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強気の見方の一方で下方修正が色濃く混じる市場の空気

米SIAから7月の世界半導体販売高が発表されたが、前月比の伸びは鈍化しているものの5ヶ月連続の過去最高の販売高となっており、今年の年間販売高見込みを28.4%増の$290.5Bに据え置いている。一方では、パソコン販売の鈍化の兆し、supply chainでの原材料のだぶつき、といった懸念材料から、今後の市場を慎重に見る空気が強まってきている。Appleからの新製品発表、Intelの買収攻勢など、今後の市場への波紋、波動に注目と思う。

≪7月の世界半導体販売高≫

現状の市場気分を認めながらも自分たちのmid-year予測に沿う流れと発表する米SIAからの7月販売高状況、次の通りである。

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○7月の半導体販売高、前年同月比37%増…8月30日付けSIAプレスリリース

7月のグローバル半導体販売高が$25.2 billionで、前月、6月の$24.9 billionから1.2%の増加、昨年、2009年7月の$18.4 billionから37.0%の増加、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。本年累積の販売高は$169.2 billionとなり、2009年1-7月の$115.3 billionから46.7%の増加である。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「経済全体の伸びの鈍化の兆候が高まっているにも拘らず、7月の世界半導体販売高は力強い結果であった。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「広範囲の製品に半導体が引き続き入って増えていき、経済全体の伸びが鈍くなる頃合いでも該業界は拡大する素地がある。いくつかの大手メーカーからの最近の発表では、短期的にはvisibilityが乏しいと強調されているが、2010年の我々の業界の伸びはmid-year予測の28.4%の伸びに沿うものと引き続き考えている。」とToohey氏は締め括った。

※7月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR1007.pdf
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この発表に直接関連する内容として、以下の記事が見られる。半導体販売高から見ている側としては、従来以上の伸びを見込む気分が強いままとなっている。 

◇世界半導体売上高37%増、5ヶ月連続で過去最高。(8月31日付け 日経 電子版)
→米国半導体工業会(SIA)が30日発表した7月の世界半導体売上高は、前年同月比37%増の$25.24B(約2兆1400億円)、前月比でも1.2%増、5ヶ月連続で過去最高を更新の旨。最大手のインテルが7-9月期の売上高予想を下方修正するなど、先行きに対する不透明感が増しているが、SIAは強気の見方を維持した旨。

◇July 'actual' chip sales are above trend (9月2日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationによる計算、7月の"実際の"グローバル半導体市場は$24.57B、前月、6月の$27.15Bから9.5%減、前年同月比28%増。
7月の半導体販売高の前月比減少は通常であり、ここ10年の平均17.7%減と比べると小さな落ち込みとなる旨。

◇Gartner ups 2010 semiconductor revenue growth estimate to 31.5%-Gartner brings its 2010 semiconductor revenue forecast up to $300 billion and reports that while 2011 will also see growth, it is expected to see much slower growth of less than 5%.(9月1日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner社が今朝、2010年世界半導体売上げ伸長予測を、2009年の$228Bから31.5%増、$300Bに達する、と上方修正の旨。伸長予測の経過、次の通り。
 第一四半期時点  第二四半期時点  現時点
  19.9%増       27.1%増    31.5%増
2011年は4.6%増、$314Bに達すると見ている旨。

一方の慎重に傾く側の空気を示す記事が以下のように増えてきており、四半期、各月、・・・とsupply chainの中をきめ細かく見て、行動、対応していく必要性ということと思う。

◇Gartner cuts second-half PC sales forecast (8月31日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)の最新予測。本年後半のPC販売が、前年同期比15.3%増、前回予測を約2%下方修正の旨。2010年年間の世界PC出荷では、2009年の308.3M台から19.2%増、総計367.8M台になると見る旨。

◇Analyst cuts forecast for Micron (9月1日付け EE Times)
→停滞の空気の渦中、PCベース半導体市場への影響、Nvidia社の切り出しに続いて、先週のIntel社、そして今週始めのAMD、とwarningの発表。そして今、Avian Securities LLCのアナリスト、Dunham Winoto氏が、DRAM/NANDの鈍い末端需要に照らして、Micron Technology社への評価を下げた旨。

◇Wafer prices declined in Q2, says GSA (9月3日付け EE Times)
→Global Semiconductor Alliance(GSA)が行った調査。2010年第一四半期における価格上昇およびallocation状況と対照的に、第二四半期のウェーハ価格が下降している旨。200-mm径生産CMOSウェーハのmedian価格が、前四半期比9.5%下がった一方、300-mm生産CMOSウェーハは$3,200で変動なしの旨。

つまるところ電子機器がどんどん世界的に売れていかなければならないが、GlobalFoundries社主催のイベントでのパネル討議にて、時代を引っ張る若者世代の使い勝手をとらえた商品戦略に基づく半導体業界のコラボのあり方が議論されている。次代を担う世代がこのような半導体業界が基盤となる連携chainにどんどん入ってくるようにもっていくこと、ということと思う。

◇Satisfying teenagers while making money in an era of 'smart everything'-CEOs discussing collaboration during a panel at GlobalFoundries' Global Technology Conference agreed that teenagers are the drivers behind much of the collaboration work that is done in the semiconductor ecosystem of today.(9月2日付け Electronics Design, Strategy, News)
→GlobalFoundries社inaugural Global Technology Conference(SANTA CLARA, Calif.)、水曜1日のCEOsパネル討議にて、半導体業界で行われているコラボ、その背景にある多くを引っ張るのは電子機器を駆使するteenagersであり、今日は曰く"smart everything"の時代の旨。


≪市場実態PickUp≫

前回取り上げたNHK総合テレビの「灼熱アジア」シリーズの第2回、「中東 砂漠の富の争奪戦」を見たが、感じたポイント、およびインターネットからの関連データをまとめて以下の通り。

【燃え盛る経済=続編=】

『灼熱アジア 第2回 中東 砂漠の富の争奪戦』
 …2010年8月29日(日) NHK総合テレビ 午後9時00分〜

・脱石油の時代にあってもエネルギー覇権を狙う中東諸国

・砂漠の中にマスダールシティ(Masdar City)という巨大な新エネルギー都市を建設したアブダビ
…CO2排出ゼロの未来都市を2013年の完成予定、総面積は6平方キロ、想定人口は5万人。太陽光発電など再利用可能なエネルギーで都市全体を賄う。「マスダール」はアラビア語で「資源」の意。
マスダールの建設に当たるAbu Dhabi Future Energy Company(ADFEC)のCEO、アル・ジャービル(Sultan al-Jaber)氏

・LNG(液化天然ガス)の分野で瞬く間に世界の主導権を握ったカタール

・中東に群がる欧米の巨大企業や中国・韓国の政府系企業。ドイツのメルケル首相、韓国の李明博大統領のトップセールス活動。

・カタールのLNG、フランスと共同の受注対応(単独ではとれず)を行っている千代田化工の奮闘ぶり。社長は毎月ドバイ地域詣で。

オイルマネーの威力と日本メーカーのプレゼンスのあり方、ここでも改めて感じさせられている。

Appleの最新製品がSteve Jobs氏から発表されたが、A4プロセッサがAppleTV, iPod Touchにも拡げて用いられている。

【Apple社のA4使用拡大】

◇A4 chip drives AppleTV, iPod Touch (9月1日付け EE Times)
→Apple社が、最新の製品、iPod Touchおよび再打ち上げのAppleTV発表で、A4 microprocessor使用をnon-computer製品に拡張、ハードウェアおよびソフトウェア設計&製造コスト削減を図っている旨。AppleTVで影響を受け、Intelに大きな打撃を与える動きの旨。

前のSpansionの日本の工場を買収したTIが、Spansion向けにウェーハファウンドリーサービスを行うとのことである。

【TIのファウンドリーサービス】

◇TI to provide foundry services to Spansion (8月31日付け EE Times)
→Texas Instruments社が、他の半導体ベンダーへのファウンドリーサービス供給に合意、長期的にファウンドリー事業を強化する目論見はない旨。
TIが火曜31日にSpansionの前の日本の子会社から正式に買収した2つの日本のfabsの一つで、TIは、NORフラッシュメモリ専門のSpansion社向けにウェーハ製造を行う旨。

上記のApple社の動きにもIntel社に打撃とのくだりがあるが、そのIntel社は積極的な買収を展開、以下の関連記事が業界の強い関心の一端を示すものと思う。

【Intel社の買収攻勢】

◇Intel to pay $1.4B for Infineon's wireless biz, says it will continue support for ARM-based customers-Analyst believes that should Intel mis-execute on the transition of acquired technologies into its portfolio, Broadcom is well positioned to pick up any market share that the company would possibly lose in the soon-to-be acquired cellular basedband business.(8月30日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Intel社が今朝、InfineonのWireless Solutions(WLS)事業を$1.4Bで買収する計画を発表、PC領域を越えたconnected computingを引き続き推進していく旨。

◇Analysis: Intel's wireless move no guarantee of success(8月30日付け EE Times)
→結果としてIntelは、数多くのcell phoneメーカー向けおよびApple絶好調のiPhoneおよびiPad製品に入るワイヤレスtransceiversのサプライヤになる旨。

◇Intel-Infineon deal: What analysts are saying(8月30日付け EE Times)
→以下に続くIntelのもう一つの買収攻勢について。
 ・8月16日にTexas Instruments社のcable modem製品ライン買収
 ・先週、セキュリティソフトベンダー、McAfee社、$7.68B買収

◇Intel will run wireless as separate business(8月31日付け EE Times)
→press conferenceにて、Intel ultra mobility groupのsenior vice president and general manager、Anand Chandrasekher氏。Intel社は、Infineon Technologies AGから買収する運びのワイヤレス事業を別事業として運営していく旨。

今回の買収による波紋の駆け引きが、次のように見られる。

◇Analyst: Infineon exits cell IC market just in time(8月31日付け EE Times)
→現在、Infineonのcell-phoneチップセットはAppleのiPhoneおよびiPadで使われており、これらの製品でAppleが、Qualcommのチップセットに基づくCDMA版を提示することを計画している旨。

コンポーネント在庫は締まっている一方でだぶつく原材料、というsupply chainの現状である。

【supply chainのimbalance】

◇Report: EMS vendors face supply chain 'pileup'(8月30日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)発。コンポーネントの在庫引き締めおよび原材料のだぶつきという難題の多い供給imbalanceに、contract manufacturersが直面している旨。関連データ図面、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/100830_isuppli_ems_inventories_2.jpg

Sematechが、TSV/三次元実装に向けた300-mm試作ラインを完成させている。

【Sematechの3-D半導体】

◇Sematech completes 3-D chip pilot line (8月30日付け EE Times)
→真の3-D半導体を可能にする1ステップ、Sematechが、300-mm, 3-D IC試作ライン(New York州College of Nanoscale Science and Engineering(CNSE)のAlbany NanoTech Complex)の完成を発表、through-silicon via(TSV)技術に基づく3-D半導体拡大に備える旨。


≪グローバル雑学王−113≫

最後は、甘く砂糖で締め括る世界の野菜の旅である。

『世界の野菜を旅する』 (玉村 豊男 著:講談社現代新書 2055)
 …2010年6月20日 第1刷発行

を駆け足で読み通して、まさにますます独断偏見の以下の抜き出しになってしまっているが、小生のそれこそ雑学王を目指してなにがしか感じる個所であり、なんらか伝わるところがあればと思う。
普段何気なく口にする野菜の由緒、いわれを、なんとなく気にする昨今である。


[第6章 テンサイがつくった砂糖]

*トルファンからの土産
・トルファンの市場で見つけた濃赤色の塊 →甜菜糖(てんさいとう)
・甜菜 …砂糖ダイコンとも
 →濃い赤い色の根塊を煮て糖分を取り出したものが甜菜糖
・ハッカ、今風にはミント、薄荷
 …北見のハッカは、昭和十四年頃には世界市場の約70%、品質も世界一との評判
 →外国産との競争に敗れ、薄荷油の生産は1980年代に入るとほぼ終息

*ビーツの食べかた
・ビーツ(砂糖ダイコン) 
 …これを入れたサラダはフランスでは定番の前菜のひとつ
・ビーツは、茹でている途中から色素が流れ出してお湯が真っ赤に
 →外出の前に料理をするのは控えたほうがよい。
 →寒い国の野菜ゆえ、よく食べるのはロシア、北欧などの諸国。
・ボルシチ →もともとはウクライナの郷土料理
      →スラヴ語でビーツのことを意味

*フダンソウ
・ビーツ …冬でも葉を繁らせる貴重な野菜、中世のヨーロッパでは毎日のスープに欠かせない材料のひとつ
・和名:フダンソウ →一年中いつでも畑にあるから、不断草という名
 →英語には「永遠のホウレン草」という別名も
・漬物に適さない青菜、日本では歓迎されなかった

*アラブの菓子はなぜ甘いか
・エジプト、3月上旬頃、イスラム教の開祖、マホメット(預言者ムハンマド)の生誕祭
 →マホメットは女と甘いものが好き、女性をかたどった甘い菓子をつくって祝う
・サトウキビという植物の栽培
 →地中海でいえばその南半分くらいが限界
 →ヨーロッパの人たちは、ハチミツよりも甘いという東洋の神秘的な植物に、強い憧れ
・ヨーロッパで砂糖が途方もない値段で売れることを知ったアラブ商人たち
 →7世紀から8世紀にかけて、地中海世界にサトウキビを持ち込み、栽培法と製糖技術を定着
・クレタ島、紀元1000年頃に製糖工場 
 →キャンディ(アラビア語で砂糖)の島
 →英語のキャンディーへ
・ルネサンス期を境、ヨーロッパの上流階級の嗜好はスパイスから砂糖へ
・ヨーロッパ諸国がアジアのサトウキビ産地と接触
 …1498年にバスコ・ダ・ガマがインドに到達して以来

*悲劇のはじまり
・バカ高く売れる商品、砂糖
 →どの国も血眼になってサトウキビを植え、搾った甘い汁を煮詰めて結晶化する工場を建設
・17世紀半ばからの200年間に、1000万人が過酷な労働に耐える黒人奴隷としてアフリカ西海岸から消えた
 →サトウキビの農園からはじまって綿花やタバコのプランテーションにも

*ナポレオンの懸賞金
・ナポレオン・ボナパルト …世界の食文化への多大な貢献
 →相次ぐ戦乱による食糧の逼迫に、1811年、馬肉食を解禁
 →缶詰の開発
 →ビーツによる甜菜糖の製造
  ⇒南の島でしかできない砂糖を、北の植物であるビーツからつくる計画
  ⇒200年にわたるアフリカからの奴隷収奪を終焉に向かわせた
   …歴史に名を残す名将の、生涯最大の手柄だったかも

*デザートの意味
・デザートという言葉
 →これで前半戦は終わった、これからがお待ちかねの後半戦、という食事の区切りを意味
・フランス料理では、原則として料理に砂糖は使わない
 →食事の最後はテーブルを片付けてデザートの時間に

*アメリカ人が太った理由
・アメリカ東海岸のニューイングランド植民地のバブル景気
 →タラを売った帰りの船 
  …砂糖とモラセス(廃糖蜜)を積み込んで、砂糖はヨーロッパへ輸出、モラセスはニューイングランドに
・モラセス …サトウキビから砂糖を取ったあとの搾り滓
      →まだ6割前後の糖分、もとが安く大きな儲けに
・西インド諸島とヨーロッパを往復する船の便数が増加 
 →造船の需要が高まる
・新たな三角貿易 →アメリカからは干ダラとラム酒
           →帰りには買った奴隷
 →西インド諸島の砂糖景気
 ⇒ありとあらゆる食糧が飛ぶように売れ、アメリカの経済は空前のバブルに
・アメリカ人はさらにたくさんの砂糖を消費するように
 →アメリカ人の肥満がこの時期に胚胎
・消費者に渡った砂糖の総量:
 1800年まで           約25万トン(全量ヨーロッパ)
 1830年(甜菜糖普及の直前)  約60万トン
 1980年             年間1億トン
 2000年代            年間1.5億トン前後
 →最大の消費国は、さすがに原産地、インド

*ニューヨークの街角で
・2002年の冬、ニューヨーク、温かそうな湯気が出ている屋台
 →豆を潰して丸い団子のようにして油で揚げたもの、ファラフェル
 →エジプトでは、同じものがターメイヤという名前
・クリスマス →1月6日の公現祭(エピファニー:キリストが民の前に顕現した日を祝う祭り)まで年をまたいで続く祭り
・新しいヨーク、と名づけられる前は、新しいアムステルダムと呼ばれていた
 →1614年頃から、オランダ人が毛皮貿易の拠点として植民をはじめた

≪あとがき≫
・フィンランドのバス停、「キートッシュ!(ありがとう)」と降りしなに振り向く、白いシャツ、亜麻色の長いスカートの彼女、手には1本の赤いニンジン
 …北欧の長く暗い冬を前にして、ニンジンがあればウサギのように食べる
 →人間が生きるためには本当に野菜が必要、という心象光景
・今回の執筆 →蔵書の総点検
         →新しい知見は、インターネット上の様々なサイトの記述の助け
・世界の野菜をめぐる紙上の旅、如何?

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