読みにくい市場現状/市場実態PickUp/グローバル雑学王−106
半導体市場の活況が、一般紙経済面を賑わせている。新興国の需要およびスマートフォン(多機能携帯電話)が大きく引っ張っている、としているが、その凄まじさを反映しているということか、市場関係者の予想がなかなか当たらない現状のようである。インテル社の直近四半期の業績発表、日産自動車の生産ラインが停止する事態が、それを特に感じさせている。
≪読みにくい市場現状≫
現状の半導体市場について、その活況ぶりが経済面を次の通り独占している。
○半導体、激しい「世界大戦」に。スマートフォンなどの需要増で。(7月15日付け 産経ニュース)
・供給過剰で価格下落を招く恐れもある中、世界の半導体トップメーカーが増産に走り出した。世界シェア3位の東芝が14日、四日市工場(三重県四日市市)の新棟建設に着手したほか、2位の韓国サムスン電子も半導体の設備投資や研究開発に今年1年間で11兆ウォン(約8000億円)を投じる。新興国を中心とする電子機器の販売拡大や先進国で好調なスマートフォン(多機能携帯電話)の売れ行きを背景に、拡大する需要を取り込む構えだ。
・米国半導体工業会(SIA)によると、5月の世界半導体売上高は前年同月比48%増の246億5000万ドル(約2兆1600億円)となり、2カ月連続で単月の過去最高を更新。世界トップの米インテルが13日発表した4〜6月期決算も売上高が前年同期比34%増で過去最高の107億6500万ドルとなるなど、平成20年秋の世界金融危機後に落ち込んだ需要の急回復に業界は沸いている。
○半導体、上向き鮮明。新興国が需要の中心。(7月15日付け 朝日)
・半導体の市況が、世界的に急回復。
・半導体は「ジェットコースター」に例えられ、好不況の波が激しく、メーカーは慎重さも残した「半身」の構え
・東芝が14日、三重県四日市工場で「第5製造棟」(フラッシュメモリ量産)の起工式。この建設は、2008年2月に決めたものの、経済危機で凍結、今年3月に再開を決めたもの。
インテル社の4-6月、第二四半期業績が、市場の読みを越えるという以下の反応推移となっている。市場の振れに付いていけない感覚が伺えている。
◇Intel boosts Q3, 2010 outlook after 'best ever' Q2(7月13日付け EE Times)
→Intel社の第二四半期売上げ$10.8B、前年同期($8B)比34%増。
◇米インテル、売上高・営業利益が過去最高、4〜6月期。(7月14日付け asahi.com)
→インテルが13日発表した今年4〜6月期決算、売上高および営業利益ともに四半期決算として過去最高、純利益も10年ぶりの高水準、アジア向けの売り上げが大幅に伸びた旨。
◇Intel results exhibit signs of dysfunctional, self-mutilating market(7月14日付け EE Times)
→Intel社を追っているアナリスト41人のすべてが、同社の最近の業績を読み外している旨。市場の振り子が再び行き過ぎた振れ方であり、capacity過不足の読めないサイクルに圧迫される業界の機能不全性、および利益を犠牲にしてシェア獲得に走る自然本能を抑えられずにしばしば煽られる破壊的な傾向を表わしている旨。
大所の需要急拡大に振り回されて、きめ細かい生産対応が追い付かないという半導体業界によくある事態が思い浮かぶが、日産自動車での生産停止が次の経過となっている。
◇Nissan blames IC vendor for abrupt production halt(7月13日付け EE Times)
→日産自動車の思いがけない生産中断が究極のsupply chain混乱となっており、OEMsに不快感を起こしている旨。日立のengine control units(ECUs)供給遅延もまた、多くの半導体がallocationベースで生産、届けられている市場の現実を表わしている旨。
◇日立、エンジン部品納期遅れ−日産4工場で生産停止。(7月14日付け asahi.com)
→日産自動車の国内4工場の生産ラインが、日立製作所からの自動車用エンジン制御ユニットの供給が遅れ、停止する旨。エンジン部分に必要な半導体チップが不足したための旨。半導体需給の逼迫の問題というよりは、部品の安定調達とコスト低減の両立という二律背反する課題を解決できていないためと言えそうな旨。
◇日産、米の2工場も操業停止、3日間、部品納入遅れで。(7月15日付け 日経 電子版)
→日産自動車が15日、日立製作所から調達しているエンジン基幹装置の納入遅れの影響で、米国にある2つの完成車工場の操業を3日間停止すると明らかにした旨。日本の4工場も14日から操業を止めており、影響が広がっている旨。
操業の一時停止は、エンジン基幹装置に欠かせない半導体の調達が滞っているため、日立と日産は今後の安定調達を求め、半導体を製造する欧州大手のSTマイクロエレクトロニクスと交渉を続けている旨。
我が国のものづくり、生産手法のあり方にも改めての見直しが求められるという論調になっている。
○「在庫持たず」弱点露呈、日産工場、1部品後れ、即停止。(7月15日付け 朝日)
・日立製作所のエンジン制御装置の納期が遅れている問題
・「ジャスト・イン・タイム」や集中購買という、日本のものづくりを支えてきた生産手法の「落とし穴」も浮き彫りに
・STマイクロが今月2日、日立が7月に求めていたIC 12万個のうち10万個しか納入できないと一方的に通告
・調達先を絞り込み、発注量を増やしてコストを下げる手法は、製造業では一般的
・コスト削減と供給の安定性を両立するには、取引先との信頼関係が欠かせない
≪市場実態PickUp≫
恒例のSemicon Westも、市場の戻し、活況を受けて、大幅な回復、増加の見出し、データが相次いでいるが、最先端技術の先行きとなると積極、慎重入り混じるこのところの基調が続いている。
【Semicon Westから】
◇Semicon West: What a difference a year makes(7月13日付け EE Times)
→月曜のSEMI/Gartner Market Symposiumから断片トピック:
・2010年半導体売上げは前年比27%増(Gartner社)
・半導体製造材料は17%増の一方、装置市場は104%増の大幅な回復(SEMI)
・2010年capital spending、83.5%増の約$26B(Gartner社)
・半導体装置市場は2012年まで伸びて、2013年は減少(Gartner社)
・193-nm immersion lithography steppersがリードして、2010年の半導体装置は記録的な伸長率
・packaging材料市場は、2010年12%増、2011年にさらに5%増(SEMI)
・今年のphotoresist売上げは23%増、193-nm resistsが40%を占める(SEMI)
・世界半導体売上げは来年$300Bを上回ると見る(SEMI)
・今年のfront-end fabs建設&装置spendingは121%増(SEMI)
・2010年のcapital expendituresに少なくとも$900M充てる計画の半導体メーカーは9社、昨年の3社から増加(SEMI)
◇Chip making equipment sales to double in 2010, says SEMI(7月14日付け EE Times)
→SEMI発。2010年の半導体製造装置販売高が、104%増の$32.50Bになると見る旨。
◇Lithography roadmap offers questions and openings(7月16日付け EE Times)
→今回の場で、先端リソに向けてのロードマップにある深い不安定さから、ある心配の底流が湧き出ている旨。GlobalFoundries社の積極的なスタンスのプレゼンの一方、業界の大方には依然深い疑念がある旨。
余計なお世話の感じ方もあるが、post-PC時代を伺うやりとりである。
【post-PC時代】
◇Microsoft may not survive post-PC era (7月12日付け EE Times)
→mobile technology conference(San Francisco)からの印象記事。Intelはかなり今のままでpost-PC時代を生き残ろうが、Microsoftについては確信がもてない旨。
◇Opinion: Microsoft dying? Don't bet on it (7月13日付け EE Times)
→Microsoftがpost-PC時代を生き残れない恐れがある、という見方は誇張され過ぎの旨。
我が国の工場、事業買収に伴う大きな動きが決着を見て、以下の通り新たな方向に歩みを進めている。
【買収関連の動き】
◇TI buys two fabs from Spansion Japan (7月14日付け EE Times)
→Texas Instruments社が、アナログfab capacityを再び拡大、Texasでの300-mmアナログfab立ち上げを加速の後、Spansion Japan Ltd.から会津若松の200-および300-mm工場など2つのウェーハfabsを購入、Spansion Japanから約450人の従業員がTIへ、TIはある300-mm装置をUMCに売却する旨。
◇UMC to get manufacturing tools from Texas Instruments(7月15日付け EE Times)
→UMC(Hsinchu, Taiwan)が、Texas InstrumentsによるSpansion Japanからの300-mmウェーハfab買収で恩恵を受ける運び、300-mm CMOS半導体製造装置をより早く、低コストで得られる旨。
◇On Semi to pay $366M for Sanyo chip biz (7月15日付け EE Times)
→三洋電機が、半導体子会社をOn Semiconductor社に株式およびcash織り交ぜて$366Mで売却することに合意、以前の予想よりは高い旨。
Apple社のiPhone 4の受信トラブルについて、Steven Paul Jobs氏が会見して説明、幕引きを図っているが賛否両論の様相、さて消費者の今後の反応は如何?
【iPhone 4受信障害】
◇iPhone 4受信障害で陳謝、専用ケースを無料配布。(7月17日付け asahi.com)
→米アップルのジョブズ最高経営責任者(CEO)が16日、カリフォルニア州北部の本社で記者会見、新型の多機能携帯電話機「iPhone 4」の電波受信障害をめぐり「迷惑を被った利用者におわびする」と陳謝した上で、購入者には端末に装着して障害を防ぐ専用ケースを無料配布すると表明した旨。
受信感度の問題は「携帯端末業界共通の課題」として、設計ミスとの見方を明確に否定した旨。
◇Apple says iPhone 4 antenna is state of the art(7月16日付け EE Times)
→少なくとも市場アナリスト2名が、Apple社のiPhone 4について他のsmartphonesでは見られていない異常なアンテナの問題を抱えているとは思わない旨。
◇Hubris, lessons from Apple antenna debacle (7月16日付け EE Times)
→Apple社は、エキスパート連に耳を傾けるべき、そうしていない。2009年にあるサービスプロバイダーのAppleエンジニアなどが、iPhone 4の設計に絡む受信の問題を同社に警告している旨。
≪グローバル雑学王−106≫
参議院選挙が終わり、またもやねじれの様相の結果がもたらされたが、税収が伸びなくては如何なる賢明な政策も元も子もない、という実感が正直なところ。資本主義の柔軟な変容ぶりを、
『変わる世界、立ち遅れる日本』
(Bill Emmott 著 烏賀陽 正弘 訳:PHP新書 655) …2010年3月4日 第1版第1刷
より歴史的な経過とともに以下考えてみたい。以下に出てくる鳩山さんも菅さんに置き換えなければならないし、菅さんも早くもあれこれ足を引っ張れている現時点である。とにもかくにも我が国ならではの製品およびサービスをさらに一層充実させて、税収を伸ばさなければならない。蓮舫さんのテレビでのコメントを見ると、この点では一致しているように感じている。
[第7章 格差社会は新自由主義を変えるか]
*カール・マルクスの呪縛
・カール・マルクスの二つの著書:
『資本論』(1867年) …膨大で複雑難解
『共産党宣言』(1848年、共著) …より簡潔で明解
→資本主義は、自らの矛盾によって、最後は崩壊すると予言
⇒その原因 −不平等
−不安定性
→ここで三番目に挙げる「資本主義の潜在的な矛盾」、つまり「環境破壊」までは予測できず
⇒現代に生きていたならば、当然、環境問題を取り上げていたはず
・彼が指摘したのは、資本主義が自らの矛盾に耐えかねて、完全に崩壊すること
→いまだに起きていない
・マルクスの間違い →資本主義が極めて適応性が高く、弾力性に富んだシステムゆえ
・2007〜2008年に始まった現在の経済危機に対処
→政府がとった膨大な財政刺激策
*資本主義がもつ三つの弱点 −−−不平等、不安定性、持続性
・人間がお互いに結束、経済および技術上の進歩をもたらすために考案、成功したシステムは資本主義だけ
・一方、資本主義に弱点があることは認めなければならない
−社会の内部および異なる社会間で、さらには世界中の各所で、不平等を助長させる傾向
−いつも不安定 →ブームや崩壊: 経済成長と景気後退
−ついには環境破壊を引き起こし
・一つの見解として、資本主義の将来について、実効性がある策は、国家に主導された中国式
→著者は個人的に、これが実現する可能性は極めて低いと思う
・資本主義の形態がどのように変容すべきか
→三つの弱点、すなわち不平等と不安定性、それに持続性を考えるべき
*経済危機により不平等問題がクローズアップ
・資本主義をどのように変革すべきか
→出発点は、その不安定性という弱さ
・経済回復が順調に軌道に乗れば、その問題点は解消
→完全雇用が実現した期間は、貧富の差は縮小傾向
・ますます重要性を増す知識集約型産業やサービス業分野
→さらに高まっている政府が財政支援する義務教育の有用性
・1990年来、イギリス、アメリカ、ドイツ、イタリア、日本、さらに他の多くの国では、貧富の差が一層拡大
→この不平等をもたらす要因:
一つ目 →裕福な人たちに、さらなる利益をもたらす株式と不動産価格の上昇
二つ目 →発展途上国が台頭、廉価な製品やサービスの輸出が、欧米諸国の未熟練労働者の賃金を引き下げた
三つ目 →情報や通信テクノロジーで、熟練した知的労働者の所得が増加、一方、未熟練労働者たちは職を奪われ、収入が減少
四つ目 →高報酬の最高経営責任者の存在価値が、国際的に高まった
・政治ムードは突如一変、不平等が重要な政治課題として再びクローズアップ
Obama大統領 →国民皆保険制度の打ち出し
鳩山氏 →「市場原理主義」への批判
*世界中の政府が抱える膨大な財政赤字
・不平等への政治的関心
→世界三大経済国(米国、日本、中国)における政治や政策に、大きな変化を同時に
・不平等問題への政治的手段
…膨大な財政赤字と負債の重荷を背負うことに
−著者の祖国イギリス →来年にはGDPの15%
−アメリカ →約12%
−日本 →ほぼ9%
⇒景気が回復すると、政府はこの財政赤字を削減し、税金を引き上げる必要
*格差解消が最優先事項となった
・資本主義をめぐる政治的環境の変化
…高給者の収入と税金が上昇する傾向
…法的に設定されている最低賃金が、引き上げられる可能性が高い
…特に金融界に対して、賃金やボーナスに法的制限
・日本は、強欲な銀行家が近年の景気後退の元凶と非難されるような、欧米と同様の政治的経験はまだない
・日本は長らくデフレに悩まされ、過度に輸出に依存せざるを得ない
→貧困層の低い収入でさえ減少
⇒家計支出の意欲を削いでいる