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一気に噴き出してくる世界景気、半導体市場の鈍化懸念

前回の本欄で、3ヶ月連続過去最高となった米SIAから発表の世界半導体販売高を取り上げ、先行き懸念の念押しがあって予断は許されないと表したばかりであるが、早速のこと、世界景気の減速、引いては半導体市場の鈍化につながる経済指標、貿易統計が発表され、為替市場が連鎖的に反応して、一気に慎重な市場気分が高まっている。エレクトロニクス製品分野別でも、ここにきての鈍化の報が相次いでいる感がある。

≪世界景気、半導体市場の鈍化懸念≫

米国、そして中国での経済指標の発表を受けて、即座に敏感に反応する世界経済の動き、次の通りである。

◇米、6月の貿易赤字18%増、上半期は44.8%増。(8月12日付け asahi.com)
→米商務省が11日発表した6月の貿易統計によると、モノとサービスの取引を合わせた貿易赤字は、国際収支ベース(季節調整後)で498億9500万ドル(約4兆2400億円)、前月の改定値比で18.8%増、2008年10月以来、約1年8カ月ぶりの高水準となった旨。
工業製品・部品を中心に輸出が2カ月ぶりに減少した一方で、自動車関連製品などの輸入が増加した旨。
今年上半期の貿易赤字は前年同期比44.8%増の2474億5500万ドル(約21兆円)となり、オバマ政権は輸出主導による景気拡大を目指しているが、貿易赤字の拡大には歯止めがかかっていない旨。

◇NY株が大幅続落、265ドル安、世界景気に減速懸念。(8月12日付け 日経 電子版)
→11日の米株式相場は大幅に続落、ダウ工業株30種平均は前日比265ドル42セント安の1万0378ドル83セント(速報値)で終えた旨。中国の7月工業生産の前年同月比の伸びが縮小、6月の米貿易赤字が前月比で拡大するなど、経済指標が世界景気の減速や米景気低迷を示したことが嫌気された旨。

◇円15年ぶり高値、一時84円70銭台。(8月12日付け 読売)
→11日の外国為替市場の円相場は米経済の減速懸念を受け、円高・ドル安が進み、ロンドン市場では一時、1995年7月以来、15年ぶりの水準となる1ドル=84円72銭まで円高が進んだ旨。
輸出企業の業績悪化から、日本経済の腰折れにつながりかねないとの懸念が広がり、政府や日本銀行に対しては、円売り・ドル買いの市場介入や、新たな景気対策などを求める声が強まりそうな旨。

好調に推移した2010年前半に対して、後半はブレーキがかかるのではという論調や独自指標分析が目についてはいたが、上記の発表タイミングを挟んで半導体、デバイスおよびエレクトロニクス機器市場の鈍化傾向の記事が相次いでいる。一層のアンテナの高さ、感度を今後に向けて備えていかなければならないという感じ方である。

◇IC inventory risks building, says analyst (8月9日付け EE Times)
→FBR Capital Marketsのアナリスト、Craig Berger氏。第二四半期のIC supply chain在庫全体が、第一四半期に比べて10%増、半導体gross marginsおよび今後の売上げ減少の下方圧力の恐れを起こしている旨。

◇Red flags seen as TSMC, UMC post monthly sales(8月10日付け EE Times)
→IC業界にgood newsとbad news:
 Good news: 台湾のファウンドリー大手の力強い月次販売高
 Bad news: 台湾のODMsの間で弱含みな販売および在庫の懸念

◇Analyst: PC orders 'falling off a cliff' (8月10日付け EE Times)
→J.P. Morganのアナリスト、Christopher Danely氏。台湾のPC supply chainでPC末端市場からの受注速度が、7月最後に急激に落ちてきており、Intel社の2010年売上げ&収益見積りを下方修正する旨。

◇Analyst: Slowdown seen in fab tool biz (8月11日付け EE Times)
→The Information Network(New Tripoli, PA)のpresident、Robert Castellano氏。ここまで2010年はfab toolメーカーには活況の年できているが、ここにきて半導体業界のビジネスの雲行きが悪くなっており、front-end装置の先延ばしがまもなく起ころうとしている旨。

◇Slowdown seen in LEDs (8月12日付け EE Times)
→Raymond James & Associatesのアナリスト、Hans Mosesmann氏。携帯電話、PCなどの製品分野で急な鈍化の様相、半導体メーカーにインパクトを与える流れ、ここにきて今週のCree社の業績などから今まで最も活況の市場の一つ、LEDsにおいて鈍化が見られる旨。

◇LCD market hit by slowdown (8月13日付け EE Times)
→ここにきて今まで最も活況を呈している市場の2つ、LEDsおよびsolarで鈍化が見られ、LCDsが次となる可能性の旨。「LCD foodchainからのdatapointsが引き続きますます弱含みになっている。」(Barclay's Capitalのアナリスト、C.J. Muse氏。)


≪市場実態PickUp≫

減速懸念の基調になってしまっているが、ここは気分一新、今年のIC製品分野別の伸びの予測データである。ROMとEPROMを除いてはすべて前年比二桁の伸びという従来の活況に基づく見方と思うが、上記の懸念を吹き飛ばしてこの伸びで進んでほしいという率直な思いではある。

【2010年IC製品分野別伸長】

◇What are the hot IC product segments? (8月11日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)発。IC製品28分野のうち26が、2010年二桁の伸びを示すと見る旨。その伸長予測データ一覧、下記参照。
http://www.icinsights.com/news/bulletins/bulletins2010/bulletin20100811fig.gif

今年の半導体設備投資についても、これまでの市場の好調ぶりを受けて、特にSamsungとTSMCの非常に大幅なアップが目立っている。以下のデータはそれをよく表しているが、今後の推移に注目である。

【2010年半導体設備投資】

◇Semiconductor capacity expected to increase through 2012-Gartner continues to estimate more than 83% growth in semiconductor capacity this year after analysis shows continuing growth in Q2. The increase is expected to be driven partly by PC and cell phone production unit growth.(8月9日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner社の最新の分析では、2010年のcapital spendingの飛躍的な伸びが見積もられ、capex spendersトップ10、次の通り。
≪Top 10 spenders by capex in billions of dollars≫
 Company    2009  2010  Total spent  Average
                   since 2005 annual capex
 Samsung     3.9  9.6  40.824  6.804
 Intel        4.5  4.9   31.19  5.198
 TSMC      2.671  5.25  17.375  2.896
 Hynix       0.784  2.5  17.242  2.874
 Toshiba      0.911  2.173  15.044  2.507
 Micron       0.5   0.8   9.625  1.604
 GlobalFoundries  1.05  2.6  11.449  1.908
 Elpida Memory  0.444  0.875  6.839  1.14
 Inotera Memory  0.400  1.634  6.59  1.098
 TI          0.800  0.900  5.751  0.959
Note: GlobalFoundries includes AMD through 2008 and Chartered Semiconductor through 2009
 [Source: Gartner, August 2010]

かってのDRAMを思い起こすが、今日まで市場を席巻してきているLCDディスプレイの大手アジア勢を相手取って、米国の各州が我も我も雰囲気で価格談合による損害賠償を求める訴訟に踏み切っている。時あたかも減速懸念の表面化と同じタイミングであり、これが世の常かという繰り返しを感じるところがある。

【大手LCDメーカー提訴】

◇State files antitrust suit against LCD makers(8月9日付け EE Times)
→New York州司法長官、Andrew Cuomo氏が、日本、韓国および台湾、そしてその米国counterparts数社を相手取って、LCDスクリーンについて不法な価格談合があったとして独占禁止行為で提訴、New York州ほか一般消費者が1996年〜2006年に被った損害の回復を求めている旨。

◇Florida to file suit against LCD makers (8月11日付け EE Times)
→Florida州司法長官、Bill McCollum氏。New York州の動きに続いて、Florida州は、世界の大手TFT LCDパネルメーカーが製品価格の談合を行なったとして提訴する旨。

◇Illinois, Washington file suits against LCD makers(8月12日付け EE Times)
→New YorkおよびFloridaによる動きに続いて、Illinois、Washington両州が別々に、LCDメーカーを相手取り価格談合が行なわれたとして独占禁止の提訴の旨。

◇Oregon files $100M suit against LCD makers (8月13日付け EE Times)
→Oregon州司法長官、John Kroger氏が、大手TFT-LCDパネルメーカーを相手取って、互いの競争を抑えるために州および連邦独占禁止法を侵害して国際カルテルを形成として、$100M訴訟を起こす旨。

自動車が急増、世界の筆頭に踊り出れば、クレームも急増、それも一般大衆車に多いという下記の記事である。当たり前と言えばその通り、これも世の常、繰り返すというところと思う。

【急増に伴うクレーム】

◇中国、自動車生産台数とともに増える品質へのクレーム(8月9日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→驚異的なスピードで生産台数を伸ばしている中国だが、同時に品質に関する問題も急増しており、特に10万元以下の車のトラブルが多い。
今年に入っても1月〜6月までのクレーム件数は、前年比30%の増加となっており、特に自動車購入後半年以内のクレームが全体の6割以上を占めている。


≪グローバル雑学王−110≫

マヤ文明、アステカ文明、インカ帝国のもと栽培されていたトウモロコシ、食べる以外にも用途、魅力に富んだトウガラシについて、歴史と各国・地域への伝播、普及のしかたを、

『世界の野菜を旅する』 (玉村 豊男 著:講談社現代新書 2055)
 …2010年6月20日 第1刷発行

より辿ってみる。辛さへの慣れの障壁を越えると、今度は毎日、毎食でも手放せなくなる実感の最も良い例として、小生の場合はキムチである。


[第3章 トウガラシはなぜ辛いのか]

*虎のミルク
・魚をナマで食べるのは日本の専売特許ではない
 →代表例として、ペルーのセビーチェ
  …ナマの魚介類を塩と柑橘の酢で締めたもの
  →少し長めに塩と酢にさらす方が本場風
・セビーチェの魚介から滲み出すアミノ酸の旨みが凝縮した白い汁
 →「虎のミルク」と呼ぶとのこと →二日酔いにことのほか効くという

*トウモロコシの構造
・セビーチェに欠かせないのはトウモロコシ
 →大きな白い粒のものが多いよう
・今日のトウモロコシのもとになったとされる植物
 →これが現生種だと誰もが納得するようなものはまだ見つかっていない
・紀元前十世紀頃には、人間の食糧として非の打ちどころがないトウモロコシが完成
…土壌、気候への適応性
…簡単に植え付け
…比較的短期間に実る
…長期の保存が可
…煮ても、焼いても、酒をつくることも
 ⇒トウモロコシというイネ科の一年草は、主食にふさわしい植物
・マヤ文明、アステカ文明、インカ帝国
 →階段耕作によるトウモロコシの大量栽培がその基礎
  ⇒階段のような段々畑「アンデネス」⇒「アンデス」の語源

*チチャのある家
・アンデス山麓地域 →トウモロコシからチチャという酒
          …発芽させたトウモロコシを発酵させてつくる酒
・クイの丸焼き …高地ペルーの名物料理
 →テンジクネズミ、つまりモルモットのこと
・彼らのやりかたとして、先祖から受け継いだ古い品種を大事にしながら、多様な種類のイモを毎年同じように収穫できることを重視
・ペラグラ …トウモロコシだけを食べ続けた場合にかかる危険が生じる病気
 →ほかの野菜を食べていれば問題はない

*ポレンタとママリガ
・トウモロコシは、普及ではジャガイモに遅れ
・ヨーロッパでのトウモロコシを利用した食文化
 →ルーマニアのママリガ(同国の国民食)、北イタリアのポレンタくらいが主
 …トウモロコシを粉にして湯で溶いた、粥というか、餅のようなもの
・ポレンタや東アフリカのウガリもまったく同様のトウモロコシの粥餅
・現在、ヨーロッパで栽培されているトウモロコシは大半が飼料用
・世界のトウモロコシの年間生産量は約6億トン、4割がアメリカ
 →全生産量の3分の2が飼料用

*コショウの木が繁る森
・ヨーロッパとアメリカ両大陸間の交流
 →15世紀から16世紀にかけての大航海時代に始まる
 ⇒野菜や穀類を世界中の国々に広く伝えることに
・コショウの木 …木に巻きつく蔓性の植物
 →緑色のときに実を採って乾燥       …黒胡椒
  完熟して赤くなってから採って外皮を剥く …白胡椒

*富と権力の象徴
・スパイスは一般には、肉の保存に必要
・今日のフランス料理など、狩猟で仕留めた鳥獣の肉をジビエといって珍重
・食品としての価値とは別の意味が、コショウをはじめとするスパイスには付与
・15世紀以降のヨーロッパは、東の海の彼方にあるというスパイスの故郷を求めて狂奔

*すべての料理はカレーになる
・カレーのピリピリとした辛味 →トウガラシに由来
 →辛いカレーにはかならずトウガラシ
・どんな料理でも、カレー粉すなわち複数のスパイス粉末の混合物を加えれば、その料理はカレーになる
・カレーあるいはインド料理は、すべてのスパイスを足し算したときの究極の姿

*ピーマンとパプリカ
・トウガラシ →現在のメキシコを中心とした中央アメリカの原産とされる
・スペイン人 「ピメンタ」…コショウの意
       「ピメント」…トウガラシの呼び方
 →ピーマンは、このピメントから来た言葉
・英語  コショウもトウガラシもペッパー
 →区別するとき:トウガラシをホットペッパー(「辛いコショウ」)
・原産地では、トウガラシをアヒ、またはチリと呼ぶ
・ハンガリーは、料理に大量のトウガラシを使うヨーロッパ唯一の国
 →国民食のグヤーシュ(ハンガリアン・グーラッシュ)
  …大量のパプリカ粉末を加える
  →ギリシャ語のペペリまたはピペリ(ペッパーと同根)が、最終的にパプリカに落ち着いた  

*薬屋で買うフランスのカレー
・フランスにも、カレーと名のつく料理: 
 プーレ・オ:キュリー poulet au curry
  「鶏のカレーソース」   →ほとんど辛くない
・ブルターニュ半島にあるロリアンという港町
 →l'orient 東方港、という訳の感じ
  …インドからの積み荷は、ロリアン港に降ろされた
・フランスでも辛いトウガラシは受け容れられなかった

*トウガラシの真実
・(著者は、)これまでに50種類近くのトウガラシを栽培した経験
・アメリカ合衆国の最南部、メキシコに隣接するニューメキシコ州は、1000年以上も前から先住民たちがトウガラシを栽培してきた地域
 →今でもアメリカ最大の産地
・カプサイシンというトウガラシの辛味成分
 →無味無臭: 水に溶けないので辛いからといってたくさん水を飲んでも効果はない
・トウガラシの辛さ →個体差が大きい: 品種によって固有の辛さ
 …同じ品種でも、乾燥した、ストレスのない場所で育てた方が辛くなるとのこと

*沖縄でコンブをたくさん食べる理由
・ペルーのロコトという、深い緑色から完熟すると濃い赤になるトウガラシ
 →あまりにも辛いので吃驚
 →中南米には、かくも平気で辛いトウガラシの料理を食べる人
・トウガラシは、最初は辛過ぎて食べられなくても、食べ始めるとどんどん辛さに強くなって、そのうち中毒のようになる
 →最初のバリアを越える瞬間のモチベーション ⇒不可解なところ
・どの瞬間に、いかなるモチベーションによって、最初のバリアを越えたのか
 →その国がトウガラシ愛好国になるかどうかの境目はだれにも分からない
 ⇒沖縄のコンブ好きに通じる

*ダンディーなカメムシ
・個性的な野菜、フェンネル
 →細い葉をハーブとして利用: 太った塊茎はサラダや煮込み料理
 →独特のクセのある匂いが魅力
  ⇒ほかでは見ることのない種類のカメムシがたかる 
   →ひたすらフェンネルが好きとしか
・人間以外の動物で、唯一トウガラシを食べるのは鳥だけとのこと

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