如何に個人消費者の気を引いて購買意欲を焚きつけるか
第二四半期の我が国のGDPが発表され、プラス成長は維持したものの大幅に縮小するとともに名目GDPが中国を下回っている現時点である。消費者心理を大きく反映する対比であろうが、我が国内では価格の安さ、非常に魅力的な利便性のある商品のみが売れるのに対して、中国から我が国を訪れる観光客の凄まじい消費パワーが発揮されているとのことである。半導体とて、個人消費者の販売高に対する比率、影響力が圧倒的になっており、応用商品の魅力をユーザとともに最大限に高めていく努力が一層必須に感じている。
≪個人消費に関わる動き≫
第二四半期のGDPはじめ、経済指標の発表の概要は次の通りである。
◇4〜6月期実質GDP、年0.4%増、伸び率大幅縮小 (8月16日付け asahi.com)
→内閣府は16日、2010年4〜6月期の国内総生産(GDP)の1次速報値を発表、物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整済み)は前期比0.1%増、年率換算で0.4%増、3四半期連続のプラス成長だが、伸び率は事前の民間予想の平均(年率2%台前半)を大きく下回り、1〜3月期(同4.4%増)から大幅に縮小した旨。
◇日本の名目GDP。中国下回る、4〜6月期 (8月16日付け 日経 電子版)
→内閣府は16日、4〜6月期の国内総生産(GDP)統計で、ドルに換算した日本の名目GDP(原系列)が中国を下回った、と発表の旨。
◇中国の輸出額と輸出入総額、過去最高を更新(8月20日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→税関総署は、今年7月の中国の輸出入状況を発表した。
統計によると、今年7月の中国の輸出入総額は1兆6170億5000万ドルで、前年同期比40.9%増となった。うち輸出額は8504億9000万ドルで同35.6%増、輸入額は7665億6000万ドルで同47.2%増、貿易黒字額は839億3000万ドルで同21.2%減だった。
7月単月の輸出入総額は2623億1000万ドルで前年同期比30.8%増。うち輸出額は1455億2000万ドルで同38.1%増、輸入額は1167億9000万ドルで同22.7%増。前月比で見ると、輸出入総額は6月より3%増加した。また、先月に続き、単月の輸出額と輸出入総額は再び過去最高を更新した。6月単月の輸出入総額は2547億7000万ドル、うち輸出額は1374億ドルで、ともに2008年7月の過去最高を更新した。
土曜の朝のNHKテレビ経済番組で、東京の商店街、街角の状況、声を伝えていたが、まさに現状の景況感をよく映し出している。
・(惣菜店) ここ2年は少なくとも景気は底這い感。鶏の唐揚げ、70円ではだめ、50円では売れた。
・いろいろな利便性を兼ね備えたキッチン用品が好評。
・コンビニエンスストアが活況。猛暑のなか、手軽に済まされる点が受けているよう。
・中国からの観光客の一団、降り立って店の商品をかご一杯買い求めている光景。店にとっては一人当たりの売上金額が大きな桁違い。昔の日本が欧米に出かけて買い求めたパワーもこうだったのかと店主の声。
我々の身につまされるところでは、猛暑による足元の物価への影響が紹介されている。さんま一匹300円、各種野菜の高騰ぶりであり、これは居酒屋での注文も慎重に、と自戒の念も生じてくる。
半導体の世界では、なかなか新技術に置き換わらないというジレンマのなかで工夫を重ねながらそのタイミングをじっと待つという風情が随所にあるが、その一つ、磁気ディスクに対するsolid-state storage drives(SSDs)の現況が以下の通り表わされている。この切り替わりにはどうしても消費者の受け取り、共感がついてくる熟し方ということと思う。
◇SSDs: Still not a 'solid state' business (8月20日付け EE Times)
→NANDフラッシュ市場を引っ張る次の大物と思われたsolid-state storage drives(SSDs)は、ここ何年か着実に伸びてきているが、該業界が依然初期の採用段階に留まっているというある程度の失望感がある旨。
「consumer市場ではまだ初期段階の採用、コストと性能が問題。SSDがmass市場に魅力を発揮するには1-2世代かかるだろう。e-booksとtablet PCs, 新興市場そしてモバイルと、SSDsの牽引役がいくつかある。」(SanDisk社のfounder, chairman and chief executive、Eli Harari氏)
中国の消費パワーを目の当たりにしたところで、一方では陰りの兆候も表われてきている。いつまでも一本調子とはいかず、変わるときにはその急激さも尋常ではないグローバル経済の推移となっており、本当に一刻一秒目が離せない現時点である。
◇中国で落ち込み始めた自動車の販売台数(8月16日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→中国の自動車販売台数がここ数ヶ月落ち込んでいる。全国乗用車信息聯席会のデータでは、7月の中国国内の自動車販売台数は前の月と比較して6.1%の減で、4ヶ月連続で前年を下回った。7月の販売台数は92.59万台だった。特に、軽タイプの売り上げの落ち込みが大きく、MPVタイプも落ち込んだ。特に、軽自動車に関しては、様々な政府の補助があるにもかかわらず、下落に転じている。これら補助は、2010年末まで実施されるが、実施終了間際の駆け込み需要がこれからあると予想されてはいる。また、2010年上半期は目標販売台数に達していないメーカーも多い。
≪市場実態PickUp≫
Intel社がセキュリティソフト大手を買収する動きが突発という受け取りで、グローバルに波紋を投げかけている。
【Intel社のMcAfee買収】
◇Intel spends $7.68B to buy McAfee and get security right(8月19日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Intelが今朝、セキュリティ大手、McAfeeを$7.68Bで買収すると発表、いくぶん驚かせる動きの旨。
◇Analyst: McAfee buy moves Intel toward IBM model(8月19日付け EE Times)
→FBR Capital Marketsのアナリスト、Craig Berger氏。Intel社のセキュリティソフトウェアベンダー、McAfee社の$7.68B買収提案は、専らの半導体販売からソフトウェア&コンサルティングサービスに入っていく多角化の道程への動きである旨。
◇マカフィー買収、インテル、クラウド対応。(8月20日付け 朝日・夕刊)
→ネット経由で情報処理サービスを提供する「クラウドコンピューティング」の広がりに対応、半導体とセキュリティソフトを組み合わせた事業を展開する旨。マカフィーは、トレンドマイクロ、シマンテックと並ぶ業界最大手の一角の旨。
◇McAfee to become a part of Intel (8月20日付け EE Times India)
→IntelのSoftware and Services Groupにレポートする完全子会社として動く旨。
今年前半の半導体業界の繁忙のほどがよく表れているSICASからのデータである。第四四半期、10-12月に稼働率が低下に向かうという慎重な見方も出てきている。
【半導体稼働率】
◇Manufacturing capacity utilization hits 95.6%(8月18日付け EE Times)
→Semiconductor International Capacity Statistics(SICAS)発。2010年第二四半期の世界ウェーハfab capacity稼働率は95.6%、第一四半期の93.5%から上昇の旨。
◇Analyst: All signs point to IC downturn (8月18日付け EE Times)
→J.P. Morganのアナリスト、Christopher Danely氏の水曜18日レポート。
半導体業界capacity稼働率は、第三四半期の間の96%でピークとなり、第四四半期は90%に低下、半導体業界が景気下降に向かうと見る旨。半導体需要全体の65%から需要軟化の兆候が出てきている旨。
MPUの第二四半期の売れ行き活況ぶり、次の通りである。
【MPU市場】
◇PC MPU sequential Q2 growth more than double average for the quarter-In Q2, Intel earned 80.7% unit market share, a loss of 0.3%; while AMD earned 19%, a gain of 0.2%; and VIA Technologies earned 0.3%.(8月19日付け Electronics Design, Strategy, News)
→International Data Corp(IDC)発。第二四半期の世界PC microprocessor出荷数量および売上げは、前四半期比それぞれ3.6%増および6.2%増、これらの伸びはいつもの第二四半期より良好、これまでの平均としてはそれぞれ1.6%増および2.8%減である旨。
前回取り上げたLCDメーカー提訴が、米国各州で広がりを見せている。
【引き続く提訴】
◇More states file suits against LCD makers (8月17日付け EE Times)
→West Virginia州司法長官、Darrell McGraw氏が、Wisconsin, Missouri, ArkansasおよびMichiganの司法長官と協力して、LCDメーカーを相手取り価格談合が行なわれたとしてNorthern District of Californiaの連邦裁に提訴の旨。
複雑化、高度化するIC設計の現状の実態を表す以下の内容である。
【IC設計】
◇Outsourced IC design revenue up in 2009, says Gartner(8月16日付け EE Times)
→Gartner(Stamford, Connecticut)発。2009年のdesign starts総数は約15%減少、と同時に2009年の外部委託design startsは9%の減少、外部委託の全体に占める比率は高まるとともに関連する設計サービス売上げは2009年で18%伸びている旨。
≪グローバル雑学王−111≫
特に猛暑に見舞われている今年の夏であるが、ナスおよびキュウリの旨さ、有り難さが殊更である。
『世界の野菜を旅する』 (玉村 豊男 著:講談社現代新書 2055)
…2010年6月20日 第1刷発行
より、原産地、味わい方など、他の野菜とともに世界各地を巡っている。この夏の野菜は殊更高値であり、高嶺の花にはなってほしくないものである。
[第4章 ナスは貧乏人が食べる]
*国境のヒッチハイク
・レバノンからシリアへのヒッチハイクの試み
→結局は路線バスで首都のダマスクスに
⇒そこにはパリの学生寮で知り合った著者の友人
・アラブ人はホスピタリティに富んだ人懐こい連中、とりわけ遠来の友人は手厚く歓迎
→友人の彼が作ってくれたのがナスのキャビア
:焼きなすを作る
→ニンニクを細かく刻んでボウルに加える
→ヨーグルトをたっぷり
→濃厚なオリーブオイルを、かなりの量
→よく全体をかき混ぜ、塩と白胡椒で調味
*貧乏人のキャビア
・レバノンでもシリアでも →所狭しと並ぶ小さな前菜の皿からスタート
⇒メゼあるいはメッツェ
・なかでも圧巻の美味は作りたてのナスのキャビア
…焼きナスを潰してオリーブオイルとヨーグルトやレモン汁で和えたナスのペースト
→中東諸国では最もポピュラーな料理のひとつ
⇒貧乏人のキャビア、と呼んだのは誰?
・トルコ料理の本に、「貧乏人の肉」という表現
…美味しい油をしっかり吸ったナスの味は、どんな肉にも負けないほどの美味
*タマゴの生る木
・ナスの原産地はインド北部というのが定説
…中国でも紀元前500年くらいから栽培
・ナス →インドの古語、サンスクリットで「ヴァタン・ガナ」
→ペルシャに伝わって「バディン・ガン」
→アラブに入って「アルバディンガン」
→スペインのカタロニア地方、カタラン語で「アルベルジニア」
→フランス語の「オーベルジーヌ」
・ナスがフランスやイギリスに伝わるのは、16世紀末から17世紀にかけて
・イギリスに伝わったナス、白かった →タマゴの生る木
⇒エッグプラント
*サソリの棘からサルビアの甘い香りへ
・愛されている野菜、ナス →評判を勝ち得るまでには長い時間
・古い諺に、「色はサソリの腹のよう、味はサソリの棘のよう」
・9世紀のアッバース朝、サラセン帝国の首都、バグダッド
…アラビア料理文化がまさに爛熟期
→もちろんナスは、火を通す前に塩を当てて、丁寧にアク抜き
⇒この頃からアラブ世界では「野菜の女王」という称号
…「恋人たちがかわす接吻のような甘いサルビアの香り・・・」と詩に
*セビリアの黒いナス
・アッバース朝に仕えていたズィリアーブというクルド人の宮廷音楽家
→バグダッドでも最高の目利きと称えられた趣味人
⇒洗練された料理文化がアラブ世界からイベリア半島に
→ナスの美味もアンダルシアに
・ナスの実の色とかたちは、驚くほどに様々
→ナスの色素はナスニンという名のアントシアンの一種
…アントシアンが形成されれば紫色に
…葉緑素が形成されれば緑色に
…アントシアンも葉緑素も形成されなければ白か黄色に
*ナスの地政学
・11世紀から、トルコからギリシャ、さらにはバルカン半島を経て北イタリアにまで、という伝播経路
→フランスやドイツ、イギリスなどに到達するまでには相当時間がかかりそう
…地中海は、ヨーロッパにとっては辺境
→北が南を低く見るという図式は、さまざまなかたちで発現
*彼女はキュウリのように冷たい
・キュウリもインド北部からヒマラヤ南部あたりが原産地
→つねにナスと対になる野菜
・聖書では、キュウリは暑いときに喉をうるおす大切な野菜
・中国や韓国では完熟して苦味がなくなった黄色いキュウリを好んで食べる
→「黄瓜」
・ヨーロッパでは、日本と同じようにナマで食べるほうを好むように
・英語 …「キュウリのように冷たい cool as a cucumber」という表現
・英語でキュウカンバー、フランス語でコンコンブルという西洋種のキュウリ
→日本のキュウリよりかなり太く、果肉が多く、種の部分の容積が小さい
*ブイヤベース作法
・ブイヤベース →もともとは漁師の雑駁な料理
→その日に獲れた魚介ならなんでも
・とにかく早く熱が伝わる、火をつければすぐに沸騰するような鍋が望ましい
・たっぷりのニンニク、十分な量のサフラン、乾燥オレンジの皮をひとかけら
→どのレシピにも共通
・「ブイヤベース bouillabaisse」
…bouillir「沸騰させる」+abaisser「(火を)落とす/(温度を)下げる」
→早く沸騰させ、その沸騰した状態から急激に温度を下げることが肝要
・グリルしたフランスパンの薄切り: ルイユという赤いマヨネーズのようなもの
・野外の焚き火、大勢がひとつ鍋を囲んで和気あいあい
→南仏の漁師たちの、本当のブイヤベースの食べかた
*南仏のバニラ
・ニンニク →南仏のバニラ、という別名
…原産地は中央アジアか、中国西域、あるいはメソポタミアの砂漠地帯。
そこからエジプト、ギリシャ、ローマ、地中海諸国へ。
→つねに強壮食品ないし医薬品の扱い
・ルイユと似ているが少し違う、もうひとつの名物ソースがアイオリ aioli
→南仏方言の「ニンニク ai」と「オイル oli」を合体させた語
→バニラより麗しいニンニクの香りを思い切り解き放つ
…地中海に生きる人びとの誇りであり、自慢
*サフランの原価
・サフラン …品の良い薄紫色のクロッカス属の花
→この花の雌しべが香料に
・パエリャもブイヤベースもサフランがなければできない料理
・サフランは水によく溶け、鮮やかな黄色がコメによく滲み込む。
・採取に手間がかかり、サフランの価格は人件費がほとんど