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世界最高速、半導体fab、・・、事欠かない中国関係の話題

中国との政治的関係あれこれ、連日の報道を賑わせているが、政治に限ったことではなく、経済面は勿論、半導体関係においても中国をとりまく話題に事欠かない日々となっている。政治では、会談では取りつく島がなく懇談というコンタクトになっているが、様々なパワー、民族の13億人を指揮する大変さが伝わってくる。半導体関係でも、中国関係の話題、実態をさらに把握して、相互交流・理解につなげるべき新たな段階を感じるところがある。

≪沸き起こる議論、警戒感≫

我が国のみならずアジア各国、そして世界各国に波紋を及ぼしている中国のあまりにも急激な経済の伸びであるが、その動きおよびそれからくる大きさが桁外れということで、一挙一動に注視、反応せざるを得ない現状ということと思う。現下の半導体関係アイテムについて、まずは、耳慣れてきたレアアース(希土類)である。

◇Rare earth supply chain: Industry's common cause(10月24日付け EE Times)
→鉱物、金属およびその酸化物はここ数年問題として見えてきていたが、中国が今年後半輸出割当量を削減、最近にきて解決されず常に政治的議論の対象となる問題になっている旨。

デバイス買い付けの契約も、先端通信関係となると、警戒感を引き起こす動きとなっている。

◇ZTE to buy $3 billion in chips (10月25日付け EE Times)
→中国のZTE社が、向こう3年にわたり$3B相当の半導体コンポーネントを米国5ベンダー、Qualcomm, Texas Instruments, Freescale, AlteraおよびBroadcomから購入する合意調印の旨。

◇ZTE buys $3B in chips from US companies, senators cite security concerns with China-based firm-China-based telecommunications equipment specialist ZTE has signed $3 billion worth of purchase agreements with Altera, Broadcom, Freescale, Qualcomm, and TI. Separately, US congressional leaders suggest ZTE's work in the US could pose a threat to national security.(10月26日付け Electronics Design, Strategy, News)

インテルの中国初の大連fabが稼働を開始している。ここでもどの先端世代まで今後展開していくか、議論を生じる可能性を孕んでいると思う。

◇Intel opens China fab (10月26日付け EE Times)
→Dow Jones発。Intel社が、中国における同社初のfab(大連[Dalian])内でのoperationsを開始の旨。

◇米インテル、中国・大連の工場稼働、半導体前工程、アジア初拠点。(10月27日付け 日経)
→米インテルが26日、中国・大連市で半導体工場を稼働させたと発表、同社が技術水準の高い前工程工場をアジアに持つのは初めての旨。回路線幅は65-nm、同社の最先端製品より2世代遅れとしている旨。

我が国を抜いて米国に迫る、という見出しが、GDPに続いて車の保有台数にも、という感じ方の以下の内容である。

◇自動車保有台数8500万台に、日本抜き米国に迫る(10月27日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→中国の自動車大国としての地位が一層確固としたものになった。公安部交通管理局がこのほど発表したデータ(ナンバープレート数に基づいて算出)によると、中国の車両保有台数は1億9900万台で、うち自動車は約8500万台に達したという。また毎年の車両増加台数は約2千万台に上るという。
この8500万台という数字から、中国の自動車保有台数がすでに約7500万台の日本を抜き、約2億5千万台の米国に次ぐ世界2位となり、中国は世界で2番目の自動車保有大国になった。

極めつき、世界最高速という表現に驚かされたのが、スーパーコン開発の記事である。まもなく発表される予定の"スーパーコン・トップ500ランキング"に注目とともに、やはり世界一でなければ市場インパクトに雲泥の差、と改めてアピールしなければならない心持ちが強まってくる。

◇Interconnect pushed China super to #1 (10月28日付け EE Times)
→初の中国製システムで世界最高速のスーパーコンピュータとされるTianhe-1aには、自前の超高速interconnectチップセットが一つとして効いている旨。

◇中国スパコン、米抜き「世界最速」、大学が開発「天河1号」(10月30日付け 朝日)
→中国国防科学技術大が開発したスーパーコンピュータ「天河1号」が、演算速度で世界最速とされる毎秒2507兆回に達し、米オークリッジ国立研の「ジャガー」がもつ最速記録の毎秒1759兆回(今年6月時点)を上回り約1.4倍になった旨。
日本では次世代スパコンが2012年の完成をめどに開発中、天河1号の約4倍となる毎秒1京回(1兆の1万倍回)の演算速度を目標にしている旨。


≪市場実態PickUp≫

中国のみならず、半導体市場の方も、先行きへの警戒感が強まってきている。好調な業績を発表しながらの複雑な内心ということと思う。

【先行きの警戒感】

◇TI posts big Q3 but sees slowdown (10月25日付け EE Times)
→Texas Instruments社の第三四半期売上げ$3.74B、前四半期比7%増、前年同期比30%増。
第四四半期については、$3.36B-$3.64Bの売上げを見込む旨。

◇Samsung tops forecast, sees DRAM glut (10月28日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.の第三四半期売上げ40.23 trillion won($35.8B)、前年同期比12%増。市場でのDRAM供給過剰気味を警戒の旨。

◇TSMC posts record quarter, sees lull (10月28日付け EE Times)
→TSMCの第三四半期連結売上げ$3.65Bの最高記録、前四半期比6.9%増、前年同期比24.8%増。

なかなかままならない、でもそこが面白味、醍醐味の半導体市場と思うが、ここ5年、向こう5年の推移および予測が次のように表わされている。中国はじめ新興経済圏の躍動で、際立つ節目の本年を改めて感じている。

【半導体推移&予測】

◇Semiconductor industry revenue growth expected to continue through 2014-Although much more modest than 2010's expected 32% revenue growth, the semiconductor industry is expected to experience a "soft landing" in 2011 with growth continuing through 2014, iSuppli reports.(10月25日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社発。今年、2010年の32%伸長から、2011年は5.1%増、半導体業界は"soft landing"回復段階に入っていくと見る旨。
グローバル半導体売上げ予測(単位:USB$)、次の通り。


 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
 230.7
 239.8
 264.1
 274.2
 259.7
 228.9
 302
 317.4
 322.2
 335.8
 357.4

  [Source: October 2010, iSuppli]

欧米のコンソーシアムが、"vampire power"(standby power for electronic devices)壊滅を目指しており、注目である。

【CMOS後継】

◇IBM, Infineon, GlobalFoundries, EU groups research TFETs for energy efficiency-"Project Steeper" will evaluate the physical and practical limits of boosting the performance of TFETs (tunnel field effect transistors) with III-V nanowires, and the resulting advantages for future energy efficient digital circuits.(10月27日付け Electronics Design, Strategy, News)
→IBM, Infineon, GlobalFoundriesおよび欧州の大学&研究機関などを含むinitiative、"Project Steeper"は、consumer electronicsの活性時エネルギー効率を10倍高め、passive or standby時の電力消費を実質的に除去することを目指している旨。

これは本当なのかどうか、米国でも単なる"噂"のとらえ方となっている。

【強力な連合】

◇東芝・インテル・サムスン、次世代半導体でトップ連合-微細化へ共同開発、経産省が支援、国内材料メーカーも参加(10月29日付け 日経 電子版)
→東芝が米インテル、韓国サムスン電子と次世代半導体の製造技術を共同開発する旨。半導体材料の世界シェアで過半を握る日本メーカーを加え、国際的な研究組織を設立、2016年までに回路の線幅を現在の最先端品の半分以下の10-nm台にし、大容量化を目指す旨。経済産業省も資金などで支援、次世代製品での日本の競争力確保を狙う旨。

◇Intel, Toshiba, Samsung to form IC consortium(10月29日付け EE Times)
→Intel社, 東芝およびSamsung Electronics Co. Ltd.が10-nm半導体技術の共同開発で力を合わせるという噂が飛び回っている旨。この時点、この記事は単なる憶測の旨。

アップルの急伸ぶりが目立つ携帯市場ランキングである。スマートフォンの市民権が一層確立されてきている状況を反映していると思う。

【携帯電話ランキング】

◇Apple enters top 5 mobile handset vendor ranking-Analysts say that the entrance of Apple to the top five vendor ranking underscores the increased importance of smartphones to the overall market.(10月29日付け Electronics Design, Strategy, News)
→IDCおよびStrategy Analytics、それぞれ発。第三四半期にAppleが、携帯電話ベンダー・トップ5入り、RIMを上回って第4位になった旨。


≪グローバル雑学王−121≫

ロシアの内政の仕組み、やり方、実態、そして外交の取り組み方を、

『ロシアの論理 −復活した大国は何を目指すか』(武田 善憲 著:中公新書 2068)
 …2010年8月25日 発行

より、解明していく風情の読み進め方となっている。経済が回れば、為政者の説くルールも浸透する実態が随所に表れている。


[(続き)第一章 内政 −与えられた職務に専念せよ]

3 政策決定過程

・既述の通り、現在のロシアにおける政策決定過程を分析することが事実上不可能
・必要な情報を提供、専門的な見地から助言、決定を実際の行動に移すための指示
 →こうしたことを行う場面が三つ
 第一: 大統領なり首相と「誰か」との完全にインフォーマルな会談や電話連絡
 第二: 毎週月曜に首相府で開催される閣議(大統領が出席)と、大統領執務室で行われる個別の会談

○安全保障会議
 第三: 安全保障会議
 …毎週金曜日(プーチン時代は土曜日)に開催される定例会合
  →国家の安全に関する問題全般
  →メンバーは例外なく口が堅い
  →大統領が不在でない限り、必ず開催
  →大統領がモスクワでなくサンクトペテルブルクに滞在していれば、そこで開催

○会議のテーマとメンバー
・安全保障会議で取り上げられるテーマ
 →何らかの形で「戦略的に重要」とか、「国家の戦略的利益に結びつく」と判断される問題
・安全保障会議のメンバーであるということ
 →ロシアの権力構造においては極めて大きな意味

○政府
・「政府の議長=首相」の任免権は大統領が有する
 →状況を一変させたのはプーチンの首相就任
・そもそもロシア政府は、「非効率」とか「巨大官僚機構」といったネガティブな表現をもって評されることが多い

○機能不全の理由
・政府が総体として機能不全である理由
 第一:構造的な問題 …「大きな政府」をそのまま引きずる
 第二:個別の省庁には多くが期待されていない …政策に落とし込む作業は政府ではなく大統領府が担当
 第三:政府は事実上スケープゴートにされてきた

○去勢されたエリート
・ロシアの内政状況はは、プーチンが大統領職にあった8年間でかなりの変化
 第一:経済的に豊かになっていった
 第二:政治は専門家集団による特殊な営みであるという感覚が広まった
・近年、エリート層の政治に対する興味も減退
 →今や時代が変わり、むしろ支持率も高く影響力も大きい現政権と良好な関係を築くことで成果を上げるべきという考えに
・未来に向けた構想を提示するのは大統領の専売特許
 →自らに与えられた職務に専従するべきであるというゲームのルールが形成

○「国民との対話」
・増えていく大統領による「国民との対話」の回数
 →対外的に発言をしなければならないエリート層に対して、いわゆる「トーキング・ポインツ」を示す
・巨大な自己抑制、あるいは自己検閲の機能が効果的に動き始めた
・化石燃料価格の高騰を背景に好調な経済
 →内政は高いレベルの安定を獲得

4 クレムリンの迷い
・2007年12月の国家院選挙での迷い
 →プーチン自身が「大統領を退いた後に何をするのか」という答えを出していなかったことが原因か
・「新しい大統領にとって不可欠な人物」という体裁をとってプーチンは首相に
 →この選択肢は正解

○メドヴェージェフの迷い
・2009年9月、インターネット新聞gazeta.ruに登場したメドヴェージェフの論文「進め、ロシア!」
 →確信を持ってロシアの発展の方向、その上での問題点を指摘
 →「プーチンのプラン」を履行するうえで刺激を与えるのが目的
 ⇒「ゲームのルール」が浸透していないという危機感の高まり

○内政システムの今後
・現在のロシア内政
 →極めて厳格な情報の管理、一枚岩的な意思決定と執行のシステムが確立
・ゲームのルールに基づいた内政のシステム
 →「2020年」という目標年限までは機能し続けるであろう

[第二章 外交 −多極主義と実利主義]

1 多極主義世界の追求

・ロシア外交の最も基本的なゲームのルール
 →「多極主義世界の追求」
 →典型的なバランス・オブ・パワー(勢力均衡)の発想
・1990年代前半のアンドレイ・コーズィレフ外相
 →明確な親欧米路線
 →経済的・社会的混乱の捌け口として欧米的価値観が非難の的に
・1996年〜1998年のプリマコフ外相
 →「ロシアの多極主義とは、欧米に擦り寄らないこと」というイメージを世界に

○全方位外交から多極主義外交へ
・プーチンは早い段階から多極主義外交の実践に着手
 →ロシアのゲームのルールにまで引き上げ
  国際政治的に見て、そのやり方が一定の成功を収めた
・最初の取り組み
 →若くて健康な肉体を最大限駆使、プーチン自身が文字通り世界中を飛び回り、その存在を国際社会に認知
・アメリカの国連の「お墨付き」を得ないでイラクへの派兵断行
 →ブッシュ政権にいかにも大きな打撃
・国際政治におけるロシアの地位の向上
 →ロシア経済の急速な成長とあいまって、ロシアは多極主義を声高に主張
 →多極主義の発想は中国や非同盟諸国など、多くの国々が支持

○外交と経済の融合
・ゲームのルールとしての多極主義
 →ロシアの経済的な利益の追求においても有効なツールとして機能
・多極主義という外交路線と、経済的な利害関係の融合という具体例
 →BRICsとの関係
・対アフリカ外交への積極姿勢
 →アフリカの資源開発へのロシア国営企業の関与

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