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予想以上に新興経済圏がけん引した2010年上半期の半導体市場

猛暑そして極寒の天候が世界各地から伝えられている現時点であるが、なかなか読めない一寸先の様相をグローバルに感じるなか、半導体・デバイス業界の今年上半期および直近の4-6月四半期について各社業績、ベンダーランキングなどデータが出揃ってきているということで、今年前半をざっと振り返ってみる。全体では新興経済圏が引っ張る予想以上の活況ではあるが、いつまでもつのかという不透明な気分が流れて、最先端の明るいムードメーカーの登場に心待ちという市場の様相を特に感じている。

≪上半期の半導体市場≫

小生の本欄書き出しコメントから、今年前半各月の市場気分の一端というものを論ってみる。

1月  中国が世界経済回復の牽引役という昨年来の構図が、半導体業界の今後を見ていく恒例の新年の場でも一層明確に

2月  旧正月を控えて市場に一服感が漂う今こそ、その後の本格回復に向けてしっかり需給対応できるよう充電を、という受け止め方

3月  他地域に比べた日本市場の縮小幅と回復の遅れが、半導体販売高と同様に目立っている

4月  半導体・デバイス、エレクトロニクス業界関係も、会社統合、新分野の新製品発売など、新しい挑戦、開拓の始まりの空気に満ちている

5月  メモリ、アナログ半導体はじめ市場の逼迫感を映し出す事態、事例が、日を追うごとに増えてきている感

6月  各予測、新興市場が牽引する2010年の販売高は約30%戻して$300 Billionの大台に迫る史上最高を見込んでいる

特に4月以降の販売高増加の見方に予想以上という表現が溢れているとともに、せせこましい需給状況の気分が高まってきている。上半期の具体的なデータ、市場の流れが次の通り表わされている。

◇2010 sales strength shows in memory, foundry industries-IC Insights reports most large memory and foundry companies showed growth in a ranking of the top semiconductor industry companies. IC Insights also estimates the 2010 worldwide semiconductor market will register the largest dollar volume increase in history.(7月30日付け Electronics Design, Strategy, News)
→IC Insightsが今朝発表、2010年上半期レポート。"performed extremely well"とか"strong double-digit growth rates"といったフレーズが全体に見られ、半導体業界が最高を記録する流れにつながる基調の旨。
2010年上半期販売高ベンダーランキング・トップ20、下記参照。
http://www.edn.com/photo/284/284655-IC_Insights_July_2010_top_20_semiconductor_company_ranking.gif

市場気分を最も端的に表しているあるアナリストの表現として、以下が実態にぴったりはまっていると感じている。

「Q2 is a great quarter! But will it last? Any thoughts out there?」

熱に浮かされない注意が必要と思うが、今を引っ張って伸びているメモリ、ファウンドリーについて以下実態データの抜き出しである。

◇Analyst: Flash is hot, supply chain is not (7月27日付け EE Times)
→Web-Feet Research社が見るフラッシュメモリ市場:
      2009年  2010年
 NOR   $4.7B   $5.7B
 NAND  $16.1B   $21.5B
AppleなどのOEMsが大量のフラッシュを購入、ほかは割当を求めてdouble発注に走らざるを得ない状況の旨。

◇サムスン、半導体の利益8.6倍、4〜6月営業益88%増。(7月30日付け 日経 電子版)
→サムスン電子が30日発表した2010年4〜6月期の連結業績、売上高は前年同期比17%増の37兆8900億ウォン、純利益は同83%増の4兆2800億ウォン。高値圏を維持する半導体メモリが利益の6割を稼ぎ出したほか、液晶パネルも高い収益を維持の旨。半導体部門の売上高は同55%増の9兆5300億ウォン、営業利益は同8.6倍の2兆9400億ウォン。

◇Samsung posts record profit on strong chip sales(7月29日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.(Seoul)の第二四半期全体販売高$31.9B、前年同期比17%増。半導体事業の販売高は$8B、LCD事業は$6.5Bの旨。

メモリのよいときはこういうものと、ずっと遡っての経緯を改めて思い出すような上記の内容である。

◇TSMC sees Q2 sales climb, modest growth in Q3(7月29日付け EE Times)
→TSMCの6月30日締め第二四半期販売高約$2.51B、前四半期比13.9%増、前年同期比41.4%増。

◇TSMC forecast tips chip cycle nearing its peak(7月29日付け EE Times)
→TSMCの第二四半期販売高約$2.51B、前四半期比13.9%増。ここ10年の平均で、同社の第二四半期vs.第一四半期販売高伸び率は15.7%である旨。

◇TSMC boosts capex, more upbeat about 2010 chip growth(7月30日付け DIGITIMES)
→TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏。2010年のcapex目標を$5.9Bにかさ上げ、Samsung Electronicsに次いで世界第二の設備投資メーカーの位置づけになる旨。

先端capacityを増やして勢いづけるのは今、という流れとともに、先行きに慎重な見方が交錯するTSMCへの見方になっている。いずれにしても一時なりとも目が離せない市場状況が続くことは間違いないところである。


≪市場実態PickUp≫

気がつかなくて、少し遅れての取り上げ方になるが、米SIAのpresident交代、そして移転が前倒しになっている。

【米SIAの異動&引っ越し】

◇Brian Toohey Takes Office as the President of the SIA(7月19日付け SIA Press Release)
→米Semiconductor Industry Association(SIA)のpresidentに、Brian C. Toohey氏(42才)が本日就任、1997年以降該associationを率いてきたGeorge Scalise氏を引き継ぐ旨。Scalise氏は、president emeritusとして年末までSIAに残る旨。
SIAは、9月にSan Jose, CaliforniaからWashington, D.C.へのheadquarters移転を完了する旨。

今年に入ってからの業界のみならず紙面を賑わせてきているFoxconnであるが、そのEMS業界の第一四半期ランキングデータが次の通り発表されている。Foxconnの占める大きさを改めて認識しているところである。

【EMS業界】

◇Foxconn to take more than half of EMS market by 2011(7月27日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社発。顧客、Appleからの伸びが大半、EMS(electronics manufacturing services)プロバイダー、Foxconn Technology GroupのグローバルEMS業界売上げに占める比率が、2009年の44.2%から、2011年までに半分以上となる見込みの旨。
第一四半期のTop-10 EMSプロバイダー・ランキング、下記参照。(金額単位:USM$)


順位EMSプロバイダーQ1 2009 Q4 2009 Q1 2010 前四半期比 前年同期比
1Foxconn11,12721,36217,147-19.7%54.1%
2Flextronics5,5836,556 5,940-9.4%6.4%
3Jabil Circuit2,8873,0883,005-2.7%4.1%
4Celestica1,4691,6641,518-8.8% 3.3%
5Sanmina-SCI1,1951,478 1,5273.3%27.8%
6Cal-Comp675847845-0.3%25.1%
7Benchmark Electronics497600572-4.7%15.1%
8Elcoteq625322297-7.6%-52.4%
9Venture493753457-39.3%-7.3%
10Plexus38943049114.2%26.2%

[Source: iSuppli, July 2010]

日本国内市場のもっともっとの盛り上がりを期待する声は、誰と話しても出てくるところである。本当に国を挙げて最先端技術&市場の浮揚を図り、気分、モチベーションを高めていくことに尽きると思う。

【Renesas Electronics再構築】

◇Report: Renesas to have massive layoff (7月28日付け EE Times)
→日経を引用したReuters発。ファウンドリーを進んで受け入れる計画の渦中、Renesas Electronics社が、年末までに従業員の約10%、約5,000 jobsを削減する計画の旨。

◇Renesas moves to fab-lite strategy (7月30日付け EE Times)
→Renesas Electronics社が、利益体質強化のための事業再構築活動の概要を説明の旨。

インテルの光送受信の取り組みのデモが行われている。我が国の取り組みは如何?、気になるところである。

【インテルのsilicon optics】

◇Intel demos 50-Gbit/s silicon optics (7月27日付け EE Times)
→商用化までにはterabit-per-secondに速度を高める計画の50-Gb/s光送受信半導体をデモしたIntel社の研究。シリコンphotonicsが、スーパーコンピュータからサーバ、PCsまですべてでcopper connectionsに置き換わっていく旨。

◇Groundbreaking photonics research from Intel demonstrated at IPR(7月29日付け Nanowerk)
→Integrated Photonics Research, Silicon and Nano Photonics(IPR)(7月29日:Monterey, Calif.)での特別基調講演にて、Intelのchief technology officer(CTO)でIntel Labsのdirector、Justin Rattner氏が、50Gbps Silicon Photonics Linkプロトタイプをデモ、世界初、Siベースの統合レーザとの光データ接続である旨。


≪グローバル雑学王−108≫

我々が毎日口にする野菜。スーパー、八百屋の陳列棚の野菜の顔ぶれも、最近ずいぶんグローバルになってきたという強い実感がある。いつ頃との比較かと聞かれれば、なかなかきりがない風情があるが、ここは、

『世界の野菜を旅する』 (玉村 豊男 著:講談社現代新書 2055)
 …2010年6月20日 第1刷発行

より、毎日目にする有名な野菜のルーツ、エピソードを辿ってみることにする。まずはキャベツが中心テーマになる。


≪はじめに≫
・タマネギ 
…もっとも古くから人間に利用されてきた野菜のひとつ
 →原産地はインド西北部からウズベキスタン、タジキスタン、アフガニスタン北部あたりにかけての山岳地帯と推定
 →アメリカが、現在は世界最大のタマネギ生産国
 ⇒野菜をめぐる旅の物語は、さまざまな不思議
・野菜を育てて収穫 → 自分で料理して食べる 
             → 旅で新しい野菜を知り、それを本で調べる 
             → 調べた野菜の種を次の旅で買い、それを栽培して収穫する
             ⇒この円環の中から本書は生まれた

[第1章 赤ん坊はキャベツから生まれる]

*ポルトガルの味噌汁
・ポルトガル(Portugal)を旅 
 →この国なら長いこと暮らしていけそうだ、と感じる瞬間
 ⇒なんといっても味噌汁がある
・大西洋岸にあるナザレ(Nazare)
 →イワシの塩焼き、日本人は興奮!
・「緑のスープ」という意味のカルドヴェルデ(caldoverde)
 →「緑」はキャベツ
 →味噌に似た粉末の正体はジャガイモ

*キャベツが立っている国
・大きな市場の野菜売場を占領
…細く切られた濃い緑色の硬そうなキャベツの葉と、カットされる前の大判の葉ばかり
 →ポルトガルでは、私たちがイメージする丸いキャベツは肩身が狭いよう
・この国のキャベツ 
…長い茎をもつ背の高い植物、その茎から葉が互生
 →市場に出荷されるのは葉っぱだけ、茎もなければ丸い塊も見当たらない
 ⇒「立ちキャベツ」

*青菜が結球する理由
・キャベツ、レタス、ハクサイなど …結球する野菜 
 →球を結ぶ、つまり丸くなる
 →丸くなるのは、人間がそうなるように改良 
 …長い時間をかけて品種を改良
・結球することの利点 →葉が柔らかくなり、白くなること
 ⇒「白軟化」
 …キャベツやレタスは結球によって白軟化した野菜の代表

*金髪なまけデブ女
・肥料を与えれば葉が大きく柔らかくなる
 →野菜のうちのいくつかを、結球によって白軟化することに成功
・レタスの中に、「グロッス・ブロンド・パレッスーズ」という名の品種
…パリのセーヌ河畔にある種苗店で買ってきた種
…直訳すれば、金髪なまけデブ女
 →サラダにすると実においしいレタス
 →日本人はシャキッとした歯ざわりのあるタイプを好み、いまひとつの人気

*英国式収穫法
・レタスの「レ」→ミルクの意
…日本語では「ちしゃ」→「ち」という語は「乳」の意
・レタスをおいしく食べる方法 →生きているうちに食べること
 ⇒レタスの活造りというのをやったら?
・英国の園芸家から、もっとよい食べ方があると教示
 →レタスは、一挙に収穫しなくてよい、外側から食べたい分だけ葉を剥いでいけばよい
 →薹(とう)立ちが遅くなるという利点も
 …薹が立つ(中心の茎が生長する)と葉が硬くなる

*フランス人にとってのサラダ
・フランス人は巻きの緩い、やわらかい葉を一般的に好む
…日本のようなレタスはフランスにはなく、日本で「サラダ菜」と呼ぶ小型のレタスもフランスでは見かけない
・フランス語の「サラダ」→サラダに用いるレタスのことを意味する語でも
 →サラダはそもそもレタスだけで作るもの
・大半のフランス人はほとんど毎日、夕食に「ビフテク・フリット」(牛肉ステーキに大量のフレンチフライ)
 →基本のサラダは、かならず肉料理を食べた「あと」に食べるもの

*乙女の指先でドレスを着せる
・「サラダ」(英語 salad:フランス語 salade)
 →ラテン語で塩を意味する「サル sal」に由来
・英語の「ドレッシング」…塩と酢と油を混ぜたサラダのソース
 →野菜にドレスを着せる、という意味
・フランスには、サラダは乙女の指先で、という言葉
・ドレスを着せたあとは、内側から水分が滲み出さないうちにすぐに食べる
 …サラダのおいしい食べ方
・塩を含んだ液体にサラダよりも長時間さらされている状態 
 →マリネ marine …海の水に浸ける、塩水に漬ける、というのが本来の意味
・サラダからマリネに至る過程 …時間の経過とともに進行するひと続きのもの
 →"サラダは放っておけばやがては海になる"

*ルイ十四世のレシピ
・アブラナ科のキャベツとキク科のレタス
 →ともにヨーロッパの原産、数千年前の古代から連綿と栽培
・結球するレタスがいつ頃あらわれたのか 
 →専門家の間でも意見が分かれる
・日本料理に使われる「ちしゃとう(薹)」という野菜
 →茎を伸ばしていた頃の古いレタスの食べ方を教えてくれる
・韓国料理のサンチュも、結球しない「掻きぢしゃ」の一種
・西洋では、古代の昔からレタスをナマで食べていた
・ルイ十四世が大のサラダ好き、レタスに目がなかった
 →フランス人がレタスのサラダをことのほか好むように
  
*キャベツ畑の伝説
・ポルトガルではどの地域でも昔から伝えられている在来のブドウ品種を今でも作り続けている
・サラダに用いられる野菜のひとつに、ケールという青菜
・ポルトガルの人たちが「味噌汁(カルドヴェルデ)」にするキャベツ
 →大型のケールの一種、と考えてよいのでは
・キャベツは、ケール→非結球のキャベツ→結球キャベツ、と着実に進化
・数少ないヨーロッパ旧大陸原産の野菜であるキャベツ
 →何種類かの豆とともに、古代中世から近世に至るまで日常の暮らしを支えた
・フランスでの「キャベツを植えにいく」
 →「引退して自由になる」という意味
・古代からよく知られる、キャベツが優れた胃腸薬
・赤ん坊はキャベツから生まれる、という伝説
 →食材に乏しい寒冷の地で、生命を繋いでくれる貴重な野菜
 …母のイメージ

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