増の$329.7Bとしており、2009年から2012年についてのcompound annual growth rate(CAGR)は13.4%と見積もっている。

「広範囲の末端市場にわたる力強いグローバル需要により、本年は販売高の最高記録となっている。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「経済が回復、consumer confidenceが戻って、2012年までなお穏やかながら伸びていくものと見ている。」とToohey氏は締め括った。
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本年の$300B突破とともに、2011年、2012年と一桁のプラス成長が続く見方となっている。これに対して以下の反応、改めての見方が続いている。

◇IC Insights disagrees with SIA forecast (11月4日付け EE Times)
→IC Insights社が、米SIAからの今回のIC予測と見方が合わない旨。

 2010年 2011年 2012年
SIA今回予測 
$300.5B
$318.7B
$329.7B
32.8%増
6.0%増
3.4%増
SIA6月予測 
$290.5B
$308.7B
$317.8B
28.4%増
6.3%増
2.9%増
IC Insights社予測 
31%増
11%増
10%増

「2012年についてのSIA予測は、半導体業界の"death"同然、どうしても賛同できない。」(IC Insightsのpresident、Bill McClean氏) 

◇Update: Gartner sees bright spots for ICs (11月4日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)のアナリスト、Bryan Lewis氏。IC市場予測、次の見方を踏襲の旨。
 2010年   2011年
 31.5%増   4.6%増

◇Record 2010 sales to be followed by moderate - not disappointing - growth years(11月5日付け Electronics Design, Strategy, News)
  
少なくとも二桁の伸びを、という見方には気持ち的にはその通りではあるが、なかなかままならない世界経済そして消費者心理に大きく左右される昨今の半導体販売高であり、幅広い視点で流れを随時見定めていくこと、と正直な思いではある。


≪市場実態PickUp≫

世界経済の最大の震源、中国で、上海万博が閉幕して、直後の動き、各方面への波紋に注目である。半導体業界からしても同じで気になるところであるが、現地上海から以下の発信である。

【万博後の上海】

◇上海浦東エリアの家賃下落が顕著に(11月1日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→上海万博の影響で、一時、記録的な値上げを見せていた上海浦東エリアの家賃だが、ここにきて一気に下落傾向だ。
とくに、大型の高級マンションの下落幅が大きく、30-40%家賃が下がったエリアもある。これらマンションは、万博関係者の外国人が借りていて、万博終了後に帰国するパターンが大部分。

◇上海経済にとっては試練の2011年(11月2日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→上海市発改委会の担当者は、現地マスコミのインタビューに対して、2011年の上海は、経済的に過去15年間で試練の年になる可能性が高いことを示唆している。
この中で、上海のGDPの成長率は8%程度を見込んでいるものの、過去15年と比較してもかなり穏やかな伸びになると予想している。
今後は、サービス業・ハイテク産業を中心とした産業の構造改革を急ぎ、地区ごとの役割を明確化して開発していく方針のようだ。

◇万博閉幕で景気後退するか? 日本の教訓に学べ(11月3日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→上海万博は31日、最終日を迎え、184日にわたる博覧会の幕を閉じた。上海万博には過去最多となる246の国と国際機関が出展した。
万博閉幕にともない、中国の景気が後退するのではないかという話題が浮上している。こうした情況はかつて日本でもあった。1964年の東京五輪と1970年の大阪万博をきっかけに高度経済成長を果たした日本は、1968年に当時の西ドイツを抜き、国民総生産(GNP)世界2位の経済大国となった。
今日の中国は当時の日本と同じだ。米国との貿易摩擦は日増しに激化し、人民元は切り上げ圧力に晒されている。上海万博の閉幕によって中国の高度経済成長は終止符を打つのか?

IntelがFPGAのstartup、Achronixとの戦略的連携からファウンドリー対応を行うという発表が、その真意を巡って以下の記事展開となっている。今後の先端設計開発に向けた一つのツール、という見方が出ている。

【Intelのファウンドリー対応】

◇Intel to fab FPGAs for startup Achronix (10月31日付け EE Times)
→Intel社とprogrammable logic startup、Achronix Semiconductor社(San Jose, Calif.)が月曜1日、戦略的合意を発表、IntelがAchronix向けFPGAsを22-nm以降で作るために半導体プロセス技術を供与する旨。

◇Achronix's foundry pact with Intel: how big a deal?(11月3日付け Electronics Design, Strategy, News)
→AchronixのSpeedster 22i FPGAファミリーをIntel社の22-nmプロセス技術で作るという発表について。

◇Will Intel be a big foundry player? (11月5日付け EE Times)

◇Source: Intel forms foundry unit (11月6日付け EE Times)
→消息筋発。Intel社が、ファウンドリー部門を控え目に設けている旨。

モバイル機器に関する特許侵害について、AppleがMotorolaに対して逆提訴を行っている。

【Apple対Motorolaの応酬】

◇Apple sues Motorola-Apple claims Motorola infringes six of its patents just weeks after Motorola filed a complaint alleging patent infringement by the iPhone maker.(11月1日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Apple社が、現存特許6件について先週後半に(29日遅く)Motorola社を相手取って特許侵害訴訟2件を起こし、「Droid」ラインなど多数のMotorola製携帯電話がAppleの特許を侵害している旨。

Obama政権が厳しい審判を受けた米国の雇用問題であるが、On Semiconductorが8インチラインに追加投資を行って雇用を確保していくスタンスに賞賛の声が上がっている。

【米国の雇用確保】

◇Hooray for On's fab investment (11月4日付け EE Times)
→米国でのjobsを守ろうと、On Semiconductorが、向こう6ヶ月にわたって同社の200-mmウェーハ製造拠点(Pocatello, Ida.)にさらに$15.7M相当の生産装置を入れる計画の旨。

上記のIntelの記事にも通じるところを感じるが、アナログ半導体を300-mm fabで作るビジネス的な意味を問うニュアンスを感じる以下の記事である。
ニワトリ卵的であるが、先鞭をとにかくつけて工夫、発案して大きくしていく、という心意気にかかるところを感じている。

【アナログ半導体の300-mm fab】

◇TI, Maxim ramp 300-mm analog chips (11月5日付け EE Times)
→Texas Instruments社が、Texasの300-mm fabでアナログ半導体を立ち上げ、ライバルのMaxim Integrated Products社は最近、300-mmウェーハで作ったアナログ製品を品質認定して出荷の旨。問題は300-mm fabがアナログで大きな取引であるや否やの旨。


≪グローバル雑学王−122≫

多極主義と実利主義を基本ルールとするロシア外交の世界各国との対峙を、

『ロシアの論理 −復活した大国は何を目指すか』(武田 善憲 著:中公新書 2068)
 …2010年8月25日 発行

より見ていく。関係の推移、実態について、改めて気づかされることが多々である。


[(続き)第二章 外交 −多極主義と実利主義]

2 旧ソ連諸国

○影響圏
・バルト三国を除いたいわゆるCIS(独立国家共同体)との関係
 →ロシア外交の最重要項目の一つ
 →異なる「極」ではなく、「影響圏(sphere of influence)」と見なす
 ⇒ロシア人一般の旧ソ連崩壊に対する複雑な思いを反映
 ⇒指導層も含めたロシア社会に共有されている複雑な感情以外では説明し難い
・「親ロシア」かどうか、基準は相当に主観的
 →「親密」〜アルメニア、ベラルーシ
  「疎遠」〜ウクライナ、グルジア

○ウクライナ
・2004年のウクライナ大統領選挙
 →親露派のヴィクトル・ヤヌコーヴィッチに強く肩入れ
・対立するヴィクトル・ユシチェンコが再選挙で勝利
 →「ロシア離れ、ヨーロッパ化」を最優先事項に掲げた政治を推進
・2004年以降、原油価格の高騰、ロシアは明らかにそれまでとは別格の国力に
・2006年1月、ウクライナ向けガス・パイプラインを遮断
 →資源を有するロシアが如何に有利な立場にあるか
  ウクライナのような小国の命運がどれほどはかないものか
・2010年1月の大統領選挙、6年前の「悪役」、ヤヌコーヴィッチが勝利
 →現実に必要なパートナーとしてロシアを再認識

○グルジア
・2003年、グルジアで政治的混乱(いわゆる「バラ革命」)が発生
 →「ポストソ連」の世代が政権に
 →グルジア問題はロシア外交における最優先事項の一つに
・ロシアはグルジアを「旧ソ連空間における影響圏にある」と見なすスタンス
・2008年8月の軍事衝突に始まる一連の混乱
 →ロシア軍とグルジア軍がグルジア西部で激しい戦闘に
 →ロシアが南オセチアとアブハジアを独立国家として承認するに至る
・グルジアを含むコーカサスの問題は、歴史的、そして民族的に極めて複雑

3 アメリカ
・冷戦終結後18年、なお米露関係は高度に政治的、プラグマティズムを軸とした関係からはほど遠い
 →第一: ロシアとアメリカの経済的な相互依存度が低い
  第二: 戦略的にはお互いを無視できない

○エリツィン時代とプーチン時代の共通点
・対米関係が「期待に始まり、失望に終わった」という共通する事実
・1990年代の後半、アメリカに対する、あるいはアメリカの価値観に対する漠然とした反感が広く共有されている。
・プーチンは、一緒に仕事ができるパートナーという印象を与えている。

○9・11以後
・9・11 →米露関係の転機
 →チェチェン政策の表の側面を強調する絶好の機会に
・9・11を梃子として米露関係の改善を図り、対等なパートナーシップを定着へ
 →そのプーチンに対して、冷や水をかけたのはブッシュの側
 →ブッシュ政権下のアメリカの対外政策で、ロシアの優先順位は明らかに下がる
・2003年10月、ユコス問題
 →石油会社ユコスの社長、ホドルコフスキーが脱税容疑で逮捕
 →ロシア国内の主要な油田の権益を外国企業に売り渡す、という受け入れ難い行為

○対イラク戦争の失敗
・アメリカの対イラク戦争とその失敗
 →アメリカの一極主義を激しい調子で批判、自らの多極主義正当化に弾み
・ロシアの地政学的な安全保障観から、ウクライナが親米になったのは極めて深刻
 →ウクライナは平原の陸続き、歴史的・民族的にもロシアと非常に近い

○「新冷戦」
・この後、米露は「新冷戦」と呼ばれる段階に
・2007年、両国とも「内政の季節」
 →ワシントンにもモスクワにも、米露関係を正常化しなければならないという発想はほとんど見られず
・第二期ブッシュ政権の後半、アメリカの国際社会における影響力が大きく減退

○オバマ=メドヴェージェフ時代
・オバマ=メドヴェージェフ時代の米露関係は、今のところ順調な展開
・政治制度の問題に実態の要素を加えても、メドヴェージェフはオバマを独占できる関係

4 ヨーロッパ
・ヨーロッパ側の指導者の考え方やアプローチによって随分事情が変わってくる

○ブレアのイギリス
・トニー・ブレア首相とプーチン大統領の良好な個人的関係
 →ブレア首相の末期、両国関係が相当に冷え切っていたが、双方の国益、特に経済的利益を決定的に損なうことはなかった

○シュレーダーのドイツ
・ドイツのゲアハルト・シュレーダー前首相の親密なプーチンとの個人的関係
 →ドイツは他国に先んじてロシアのゲームのルールを的確に理解する契機

○ベルルスコーニのイタリア
・プーチンと個人的な関係を築いたシルヴィオ・ベルルスコーニ首相

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