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頂上の気配が見える半導体市場、今後のお天気模様に敏感に

上昇基調一途できていた半導体市場の一服感が広がっているなか、今が頂上という見方のデータが現れている。先行きの低下を示す兆候もいくつか表わされているが、たとえそうなっても不況と呼ぶほどの落ち込みにはならず、すぐさま上向きになるという見方が多いようである。来年、2011年は一桁の低めのプラスの伸びというのが現時点の大勢となっているが、なにしろグローバルな経済情勢に引き続き注目である。

≪目まぐるしいお天気要因≫

いろいろな要因が絡んでくる半導体市場の成り行きではあるが、関連する目まぐるしい動きを追っている。まずは、ファウンドリーのトップ代表、TSMCの稼働率の先行きの見方である。

◇Analyst: TSMC faces slowdown (9月28日付け EE Times)
→Barclays Bankのアナリスト、Andrew Lu氏。在庫分析、capacity見積もりアップおよび需要調整から、TSMCにおける稼働率が、2010年2Q-3Qの104-105%から2-3四半期のうちに75%に低下すると見る旨。

市場拡大のための中国アクセスが展開されている。

◇Fairchild expands efforts in China (9月28日付け EE Times)
→Fairchild Semiconductorが、中国のSichuan Changhong Electric Co. Ltd.(四川長虹電器)と製品開発でさらにコラボするmemorandum of understanding(MOU)に入った旨。Changhongは、2015年12月までFairchildのパワーおよびモバイルコンポーネント購入目標計画の遂行を約束、一方、Fairchildのデバイスが広範囲のChanghong製品用に設計される旨。

レアメタルの輸出禁止騒動は後にも出てくるが、次の通り半導体製造のスラリーへの影響である。

◇Analyst: Cost of CMP slurries skyrocketing (9月29日付け EE Times)
→Information Network(New Tripoli, Pa.)のpresident、Robert Castellano氏。中国の希土類酸化物の禁輸処置により、半導体製造のchemical mechanical planarization(CMP)で用いられるslurry(スラリー:液体と粉末状の固体との懸濁液)価格が上昇しており、cerium oxide(CeO2:酸化セリウム)の市場価格が、今年4月の$15/kgramおよび2009年9月の$9/kgramから、この9月は約$50/kgramに上がっている旨。

市場の頂上感、その1である。

◇Semico: Sky not falling on ICs (9月29日付け EE Times)
→Semico Research社のpresident、Jim Feldhan氏。2010年前半のIC市場は勢いがたくさんあったが、今や和らいできており、頂上に達し始めている旨。以下の伸び率を見込む旨。
 2010年   2011年
 31.8%増   9.5%増

中国における半導体工場生産での設計基準について、台湾政府が0.13-μmまで認可する決定を行っている。

◇TSMC approved to produce on 0.13-micron in China(9月30日付け DIGITIMES)
→TSMCが上海の同社Songjiang(松江) 8-インチfabで0.13-μm技術による製造を行う申請が、台湾Ministry of Economic Affairs(MOEA)のInvestment Commissionにより29日、承認された旨。

◇TSMC gets nod for 130-nm production in China(9月30日付け EE Times)
→Reuters発。台湾政府が、TSMCの上海にある200-mm fabを0.13-μmに格上げする申請を認可の旨。

市場の頂上感、その2である。四半期ごとの売上げ数値で具体的な短期見通しが表わされている。この推移を望む感じ方がある。

◇Analyst cuts 2010 chip growth forecast to 32%(9月30日付け EE Times)
→iSuppli社が、2010年グローバル半導体市場についての熱気を抑えることを決定、需要軟化および在庫増大が見えるとして、同社予測を32%伸長に下方修正する旨。
・四半期ごとのグローバル半導体売上げの推移&予測グラフ図面、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/News/100930_isuppli_ic_forecast.jpg

◇Softening demand, rising inventories push iSuppli to trim 2010 revenue forecast-Although it is shaving its 2010 semiconductor revenue estimate to 32% growth and now expects a revenue decline in Q4, iSuppli says another significant downturn is not in sight.(9月30日付け Electronics Design, Strategy, News)
→今年今までの評価の流れに抗して、iSuppli社が今朝、2010年半導体売上げ予測を32%伸長に落とした旨。
四半期ごとのグローバル半導体売上げの推移&予測、次の通り。
 売上げ(USB$)    
 Q4-08  54.5
 Q1-09  44.7
 Q2-09  52.9
 Q3-09  62.4
 Q4-09  68.9
 Q1-10  70.1
 Q2-10  75.3
 Q3-10  78.5
 Q4-10  78.2
 Q1-11  74.8
 Q2-11  76.7
 Q3-11  82.2
 Q4-11  83.6
  [Source: iSuppli, September 2010]

テレコム装置のおける中国とインドの接近ぶりが伝えられていたが、投資の具体的な動きである。今後の半導体市場を押し上げる要因になる期待があると思う。

◇Huawei plans manufacturing unit in India (10月1日付け EE Times)
→中国のテレコム装置メーカー、Huawei Technologiesが、インド南部のChennai市にあるテレコム装置製造拠点に約$500M投資する旨。


≪市場実態PickUp≫

市場からの模造品の排除を目指して、出所を確認できるディストリビュータの名簿を作成する動きである。

【模造品対策】

◇ROCHESTER ELECTRONICS JOINS WITH SIA TO PROVIDE THE ONLY COMPREHENSIVE WORLDWIDE DIRECTORY OF AUTHORIZED SEMICONDUCTOR DISTRIBUTORS(9月29日付け SIA Press Release)
→模造および標準以下の半導体がグローバル市場に入っていく問題の拡大に対抗、Semiconductor Industry Association(SIA)とRochester Electronicsが協力して、製品を配布するに当たって製造元の半導体メーカーが正式に許可した世界中のdistributors会社の名簿を展開する旨。挙げられたdistributorsだけがコンポーネントのtraceabilityおよび出所の正しさを保証できる旨。

大手メーカー間の買収あるいは提訴として以下が見られる。DRAMs価格の件でSun Microsystemsに抵抗してきているMicron Technologyが、今度はSunを買収したOracleから訴えられるという、時間、時代の推移を感じさせられる構図ではある。

【買収&訴】

◇Report: Oracle sues Micron (9月27日付け EE Times)
→Bloomberg発。Oracle社が、Micron Technology社を相手取って、最近Oracleが買収したSun Microsystems社にDRAMsについて不当な値段を要求したとして提訴の旨。2006年にSunは同様の理由でDRAMメーカー数社を提訴、和解しているものもある旨。

◇Microsoft sues Motorola over smarthphones (10月1日付け EE Times)
→Microsoft社が金曜1日、Motorola社を相手取って特許侵害で2件の提訴、MotorolaのAndroid-ベースsmartphonesがMicrosoft特許9件を侵害している旨。

結構時間が経つ感じがするが、いろいろな議論を呼んでいる先端プロセス技術、HKMGである。

【HKMGを巡る応酬】

◇IBM 'fab club' denies problems with high-k (9月27日付け EE Times)
→IBM社の技術アライアンスのメンバーが、該グループがhigh-k/metal-gate(HKMG)技術でもがいている、という報道記事を却下の旨。

中国の輸出禁止処置でこれも騒ぎを呼んだレアメタルであるが、ならということで米国および我が国での関連する動きの話題である。

【希土類金属】

◇U.S. must fast-track policy on rare earth materials(9月30日付け EE Times)
→米下院が、H.R. 6160, Rare Earths and Critical Materials Revitalization Act of 2010を承認、国内の希土類材料プログラム展開を正式に許可、短期的な不足に対応、国家の安全、経済および産業上の要求に対する長期的な供給を確固とする旨。

◇Japan develops electric motor sans rare earth metals(10月1日付け EE Times)
→New Energy and Industrial Technology Development Organization(NEDO)および北大が開発した次世代電気自動車、希土類金属を必要としない磁石でEVモーターを作ることに成功の旨。


≪グローバル雑学王−117≫

アメリカの中東問題への関わり、さらに遡ってアメリカとソ連の冷戦の時代における中東について、

『<中東>の考え方』 (酒井 啓子 著:講談社現代新書 2053)
 …2010年5月20日 第1刷発行

より、感情むき出しの生々しさを見ていく。まさにぶつかり合う、やり場のない生きざまを感じるところがある。


[(続き)第2章 パレスチナ問題とは何か]

3 アメリカはパレスチナ問題にどのように関わってきたか

○アメリカの政権とイスラエルのロジック
・1991年のマドリード会議 
 →それまでと違い、アメリカが和平交渉に積極的に動いた
 →独裁者に口実を与えないためには、パレスチナ問題に積極的な関与を見せる必要
・息子のブッシュの代の政権の対テロ戦争・ロジックが、イスラエルのパレスチナに対する攻撃を正当化する口実と、完全に重なっていた。
・「パレスチナ自治政府はテロリストを匿っているから攻撃対象となる」という論理

○脅威は外からひっくりかえす
・もうひとつ、「対テロ戦争」がイスラエルのパレスチナ政策と酷似した点
 →「脅威になる可能性のある政府を外からひっくり返す」というロジック
 →フセイン政権の打倒 ⇒イラク戦争の目的
・イスラエルとアメリカが見落としている重大な「対テロ戦争」の副産物
 →潰しても潰しても、焦土から立ち上がるイスラーム主義勢力

○アメリカの対中東政策
・アメリカが急速にイスラエル支援を強化
 →実は1970年代以降
・1960〜1970年代、ソ連の脅威に対抗して西側諸国がイスラエルにてこ入れした

○『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』
・本書、2007年に出版されて話題
・なぜ米政権は、国益にそぐわないのにイスラエルを支援し続ける?
 →アメリカの政策をイスラエル・ロビーが誘導
・この本自体、何度も出版社に出版を断られる
 →アメリカでのイスラエル批判の難しさを象徴
・9・11事件以降のブッシュ政権、イスラーム諸国でのアメリカの存在をますます「反イスラーム的」なものに
 →パレスチナ問題がなかなか解決できないことの大きな原因

○オバマの中東政策
・オバマ政権の課題のひとつ →中東・イスラーム圏で地に落ちたアメリカの評判を立て直すこと
・2009年6月、オバマ大統領は、イスラエルによる占領地での新規入植を認めない、と明言
・一般的には、共和党より民主党の方がイスラエル・ロビーの影響を受けやすいと言われる
・徹底した中東での対米不信感は、何なのか?
 →「冷戦」時代のアメリカの対中東政策が重要な位置付けに

[第3章 冷戦という時代があった]

1 アメリカとソ連の時代

○世界が「東」と「西」に分かれていた時代
・1992年、ソ連が崩壊
・ソ連がなくなったこと →世界のありとあらゆる構造を揺るがす
 →半世紀にわたる「冷戦構造」が終焉
・「ソビエト」→評議会の意
 ソ連の理念 …「ソビエト」を通じて、労働者がすべての権力を握る「階級のない社会」を目指す
・そのソ連は、いまや15の共和国に
 傘の下の東欧諸国は、次々にEU(欧州連合)加盟
・冷戦時代 →ソ連など東側の共産主義諸国に簡単に旅行に行けるような時代ではない

○二大ボスが世界を回す
・アメリカと西欧の掲げる自由主義・資本主義
 ソ連、東欧の掲げる共産主義・社会主義
 ⇒理念をめぐる対立
・この対立はヨーロッパを真っ二つに
・米ソという二大ボス →次々に世界に子分を増やした
 →ベトナムではベトナム戦争
  朝鮮半島では朝鮮戦争
・アジア、アフリカの子分たちが「代理戦争」を遂行
 →「冷戦」が「冷たく」あり続けた理由

○なぜ冷戦時代について考えるのか?
・最近になって、冷戦構造とその崩壊が中東の政治に与えた影響は意外に根深い、という議論
・冷戦が生んだ二つのゴミ
 →ソ連から垂れ流される核開発技術や原材料などの大量破壊兵器の拡散
 →アメリカがソ連の影響力を拡大させないために各地で起用したギャング
  (ビン・ラーディン、サッダーム・フセイン、・・・)

○超大国を操作する技術
・中東は歴史的に大国のライバル関係のもとで、したたかに生き延びる術を求め続けてきた
 →その間で自分たちのポジションを確保しようとする、というやり方
・残った唯一のボスに追随するしか選択肢はないのか?
・ボスに挑戦することで名を上げようとする者たちの出現 
 →ビン・ラーディン、サッダーム・フセインなど

○「二大ボス間の戦い」の時代から「仮想敵との戦い」の時代へ
・冷戦の禍根 →二大ボスキャラという設定が国際社会自身にも定着
・こんどは、文明で対立
 →西洋文明にとっての次なる敵は、イスラームだ、と指摘
・中東諸国の指導者たち
 →うまくボスの間で生き延びていく時代が終わって、突然「子分潰し」の対象にされる羽目に

2 北辺防衛のための国々−−−トルコ、イラン

○ソ連の南下をどこで防ぐか
・冷戦時代、西側諸国が懸念した最悪の悪夢
 →ソ連が南下、ペルシア湾岸の油田地帯を独占
・第二次世界大戦末期にソ連軍がイランに進駐。北部を占領して、南部に進駐した英軍と対峙。
・1948年、アメリカが対トルコ経済協力協定を締結。トルコはNATOに加盟へ。

○トルコはアジアかヨーロッパか?
・トルコの地理的定義は、勝れて政治的なもの
・ヨーロッパを守る反ソ防衛網に協力、なのに「ヨーロッパの家」には異教徒は入れないのか
 →現在に至るまで、トルコの国民感情に

○冷戦時代のイラン
・「皇帝」を意味するシャーが統率するイラン
 →イギリスが中東から退場したあとは、アメリカがその後見役
・西側がイランを自分たちの陣営に留めておく熱心さの度合い
 →1953年のモサッデク政権転覆事件
 →「CIA陰謀論」が流行る原因にも

○湾岸の憲兵
・イランは、「湾岸の憲兵」とも
 →米英に代わりペルシア湾岸の安全保障を担う役割
・絡んでくる東西冷戦構造
 …社会主義化したイラクが勢力を伸ばさないために、親米イランはどうするか
 →牽制材料として、両国にまたがって居住するクルド民族
・シャー時代のイランは、頼もしいアメリカの右腕
・そのシャー体制が、1979年、イラン革命で倒れる
 →アメリカ支配に対する実質的な民族独立革命
・1979年の末に、ソ連のアフガニスタン侵攻

○ソ連の戦略「民族主義政権を取り込め」
・イスラーム諸国の間で社会主義路線をとった国
 →純粋なマルクス・レーニン主義型の社会主義というより、社会公正・平等を重視したアラブ社会主義を標榜
・エジプトは1971年に対ソ友好協力条約を締結、イラクも翌年、同様の条約

○アメリカの関心を引くための「ソ連カード」
・言ってみれば、中東諸国は、アメリカの関心を引くために「ソ連カード」を使った
湾岸の保守的王政・首長制諸国の対ソ接近
 →腰の重いアメリカを動かすために、ソ連がダシにされた

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