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3ヵ月連続過去最高も油断禁物、予断を許さない世界半導体販売高

この4月、5月、6月と、米SIAからの月次世界半導体販売高が、過去最高を更新して、グローバル経済危機で大きく遠のいていた$300台突破が一層現実的になり、調査会社、アナリストの見方もその方向で足並みが揃ってきている。しかしながら、米国はじめ、そして中国でも経済全体の先行き懸念が出始めており、今回の米SIAからの発表でもその念押しが行われている。

≪6月&上半期の世界半導体販売高≫

第二四半期、上半期を締める6月の世界半導体販売高が、米SIAより次の通り発表されている。交代したばかりのSIA President、Brian Toohey氏が初登場している。

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○第二四半期のグローバル半導体販売高、前四半期比7.1%増…8月2日付けSIAプレスリリース

2010年第二四半期のグローバル半導体販売高は$74.8 billionで、第一四半期全体の$69.9 billionから7.1%増加の伸びを示した、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。2010年6月の販売高は$24.9 billionで、前月、5月の$24.8 billionから0.5%上回っている。

「2010年前半の販売高は非常に力強く、広範囲の末端市場からの旺盛な需要が引っ張っている。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「2010年前半の世界半導体販売高、$144.6 billionは、昨年、2009年の前半の$96.1 billionを50%以上上回っている。向こう何ヶ月は前四半期比の伸び率は穏やかになって、該業界の前年比の伸びは28.4%という我々のmid-year予測に沿う結果になるものと見ている。」

販売高の驚くほどの前年比伸長は、主要末端市場からの旺盛な需要のみならず、2009年前半の業界不況の影響をも反映している、とSIAは特に言及した。

「消費者信頼感、仕事の伸びおよび経済全体伸長などのマクロ経済要素には、後半の販売高へのインパクトの可能性を引き続きよく見ていく必要がある。」とToohey氏は締め括った。

※6月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_1006.pdf
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この上半期は、昨年同期と比べて50.5%増となり、昨年の落ち込みの程度を物語る形である。今回の発表を受けて、次の表し方となっている。

◇SIA: First half 2010 sales up more than 50%-June sales of $24.9 billion capped off Q2 and 2010's first half, both of which showed healthy growth, according to the SIA.(8月2日付け Electronics Design, Strategy, News)

◇世界の半導体売上高49%増、6月、3ヶ月連続過去最高(8月3日付け 日経 電子版)
→米国半導体工業会(SIA)が2日、6月の世界半導体売上高が前年同月比49.3%増の$24.93B(約2兆1600億円)になったと発表、5月の実績を0.5%上回り、3ヶ月連続で過去最高を更新の旨。新興国を中心にパソコンなどIT機器の販売が好調に推移しており、半導体の需要拡大が続いている旨。

関連する予測記事として以下が見られる。

◇ISuppli again raises semiconductor forecast (8月2日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)発。同社が再び、今年の半導体市場予測を上方修正、5月時点の31%増から、今回35%増の$310.1Bと見る旨。昨年比$80.7B増という予測は、半導体業界史上ドルベース最大の年間上げ幅になる旨。

世界経済の先行きについて、今後に注目すべき動きが次のように見られる。
まずは、中国から人民元のレートについてである。

◇人民元の基準値、最高値更新 (8月4日付け 日経 電子版)
→中国の中央銀行、中国人民銀行が4日午前に公表した人民元の中間値(基準値)は、1ドル=6.7715元と7月12日の1ドル=6.7718元を上回り、最高値を更新の旨。

[13億人の経済ニュース](biglobe配信)でも、人民元 対 円レートが次の変わり目となっている。 
【8月3日】 1元=約14円
【8月4日】 1元=約13円

米国では、プラス基調にあった就業者数が連続マイナスに転じたという気になる動きとなっている。

◇7月の米就業者数、2カ月連続大幅減、失業率9.5%(8月6日付け asahi.com)
→米労働省が6日発表した7月の雇用統計で、非農業部門の就業者数が前月比で13万1千人減となり、2カ月連続でマイナスを記録、失業率は前月と同じ9.5%で、依然として高水準の旨。米経済の先行き懸念は強まり、金融当局による追加の金融緩和への期待が高まりそうな旨。


≪市場実態PickUp≫

本当に長きにわたる係争であるが、インテルのMPU販売独占を巡って今度は米国独禁当局、FTCとの和解が発表されている。

【インテルと米FTCの和解】

◇インテル、米独禁当局と和解、MPU販売巡り (8月4日付け 日経 電子版)
→MPU販売で独占的な地位を違法に利用したとして米連邦取引委員会(FTC)が米インテルを訴えていた訴訟で、両社が和解に合意したことが3日明らかになった旨。FTCが4日に米ワシントンで記者会見を開き、詳細を説明する旨。

◇Intel escapes fine, agrees to restrictions in FTC deal(8月4日付け EE Times)
→予定通り、米国Federal Trade Commission(FTC)が水曜4日、Intel社との決着合意の詳細を公表、Intelには罰金は科せられなかった旨。

いろいろ取り沙汰されていたNXP SemiconductorsのIPO上場であるが、期待する資金調達レベルには大きく届かなかったようである。

【NXPのIPO】

◇NXP readies IPO (8月5日付け EE Times)
→赤字のNXP Semiconductors、IPOで$700M超調達する期待の旨。

◇NXP prices IPO at $14 per share (8月5日付け EE Times)
→NXP Semiconductors N.V.のIPO株式提示価格、最近公然と推測されていた$19〜$21よりずいぶん低い$14/株の旨。

◇NXP IPO to raise $476M, CEO discusses challenges and opportunities-While ranking as one of the largest IPOs in the United States so far this year, the offering comes in below expectations. NXP's CEO talks to EDN about the headwinds the company faced in launching the offering and the benefits of doing so against this economic backdrop.(8月6日付け Electronics Design, Strategy, News)
→NXP Semiconductorsが今朝、$14/株の値付けで同社株式約14%のIPO(initial public offering)を発表の旨。

中国の会社を相手取った知的財産係争の動きが、次の通り見られてきている。

【中国とのIP係争】

◇Harting wins patent infringement case in China(8月4日付け EE Times)
→Harting Technology Group KGaA(Espelkamp, Germany)が、同社のコネクターを複製したある中国の会社を相手取った法廷係争に勝った旨。

◇EDA vendor sues China's ZTE, alleges software piracy(8月5日付け EE Times)
→高周波EDAベンダー、AWR社(El Segundo, Calif.)が水曜4日、テレコム装置サプライヤ、ZTE社(Shenzhen, China)およびその米国関連会社を相手取って、AWRのEDAソフトウェアのunauthorized版を取り込んで使用したとして、米国連邦裁に提訴の旨。

NI Week 2010(AUSTIN, Texas)から、パネル討議の記事であるが、多きに上る世界のいろいろな問題はすべて科学者およびエンジニアに任せろ、と言わんばかりの雰囲気を感じている。

【溜飲が下がる趣き】

◇Engineers and scientists bring order to issues(8月5日付け EE Times)
→活発なexecutiveパネル討議のコンセンサス。マネジメント、会社方針および法制当局がそうさせさえすれば、科学者およびエンジニアが世界の問題のほとんどを解決する旨。


≪グローバル雑学王−109≫

ジャガイモに纏わるエピソードが、世界あちらこちらでこんなに多彩に、またそれが如何に人びとの生命を救ってきたのかと、

『世界の野菜を旅する』 (玉村 豊男 著:講談社現代新書 2055)
 …2010年6月20日 第1刷発行

より知らされている。


[第2章 ジャガイモがタラと出会った日]

*タラとジャガイモの出会い
・ポルトガルの古都、ポルト(porto:「港」の意)にて、一日の上陸
・ポルトガル人は、タラが大好物 …200を超えるレシピ
・ヨーロッパのタラ料理はすべて干ダラまたは塩漬けのタラを用いる
・タラとジャガイモのコンビは「出会いもの」と言っていい絶妙の組み合わせ

*新大陸の贈りもの
・ジャガイモは、新大陸からヨーロッパへの最高の贈り物
 →疲弊の極致にあった人びとを救った
・チューニョ …フリーズドライ(凍結乾燥)による保存ジャガイモ
 →インカ帝国の誇る強大な軍隊が遠征する際の兵糧
・ジャガイモがヨーロッパに知られたのは、1532年、スペインの征服者たちがペルーを蹂躙したとき
 →持ち帰ったジャガイモが時の教皇に献上
・現在のヨーロッパでは、サツマイモの方はあまり普及せず、いまだに異国的な野菜のイメージが拭えない

*不謹慎な植物
・初めて見るジャガイモ …土の中にできる不思議
 →イタリア人 −トリュフを連想
  フランス人 −「土の中のリンゴ(ポンム・ド・テール)」
・ジャガイモは毒だ、という説も
…当時のジャガイモは今よりもソラニンの含有量が多かったとも
 →普及に時間がかかった最大の理由: 当時のイモが小さくて不味くて食べにくかった

*戦乱と飢饉のヨーロッパ
・18世紀の後半に入っても、美味しい食べ物を求めるヨーロッパの富裕層には相変わらず不評
・17世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパでは戦乱が絶えず
 →中心となったヨーロッパ北部地域の疲弊は激しいもの
  ⇒救荒作物としての価値: ジャガイモの啓蒙普及活動
・戦乱や飢饉のたびに、広がる作付面積
 →ジャガイモが、「貧者のパン」としてじわじわと広まっていった

*ジャガイモの食べかた
・フランス人はナイフで切って食べ、ドイツ人はフォークの背で潰して食べる
・料理法: フランス人→油で揚げる
      …アメリカでのフレンチフライ
       →イギリスではポテトチップス
      …ドイツでのポンフリ(フランス語のポンム・フリット)
      …イギリスでのジャーマン・ポテト(油で炒めた)
       イギリス人→茹でる
      …フランスでのポンム・アングレーズ(英国風ポテト)
・ジャガイモの品種は19世紀末に急増し、現在では数千を超えると言われる

*郷愁のブランダード
・フランスでは最近「ネオ・ビストロ」と呼ばれる店が流行
…昔ながらの大衆的な食堂の雰囲気を残しながら料理やインテリアをお洒落な現代風にアレンジ
 →定番メニューのひとつが「タラのブランダード」
  −水で戻した干ダラを牛乳でぐずぐずになるまで煮たもの
・干ダラは「ストック(オランダ語で棒)・フィッシュ」とも
 …食べるときは、水で戻す前に専用の木槌で1時間以上叩くのが慣わし
・ミルクのほかにマッシュポテトを加えるレシピ

*海を泳ぐ黄金
・タラは水温が十度以下の冷たい海に棲む魚
 …ニシンよりタラの方が早く、すでに先史時代から大量に消費
  →世界で最も早く市場化された海の魚
 …9世紀には、タラ交易の市場が成立していたという
・8世紀末から11世紀の初頭 →バイキングが跋扈した時代
 ヨーロッパでの大量のタラの消費 
  →動物性蛋白質を供給する食物が乏しかった
 最高の美味 →わずか3cmにも満たないタラの舌

*ニューファンドランド
・16世紀以降、タラの漁獲を争う「タラ戦争の激化」
・「テラ・ノーヴァ(新しい世界)」あるいは「ニュー・ファウンド・ランド(新たに発見された土地)」
…この島の沖合いは世界屈指の大漁場
・20世紀になって大型のトロール船が海底から根こそぎタラを一掃
 →ニューファンドランド海域からさえタラがほとんど消えてしまった

*スープの語源
・スープの中にパンを入れて食べるのは、ヨーロッパでは普遍的な習慣
…パンに汁が滲みてきたら、そのパンごとスープをすくって食べるのが定番の作法
 →スープ(soupe)という言葉は、もともとこのパンのこと
・その後の「ポタージュ(potage)」
…「ポット(pot:鍋)」の中に入れる具材すべてを示す言葉
・スープ(またはポタージュ)に入れるクルトン
 →昔の「スープ(の中に入れるパン)」の姿を偲ばせる

*失われたパン
・フランスでは、古くなって干からびたパンのことを「パン・ペルデュ(直訳:失われたパン)」
 →こういうパンを溶き卵とミルクに浸して戻し、フライパンで焼いたもの
 =フレンチトースト…アメリカのホテルで朝食としてサービスされたためこの名
・パンが果たしていた役割の、かなりの部分をジャガイモが担うように
 →ジャガイモはますます人間の生存に欠かせない基本的な食糧として存在感を増すことに

*土のないジャガイモ畑
・アイルランドのイニシュモア島(西海岸のゴールウェイ湾に浮かぶアラン諸島のひとつ)
 →昔のままのたたずまいを見せる石ころだらけの畑 
 →ほとんどはジャガイモ

*イモに月が出ている
・アイルランドは、人類史上、ジャガイモを真の意味で主食にしたことのある、唯一の国
・ジャガイモの原産地である南アメリカから、ベト病の一種とされる病菌がヨーロッパに侵入
 →1845年、アイルランドに、あっというまにジャガイモを全滅
 ⇒アイルランドの人口は、ジャガイモの普及によって100年間に倍増、八百万人に、それが同じジャガイモのために半減する危機に直面
・ジャガイモの単作に特化したためにじわじわと衰えを見せていたアイルランドの菜園
 →もろくも壊滅
  生煮えのジャガイモ …消化が悪く、長い時間腹もちがよい
 →中心部に見える違った色:「きょうのジャガイモには月が出ている」(冗談好きなアイルランド人)

*アイリッシュ・シチュー
・1845年からの数年間にアメリカに移民した百万人を超える人びと
…ジョン・F・ケネディの曽祖父の一家も
 →死を覚悟で漕ぎ出す彼らの船は、棺桶船とも
・アイリッシュ・シチュー…羊の頸肉と、タマネギと、ジャガイモを煮込んだ料理
 →ニンジンを入れるのは邪道 −アイルランド人の思い
 ⇒生と死の運命をともにしてきたジャガイモ

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