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猛暑渦中の半導体市場/市場実態PickUp/グローバル雑学王−107

我が国で梅雨明けの猛暑日が続く中、世界各地でやはり記録的な猛暑が伝えられているが、煽り合いの相乗効果があるのか、半導体市場も非常に熱い活況を呈しており、"史上最高"の表現があちこち舞い踊っている感がある。バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が「異例に不確か」と発言しているように、新興経済圏の爆発的な需要が引っ張る現状は、"真夏の夜の夢"で通り過ぎないよう冷静な見方、対応が求められる情勢に映る。

≪猛暑渦中の半導体市場≫

積極的なスタンスで知られるFuture HorizonのMalcolm Penn氏予測であるが、今年についてはさらに上方修正を行い、来年は抑え気味という見方で、以下の打ち上げを行っている。

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○今年の半導体業界は$300 billion到達へ−2010年は34%伸びる予測(7月21日付け Tech Eye)

2010年の半導体販売高は、2009年の不況落ち込みの後、いつもより素早い戻し方で$300 billionを上回る見込みである。

Future HorizonのCEO、Malcolm Penn氏は、今年の予測を上方修正したとしているが、近視眼的でリスクを嫌うCEOsが余計な波風を立ててまたもや"trash cycle"に業界が入り得ると警告している。

「半導体業界がどういう振る舞いになるか、正確に予測するアルゴリズムはない。半導体市場は貪欲なサイクルおよび陥る罠に引っ張られ、すなわち投資およびリードタイムによってである。」
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もう一つ、この4-6月四半期の伸びっぷりが次のように分析されている。

◇Chip industry Q2 to show 9.4% growth, says analyst(7月19日付け EE Times)
→アナリスト、Mike Cowan氏。6月の実際のグローバル半導体販売高は$28.291B、3ヶ月平均は$25.23Bとなる旨。これだと第二四半期は$75.69Bとなり、World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationからのデータによると、前四半期比約9.4%増、前年同期比44.3%増になる旨。第二四半期 vs. 第一四半期はここ10年平均で2.9%増となっており、9.4%増は比較して高い水準の旨。

このような見方になるのも、半導体、エレクトロニクス大手各社の直下の業績発表が伸びの勢いを端的に物語っている。"史上最高"、"過去最高"のオンパレードで、昨年のどん底から大きく跳ね戻して、経済危機以前の伸びの延長線以上の水準となっている感がある。

◇TI reports record profit for Q2 (7月19日付け EE Times)
→Texas Instruments社(Dallas)の第二四半期販売高$3.5B、前四半期比9%増、前年同期比42%増。該四半期のoperating profitは$1.1B、同社の史上最高を記録の旨。

◇Hynix posts record sales, tips scaling plans(7月21日付け EE Times)
→Hynix Semiconductor社の6月30日締め第二四半期連結販売高$2.7Bの最高記録、前四半期比16%増、前年同期比96%増。

◇Xilinx posts record revenue, sees more growth(7月21日付け EE Times)
→Xilinx社(San Jose, Calif.)の7月3日締め四半期販売高$594.7Mで3四半期連続の最高記録、前四半期比12%増、前年同期比58%増。

◇米アップル、過去最高の売上高、前年同期比61%増。(7月21日付け asahi.com)
→米アップルが20日発表した今年4〜6月期決算、売上高が前年同期比61%増の$15.7B(約1兆3700億円)、純利益が同78%増の$3.253B(約2800億円)、売上高は四半期決算としては過去最高、純利益も過去2番目の高水準、新型情報端末「iPad」などの大ヒットが貢献した旨。

◇米MS、売上高・純利益ともに過去最高、4〜6月期。(7月23日付け asahi.com)
→米マイクロソフトが22日発表した今年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比22%増の$16.0B(約1兆4千億円)、純利益は48%増の$4.5B(約3900億円)、いずれも4〜6月期決算の最高額を更新の旨。
同社は6月期決算、2010年会計年度の売上高が前期比7%増の$62.48B(約5兆4千億円)、純利益が29%増の$18.76B(約1兆6千億円)、いずれも過去最高の旨。

特に米アップル社については、半導体購入No.1の座に至るタイミングが見えてきているというデータ発表がある。

◇Apple semiconductor spending expected to increase 54% in 2010-Apple is expected to become the world's second largest OEM semiconductor buyer in 2011 and could become the top semiconductor spender in 2012, according to iSuppli.(7月22日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社の今週のレポート発。iPadおよびiPhoneの"驚異的な"成功によって、Apple社が、2011年のOEM半導体buyer第2位、2012年には首位になる可能性がある旨。
半導体spendingトップ10 OEMs、次の通り(USB$)
 Rank Company       2010   2011
 1   Hewlett-Packard    15.8   17.1
 2   Apple          12.4   16.2
 3   Samsung Electronics 12.8   13.9
 4   Dell            9.2    9.8
 5   Nokia           8.4    8.0
 6   Sony           6.2    6.8
 7   Panasonic        5.9   6.5
 8   Lenovo          5.3   5.9
 9   Acer           5.0    5.9
 10  Kingston Technology  5.2    5.5
 [Source: iSuppli, July 2010]

しかしながら、この熱い活況ぶりもいつまで続くのか、いつもながら冷静に対処しなければと思う繰り返しではあるが、次の番組ではそのひとつの警鐘を鳴らしているとの受け止めである。

○NHKテレビ「特報首都圏」:自動で車が停止:ネット広告の未来(7月23日19:30〜)
・最先端技術にどこまで頼れるのか
・技術はあくまでサポート役
・決めるのはそれぞれの人

車の自動停止装置、そして携帯電話の地図&場所案内サービスの開発の前線を取り上げていたが、供給者責任は然りとして使用者責任の自覚、あり方というものを考えさせられている。


≪市場実態PickUp≫

英ARM社の積極的な連携拡大が続いている。インテルとの競合模様はどうなるか、に注目である。

【ARMの連携拡大】

◇ARM, TSMC ink strategic agreement (7月20日付け EE Times)
→ARM Holdings plcがTSMCに対し、20-nm技術ノードまでのARM physical IP開発を可能にする長期戦略合意の一環として、広範囲のARMプロセッサへのアクセスを供給する旨。

◇Microsoft takes ARM architectural license (7月23日付け EE Times)
→Microsoftが、ARM Holdings plcとarchitecturalライセンス合意調印、MicrosoftはARMプロセッサアーキテクチャーへのアクセスおよび自前のARM半導体設計が得られる旨。

smart gridの具体的な推進に向けて、世界規模の検討の場がもたれている。

【エネルギー関連】

◇Meeting forges global smart grid groups (7月21日付け EE Times)
→15カ国以上の集まりでInternational Smart Grid Action Network(ISGAN)を結成、smart electric gridsについてのグローバル協力を推進する旨。
木曜22日にelectric vehicles(EV)に関する業界workshopを主催する米国エネルギー省が発表の旨。ISGANは、smart grid政策&法制化、標準化、pre-competitiveリサーチ、従業員スキルおよび消費者教育についてコラボの旨。次の各国エネルギー担当大臣が支援する旨。
 Australia,
 Belgium,
 Canada,
 China,
 European Commission,
 France,
 India,
 Italy,
 Japan,
 Korea,
 Mexico,
 Norway,
 Sweden,
 the United Kingdom
 the United States

米国エネルギー省がサポートする研究内容として、以下が見られる。

◇Smart metal enables solid-state refrigerant (7月20日付け EE Times)
→University of Maryland Energy Research Center(UMERC)が、米国エネルギー省からの助成を受けて、吸熱あるいは放熱で形を変えるsmartメタルを開発している旨。

◇DoE gives $122M for artificial photosynthesis(7月22日付け EE Times)
→米国エネルギー省が、太陽光から燃料を作り出す技術に取り組むCaliforniaの研究者に対し$122M相当の助成支援、California Institute of TechnologyがLawrence Berkeley National Labと連携して、Joint Center for Artificial Photosynthesis(JCAP)を引っ張っていく旨。

SanDisk社、Eli Harari氏の退任予定が発表されている。インテルのEPROMの流れでまず注目した覚えがあるが、重要特許を擁してstartupからフラッシュメモリ大手に、といういろいろ重なる思い出が多い経歴という感じ方がある。小生、直接にはCompactFlashコンソーシアムの初期段階に参画した程度である。

【Eli Harari氏退任】

◇SanDisk CEO Harari to retire (7月22日付け EE Times)
→SanDisk社を駆け出しのstartupからNANDおよびフラッシュベース製品の主要プレーヤーに導いた同社founder, chairman and chief executive、Eli Harari氏が、2010年12月31日付けで退任する旨。


≪グローバル雑学王−107≫

読み始めた途端に日本の首相交代、金融情勢も波乱含みのなかで、

『変わる世界、立ち遅れる日本』
 (Bill Emmott 著 烏賀陽 正弘 訳:PHP新書 655)…2010年3月4日 第1版第1刷

も今回が最終章、締めとなる。我が国に密接した世界的な視点に本書により触れることができた意義を大きく感じている。ここにきて米国で下記の一区切りの動きである。新興圏経済が引っ張る活況のなかで、今後我が国、我々がどう意識して振る舞うか、振る舞えるかが問われていると思う。

◇オバマ大統領が署名、米の金融規制法成立。(7月22日付け asahi.com)
→オバマ米大統領が21日、1930年代の大恐慌時以来となる米国の抜本的な金融規制強化法案に署名し、同法が正式に成立した旨。米国が大幅な規制強化にかじを切ったことで、日本など他国へも同様の規制強化を求める圧力が高まる可能性がある旨。
 

[第8章 メインバンク・システムの復権−−−衰える英米金融の影響力]

*いまこそG20による金融規制の強化が必要
・対不平等問題 →政治的な取り組みの方が、より持続的に変化するものと思われる
・2007〜2009年の経済崩壊
 …銀行が利益を上げるため、売り手と買い手の両方になって、リスクの高い資産を増やしたことが原因
  →「陰の銀行システム」
  …特別な「オフ・バランス・シート(バランス・シートに載らない簿外取引)」方式を創出
  ⇒廉価で容易に入手できる資金や信用貸しが、借金を急増
・G20(20ヶ国・地域首脳会合)の金融サミット 
 2009年4月 ロンドン
 2009年9月 ピッツバーグ
 →金融規制を改革、金融機関の経営陣の報酬体系を抑制する必要
・英米ほか、金融規制を早まって強化すれば、景気回復に打撃を与えるとの懸念
 →私(著者)はこれは間違っていると思う。
 ⇒私(著者)の提案は、金融規制当局や政治家がいち早く手を打つこと
 ⇒地球規模での協調の絶好のタイミングは、「いま」

*「金融規制強化」の具体的な方策
・「金融規制強化」の意味
 一つ目: 金融取引の公開を求めるより厳格な規則
 二つ目: デリバティブを公開するうえで、それに見合う資本が必要になる新規則を設定して、銀行に課す
 三つ目: レバレッジの許容限度を定め、銀行により多くの流動性資産を保有することを、義務付け
・金融規制が全般的に強化されれば、銀行のコストを引き上げ、利益を減ずる
 ⇒再発を阻止

*システムではなくバランスが変わる
・「英米金融」システム…オープンな資本市場を通じて資金調達 
 →没個性的
 日本とドイツの旧来からの伝統的な「メインバンク(主要取引銀行)」システム 
 →幾分限定的で、しばしば革新性と対立
・事実上、上記の二つのシステムは、ここ数十年間、お互いに溶け合っている。
・金融規制の強化 →資金調達の方法を、英米システムから、過去のメインバンク・システムの方向へ押し戻すことに
・投資ファンド →情勢が一変しても、適切な利益を上げる方策を模索
        ⇒中国やアラブ諸国の富裕者は、新たに膨大な資金を創出
・英米システムの金融は死滅したのではなく、ただ、バランスが変化していく

*資本主義に大変革をもたらす要因
・経済危機により資本主義には二つの大変革
 →不平等に対する政治的関心の高まり
 →資本主義システムの不安定性を解消する金融規制が新たに設定
・環境問題は、世界中の資本主義に最も意味深い影響を与えるであろう
 →高価なエネルギー価格が、テクノロジーの研究開発を世界的に促進

*人民元の切り上げで世界はどう変わるか
・アジアの台頭は日本から始まり、それが何十年も続いた
 →中国が通貨切り上げを行ない、輸入が増大すれば、このアジア台頭の傾向はしばらくの間は促進されよう
 ⇒さらなる三つの結果:
 一つ目: 中国が主要な金融センターとして台頭
 二つ目: アジアにおける通貨取引は、ますます人民元に重点が置かれる
      …単一のアジア通貨を作るのは、政治的に不可能。
       アジアが構築できるのは、1970年代と1980年代にヨーロッパが作ったような為替管理制度
 三つ目: 中国企業を高級品志向にさせ、より高度なテクノロジー分野と、一層複雑な世界市場へ進ませること
 →中国と日本企業の競合もますます激化しよう

≪訳者あとがき≫
・著者の世界的視野で見るスケールの大きさ
・著者の母国、イギリスではもちろんのこと、長らく滞在の日本でも高く評価。アメリカでの評価も極めて高い。
・今回の著作で特に引く興味
 →地球規模の経済危機が与えた影響
 →地球温暖化問題
・今後の日本の進むべき進路
 →サービス業にもっと重点
 →規制緩和と競争促進が必要
 →今後、日本は知識集約型国家になるべき

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