6ヶ月連続増の一方の先行き下方修正、見極め要する市場
米SIAから発表された8月の世界半導体販売高は、6ヶ月連続の前月比増加となり、1-8月の累計販売高が$194.6 billionと$200 billionに迫っている。
昨年は$220 billion台の年間販売高であったから、今年は30%前後の伸び率が予想されているのも肯ける話ではある。一方、PC市場など先行き懸念があるとともに、世界の政治、経済情勢が一段と波乱要素を高めてきており、警戒感度を上げるべき様相の継続を受け止めている。
≪8月の世界半導体販売高≫
米SIAからの発表は以下の通りで同じ受け止め方を感じるが、この発表の後、為替水準など世界の情勢が一層の波乱含みの展開を見せている。
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○8月のグローバル半導体販売高、前月比1.8%増…10月4日付けSIAプレスリリース
8月のグローバル半導体販売高が$25.7 billionで、前月、7月の$25.2 billionから1.8%の増加、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。昨年、2009年8月の$19.4 billionから32.6%の増加である。本年1-8月の累積の販売高は$194.6 billionとなり、2009年同期間の$134.7 billionから44.4%の増加である。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。
「半導体販売高は8月の力強く、6ヶ月連続の前月比増加となっている。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「新興市場、特に中国とインドでのインフラ拡大と相まってPCおよびワイヤレス関連製品が、引き続き販売高を引っ張っている。米国および欧州における経済状態についての懸念は季節的パターンとともに、しっかりよく見つめる必要がある。我々の本年2010年、$290.5 billionという予測には依然自信があり、年間伸長率28.4%となる。」とToohey氏は締め括った。
SIAは、11月4日に半導体予測アップデート版をリリースする。
※8月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒http://www.sia-online.org/galleries/press_release_files/August%20charts.pdf
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地域別の内訳データが次の通りであるが、我が国の前月比増加が目立つ形になっている。
【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域 | Aug 2009 | Jul 2010 | Aug 2010 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 3.29 | 4.75 | 4.84 | 47.1 | 2.0 |
Europe | 2.41 | 3.13 | 3.13 | 29.8 | 0.1 |
Japan | 3.37 | 3.88 | 4.04 | 19.8 | 4.1 |
Asia Pacific | 10.30 | 13.48 | 13.68 | 32.8 | 1.4 |
計 | $19.38 B | $25.24 B | $25.69 B | 32.6 % | 1.8 % |
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市場地域 | 3- 5月平均 | 6- 8月平均 | change |
Americas | 4.39 | 4.84 | 10.2 |
Europe | 3.14 | 3.13 | -0.2 |
Japan | 3.73 | 4.04 | 8.5 |
Asia Pacific | 13.55 | 13.68 | 1.0 |
$24.81B | $25.69B | 3.6 % |
今回の発表データに関連する内容として以下2件である。
◇Carnegie raises chip market growth forecast (10月4日付け EE Times)
→グローバル半導体販売高、8月の3ヶ月平均が入ってきてから、Carnegie ASA(Oslo, Norway)のアナリスト、Bruce Diesen氏が、2010年年間半導体市場予測を上方修正、前回の25%から今回27%伸長と予測、2011年は8%の伸びと見る旨。大方が予想している35%を下回っており、iSuppli社は最近32%に下げている旨。
◇August's 'actual' chip sales were below par (10月5日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationによる計算。8月の"実際の"グローバル半導体市場は$25.36B、前月($24.57B)比3.2%増、前年同月比30.8%増。前月比増加率は、ここ10年にわたる平均、7.5%を下回っている旨。
先行きについては、後工程関係で厳しい見方が出始めている。
◇SPIL spills into slowdown (10月6日付け EE Times)
→HSBCのアナリスト、Steven Pelayo氏。装置先延ばしの渦中、台湾のIC-packaging house、Siliconware Precision Industries Co. Ltd.(SPIL)の9月連結販売高が、前月比6.4%減、2010年第三四半期では前四半期比0.5%減、と見て予測を下方修正する旨。
◇Gear vendor K&S warns of softening demand (10月7日付け EE Times)
→半導体製造装置ベンダー、Kulicke & Soffa Industries社の10月1日にpresident and CEOに就任したBruno Guilmart氏が木曜7日、業界状況が軟化、同社の12月四半期販売高が以前の予想をかなり下回りそうな旨。
≪市場実態PickUp≫
このような半導体市場の感じ方のなか、恒例のCEATEC、小生世代にはどうしても"エレショー"と口に出てしまうが、開幕初日の幕張メッセに足を運んでみた。
【CEATEC JAPAN 2010】
・“デジタル家電の祭典”と銘打たれているように、一昔前の民生、産業、デバイスの区分けからConsumer Electronics一色の内容。とはいっても、デバイス関係の展示はかなりの比率があるが、中味はConsumer Electronics向けコンポーネントの色合い。テレビ、携帯と比べるとぐっと地味な印象が残る。
・3D技術(テレビ/カメラ/レコーダ)、スマートフォン、「デジタルヘルス」、「スマート・エネルギー」,「ロボット」などが展示のキーワード。メガネで見る三次元映像、シャープの「ガラパゴス」などに人だかり。
海外誌からの記事として、次の見方がある。
◇Japan hangs its hat on Android, sensors (10月6日付け EE Times)
→日本のエレクトロニクス業界における3つの原則的な流れ:
1.日本のCEベンダーはほとんど、Appleに対抗、新しいプラットフォームはAndroidに
2.roboticsであれ家庭用医療エレクトロニクス機器であれ、センサを強化した開発製品
3.日本ベンダーが引き続き取り付くディスプレイ技術
CEATECの主役の一つとなっているスマートフォン、新型携帯であるが、世界のプレーヤーたちの相次ぐ訴訟合戦である。
【モトローラとAppleの鬩ぎ合い】
◇米モトローラがアップル提訴、iPadなど販売中止要求(10月7日付け asahi.com)
→米通信機器大手モトローラが6日、米アップルのスマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone」や新型携帯端末「iPad」などがモトローラの特許を侵害しているとして、米国際貿易委員会やイリノイ州などの裁判所に対し、販売の差し止めや損害賠償などを求める訴えを起こしたと発表の旨。
モトローラによると、アップル製品は、無線通信の技術やアンテナ、電子メール、位置情報の機能などに絡む18の特許を侵害している旨。
スマートフォンを巡っては、アップルと台湾大手、HTCが特許を侵害したとして相互に訴えているほか、米マイクロソフトも今月初めにモトローラを訴えるなど、訴訟が頻発している旨。
◇Motorola sues Apple for patent infringement-Motorola asks the ITC to prohibit sales of Apple iPhone, iPad, iTouch, and certain Mac computers that it claims infringe its patents.(10月7日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Motorola社の子会社、Motorola Mobilityが、Apple社のiPhone, iPad, iTouchおよびあるMacコンピュータがMotorola特許を侵害として米International Trade Commission(ITC)に3件に分けて提訴の旨。
このモトローラとアップル、約1ヶ月前にも応酬が見られている。
◇Apple to take bite out of Moto (9月7日付け EE Times)
→ここのところの赤字およびシェア低下から、Motorola社のhandset部門が戻してきており、同社のAndroid-ベースhandsetライン, Droid XがVerizonで大ヒットの様相の旨。しかし2011年始めには、Apple社がVerizon向けに新しいiPhoneを打ち上げる予定の旨。
米国そして欧州での技術革新に向けた政府支援を求める動きである。他人事ではない、我が国こそ、という思いが強まってくる。
【政府への訴え】
◇Intel's Otellini calls for tax incentives to bring manufacturing back to US(10月6日付け Electronics Design, Strategy, News)
→火曜5日のCouncil on Foreign Relations(New York)にて、Intel社のPresident and CEO、Paul Otellini氏の講演プレゼン。米国に対し、技術革新に向けたより良い事業環境を作り出すこと、および米国製造への回帰、税制変更などいろいろな対策を講じて経済成長を助長することを求めた旨。
◇SEMI urges less bureaucratic approach to EU research funding-SEMI is advocating for a simplification of the EU Research Framework Programme, Europe's main instrument for funding research.(10月8日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Research Framework Programme(FP)は、European Union(EU)の欧州における研究出資の主要手段であり、現在2013年まで運用されている旨。SEMIは、FPに対するアプローチの官僚色を減らしてこそ、EUが技術革新を主に引っ張り欧州の主な雇用主とするsmall- and medium-sized enterprises(SME)の多くが恩恵を受ける、と考える旨。
半導体業界の大きな指標の一つ、シリコンウェーハ出荷について、以下の予測となっている。本年の急激な戻し、来年の抑えた見方という基調が滲んでいる。
【Siウェーハ出荷】
◇Silicon wafer shipments to jump 39% (10月7日付け EE Times)
→SEMI発。最近完了した半導体業界向けSi出荷の年次予測:
2010年 2011年 2012年
9,142 9,702 10,168million平方インチ
39%増 6%増 4.8%増
ウェーハ微細加工の三次元(3-D)技術をアピールする次の表現を面白く感じ
るところがある。
【“More Than Silicon”】
◇austriamicrosystems Introduces “More Than Silicon” Initiative(10月7日付け 3D InCites)
→austriamicrosystems AGのFull Service Foundry事業部門が本日、業界標準のファウンドリーサービスを超えるサービス&技術パッケージ、“More Than Silicon” initiativeを投入、同社の特許化したThrough Silicon Via(TSV)技術を用いる3D-IC integrationへのファウンドリー対応を提示の旨。
≪グローバル雑学王−118≫
アフガニスタンとイランに主に焦点を当てて、冷戦時代、アメリカ一極集中のなかでの激動の推移、実態を
『<中東>の考え方』 (酒井 啓子 著:講談社現代新書 2053)
…2010年5月20日 第1刷発行
より辿っていく。現時点いまだに収束していない進行形の激動であり、世界のどこにもある紛争の根深さ、打開の難しさである。
[(続き)第3章 冷戦という時代があった]
3 アフガニスタン侵攻
○なぜソ連はアフガニスタンに軍事介入したのか?
・1979年2月、革命政権となったイラン
→同年11月の米大使館占拠事件を経て、ますますの反米感情
→同年末、アフガニスタンにソ連軍が軍事侵攻
・アフガニスタン王国、19世紀前半に成立したバラクザイ朝が1973年まで
→1973年、共和制政権が成立
→党内で主導権争いが続くなか、事態を収拾できない新政権がソ連に支援
・国際社会はいっせいにソ連を糾弾、米政権は再び対ソ対決姿勢
→1980年のモスクワ・オリンピックを西側諸国がボイコット
→1984年のロサンジェルス・オリンピックに東側諸国が参加せず
・アフガン国内ではさまざまな反ソ抵抗勢力が立ち上がった
→1990年代のアフガン国内の内戦と、アルカーイダの出現に
○サウディアラビアとパキスタンをパートナーに
・1981年、アメリカにレーガン大統領率いる共和党政権が誕生
→「悪の帝国」、ソ連
→戦略防衛構想を軸に軍備強化
→サウディアラビアとパキスタンが、アメリカの重要なパートナーに
・アフガニスタンのソ連軍を追い出したい、と考えるイスラーム教徒は世界中に
→米・サウディ・パキスタンの強力な反共同盟
→招集戦士のなかに、オサーマ・ビン・ラーディン
○オサーマ・ビン・ラーディンの軌跡
・イエメン出身の父が一代で成したサウディアラビアの財閥家の六男
…大学で経営学や土木学を修めたインテリ
・駐留するソ連軍と1980年代を通じて戦い続けた…「アラブ・アフガン」
→実際のところは、冷戦下のアメリカの意向という冷徹な国際政治のなかで動かされていた
・1989年、ソ連軍が撤退
→「アラブ・アフガン」はお払い箱に
・ビン・ラーディンの激しい反発
…サウディアラビアが、その責任を放棄して外国軍、特に米軍という「異教徒」に自国防衛を依存するとは何事か
・1994年、サウディアラビア国籍を剥奪、国外追放に
・「アラブ・アフガン」たちは再度、活動を活発化、「アルカーイダ」に
○「アフリカの角」ソマリア
・ソマリアとエチオピアという二国、1970年代前半、ともに社会主義化、ソ連と友好条約
・領土問題で、ソマリアとエチオピアが衝突
→1970年代後半から10年間、熾烈な抗争
・当時のアフリカ
→フランスの主導で、1976年に反共組織、「サファリ・クラブ」結成
…サウディアラビアが核に
・完全な破綻国家状態となったソマリア、イスラーム主義勢力が台頭
→2006年、15年ぶりに国土の大半を掌握する政権が、イスラーム主義のもとに成立
・2009年、ソマリア沖で頻発する「海賊」退治
…「冷戦のゴミ」処理の典型的な失敗例
4 アメリカの一極集中時代へ
○アメリカはなぜ直接の軍事関与を避けてきたのか?
・アメリカはもっぱら中東での利益確保のため、イスラエルやサウディアラビア、イランに依存
・米・イラクの蜜月は、国交回復(1984年)から湾岸危機までのわずか6年間
・中東では、自らの体を使って敵を攻撃する手法は、日本の特攻攻撃に学んだ、と理解している人が多い
○「地平線のかなた」作戦
・中東の紛争に直接巻き込まれたくない
→はるか地平線の向こうに待機するにとどめておくしかない
⇒「地平線のかなた」作戦
・イラン・イラク戦争
→1988年7月、イラン民間機誤爆から2週間後に、イランは停戦決議を受諾
○湾岸戦争が「超大国操作術」の転機に
・フセイン大統領は、唯一の超大国となったアメリカに立ち向かうことで、「英雄」になる選択
・戦争は圧倒的な米軍の勝利(1990年)
→戦争の残酷さ、米軍の非道さは、中東、イスラーム社会の人々の眼に
→サウディ王政の支配の正統性に大きなダメージ
○イラク戦争
・2001年10月のアフガニスタン戦争⇔9・11事件
2003年のイラク戦争
→イランやイラクを、羹に懲りて膾を吹くように、にわかに危険視へ
・9・11事件後のアメリカ
→「攻撃する意図を持つ」というだけで、イラクは危険視するに足る存在、と考える政治環境に
○冷戦時代は中東をどう変えたのか?
・政権維持のために国内の民衆の声より大国との関係を重視
・そんな政府に対して、「従属的だ」として反発するベクトルが、歴史のなかで繰り返し出現
→「大国への従属脱却」を謳い上げる勢力、イスラーム主義勢力の登場
[第4章 イランとイスラーム主義−−−イスラームを掲げる人々]
○イランの反政府運動
・2009年6月のイラン大統領選挙、現職のアフマディネジャード大統領が勝利
→国内でも奇矯な言動で呆れられている同大統領
・ツイッターでさまざまな情報や意見
→国内外を問わず、体制批判の渦
○イスラーム主義とは
・現在のイラン・イスラーム共和国の根底にある政治思想
→イスラームを政治の根幹において、イスラームに基づく国家を建設しよう、という考え方
⇒ここでは、イスラーム主義と呼ぶことに。「イスラーム原理主義」は不正確な表現。
・1979年に起きたイラン革命
→伝統的な社会システムの根幹にあるイスラームと近代的な制度である共和制を融合
1 イランで実現した「イスラーム共和制」
○「よくわからない国」というイメージ
・1979年のイラン革命
→国民の間で悪名を馳せていたシャーの専制政治に対して、人々が民主化を求めた
○ホメイニーはどんな指導者だったのか?
・反シャー運動の精神的支柱
→イスラーム法学者、アーヤトッラー・ルーホッラー・ホメイニー
→1940年代から西欧式の統治のあり方を鋭く批判
・イスラームは、単なる信仰というより、人々の日常生活を包括する法体系、という考え方
・旧態依然とした宗教界とは一線を画するイスラーム知識人たちの、大胆な社会改革、革命の思想は、若者の心を魅了
→54年続いたパフラヴィー朝は倒れ、ホメイニーの指導のもとに、革命政権が樹立
○イラン革命とアメリカ
・イランでは国民のほぼ9割がシーア派
→スンナ派に比べると、多くの信徒が一堂に集う「お祭り」的な儀礼が多いのが特徴
・1979年11月初めに起きた、アメリカ大使館占拠事件
→時のカーター米政権に大きな打撃
○なぜアメリカは「大悪魔」と呼ばれるようになったのか?
・イランがアメリカの中東政策を肩代わり
イラン内政への干渉
⇒シャーとアメリカが反発の対象となる最大の理由
・行き過ぎた西欧文化の洪水
→アメリカ文化がイラン社会を「汚染」している、という認識
・欧米文化にあこがれても欧米にはなれない、という強烈な痛み
→中東全体が抱えるトラウマ
2 「革命」政権の変質
○ホメイニー亡き後
・1989年、革命の師、ホメイニー死去
・当時のイラン人たちの経済優先への邁進ぶり
→上野公園があふれかえった出稼ぎ
・1997年5月の大統領選挙、大穴候補、ムハンマド・ハータミーが突如として圧勝
→宗教界で高位にありながらも、表現の自由を重視、寛容政策をとる姿勢
○ハータミーの微笑み外交
・2001年の9・11事件
→アメリカにとってアフガニスタンの隣国で大国、イランとの協力関係が不可欠
・それでもアメリカは対イラン関係の改善に踏み切らなかった
→どんなにハータミーが穏健派でも、イランがイスラーム体制であることには変わりなし
・2005年6月、マフムード・アフマディネジャードが大統領に当選
→イラン国民の閉塞感が、極端に方向を変えて生んだ「サプライズ」
○アフマディネジャードとはどんな人物か?
・奇矯な言動とストレートで庶民にわかりやすい発言
「清貧」「貧しい者の味方」が、彼の売り
○「救世主(マフディー)」と交信できる大統領
・「救世主と交信ができる」というアフマディネジャードの荒唐無稽とも見える主張
・シーア派社会の救世主信仰
…12代目イマームはいつか帰ってくる、帰ってきてシーア派共同体を救う
・独裁や弾圧にめげないタフな批判勢力として出発したイランのイスラーム体制
→30年の年月を経て独裁と弾圧に依存しなければならなくなった