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consumer electronics市場に向けてあの手この手

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幕張でのCEATECに続いてこの時期、韓国はじめ各地での趣向を凝らした展示会風景および情報が伝えられてくる。半導体・デバイス市場で見ても、個人消費者市場の比率が一段と高まっていくなか、consumer electronics分野に向けた対応一色の雰囲気を幕張にてこの目で感じたが、今や現地に出かけなくてもその気分に十分になれるインターネット情報が満載であり、グローバルにもその雰囲気を確認できる風情となっている。

≪韓国エレクトロニクスショー≫

ソウル郊外で開催された韓国エレクトロニクスショー、2010 I-SEDEX(KINTEX[韓国 京幾道高陽市]にて)より、韓国現地の大手プレーヤーが繰り広げる一大絵巻を、記事情報から追ってみる。内容は最新技術の展示ながら、一昔、二昔前の我が国でのエレショーの雰囲気、記事記述を髣髴させるものがある。今回の全体の概観が次のように表わされている。

◇10 hot products at Korea Electronics Show (10月14日付け EE Times)
→韓国現地のメーカーが、目のくらむほどの製品の配列&展示、3-D TVs, DRAMs, LED ICsなど有力な顔ぶれ、以下の通り。

  1. Samsung Electronics Co. Ltd.、世界初、30-nm級DRAMデバイス出荷。2-GビットDDR3, 35-nm技術。
  2. Samsungの40-インチvirtual holographic LCD。ワインの歴史を示すtransparent LCDの展示も。
  3. LG Displayの3-D LCD TVホームシアター、48-インチシステム。
  4. LGの19-インチflexible電子ディスプレイペーパー、2,560 x 1,600モノクロ表示。
  5. Hynix Semiconductor社の30-nm級DRAM(2-GビットDDR3), 来年出荷予定。
  6. 韓国startup、Imagis Co. Ltd.のmulti-purpose, haptic driver。
    hapticsは触覚フィードバック技術。
  7. アナログファウンドリーベンダー、Dongbu HiTekのBCD(bipolar,CMOS, double diffused MOS)プロセス技術によるLED driver IC。台湾のファブレス、ADDtekとのコラボ開発。
  8. LGのsmart TV、Web connected TV。
  9. Samsungの同様なsmart TV技術。
  10. 他に負けまいと、Samsungのfull HD, 3-D LED TV。同社もう一つの3-D LCD TV。

この記事に寄せられた一般コメントを見ると、次の印象となっている。
・日本と比較すると、韓国は3Dだけにずっと焦点を当てている
・holographic LCDの品質は素晴らしく見える
・haptic driverは、非常に興味深い製品アイデア。ゲーム用途など。

さらに今回の関連する内容として、以下が見られる。

◇Samsung: Big year seen for 3-D, smart TV (10月12日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.のVisual Display Business、president、Boo-Keun Yoon氏基調講演。2010年は、3-Dおよびsmart TV技術にとって大きな年、転換期になる見込みの旨。

◇Korean startup rolls haptics for cell phones(10月12日付け EE Times)
→韓国のstartup、Imagis Co. Ltd.が、モバイル機器の次の大物と思われるmulti-purpose, haptic driverを控えめに出荷、hapticsは触覚フィードバック技術であり、力を加えると末端ユーザはシステム上の振動あるいは
動きを感知できる旨。

◇Korea's LG Siltron devises 450-mm wafers (10月13日付け EE Times)
→韓国唯一のSiウェーハメーカー、LG Siltron社が、参入の可能性に備えて450-mm基板を控えめに開発しており、今回該ウェーハを開発するプロセスを示している旨。

このような熱気を感じる最中、現下のパソコン市場は秋風が吹く様相が見られている。変わりやすい秋の空ということか、経済模様で急変するconsumer市場に要注意ということと思う。

◇PC sales weaker than expected in Q3(10月14日付け Electronics Design, Strategy, News)
→今週リリースの調査会社データ発。第三四半期のPC販売が、back-to-school販売およびtablet類への消費者の関心がいまひとつ、予想見積もりを下回っている旨。
 Gartner社速報:88.3M台以上で前年同期比7.6%増、前回予測は12.7%増。
 IDC速報:約89.7M台で前年同期比11%増、同社予測を約3%下回った。

consumer electronics機器およびconsumer electronics関連半導体の売上げ推移および今後の展望が、次の通り発表されている。比べてみて半導体の振れの大きさを改めて知らされるところがある。

◇Despite Consumer Electronics Surge, Chip Suppliers Face Cost Challenges(10月14日付け iSuppli Corporation Press Release)

◇Consumer electronics rebounds, says iSuppli(10月15日付け EE Times)
→iSuppli社発。consumer electronics機器市場売上げ、2010年は前年の減少をほとんど帳消し、推移&展望、次の通り:
 2009年  2010年   2011年  2012年  2013年  2014年
      $259.0B
 3%減         6.7%増   7%増  1.2%増  0.6%減
consumer electronics関連半導体売上げ:
 2009年   2010年  ・・・2014年
 $44.8B   $57.2B     $69.4B
 15.7%減   27.7%増
関連半導体売上げグラフ、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/News/2010-10-14_Consumer_Isuppli.jpg

現時点、タブレット型端末を巡る各社の動きが急を告げている様相がある。
以下も然り、次の節のインテルとAMDの鬩ぎ合いにもつながっていく。

◇タブレット型端末の競争激化、台湾アスース参戦。(10月15日付け 産経)
→パソコン世界5位の台湾メーカー「アスーステック(ASUSTec)・コンピュータ(華碩電脳)」が15日、電子書籍などに対応したタブレット型の多機能端末「EeePad(イーパッド)」を来年初頭にも日本に投入する方針を明らかにした旨。


≪市場実態PickUp≫

インテルとAMD、因縁のライバル両社から、業績発表が相前後して行われている。過去最高という表現が並ぶインテルに対して、フラットな状況のAMDという対比がある。パソコン市場の先行きとともに今後に引き続き注目であるが、もう一つ、tablets端末にかけるスタンスの大きな差が以下の経過記事の中で読み取れてくる。

【インテルとAMDの業績発表】

◇Intel beats Street, Q4 outlook up (10月12日付け EE Times)
→Intel社の第三四半期売上げが初めて$11Bを越え、前年同期比18%増の$11.1Bの旨。

◇Otellini throws down gauntlet in tablets (10月12日付け EE Times)
→Intelのchief executive、Paul Otellini氏が、$11.1Bの売上げ記録およびMPUsの販売数量記録を発表したconference callにて、tabletsに挑戦、この分野で勝つために思うまますべてのassetsを駆使する旨。

◇インテル、売上高・営業利益が過去最高、7〜9月期(10月13日付け asahi.com)
→インテルが12日発表した今年7〜9月期決算は売上高、営業利益が四半期決算として過去最高、純利益も10年ぶりの高水準となった旨。スマートフォン(多機能携帯電話)の普及に伴い、携帯電話向けの売上高が過去最高になった旨。

◇Analysts lukewarm on Intel after Q3 report (10月13日付け EE Times)
→Intel社の第三四半期earnings発表について、Wall Streetアナリスト連が水曜13日、概して入り混じった見方、同社の第四四半期販売高目標が心配されたよりは良かったが、同社は鈍化する市場のなか依然いくらか逆風に直面している旨。

◇Update: AMD hits sales target, projects flat Q4(10月14日付け EE Times)
→AMDの第三四半期売上げ$1.62B、前四半期比2%減、前年同期比16%増。次四半期はフラットな販売高を見込む旨。
宿命のライバル、Intel社が最高の売上げ記録を出し、来る四半期約3%増の販売高を見込む発表の2日後の本発表である旨。

◇AMD revenue slips 2%; Meyer says tablet R&D investment not immediate-AMD reports a $1.62 billion in Q3 revenue, with expectations for flat sales growth in Q4. CEO Dirk Meyer says that, for now, AMD will not be turning R&D dollar spending toward the tablet market.(10月15日付け Electronics Design, Strategy, News)

残る巨人、マイクロソフトという感じ方があるが、スマートフォンの打ち上げが行われるとともに今後に向けたアプローチについて憶測を呼んでいる。

【マイクロソフトの攻勢】

◇マイクロソフト、新OSスマートフォンを米で11月8日発売。(10月12日付け 日経 電子版)
→米マイクロソフト(MS)が開発した新型の携帯電話用OS、ウィンドウズフォン7を搭載した高機能携帯電話(スマートフォン)が11月以降、世界30カ国以上で順次登場する旨。MSはアップルのiPhoneやグーグルのOSを搭載した機種に対抗、ITの次の主戦場であるスマートフォン市場で攻勢をかける旨。

◇Why Microsoft Windows 8 will run on ARM (10月14日付け EE Times)
→Windows 7のほとぼりがまだ収まらないなか、次の大物がどうなるかの考えについての記事。PCsとモバイル機器の間の距離感、橋渡しの見方。

市場軟化の雰囲気が、半導体在庫のデータからも注意信号が発せられている。

【半導体在庫】

◇ISuppli: Chip market could face oversupply (10月11日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)発。第三四半期にいくつかの末端市場で需要が軟化、半導体在庫水準が供給過剰領域に入っている可能性、そうであれば2010年の大方で見られた締まった在庫およびpart不足からは劇的な変わり様の旨。
・グローバル半導体在庫状況
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/101011_isuppli_doi.jpg

中国でも自前の技術方式が随分と謳われていた経緯があるが、インドでもOS開発について同様の動きが見られている。

【インドの国家安全意識】

◇Security concerns prompt India OS initiative(10月11日付け EE Times)
→国家安全の問題意識からインド政府が、自前のoperating system(OS)開発計画を促進する動き、インドのDefense Research and Development Organization(DRDO)が、BangaloreおよびNew Delhiに2つのソフトウェア技術センターを設立している旨。


≪グローバル雑学王−119≫

中東のそれぞれの地域、人々の素の、生の思い、実態に、歴史、経緯を踏まえて、

『<中東>の考え方』 (酒井 啓子 著:講談社現代新書 2053)
 …2010年5月20日 第1刷発行

より、かなり奥深く触れられたと思っているが、今回で読み終わりである。
インターネットの普及ぶりにはここ中東地域でも目を見張るところがあるが、この"グローバル雑学"の更新も果てしなくなる予感がある。


[(続き)第4章 イランとイスラーム主義−−−イスラームを掲げる人々]

3 「民主化が進むとイスラーム主義が強まる」のはなぜか?

○イスラーム主義はなぜ台頭しているのか
・1970年代後半ごろから、中東各地で、イスラーム主義勢力こそが、時の権力者の専横や外国支配に対して果敢に戦いを挑み続ける主体に
・自分たちの共同体を守るには、自分たちのアイデンティティーのひとつであるイスラームを、社会変革の核に
 ⇒イスラーム主義

○ヒズブッラーとハマース
・イスラーム主義への支持
 …「外国に抑圧され続けている」と感じる人々が、中東各地に多く存在
・イスラエル兵や米兵に対しては自爆攻撃も辞さないヒズブッラー
 →一方で、NGOとしての側面も
・ハマース …「イスラーム抵抗運動」という正式名称のアラビア語の頭文字
 →1987年、インティファーダの発生と同時期に、設立
 →抵抗運動を続けながら、占領地住民の生活を支える機能

○民衆が支持するのはなぜか?
・ヒズブッラーやハマースは、占領地で十分な社会サービスを受けられない住民を対象に、地道な社会活動
・2006年1月の自治評議会選挙で、ハマースが大方の予想を裏切って過半数を獲得し、圧勝

○ムスリム同胞団
・ムスリム同胞団 …ハサン・バンナーというエジプトの青年教師が1928年に結成、アラブ世界全体に影響力を持つイスラーム主義組織
 →1980年代には押しも押されもせぬエジプトの一大政治勢力に

4 「弾圧されて過激化する」

○アルジェリア総選挙で開いた風穴
・1991年のアルジェリアでの総選挙
 →「民主化するとイスラーム勢力が伸びる」という図式
・イスラーム救国戦線(FIS)の急進出
 →軍は、即座に議会を解散し憲法を停止、FISは非合法化

○米国同時多発テロへの流れ
・多くのイスラーム運動は穏健路線をとり、暴力を否定して社会活動を通じた市民社会の確立を目指した
・一方、武装闘争路線をとり、運動を過激化する派閥も
・イスラーム運動を弾圧する政権を支援しているのは、アメリカ
 →9・11事件につながる国際的イスラーム武闘路線の「反米」

○アフガニスタンとアルカーイダ
・海外に流れ出た武闘派をうまく吸収したのが、内戦状態のアフガニスタン
・イスラーム教徒の住む世界各地の「紛争地」に赴いて、義勇兵として活動を展開
 →アルカーイダ

○イスラーム主義の多様性
・イスラーム主義
 →他の体制批判思想と同じように、穏健から過激、保守から革新まで、さまざま
・暴力路線を究極まで推し進めたアルカーイダ
 体制護持のために批判を封殺するイランのアフマディネジャード政権
・今さらに多様化している中東の人々の社会意識がどこに向かっていくか、にかかる

[終章 メディアとアイデンティティー]

○パレスチナのラッパー
・ヒップホップ・グループのDAM
 …イスラエルにいる軽やかにラップを歌い踊るパレスチナ人たち
・今、中東の若者の声を代弁
 →自分たちの声を反映させられる場所はどこにあるのか?

○庶民の声はどこにいった
・表現や報道に制約があっても、人々は集い意見を交わす場所を見つけて、活き活きと発信
・イランで今、体制批判の情報交換は、携帯メールやツイッター

○アラビア語衛星放送「アルジャジーラ」の影響力
・中東の人々の情報環境
 →衛星放送とインターネットの普及によって、劇的に変化
・それまでの「面白くないテレビ」を一変
 →1996年設立、アラビア語衛星放送「アルジャジーラ」(「アル」はアラビア語の定冠詞)
・ジャジーラ放送 …「中東のCNN」の異名
 →人気番組「反対の方向」は、自由な報道と議論の場
 →BBCに勤めていたアラブ人ジャーナリストたちが、カタールの首長からの支援を得て、ジャジーラ放送が誕生
・エジプトの衛星放送ナイルサット、2009年春に「コリアTV」を開局
 →韓流ドラマは、アラブ世界でも一大ブーム

○イランのインターネット普及率は48パーセント
・2000年から2009年の間、イスラエルを除く中東・北アフリカ諸国のインターネットユーザは、32倍にも増加
 →世界で最も伸び率の高い地域
・政府による統制の厳しい国々ほど、インターネットが爆発的に普及しているよう
 …アラブ諸国にも「ノクタ」と呼ばれる政治風刺の伝統

○ネット空間
・中東の若者たちがネット空間を通じて見ている今
 ⇔ 国際社会が中東社会に対して持っているイメージ
  →如何にかけ離れているか
・対イスラエル抵抗運動について、「E-インティファーダ」(EはelectronicのE)なる言葉も

○ヴァーチャルなイスラームの連帯
・ジャジーラ放送の歯に衣着せない対米批判報道
 →アラブ、イスラーム圏で人気を博す
・見知らぬ遠い世界のイスラーム教徒同士がヴァーチャルな共同体の中で連帯意識を醸成

○ネットでのイメージと民衆感情にはギャップも
・国境を超えるヒーローへの賞賛
 →ヒズブッラーの指導者、ハサン・ナスラッラーの人気の例
・だが一方、実際に戦禍のなかで生活する人々、ヴァーチャルなネット空間のなかで形成される世論、この間に乖離が生じているのは事実
・現代のネット社会が共通に抱える問題
 →中東社会のリアルとは何か、という深遠な問い

○イスラーム銀行とスカーフ
・スカーフをかぶる
 イスラーム銀行を利用する 
  ⇒イスラーム教徒として最も日常的、手っ取り早く実践できること
・情報革命が庶民のイスラーム化に与えた大きい影響
 →説教をインターネットでいつでも聴くことができる

○なぜスカーフをかぶるのか
・自分たちのアイデンティティーは何?
 →ひとつの答えとして、今中東の人々はイスラームを選択
  ⇒伝統的権威が換骨奪胎された、近代化し大衆化したイスラーム社会
・人々は自発的にイスラームのアイデンティティーを選び、自己主張するように
・国家の枠組みを軽々と超えて、日常社会と世界規模のネットワークが縦横無尽につながっていく
 ⇒現代社会の「グローカル化」 …地域の特性を重視:「ローカル化」
                …世界を普遍化  :「グローバル化」

≪おわりに≫
・中東全体を見渡す本がないのは不便、と切実に感じていた
・ばらばらに散らばった、中東についての知識や分析をできるだけつなげて、消えゆく事件や戦争の記憶を、いま私たちが生きている世界の政治の動態のなかに位置づける
 ⇒本書の動機

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