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市場拡大および先行への備え/市場実態PickUp/グローバル雑学王−103

世界経済の成長拡大の維持に向けて、G8、G20という世界の国・地域の代表会合が頻度を増して開かれている感がある。先進国から新興国への経済シフトがますます度を増すなか、バランスをとり直す様々な課題、問題に即時立ち向かわなければならない現時点ということと思う。半導体・デバイスの世界でも呼応して、市場拡大が引き続くよう先手の対策が生産面、技術面で打たれてきているという受け止めである。

≪市場拡大および先行への備え≫

次回の本欄で取り上げる予定の米SIAからの月次半導体販売高について、これも定例化している事前予想発表が次の通りである。

◇Strong May chip sales show World Cup effect, says analyst(6月24日付け EE Times)
→Carnegie Group(Oslo, Norway)のアナリスト、Bruce Diesen氏。5月のグローバル半導体販売高・3ヶ月平均が$24.5B、4月の$23.3Bから増加、史上最高記録となる見込みの旨。iPhoneおよびtablet PCの打ち上げ発売およびLCD TVs販売へのWorld Cupインパクトなどいくつかの強み要因がある旨。

5月販売高が月次の市場最高を更新する勢いとのこと。確かに世界全体では拡大、プラス基調の読みが引き続いている。

◇VLSI ups fab tool outlook in hot market (6月22日付け EE Times)
→fab toolおよび材料業界について活況の以下の見方:
 VLSI Research社  →fab tool予測上方修正
 Gartner      →IC capital spending予測上方修正
 Techcet      →強気の見通し
 Barclays Capital →2010年capital spending 85%増

各社の設備投資に如実に表れてくるが、今を引っ張る主要プレーヤーの1つ、TSMCから上乗せのメッセージが出ている。

◇TSMC 2010 capex may exceed planned US$4.8 billion, says chairman(6月25日付け DIGITIMES)
→TSMCのcapex spendingが最近勢いを得ており、2010年の全体spendingが見通し予算$4.8Bを上回るかもしれない(同社chairman and CEO、Morris Chang氏)旨。

半導体の消費を牽引する中国と今まで見ているが、半導体生産について政府の積極的な推進による同国における今後の生産/消費の比率が以下の通り予測されている。

◇China's $25 billion to boost domestic production, says analyst(6月24日付け EE Times)
→The Information Network発。中国政府が、向こう5年にわたり国内半導体製造を推進するために$25Bをウェーハfabsに充てる備え、これは同国内ウェーハfabsが満たす現地需要の比率を高めて中国の半導体輸入を減らすことになる旨。

◇Analyst: China's IC manufacturing spend paying off(6月25日付け EE Times)
→The Information Network(New Tripoli, Pa.)のpresident、Robert Castellano氏。中国における半導体fabsが2009年に生産したICsは40 billion個で同国内需要の25.1%の比率、2004年の20.9%から上昇、中国の半導体業界への大規模な投資が利益を生んできている旨。IC生産/消費の推移&予測グラフ図面、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100624_info_netowrk_china.jpg

いつまでも同じものを作れるわけはなく、生産拡大には技術世代ノードの更新が必須となるが、28-nm以降に向けた技術展開としてIBM陣営対TSMCの鬩ぎ合いの構図が見られている。

◇IBM 'fab club' aligns 28-nm process, jabs rival(6月23日付け EE Times)
→IBM社''fab club''の4社、IBM, Samsung, GlobalFoundriesおよびSTMicroelectronicsが、以前に発表された28-nm low-powerプロセスに基づく半導体生産を"同期をとって行なう"ようコラボ、2010年後半までには28-nmウェーハ出荷開始の旨。IBM陣営のgate-first技術に対抗するTSMCのgate-last技術という構図。

◇IBM, Samsung and GLOBALFOUNDRIES Set for Fab Synchronization to Produce Advanced Chips Based on 28nm Process Technology with STMicroelectronics (6月23日付け Market Watch)

◇TSMC to take delivery of EUV lithography system in 2011, says R&D head(6月25日付け DIGITIMES)
→TSMCのTechnology Forum(24日)にて、senior R&D VP、Shang-yi Chiang氏。同社は、2011年にASMLから同社初のEUVリソシステムの供給を受け、2013年に20-nmプロセスに入っていく道のりが開ける旨。

連動する製造装置の動きの1つとして以下の通りである。

◇Nikon's 'stagnant' EUV litho is a risk, says analyst(6月23日付け EE Times)
→22/20-nmおよび16-nm製造プロセスノードでのEUVリソのコスト効率性にインパクトを与える可能性のある技術的問題にも拘らず、ASMLは2010年にpre-productionシステム5台、そして2012年に13システムを販売する計画であるという現状からの見方。


≪市場実態PickUp≫

6月24日に販売が開始されたアップル社のiPhone 4について、早速の以下の内容である。

【Apple iPhone 4】

◇Updated: First look inside iPhone 4 reveals high reuse-STMicro snags coveted design win for MEMS gyroscope(6月24日付け EE Times)
→teardown解析専門、UBM TechInsights発。新しいApple iPhone 4はiPad Nanoと呼べるほどの中身、少なくともそこからの7つの半導体を用いている旨。メインロジックボードの概観写真、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/062410_mainboard_s1.jpg

問題の方も早速の指摘が見られる。

◇Poor antenna design may cause iPhone 4 issue(6月25日付け EE Times)
→何人かのユーザから出ているApple iPhone 4のセルラ受信問題、電話のセルラおよびGPSアンテナをケースの金属フレームに組み込んだことによる可能性が考えられる旨。
≪ネット関連記事より≫
iPhone 4 で ディスプレイの黄ばみと並んで話題になっている「持ち方で感度が変わる」問題について:、電波状況によって現象は変わるものの、確認されているのは iPhone 4 の左側面にある黒い線 (ステンレス帯の区切り)を覆うように持つことでアンテナが下がる、極端な場合は「左手で持つと圏外」になる現象。

世界的に半導体在庫はどうなっているか? 依然低い水準という下記の記事データである。

【IC在庫】

◇ISuppli: IC inventories still below average (6月22日付け EE Times)
→iSuppli社発。第一四半期の半導体サプライヤ・グローバル在庫が$25.73B、前四半期比1%増、依然低い水準にある旨。2008年第二四半期〜2010年第二四半期の推移&予測図面、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100622_isuppli_inventories.jpg

三次元半導体の開発、製造に向けた連携が、以下の通り続けて見られている。

【3-D半導体連携】

◇Trio forms 3-D chip alliance (6月21日付け EE Times)
→Elpida Memory社、Powertech Technology社(台湾)およびUMCが、28-nmノードなどのプロセスでのthrough-silicon-vias(TSVs)ベース・三次元(3-D)半導体開発を促進するアライアンス設立の旨。

◇Group forms another 3-D chip alliance (6月22日付け EE Times)
→Tezzaron社の3-D半導体技術、FaStack技術およびGlobalFoundries社の130-nm CMOSファウンドリープロセスに基づく3-D multi-project wafer(MPW)サービス提供で、CMP(試作および少量生産用ICs & MEMS仲介), CMC Microsystems(技術サービス)およびMosis(製造サービス)が連携する旨。

◇UMC expects to sample 3D stacked chips using 28nm in 2011, says CEO(6月22日付け DIGITIMES)
→UMCのCEO、Shih-Wei Sun(孫世偉)氏。同社は、28-nmプロセス技術による統合3D ICソリューションのsampling開始を2011年半ば、volume生産を2012年に見込む旨。

中国と台湾の経済協議が合意間近の運びであるが、半導体業界からは影響はないとの反応が出ている。

【両岸経済協議】

◇Taiwan, China settle on economic cooperation framework agreement(6月25日付け DIGITIMES)
→台湾および中国からの両岸経済協力枠組協議(海峡兩岸經濟合作架構協議、Economic Cooperation Framework Agreement[ECFA])交渉担当者が、経済合意の本文および初期harvestリストを最終決定、両者は6月末までに調印する運びの旨。

◇TSMC sees no ECFA impact on Taiwan's IC sector(6月24日付け Focus Taiwan News Channel)
→TSMCのChairman、Morris Chang氏。台湾のIC事業は非常に国際化しており、operationsがグローバルに行きわたって、economic cooperation framework agreement(ECFA)による効果、影響は見込まれない旨。

ガラッと変わって、南極の氷の下にこんな望遠鏡が、と驚かざるを得ない内容である。研究成果に期待である。

【南極の巨大望遠鏡】

◇IceCube telescope: Extreme science meets extreme electronics(6月23日付け EE Times)
→科学プロジェクト、IceCubeについてWisconsin大発。南極の氷の下1マイル以上で現在構築中の世界最大の望遠鏡が、来年完成に向けて計画通り進行中、以下の写真の通り普通ではない装置の旨。
・南極でのSouth Pole Station(runwayの左側)およびIceCube(右側)の外観
http://i.cmpnet.com/eetimes/news/online/2010/06/aerial.jpg
・IceCube Arrayの中身詳細:パリのEiffel Towerとの比較
http://i.cmpnet.com/eetimes/news/online/2010/06/ice_cube.gif


≪グローバル雑学王−103≫

主要国首脳会議(G8)に続いて新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会合がカナダで開催されているなか、人民元の対ドル基準値が慎重な模様見ながらの少し上げの傾向が続いている最中である。

『変わる世界、立ち遅れる日本』
 (Bill Emmott 著 烏賀陽 正弘 訳:PHP新書 655)…2010年3月4日 第1版第1刷

より、世界中話し合って現在に至っている金融システムの振る舞い、経緯を以下辿ってみる。人民元は対ドルで2005年以降最高値とのこと(6月22日付けasahi.com)、今後の成り行きに最も重要な指標となっている。


[第4章 G20で模索される世界金融システム]

*ブレトン・ウッズ体制の終焉とG20の結成
・2007〜2009年の広範な金融崩壊
 →政府が膨大な救済措置
 ⇒民間における需要の激減と負債の増大を、公共事業と公的債務で補った
・「ブレトン・ウッズ(Bretton Woods)」
 …1944年7月、アメリカ主導により、New Hampshire州のBretton Woodsで開催された会議
 →戦後の金融システムと組織を構築する合意
・旧来のサミットG7(7ヶ国による先進国首脳会議)に漸次取って代わるG20

*国際金融体制の変革が必ず起こる要因
[一つ目]…かつての経済危機
 →発展途上国において発生、ある程度は国境を越えて影響
  現在の金融崩壊と急激な経済収縮は、まさしく地球規模
 →各国が問題を共有すれば、その解決策が見出せる
[二つ目]…今回の崩壊の金融面での発端 
 →国際間の資本移動の自由化
 →銀行の規制や監督の国際基準を設定することに失敗したことも一因
[三つ目]…世界経済の勢力均衡が長期的に変遷したこと
・著者の考え ⇒世界における金融問題の主要課題はドルではなく、人民元である

*金融危機を引き起こした四つの要因
・危機の発端と現状に重なり合う四つの力と要素
 第一: 欧米での金融機関の不正行為
  →今回の危機、もともとはアメリカの銀行に端、最大の損失を蒙り負債の償却を行なったのがドイツとスイスの銀行
 第二: 金融機関に対する国内および国際的規則の欠陥と、監督上の不備
  →「陰の銀行システム」…陰で何が行なわれているか、誰も知らなかった
  →エクスポージャー(損失が起こりうる投資:Exposure)が蓄積
 第三: 弱いインフレ傾向と、ずさんな金融政策が重なったこと
 第四: 世界的に豊富な流動性を伴う急速な経済成長が、国際貿易や収支に史上空前の格差をもたらした
・これら四つの異なった要素が、信用経済にバブルを引き起こし、それに伴って起きた急速な経済成長は、いまや崩壊

*1944年後の世界経済システム −−−GATT、IMF、世界銀行、WTO
・1944年のブレトン・ウッズ会議 →最終的に敗戦国となったドイツと日本は参加せず
 ⇒ブレトン・ウッズ体制は英米のイニシアティブで策定
 ⇒貿易上の保護主義撤廃
  →三つの国際機関を新たに設立
   −GATT(関税及び貿易に関する一般協定)
   −IMF(国際通貨基金)
   −世界銀行(公式名称:国際復興開発銀行)
・1971〜1973年、アメリカの意見で固定為替相場制が放棄
 →資本の流れを制限する「為替管理」が、その後の10〜15年間で漸次解体
 ⇒現在のような金融と金融機関の国際化への道を開く
・1987年、GATT本部に中国から同国の加盟を求める覚書
 →GATTのより一層の強化
 ⇒1995年、GATTはWTO(世界貿易機関)に発展解消
・弱体化したのはIMF
 …国際収支の不均衡を監視する役割が、実行不能に

*金融危機後の国際金融システム −−−米ドル支配の終焉
・金融危機の結果、何らかの変革が起こるのだろうか?
 →変革に至るプロセスは、まだ初期段階
・金融に対する取り決めには、超国家的組織や執行プロセスがなく、本質的に国内政治や規則に基づいて調整を行なっているにすぎない
・国際金融システムにおいて、中国や他の新興国が台頭し、欧米の力が弱体化していることを一応認めなければならない
 →2013年までに、中国はIMFの決定権に影響力を増すものと思われる

[参考]
◇世界銀行、中国の投票権比率を3位に「設立以来の改革」。(2010年4月26日付け asahi.com)
→世界銀行の加盟各国が25日、現在6位の中国の投票権・出資比率を、3位に引き上げることで合意、「世銀設立以来の大幅な改革」(日本の財務省幹部)に当たる旨。世界経済のなかで新興国の存在感が増すなかで、応分の責任を担ってもらうのが狙いの旨。
25日に開かれた世界銀行・国際通貨基金(IMF)の合同開発委員会で合意、その結果、世銀の中軸機関である国際復興開発銀行(IBRD)で、従来2.78%だった中国の投票権比率は4.42%に上昇、1位の米国と2位の日本は投票権比率は減るものの順位は変わらない旨。
一方、これまで3位だったドイツは4位に、4位だった英国とフランスはそれぞれ5位へ、いずれも順位を下げる旨。上位5位が変動するのは、1987年に日本が2位になって以来の旨。

*注目すべき中国の通貨政策 −−−人民元の切り上げはいつか
・変動為替相場制の国際金融システムにおける経済大国のなかで、中国の通貨だけが完全に為替交換できず、人民銀行によって厳しく管理
・世界各国が基軸通貨として米ドルに依存
 …1990年以降、日本の長期的な経済停滞によって円が弱かった
 …ユーロが比較的新奇だった
・人民元が国際通貨としていつ登場するか
 →世界的金融危機で、それが加速されたか、それとも延期されたかを答えるのは難しい
・中国が、人民元の切り上げに、あるいは変動為替相場制に、いつ移行するか?
 →最も有力なのは、中国が、急速なインフレからくる苦しみを、いつ始めるか
・突如として驚くような切り上げが行なわれる可能性、と著者の見方

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