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市場警戒、コスト懸念が渦巻くなか、融合、拡大を図る動き

半導体市場の鈍化の兆しが鮮明になってきており、特に台湾における後工程業界での動きにその様相が表われてきている。このようなときこそということか、分野の融合による、具体的には買収、連携による市場拡大を図る動きが随所に見られ、今後の展開に注目している。Abu Dhabiでの半導体fab建設という見出しも出てきて、グローバルなエレクトロニクス市場の拡大の方向性にも大いに注目するところである。

≪Intel Developer Forum(IDF)などから≫

Intel社の恒例のフォーラム(9月13-15日:San Francisco)は、今後を見ていくうえでの大きな羅針盤の一つであるが、今回は世界60ヶ国から6,500人の参加者、本イベントの最高記録とのことである。グローバルな注目というものを改めて感じるが、荒削りな概観で抜き出した記事内容、次の通り。  

◇Intel's big week: What to expect and why (9月12日付け EE Times)
→プログラムなど見聞きして今回予想するポイント内容:
・新しい32-nm MPUアーキテクチャー、Sandy Bridgeの初めての詳細
・STBs向け半導体、GrovelandなどAtom-ベースSoCs
・McAfee社を$7.7Bで買収した技術的背景

◇Intel sketches out 32, 22nm processors (9月13日付け EE Times)
→chief executive、Paul Otellini氏が基調講演にて、2つの次世代プロセッサの状況プレゼンの旨。
○次期アーキテクチャー、32-nm Sandy BridgeによるPCsおよびサーバ
 …x86およびグラフィックスコアをcacheおよびI/Oと結ぶringバス
○さらに続く22-nm MPUファミリー、Ivy Bridge
 …fabsにあり、2011年後半の供給に向けている

◇PCやスマートフォン、4年で50億台超に:インテル(9月14日付け 日経 電子版)
→ポール・オッテリーニ最高経営責任者(CEO)。パソコンやスマートフォンなどインターネットに接続できる電子機器(ネット対応テレビなどを合わせ「スマートデバイス」と定義)の普及台数が、今後4年間で現在の2倍にあたる50億台超に達するとの予測を示した旨。
インテルは2011年3月までにドイツのインフィニオン・テクノロジーズの携帯向け半導体事業を買収、米グーグルなどが開発を進めているネット対応テレビ向け半導体も今秋から出荷する旨。

◇Intel packs Atom into tablets, set-tops, FPGAs(9月14日付け EE Times)
→Intelが、tabletsおよびset-top boxesなど一連のembedded機器にAtomプロセッサおよびMeeGo operating systemを入れていく進展を説明、また、reconfigurableシステムを可能にするようAltera FPGAをAtomと対にしたsystem-in-package、Stellartonも発表の旨。

Infineonの無線ソリューション事業を14億ドルで最近買収しているが、早速の新分野事業展開として表われている。

新技術開拓に向けた連携という解釈で、三次元半導体およびMEMSに多角的に取り組む動きが見られる。

◇GSA kicks off 3-D chip, MEMS work (9月16日付け EE Times)
→Global Semiconductor Alliance(GSA)が、3-D siliconおよびMEMSにおけるinitiativesを打ち上げ、日本で拡大する計画の旨。GSAが該技術採用促進を目指しているが、多くの厳しい課題に直面しているということで、特に重要となる旨。

一方、新興地域での大規模なfab建設という次の記事は、まさに一層のグローバルな取り組みなかりせば、という感じ方である。

◇Report: ATIC plans $7B chip fab in Abu Dhabi(9月15日付け EE Times)
→Wall Street Journal発。Globalfoundriesのmajority投資者、Advanced Technology Investment Co.(ATIC)が、United Arab Emiratesの首都、Abu Dhabiでの半導体fab建設に$7Bまで充てる計画の旨。

以上、拡大を図るそれいけの動きであるが、現下の市場は厳しい局面が増しており、それぞれにズキンとくる以下の内容と受け止めている。引き続ききめ細かく注目、注意である。

◇August sees chip sales slip, says analyst (9月16日付け EE Times)
→Carnegie Group(Oslo, Norway)のアナリスト、Bruce Diesen氏。8月のグローバル半導体販売高・3ヶ月平均が$25.3B、前月は$25.2B、前年同月比では31%増となる旨。前月、7月は前年同月比37%増であり、"販売高減少"と解釈される旨。

◇DRAM backend quotes for 4Q10 likely to fall(9月14日付け DIGITIMES)
→業界筋発。メモリの実装およびtesting会社が、DRAM価格低下の渦中で利益維持を期待する上流の半導体メーカーから今や値引き圧力に直面しており、第四四半期に前四半期比5-10%下がる契約価格の様相の旨。

◇ISuppli: DRAM production costs on the rise (9月14日付け EE Times)
→iSuppli社発。DRAM製造コストが、第二四半期に約4年ぶりの上昇、メモリ生産費用を巡る懸念を掻き立てている旨。
四半期毎のDRAM製造コスト変化のグラフ、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/100914_iSuppli_dram_costs.jpg

◇Taiwan`s Top Two IC Packagers Freeze Q4 Capex Projects(9月16日付け Taiwan Economic News)
→台湾のIC実装&テストハウス・トップ2社、Advanced Semiconductor Engineering(ASE)社およびSiliconware Precision Industry Co., Ltd.(SPIL)がそれぞれ、第四四半期のcapital expenditureプロジェクトを凍結、これらの動きが半導体業界にわたるドミノ効果の引き金になるという恐れを業界関係者の間に引き起こしている旨。


≪市場実態PickUp≫

今年については上方修正の一方、来年については下方修正という見方が、Garter社からの世界半導体装置市場にも表われている。

【世界半導体装置市場】

◇Gartner lifts 2010 fab tool growth forecast (9月13日付け EE Times)
→Garter社(Stamford, Conn.)発。世界半導体equipment市場の最新の見方:
        2010年   2011年
 今回     $36.9B   $38.7B
        122%増   4.9%増
 前回(6月時点)113%増    6.6%増
・2009-2014年の推移&予測一覧表、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/100913_gartner_equipm_forecast.jpg

その半導体装置市場の世界最大規模という台湾において、現時点あまりにも比率の小さい台湾製を増やしていこうという活動が始まっている。

【台湾製半導体装置】

◇SEMI Taiwan sets up committee to promote local sourcing of semiconductor equipment (9月13日付け DIGITIMES)
→SEMI Taiwanが、台湾の半導体メーカーによる現地製の装置&機械の購入を促進する委員会を設立、2010年年末前に正式に活動をスタートする旨。
台湾の2010年半導体装置市場は$9Bを上回りそうで最大の規模であるが、台湾製は5%以下のシェアに留まる旨。グローバルファウンドリー業界は、GlobalfoundriesおよびSamsung Electronicsが台頭してきており、TSMCおよびUMCは一層の生産コスト削減が求められる状況の旨。

数量も種類も爆発的に増えているモバイル機器であるが、使われているOSについての市場データが発表されている。

【モバイルOS市場】

◇Android to challenge Symbian for top mobile OS spot by 2014-As Android gains ground, mobile device manufacturers and communication service providers will need to revisit their platform strategies and balance the need to pursue platforms with the highest current demand against the need to maintain differentiation with unique devices, Gartner says.(9月13日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner社発。世界のモバイルOS(operating system)市場は、SymbianおよびAndroidが席巻、2014年までにこの2つでモバイルOS販売高の59.8%を占めると見る旨。
推移&予測データ、次の通り(K個):




OS
2009
2010
2011
2014
Symbian
80,876.3
107,662.4
141,278.6
264,351.8
シェア(%)
 46.9
 40.1
 34.2
 30.2
Android
 6,798.4
 47,462.1
 91,937.7
 259,306.4
シェア(%)
 3.9
 17.7
 22.2
 29.6
Research In Motion
 34,346.8
 46,922.9
 62,198.2
 102,579.5
シェア(%)
 19.9
 17.5
 15.0
 11.7
iOS
 24,889.8
 41,461.8
 70,740.0
 130,393.0
シェア(%)
 14.4
 15.4
 17.1
 14.9
Windows Phone
 15,031.1
 12,686.5
 21,308.8
 34,490.2
シェア(%)
 8.7
 4.7
 5.2
 3.9
ほかのOSs
 10,431.9
 12,588.1
 26,017.3
 84,452.9
シェア(%)
 6.1
 4.7
 6.3
 9.6
全体市場
 172,374.3
 268,783.7
 413,480.5
 875,573.8

 [Source: Gartner, August 2010]

緊張要因がいろいろ先立つ印象の中国とインドの関係であるが、テレコム装置については中国からインドに入る流れが加速、雪解けの様相が見られている。

【中印関係】

◇Indo-China telecom tensions easing? (9月13日付け EE Times)
→インドの安全保障当局は、国内の通信がspywareで監視されてsecurity侵害に至る可能性を警戒、中国のテレコム装置をインドのネットワークスに入れることを長らく不安視してきているが、最近では、中国のHuaweiが大きな契約を獲得する一方、ZTE(中興通迅)は今年インドでの売上げを50%増やしている旨。


≪グローバル雑学王−115≫

サウディアラビア、そして湾岸産油国と、西欧列強、冷戦、戦争、戦闘という歴史経緯の中でのオイルマネー戦略を軸にした今日までの歩みを、

『<中東>の考え方』 (酒井 啓子 著:講談社現代新書 2053)
 …2010年5月20日 第1刷発行

より辿っている。1970年代後半から1990年代前半まで、特に我々世代が海外に出て行った間の中東の動きの実態に注目、改めて納得させられるところがある。


[(続き)第1章 石油の海に浮かぶ国々]

2 サウディアラビアの登場

○イスラームの盟主
・半島の内陸部に覇を唱えるサウディアラビア
 …西欧諸国が侵食する中、ほぼ自力で領土を統一
 …大英帝国の思惑を裏切って独立に至った
  →メッカ、メディーナという聖地二つを護衛 ⇒「イスラームの盟主」

○宗教家と部族の雄のタッグ
・18世紀、「ワッハーブ派」と他称される宗教復興運動
 →ある部族の有力者一族と組む。のち20世紀にサウディアラビアを建国することになるサウード家
 ⇒18世紀末、半島諸部族に対して「ジハード」を展開

○半島のヒーローと英外交官たち
・大英帝国とドイツは、1914年、第一次世界大戦で全面衝突
 →大英帝国が目をつけたのは、ハーシム家のフサイン
 …英情報将校のT・E・ロレンスが登場、アラブの反乱支援に一役も、二役も
   →超大作映画「アラビアのロレンス」(1962年)
・ハーシム家かサウード家か、という選択には、当時の大英帝国の対アラビア半島政策の深刻な矛盾を内包
 →結局、イギリスはヨルダン、イラクの王家にハーシム家を立て、両国を委任統治下において間接支配
 ⇒いまや大英帝国の愛したハーシム家は、小国ヨルダンに残るのみ

○アメリカとの蜜月
・遅かったアメリカの中東との関わり
 …1909年、米国務省に「近東局」設置
・1933年から、米石油企業とサウディアラビアの蜜月関係
 ⇒サウディアラビアのラクダ遊牧の世界は、現代のテクノロジー社会へと、急速に転換
・1951年、米・サウディ間軍事協力関係を定めた相互防衛援助協定が締結

○アラブ民族主義の政権が続々と
・「冷戦」で悩まされたサウディアラビア
 →社会主義、民族主義化していく周辺国
 →その周辺国に影響を受けた国内の反王政運動
・1952年、エジプトで親英王政を倒し共和制革命勃発
 →ナーセルが掲げたアラブ民族主義
・1956年の第二次中東戦争
 →エジプトが英仏と対戦、ナーセルは英仏支配下にあったスエズ運河を国有化

○イギリスの退場と左派の台頭
・イギリスは1968年、スエズ運河から東のすべての地域からの撤退を宣言
・イエメンではエジプト・サウディの代理戦争ともいうべき状況が展開
・サウディアラビアは、パキスタン、トルコなどの非アラブを含めたイスラーム諸国との関係を強化
 …世界イスラーム連盟(1962年設立)
 …イスラーム諸国会議機構(1971年)
  →付属機関:イスラーム開発銀行(1975年) 

○石油がサウディアラビアを救った
・1973年、第四次中東戦争の際の石油戦略発動
 ⇒産油国と欧米先進国の関係が一変
・OPEC(石油輸出国機構)(1960年設立)
 アラブの産油国だけのOAPEC(アラブ石油輸出国機構)(1968年結成)
・1973年、OAPECがイスラエル支援国に対する石油禁輸を決定
 ⇒「第一次石油ショック」

○石油が国を強くする
・「石油戦略」で最も大きな役割を果たしたサウディアラビア
 …アメリカとエジプトなどのアラブ民族主義政権の関係をつなぐ要
・湾岸の小首長国群もまた、非産油国への影響力を確保
・1973年から1974年への石油輸出額の急伸長
 →アラビア半島の砂漠では、オイル・マネーによって急速な近代都市の建設
・非産油国経済自体が、産油国で働く自国民からの大量の送金をあてにするように
・1970年代半ばに、力関係を逆転させたのが、石油

3 石油の国々

○外国人で成立する湾岸産油国
・湾岸産油国を歩いていて、その国の国民に出会うのは、至難の業
・クウェート、カタール、アラブ首長国連邦
 →一人当たり国民総所得(2008年世界銀行統計発)がいずれも日本を抜く水準
・クウェートやカタールでは国民は3割、アラブ首長国連邦で2割、残る7-8割は外国人労働者
・2008年には世界的に石油価格が急騰
 →OPEC全体の年間石油収入は過去最大、1990年代の4倍近くに
・自国民と外国人労働者との間には、政治的にも経済的にも、超えがたい格差

○なぜ格差が政治の不安定につながらないのか?
・湾岸産油国には支配一族を頂点とする格差の壁が幾重にも存在
 …国民と外国人労働者
 …同じ住民の間を差別化する国籍の壁
 …国籍を持つ者のなかでも歴然と存在する待遇の差
・産油国政府は、石油収入を国民にばら撒いて国民の支持を確保
 ⇒「レンティア国家」の典型 →民主化が遅れがち
 ※「レンティア経済」…不労所得で成り立つ経済

○軍事力を持たない国の生きる道
・体制維持を最大目標とするアラビア半島の国々
 →軍人のクーデターを恐れて、国軍の育成をあえて避けてきた
・イラン・イラク戦争(1980年)のときの湾岸アラブ諸国
 →1981年、湾岸協力会議(GCC)を結成、集団安全保障に
 →総額300億ドル超、イラクにつぎ込み
・イラクは、この援助は当然返さなくともよい趣旨のカネと認識
 →返せ、といったのはクウェート

○クウェートのパレスチナ人
・イラクのクウェート侵攻とそれに続く湾岸戦争のとばっちり
 →パレスチナ人へ
・パレスチナ人を多く受け入れてきたクウェート
・1991年、湾岸戦争を経て国土を取り返すと、クウェート政府は、一転、パレスチナ人の追い出しに

○小説「太陽の男たち」のラストシーン
・1963年、パレスチナ人作家、ガッサーン・カナファーニー、「太陽の男たち」を発表
 →自分たちを襲った悲劇に翻弄されるだけのパレスチナ人を反省する小説
 ⇒手を差し伸べない湾岸の金持ち産油国を批判する映画に(1971年、シリアが映画化)

○「石油の国々」の現在
・飽食のなかで国内外の諸矛盾に無関心になっているわけでは決してない
・湾岸産油国の多くが、過去20年の間に、憲法や議会開設、選挙制度の導入など、民主化の努力
・湾岸諸国の若者たちは、アラビア語のアルジャジーラ衛星放送の開始(1996年)とともに、国際政治の矛盾と中東地域で今何が起きているか、日々目の当たりに

[第2章 パレスチナ問題とは何か]

○故国の味
・お国の味は少しずつ違うとはいえ、串焼き肉のカバーブに舌鼓を打ち、塩漬けオリーブがなければ食事が始まらないのは共通
・一方、出身国によって超えられない差異があることも確か

○アラブ民族意識とは何か
・西はモロッコから東はイラク、北はシリアから南はスーダンまで、ひとつのアラブ民族という、既存の国境を越えた強固な民族意識

○パレスチナは共通の問題
・パレスチナで起きている出来事は常にアラブ人の気持ちをざわつかせる
 →同じアラブ民族たるパレスチナ人だけが、独立国家を持てずに放置状態

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